BLACK




By 茶会幽亮様



第3話 絶望へのカウントダウン



結婚式から3ヵ月後。新一は様々な依頼を解決し、いつのまにか50件を超えていた。
だが、黒の組織が壊滅してからは事件が半減してしまい、これに加えコナン時代の目標も失い、新一は少し物足りなさを感じていた。(もちろん、蘭と一緒にいられることで+-0にはなっているが・・・)
新一「あ〜あ、暇だなぁ。」
高校生活に探偵と多忙を極めていた新一にとっては、一日に依頼が来るか来ないかの毎日では暇と思ってしまうのだろう。
蘭「いいじゃないの、それだけ平和って事なんだから。」
新一「そりゃ、そうだけどさー・・・。」
椅子に寄りかかってだるそうに振舞う新一。と、そこに電話の音が響く。
蘭「はい、工藤探偵事務所です。...あっ、お父さん?...新一?ちょっと待ってて。」
あんまり自分には優しくはない小五郎が新一に電話するとは嵐が起こる前触れのようだ。新一も「(おかしいなー)」と思っていた。
蘭「新一、お父さんから。」
新一「お、おう。」
あまり電話で話さない人だけにどうもギクシャクしてしまう新一だった。
新一「もしもし、新一ですが・・・」
小五郎『おう、新一。お前に聞きたい事があってな。」
新一「はあ、何ですか?」
小五郎『最近、彼氏または彼女を探してほしいって依頼、なかったか?』
それを聞いた新一はふと思い出した。そう、依頼の第1号の事だ。
4ヶ月内に50件解決してきた新一だったが、この依頼だけはどうしても解決の糸口が見つからなかった。
新一「ああ、確かにありましたね。えっと4ヶ月前ぐらいですかね、依頼があったのは。」
小五郎『そうか・・・、お前もか・・・。』
と小五郎は少し声のトーンを落として言った。
新一「えっ?他にもいたんですか?依頼を受けた人が。」
小五郎『ああ、服部と俺もそうなんだ・・・。』
新一「そうなんですか・・・」
その後、新一はそれぞれの依頼内容を確認した。

服部のケース:2ヶ月前に仲嶋 保子という女性が訪問。
内容はもちろん『彼氏を探してほしい』。
彼氏の名前は城嶋 義之。
小五郎のケース:1ヶ月前に河崎 哲義という男性が訪問。
内容はもちろん『彼女を探してほしい』
彼女の名前は千葉 潤子。

しかも・・・
小五郎『で、俺の件なんだが、依頼主と探し人の戸籍を調べて見りゃ偽者、連絡もこちらからは取れねぇし・・・。全く困ったもんだよ!」
新一「おじさん、気持ちは分かりますが落ち着いて。」
新一はとにかく情報を取り入れたいので小五郎に落ち着くように説得した。
とりあえず落ち着いてくれたものの・・・情報はそれ以上はなかった。
新一「どうもありがとうございました。」
新一が受話器を置いて窓を振り向いたその時!!!
新一の頬に何かがかすめた。思わず、新一は下に伏せた。
聞きなれない音に蘭が様子を見にきた。
蘭「新一?...!大丈夫!?」
左頬に傷が出来ていた。それ以外に外傷は見当たらなかった。
新一「大丈夫だ。蘭、警察を呼んでくれ。」
蘭「う、うん。分かった!!」
あわてて蘭は電話を取った。
通報してから10分後、目暮警部らがやってきた。
目暮「大丈夫かね?工藤君。」
新一「ええ、かすり傷で済みました。」
蘭「誰の仕業なんですか?」
高木「うーん、それが・・・。あの向こうのマンションから犯人が撃ったってことしかわかっていなくてね・・・。空薬莢も持っていかれちゃったみたいだし。」
「新一、どうやら殺し屋を敵に回しちまったようだな。」
いきなり聞こえたこの声は・・・
新一、蘭「ジョニー(さん)!?」
突然の訪問客に新一と蘭は驚いていた。
新一「お前、休暇でこっちに来てるんじゃなかったのか?」
目暮「いやー、我々警察が要請したんだよ。」
ジョニー「そういうこと♪」
とジョニーは笑顔を見せた。
新一「(ったく、人が死んでたかもしれないってのに)なぜですか?警部」
内心でのん気なジョニーをツッコミながらそれを隠して目暮警部に問い掛けた。
目暮「ああ、こいつらの捜索を手伝ってもらいたくてな。」
と言って警部は6枚の写真と書類をテーブルに置いた。
新一「なんですか?こいつらは」
ジョニー「お前を不幸にさせた奴らだよ。」
新一「な、なんだって!!!?」
新一は今まで見せた事がないくらいに驚いた。何せ壊滅させたはずの組織がまだ残っていると言われたら・・・。誰だって驚くだろう。
蘭「で、でもその組織は新一達が3年前に・・・」
目暮「ああ、確かに組織自体は壊滅した。だが10数人逃げ出してな・・・。ほとんどは捕まったんだが・・・6人は取り逃がしてしまったんだ。すまない、工藤君。」
新一「......。」
信じられない事に新一はただ呆然とするしかなかった。
ジョニー「メンバーはビフィーター、ウォッカ、キャンティ、キュラソー、バーボン、スプリッツァーの6人。ジンやベルモットが捕まえられただけ良いほうだ。だが、問題は・・・」
そういうとジョニーは黙ってしまった。
蘭「ジョニーさん?」
ジョニー「えっ、あいやなんでもない。特にヤバイのはこのビフィーターって奴。奴は.........ジンの兄貴だ。」
新一、蘭「!!!!!!!!!」
ジン・・・あの冷ややかな目で相手を狙い、平気で人を殺せる悪魔。
そんな奴の兄貴!?もう想像に尽きる。
新一「...とにかく俺はもちろん、他の人も危ないってことだな」
蘭「ええ、お父さんやお母さんも。」
目暮「我々もな。逆恨みしているだろうし・・・」
ジョニー「いや、必ず新一を狙ってくる。」
蘭「ど、どうしてですか?」
ジョニー「殺しておいた方が良かった奴に滅ぼされた、ちょうど源頼朝みたいにな。」
新一「そうか。・・・じゃあやってやろうじゃねーか!」
久々に宿敵が出てきて新一はパニックもあり、闘争心も燃やしていた。
しかし、そんな危険な事を彼女は許すはずはないだろう。
蘭「ダメよ、新一!やっと帰って来れたのに・・・。またいなくなっちゃったら・・・私..............。」
今は恋人ではなく女房。やはり制止するのもいつもより強かった。
新一「ら、蘭・・・。」
今にも泣き出しそうな蘭を新一は優しく抱きしめた。
蘭「新一......。」
新一「大丈夫だ、俺は絶対に帰ってくるから、な?」
蘭「・・・うん、そうだよね。」
新一「悪いな、いつもこんな目にあわせて。」
蘭「うんうん。もう慣れちゃった。」
そういって蘭は微笑んだ。その微笑に新一はもちろんその場にいた人たちはみんな顔を赤くしていた。
ジョニー「なんにせよ、気をつけなきゃな・・・。」
新一「ああ、そうだな・・・」


第4話へ続く




第2話「新しい生活、新しき事件」に戻る。  第4話「後ろの正面だあれだ?」に続く。