BLACK



By 茶会幽亮様



第14話 虚空の終末



午前9時20分...工藤邸。
担ぎこまれた蘭、新一、志保はすぐさま紅子の手当てを受けた。投薬や魔術と、あらゆる方法で治療をしていき、ようやく完治できた。しかし、蘭と新一は薬の副作用で睡魔に襲われ、しばらくは2階の寝室にて睡眠をとることになった。
ちなみにスコット刑事は、自分で警視庁の方へ向かっていった。
青子「紅子ちゃん、工藤君と蘭ちゃんは??」
2階から降りてきた紅子に、青子がすかさず尋ねた。
紅子「とりあえず大丈夫ね。今はぐっすり寝ているわ。」
青子「良かった...。」
青子はもちろん、リビングにいた皆がほっと胸をなでおろした。
快斗「工藤夫妻も無事だし、組織も消滅したし・・・。これでやっと休めるぜ。」
快斗は伸びをして、そのままソファにもたれかかった。
真「ええ、そうですね。」
真や平次、和葉、青子、探も心底そう思っていた。しかし、後の3人は全く逆の考えだった。
ジョニーはポケットから、今朝紅子からもらった「死神」のカードを取り出し、それをじっと見つめていた。先の戦いではこれを象徴するようなことは起こっていなかった。ならば、これは一体??
志保はというと、窓の外を見ながら何か悲しそうな目をしていた。
青子「??どうしたんですか、宮野さん??」
志保「えっ・・・あっ、いや、なんでもないです。」
人に見られたのを察知して、志保は慌てて涙を拭った。
志保「ごめんなさい、ちょっと外に出てるわ。」
そういうと、志保はササッと玄関に向かい、外に出て行った。その光景を見て、ジョニーは壁に寄りかかり、眉間に左人差し指と中指を当てて何かを考え始めた。


志保は近くの公園にいた。周りには子供たちやその親が楽しそうに遊んでいた。
志保は俯いて、歩いていた。少し歩いていると、ベンチがあったのでそこに座った。その顔には組織の追撃がなくなったことへの達成感はなく、何かを起こした自分をざんげしていたように見えた。
志保「(私は...なんて事をしてしまったの??・・・なんであんな恐ろしいことを・・・。)」
腿においていた両手を握り、その上に涙をこぼしていた。彼女は必死で涙をこらえようとした。が、それも空しく目からこぼれ出たものを止めることは出来なかった。
??「やれやれ、何やってるんだと思ったら...。」
聞き覚えのある声に、志保は顔を上げた。そこには、ジョニーがいた。
志保「ジョニーさん・・・。」
志保は目に涙をなめながら、ジョニーをじっと見ていた。
ジョニーは志保の隣にもたれかかった。
ジョニー「全く、苦しいことは一人で溜めるなっての。」
志保「えっ?」
その言葉に聞き覚えがあった。しかし、記憶を探り出してもいつ聞いたかは分からなかった。
ジョニー「・・・昔と違って、今は仲間がいるんだ。一回でも相談しろよ。」
ジョニーは上を向いたまま、ぼやくように言った。
ジョニー「それとも、何か??とんでもないことでもあんのか??」
志保は何も答えられなかった。今悩んでいたことがまさしくそうだからだ。
数十分たった後、ようやく志保が口を開いた。
志保「・・・私が研究所にいた頃の話。もう4年ぐらい前の話よ。」
そして、今さっき悩んでいたことを告白し始めた。

4年前、ビフィーターはロサンゼルスのならず者のリーダーだった。目的のためなら誰でも殺したり、騙したりと悪行を重ねていた。そこに黒の組織たちがやってきて、彼をスカウトした。とはいっても、殺し屋と「実験体」としてだが・・・。後に任務の失敗により、ビフィーターは処刑された。が、その遺体は志保のいる研究所へと搬送されて、そこである薬品を投与されたの。すると、ビフィーターの体がだんだんと銀色に染まり、全身が銀色に染められた瞬間、彼の体は元の肌色に戻り、彼は上半身を起こした。蘇生したのである。彼の体は全部水銀へと生まれ変わった。もう彼は人間ではなくなっていた・・・。
蘇生したビフィーターはさらに人間を殺すようになった。薬の副作用で殺すことに快感を持つようにまでなってしまっていた。そして、頭を打たれようが心臓を一突きされようが、すでに人間でない彼には痛くも痒くもない。まさしく「不死身の死神」になってしまっていたのだ。


ジョニーは驚きも怒りもせず、ただ黙って聞いていた。
志保「その元凶の薬は・・・・・・私が作ったものなの。」
志保はそういい終えると、頭を抱えて俯いてしまった。
志保「工藤君や・・・皆になんていえば言いか、分からない。」
その言葉を言い終える前に、自分の犯した過ちに耐え切れず涙がこぼれ出た。
すると、ジョニーは志保の頭に手を差し伸べてそのまま自分の胸に当てた。
志保は突然の行動に驚きを隠せなかった。
ジョニー「・・・良く話してくれた。」
ジョニーは優しく言葉を添えた。
志保はその言葉で、泣くことを堪えるのが我慢できなくなった。小1時間、志保はジョニーの胸の中で泣きつづけた。
と、その時・・・ジョニーがズボンのポケットに入れていた携帯が震えだした。ジョニーはまだ心が落ち着いてない志保を邪魔しないように、そっとポケットから取り出した。
ジョニー「もしもし・・・、ああ服部君か。」
電話の主は平次だった。しかし、なぜか極度に焦っていた。
平次「ジョニーはん!?はよこっちに戻ってきとくれ!!」
ジョニー「??どうしたんだ、いったい??」
しかし、平次が問いかけに答える様子がない。ただし、電話は切っていない。
だが、電話越しに聞こえた叫び声にジョニーは戦慄を覚えた。

「工藤新一、殺してやる!!!」

ジョニーはすぐに電話を切って、立ち上がった。
志保「どうしたんですか??」
ジョニー「すぐに新一達のところへ戻ろう!!!」
あまりのジョニーの慌てぶりに志保は驚きを隠せずにいた。
目からこぼれ出そうな涙をふき取り、ジョニーの後を追った。


果たして、新一達に何が起こっているのか!!!?


第15話に続く




第13話「THE DUEL__(終盤編)」に戻る。  第15話「memorys(__回想)」に続く。