BLACK



By 茶会幽亮様



第20話 __MARIONETTE


暗闇の中でジョニーは仰向けになっていた。
ジョニー「ここは??」
彼は起き上がり、辺りを見回した。が、人がいる気配は感じられなかった。
??「お目覚めになったか??」
突然どこからともなく男の声が聞こえた。
ジョニー「誰だ?!」
ジョニーは声のする方を見た。もちろん誰もいない。というより、誰がいるのか確認が出来なかったと言った方が妥当だろう。
??「まず先に自分の紹介をするのがマナーだろう??」
ジョニー「っ!!!俺は・・・あれ?」
自分のことが・・・全く頭の中にない。俺は誰だ?いったい何をしているんだ?どうしてこんなところにいるんだ??ジョニーの頭の中を三つの言葉がぐるぐると回った。
??「ほう、記憶がない・・・か。なら私が教えてやろう。」
ジョニー「・・・正体が分からない奴に教えてほしくはないね。」
??「ふっ、そうか。ならこれでどうだ??」
そう言うと、ジョニーの後ろに突然明るくなった。振り返ると、そこには50代半ばの男性がたたずんでいた。ジョニーは男の方へ近づいた。
ジョニー「あんた・・・誰だ??」
??「名乗るほどのものじゃない。さて、君の人生をお話しようじゃないか。」
ジョニー「・・・。」
不気味な笑みを浮かべてはいたが、なぜか敵意は感じられない。
??「君の名前はジョニー・ランバーソン。元ロサンゼルス市警の刑事で、今はICPOの捜査官。生まれはロサンゼルス。年は23だ。君の両親は・・・すでに死んだ。いや・・・殺されたんだ。」
ジョニー「なっ、誰にだ?!」
今まで黙って聞いていたジョニーが突然声を荒げた。
??「ふっ・・・そういうかと思って、こんなものを用意したよ。」
と、突然周りが明るくなった。
??「ふふふ、これは君が23の時の映像だ。そこに並んでるのが君と・・・君の親父さんだよ。」
ジョニー「あれが・・・親父???」
ジョニーが喋り終わったと同時に一発の銃声がうなり、ジョニーの「親父」が倒れた。すると、右の方から・・・日本人が出てきた。
ジョニー「あいつは・・・あいつが親父を殺したのか??」
??「そうだ、奴の名前は工藤新一。日本では「東の名探偵」などとうたわれているが、実際は殺し屋なんだよ。」
事実を完全に曲げた映像。工藤新一は本来はビフィーターなのに。だが、ジョニーにはどうでもよくなっていた。
ジョニー「工藤・・・新一、奴が親父を・・・。」
??「そうだ、そして奴は今お前の前にいる。・・・さあ、どうする??」
と、なぞの男がふっと消えた。「さあ、復讐をするんだ・・・。」と言い残して・・・。
残されたジョニーの心は一つ。親父の敵を討つ。それが、偽りだとも知らずに・・・。ゆっくり、静かに開かれた彼の目の中に黒い炎が激しく燃えていた。


ジョニーの意識が現実に戻された。もう彼に敵味方の区別は自分でつけられなくなっていた。完全にビフィーターの「マリオネット」となってしまっていた。
新一「ジョニー!!元に戻ってくれ!!」
新一の必死の叫びも、ジョニーにとっては怒りの引き金にしかなかった。彼は新一の方を向くと、不気味な笑みを浮かべた。そう、後ろにいる「奴」のように・・・。
ジョニー「元に戻れ??何を言い出すと思えば・・・俺は今も正気だぜ?東の名探偵さんよう!!!」
ジョニーが持っていたワルサーが3回火を吹いた。だが所詮は威嚇射撃。すでに物陰に隠れてしまっている新一たちに当たるはずがなかった。
新一「いい加減に目を覚ませ!!!操られているってのがわかんねぇのか!?」
ジョニー「バ〜カ、俺は俺があるままに生きているんだ。それによ・・・身内を殺しやがったヤロウにそんなことを言われる筋合いはねぇんだよ??」
新一「な、何!?」
新一達は自分の耳を疑った。
探「何を言ってるんです!?あなたのお父さんを殺したのは後ろにいるビフィーターだと言ったじゃないですか!!」
ジョニー「ビフィーター??へっ、そんな酒くさそうな奴なんか聞いたことがねぇなあ。」
快斗「えっ!?・・・一体どういうことだよ!?」
と、志保は全てを察した。
志保「ジョニーは・・・完全にあいつの術中にはまってる。あの人の記憶さえも・・・もうあいつの思うがままよ。」
平次「何やて!?」
新一「じゃ、じゃあどうすれば・・・。」
と、新一達の前の方から弾を装填する時に出る音が聞こえた。新一が前を見てみると・・・なんとジョニーが依然使ったランチャーをこちらに向けていたのだ。
新一「ま、まずい!!逃げろ!!」
皆が一斉に隠れていた壁から逃げ始めたと同時に、拳分の幅はあろう砲門から弾が打ち出された。そのまま壁に炸裂し、壁は跡形もなく吹き飛んだ。
ジョニー「ハハハハハハ、死を予感した奴の表情ってのはいつ見ても快感だなァ!!!」
ジョニーの豹変振りをビフィーターは天井から眺めていた。
ビフィーター「フフフフフ、仲間同士の相打ちか・・・。これ以上ない復讐になっちまうねぇ。」
そう言うと、またあの不気味な笑みを浮かべた。

このまま事態はビフィーターの思惑通りにいってしまうのか!?それとも・・・。


第21話に続く



第19話「悪魔か、死神か」に戻る。  第21 話「奪還、生還、帰還・・・」に続く。