BLACK



By 茶会幽亮様



第19話 悪魔か、死神か


志保が拉致されて翌日・・・。
全員が早起きして、リビングにいた。
新一は警察に連絡、午前10時に現場に着けるようにと伝え、電話を切った。
新一「・・・おし、準備は出来た。」
ジョニー「・・・悪い、ちょっとだけ待っててくれ。すぐに終わるから。」
そう言ってジョニーは2階に駆け上がっていった。
そして、3分も経たないうちにジョニーは紅子を連れて降りてきた。
ジョニー「わりぃわりぃ、これを作ってもらってたんだ。」
そう言って、ジョニーは一発の銃弾を見せた。見た目は何の変哲もない銀の弾丸だ。
平次「・・・これが??なんも変わっとらん普通の弾にしか見えへんけどな。」
平次はその銃弾を手にとり、上にかざした。
紅子「それは志保さんが作った睡眠弾のようなものです。それに当たると、その人にかかっている薬の効果を弱めるようにできています。」
平次「・・・つまり、どういうこっちゃ???」
この一言にジョニーと紅子は危うくずっこけそうになった。
ジョニー「・・・要するにだな、ビフィーターに当てることができればビフィーターは二度と体を変形させることも出来なくなるかもしれないってわけだ。」
平次「おお、なるほど・・・。」
平次はようやく納得し、弾をジョニーに渡した。ジョニーは愛用のマグナムを取り出し、特殊弾を装填した。
ジョニー「それじゃ・・・。」
ジョニーは皆に円陣を組むように言い、真ん中に手を差し出した。
それを見て、新一達も自分の手をジョニーの手の上に置いた。
ジョニー「今回も同じく・・・。」
新一「全員生きて帰って・・・。」
平次「ビフィーターも捕まえて・・・。」
快斗「志保さんを無事に・・・。」
探「連れて帰る・・・。」
真「ですね・・・。」
そして、ジョニーは一呼吸入れて叫んだ。
ジョニー「よっしゃぁぁぁ、作戦開始(ライジング)!!!」
5人「おう!!!」
気合を入れた後円陣は解かれ、6人はその場を後にした。6人が外に出た後、紅子はタロットカードを取り出した。カードには死神を打ち倒した人間の姿が描かれていた。紅子はそれを見ると、笑みを浮かべた。


午前9時30分・・・。
壮絶なドラマを繰り広げ、その役目を果たし終えたはずの廃墟の前に6人は立っていた。
しばらく相談をして、その後ジョニーを除く5人が散らばっていった。
そして、ジョニーは一度深呼吸をして中に入っていった。

今にも崩れ落ちそうな廃墟の真ん中に奴はいた。6年間探しつづけた人を片手に持ちながら・・・。ジョニーは思わず怒鳴りそうになるが、一呼吸入れてそれを防いだ。
ビフィーター「これはこれは・・・たった一人で来るとは白馬の騎士気取りかな??」
ジョニー「さっさとそいつを放せ。」
ジョニーは低く、だが強い口調で言った。だがビフィーターはその程度で屈するはずもない。
ビフィーター「・・・分かった、こいつはあきらめるよ。だが・・・代わりにお前が死んでもらう。」
ジョニーは無表情で頷いた。
ビフィーターは片手に構えた銃をジョニーに向けた。
と、志保が気がついた。
志保「・・・えっ?これって・・・。」
志保の脳裏にふっと浮かんだ。3ヶ月前に見たあの悪夢・・・。あの結末は・・・まさか・・・これも???
ジョニー「今の言葉、絶対に撤回すんじゃねえぞ。」
ビフィーター「安心しろ、約束は守る方だからな。」
志保「い・・・いや・・・・いや。やめて、やめて・・・やめてえぇぇぇぇ!!!」
志保の必死の叫びも空しく、乾いた爆発音の後、ジョニーは倒れた。頭からは赤色の液体が散乱していた。
志保はガクリと膝を落とした。せっかく会えたのに・・・どうして。もうそれしか考えられなかった。
と、志保の頭に何かがつきつけられた。丸い穴のような、冷たいもの・・・、銃だった。
ビフィーター「ハハハハハ!!!馬鹿みてぇだ、人のために死ぬなんてよう。」
死神は自分から死を選んだ愚か者を罵っていた。その光景に志保は怒りをあらわにする。
志保「ふざけないでっ!!!あの人が死ぬはずなんてない!!!」
その怒鳴り声にビフィーターは得意げな顔をして、志保を睨んだ。
ビフィーター「へっ!!!脳天直撃っつったら人間は即死なんだよ!!!それとも何か??あいつも不死身なわけか??ハッハッハ、そのお顔を拝見してみたいね。」
すると・・・
??「やれやれ、「死神」ってのは約束を簡単に破っちまうんだな。」
男性が英語で話し掛けてきた。志保にはこの声に聞き覚えがあった。
志保「えっ??」
ビフィーター「なに??」
2人は同時にジョニーのほうを向いた。・・・撃たれて死んだはずの・・・ジョニーが立ち上がっている・・・。と、彼は後頭部に手を差し伸べると頭についていた袋を取った。袋の中からは潰されたトマトが2〜3個出てきた。
ジョニー「あいにく、こっちも考えがあってね。」
ビフィーターが苦虫をかんだような顔をした。
ビフィーター「ちっ、やはり「黒い悪魔」さんは簡単には死んではくれないか・・・。」
ジョニー「へっ、ようやく分かってくれたか?「不死身の死神」さんよう!!」
ジョニーがそう叫んだ瞬間、ジョニーは肩に背負っていたボストンバックからライフルを取り出した。銃口はビフィーターの右目に向けられた。
ビフィーター「無駄なことを・・・。」
低く、とても耳に響く火薬の爆発音が1発響き渡った。ライフル特有の細長い銃弾がビフィーターの右目に突き刺さった。右目は中心から波目が走り、みるみるうちに元に戻っていった。
ビフィーター「無駄だ、俺には何も通用しない。」
だが、ジョニーは構うことなく、ライフルを撃ちつづけた。右目、腹部、右腿、右腕・・・。あらゆる個所にライフル弾が突き刺さり、元に戻っていった。しかし・・・ジョニーは撃つのをやめなかった。次第にビフィーターの表情が険しくなっていった。
ビフィーター「こいつ・・・、ふざけんのもいいかげんにしやがれ!!!」
堪忍袋の緒が遂に切れたビフィーターは、右手を巨大なナイフに変えてジョニーに突進していった。だが、ジョニーは薄ら笑みを浮かべた。
ジョニー「今だ!!!」
そう叫ばれると、志保が探と真によって救出された。
ビフィーター「き、貴様!!!」
ジョニー「怒るなよ??元はと言えば、てめぇが悪いんだから。」
と、ジョニーの前に平次がすっと立ちはだかった。
ビフィーター「貴様、そこをどけ!!!」
平次「いやなこったね!!!」
ビフィーターの刀を自分のそれで防ぎ、逆にビフィーターを押し返した。
ビフィーター「チッ!!・・・?!!」
瞬間、後ろからサイレンサーが放たれる音が聞こえた。放たれた弾はビフィーターに当たったが・・・もちろん彼に効くはずもない。しかもその弾は・・・
ビフィーター「・・・トランプ??」
そう、弾はトランプだった。絵柄はスペードのキング。・・・そして、それを放ったのは・・・。
??「スペードのマークは『死』。そして、キングは『13』。あなたには最高の組み合わせでしょうね。」
白いシルクハット、白ずくめの服やマントに、右目にはモノクル・・・。そう、快斗が変装した神出鬼没の大泥棒、怪盗キッドだった。
ジョニー「えっ??」
ビフィーター「怪盗キッド??!」
さっき新一達が相談していた時、快斗はまだ普段の服装だったので突然彼が出てきたことに思わず目が点になっていた。まだ快斗がキッドだということをジョニーに伝えていなかった新一は慌ててジョニーに耳打ちした。
ビフィーター「畜生、子供だましが!!!!」
なめられたビフィーターは切れて、キッドへ突進していった。そして、右手を変えたナイフを思い切りキッドへ振り回した。が、とうのキッドはいとも簡単にビフィーターの猛攻を避けた。ビフィーターは地団駄を踏んだ。
キッド「無駄無駄、そんな隙の開いた振り回し方しても俺には当てられねぇぜ??」
ビフィーター「クッ!!!」
ビフィーターはナイフと化した自分の右手を元に戻した。そして、持っていた銃を取り出した。
ビフィーター「じゃあ・・・これでどうだ!!!」
そして、ビフィーターの銃が撃たれた。と同時に、後ろからも銃声が叫ばれた。
ビフィーターの銃弾は狙い済ましたキッドが消えてしまったため当たることはなく、後方から放たれた銃弾はビフィーターの背中に命中した。命中した背中には波が立ち・・・そのまま固まってしまった。
ビフィーター「・・・何!?どうして元に戻らないんだ?!」
初めて起きたことにビフィーターは焦りに焦った。
ジョニー「よう。その背中、似合ってんじゃんか。」
銃弾を放ったのはジョニーだった。彼は、さっき解く手段を装填したマグナムを握っていた。
ビフィーター「貴様、一体何をした?!」
ジョニー「なあに、ちょっくら魔法を解いてやっただけさ。」
と、ジョニー達の後方からサイレンが聞こえ始めた。そしてすぐに、まわりに警官と特殊部隊が来て奴に向けて銃を構えた。
目暮「警察だ、おとなしく銃を捨てるんだ!!!」
目暮警部がビフィーターに向けて怒鳴った。
新一は腕時計を見た。針は10と6を指していた。
新一「ぴったり、10時半だ・・・。」
探「行きましょうか・・・。」
そして、7人がその場を後にしようとした・・・。
と、突然・・・ジョニーが立ち止まった。
志保「??・・・ジョニーさん??」
新一「何してんだ、後は目暮警部に・・・。」
だが・・・ジョニーの耳にそれは入らなかった。ジョニーは・・・ワルサーPPKSを志保に向けた。
志保「えっ??」
平次「おい、ジョニーはん?!」
だがジョニーは銃を降ろすどころか、返答もしなかった。と、後ろの方から高々な笑い声が聞こえた。
ビフィーター「残念だったな、俺は間接的に人を殺すのも好みなんでな!!!」
新一「ま、まさか!?」
お気づきだろうとは思われるが・・・今のジョニーはビフィーターのマリオネットにしかなかった。無表情になってしまった金髪の『人形』はただ無言で、志保の右目を狙っていた。

ここまできて、新一達に成す術はないのか!!!?


第20話に続く



第18話「__KATTOU」に戻る。  第20話「__MARIONETTE」に続く。