BLACK
By 茶会幽亮様
第8話 最悪の事態
新一が仕事を再開して2ヶ月。 彼はテキパキと仕事をこなし、いつしか解決した依頼が百件を超えていた。1日一件程度だったのが2〜3件まで増えた。 平次達はというと一ヶ月ぐらいは留まっていたのだが何も起こらなくなるとさっさと帰ってしまった。優作・有希子夫妻はやはり自分の息子が心配なのか未だに工藤亭に留まっていた。毛利夫妻は平次たちより先に自分の事務所に帰っていた。
現在は警察の協力の下、工藤探偵事務所周りに私服警官4〜5名が配置され、監視を続けている。 ジョニーはというと監視に志保の見舞い、そして調査等でさらに忙しくなってしまい、現在は新一家に居候している。当然ながら新一は毎日不機嫌なのだが・・・
ある日、監視役を務めていた高木刑事は同僚の千葉刑事に愚痴を散らしていた。彼らは事務所から300メートルの所に車を停めて監視をしていた。 渉「あーあ、新一君は羨ましいなー。新婚ホヤホヤ、おまけに夫人が美人だし・・・。はぁー。」 自分に自信が持てず、しかも年下に先を越された。高木刑事にとって少々絶えがたい苦痛だった。 千葉「まあまあ。そのうちにお前にも来るって。」 渉「だと、いいんだけどな〜」 とそこにジョニーが差し入れを持ってやってきた。 ジョニー「お疲れーっス。ほい、差し入れ。」 車の後部座席に座り、二人にハンバーガーとコーラを渡した。 渉「すいません、いろいろとさせてしまって・・・。」 ジョニー「いやいや、これくらい。・・・それに高木刑事や千葉刑事の方が年上なんですから、敬語は使わなくても大丈夫っすよ。」 千葉「うーん、そんな事言われてもねー。」 渉と千葉は考え込んでしまった。いくら彼が年下とはいえインターポールの刑事、つまり上司ととる事もできる。年齢と職の位、どちらを取るか・・・。かなり困る問題である。 ジョニー「じゃあ俺はこれで・・・。」 渉「ええっ、どこに行くのかい?」 だが結局渉は年を選んだ。確かにジョニーの言う事は正しいし、自分もこの方が自然に話せるからのようだ。 ジョニー「いや、内部監視兼調査っすよ。」 つまり事務所へ訪問+「調査」ということだ。 千葉「調査って?」 ジョニー「それは極秘です。」 といってジョニーは車から降りてさっさと事務所の方へ。 渉「さてと、俺達も頑張らなきゃな。」 渉はジョニーからもらったハンバーガーにがぶりついた。
一方、その事務所はというと・・・ 新一「はぁー、客が来ねー。」 蘭「もう、新一ったら。」 何故か誰も客が来ない今日、新一は応接用のソファーでぐったりしていた。 蘭「まだあの事件が終わったわけじゃないんだからね。少しはピシッとしたら?みっともない。」 新一「どうせ客が来ねーんだ。意味ない事はしねー主義なんでな。」
客用のドアが開いた。 慌てて新一は身だしなみを整える。その様子を蘭は「ほら、見なさい。」と言わんばかりにじっと新一を見ていた。 新一「こんにちは、ってなんだ。ジョニーじゃねーか。」 ジョニー「なんだ?その言い方、少しは護衛役を務めている人を感謝しろよ。」 新一「っるせー!」 新婚ムードをぶち壊しにしているジョニーに憤りを感じていた新一はこういう口答えについ過剰に反応してしまう。 蘭「新一、ジョニーさんの言うとおりよ。少しは『ありがとう』ぐらいは言ってよ。」 新一「ら、蘭まで・・・。」 しかし、さすがに愛妻の蘭にまで言われてしまうと、さすがに新一は口答えができなくなってしまった。その様子にジョニーは声を殺しながら腹を抱えていた。 新一「(ったくあのヤロー!!!)」 抱腹絶倒のジョニーに新一はそろそろ拳を作っていた。 とそこに新一の携帯のベルが鳴る。 こんな時に・・・、と思いながら新一は携帯を取り出した。 新一「はい、・・・ああ、警部・・・分かりました。高木刑事に乗せてもらいます。それでは。」 蘭「また事件?」 新一「ああ。心配するな、すぐに戻ってくるぜ。」 新一は優しく言葉を添え、蘭の頭を撫でた。ジョニーはその光景に口笛を吹いた。 新一「じゃあな、蘭。」 蘭「行ってらっしゃい、あなた。」 と夫婦の貫禄をジョニーにみせつけ、新一は外に止まっていた渉の車に乗った。蘭は窓から新一を見送った。 蘭「さてと・・・買い物に行かなくちゃ。」 といってジョニーに留守番を任せて蘭はバッグを持って外出した。ジョニーはパソコンを立ち上げた。が・・・少しの間手を止めて考え始めた。 ジョニー「なんだろうか・・・。少し嫌な予感がする・・・。気のせいだといいんだが・・・。」 しかし、その予感は最悪な形として実現してしまう。それも・・・蘭の身に......。
その頃、買い物を済ませ事務所に向かっていた蘭。近道のために細い路地を通っていた。そのT字路の曲がり角になにやら怪しい人影が・・・ ??「絶好のチャンス、か・・・。」 人影はスプリッツァーだった。
2時間前、残党のアジトにて・・・ スプリッツァーはビフィーターに呼び出されていた。そこでビフィーターはとんでもない事を命令した。 ビフィーター「工藤新一の妻・毛利蘭を誘拐してここに連れて来い。そうすればお前の命は保障する。」 さすがに新一暗殺だけを考えていたスプリッツァーはその命令には少し抵抗があったが命には代えられないので渋々了解した。
蘭がスプリッツァーの待つT字路に近づいてきた。一歩、また一歩・・・。4メートル。2メートル。その距離はぐんぐん縮まっていた。 そして。蘭の後ろにスプリッツァーはつき、睡眠剤を浴びせたハンカチを蘭の口に当てた。 蘭はすぐに膝を落とした。 スプリッツァー「よし。」 スプリッツァーは蘭をかかげ、近くに停めていた車の後部座席に乗せた。そして助手席に乗った。運転席にはキュラソーが座って待っていた。 キュラソー「さて、あいつはいったいどうするのかね?こいつを。」 スプリッツァー「さあな、そんな事知った事じゃねー。」 スプリッツァーは窓を見ながら吐き捨てた。 スプリッツァー「(すまない、新一・優作・・・)」 心の中で新一と優作に謝りながら・・・ 車は環状線を突っ走っていった。
午後8時。新一は全く連絡も入れずに帰ってくる様子もない蘭を心配し、1時間前に目暮警部に蘭の捜索を依頼した。ジョニーは自分の予想が的中してしまい、それに対応できなかった自分をくやしんでいた。 すぐに情報は伝わり、事務所に園子・毛利夫妻・工藤両親と博士・志保、さらに遠征でチベットから帰ってきたばかりの京極真も来ていた。 小五郎「おい、新一!!いったいどうなってんだ!?これは!!!」 激しい焦りで小五郎は声を荒げた。自分の娘に何かあったら・・・父親としての心配がそうさせていた。 園子「あんた、亭主のくせになにやってんのよ!!それでもあんた、蘭を守っているって言えるの!!?」 真「新一さん。それでもあなたは蘭さんと永遠に一緒にいると誓った人なんですか!?」 いつもは間接的に物事を言う真だが、今回ばかりは直球で物を申してきた。 阿笠「まあまあ、そんなに新一を責めても仕方がない。とにかく今は蘭君の無事を祈ろう。」 新一「博士・・・。」
一方その頃、残党のアジトでは・・・ 蘭「うっ、うう・・・」 麻酔からようやく蘭は目が覚めた。そこは古びた工場跡だった・・・。 ビフィーター「ようやくお目覚めだな、お嬢さん。」 ビフィーターは冷たげに言った。 蘭「ここは?」 ビフィーター「俺達のアジトさ。今からお前は人質だ。」 蘭「えっ?」 何がなんだかわからなかった。急に気を失い、気がついたら見知らぬ場所に見た事がない男性・・・。とても冷たい目をしていた。 ビフィーター「本来ならすぐにでも殺してやりたいが・・・工藤新一との取引でお前が必要になってくるからな。」 初めて男から出た『工藤新一』の言葉。蘭は何で知っているかはさておき、どうして新一に付きまとうか知る由もなかった。 ビフィーター「おい。」 ウォッカ「へい、兄貴。」 ウォッカが近づいてきた。手には注射針があった。 ウォッカ「ちょっと眠ってもらうぜ。」 次の瞬間、蘭の意識は朦朧としてきた。 蘭「し、し..ん..いち......。」
午後9時半。新一達の元に一向に良い知らせは来なかった。 すると新一の携帯が鳴った。慌てて新一は携帯を取り出した。液晶画面には工藤 蘭と出ていた。 早速新一は電話に出た。 新一「蘭!?蘭か!?いったいどこに・・・」 ビフィーター『初めまして、名探偵。』 聞いた事がない男の声。瞬間、新一は察した。蘭は誘拐されたと・・・。 新一「てめぇ、いったい誰だ!?」 さすがに周りの皆も徐々に気づきはじめた。 ビフィーター『まあそんなことより。これから言う条件を飲めば奥さんは返してやるよ。』 新一は息を呑んだ。 ビフィーター『米花町にある廃工場に2週間後に来い。武装しても構わない。だが無駄な事だ。せいぜい頑張るんだな・・・。』 新一「お、おい!!待て!!!」 蘭『しんいちー、来ちゃダメー!!!』 ブツッ!!! 後は冷たい機械音しか聞こえなかった。 新一は膝を落とした。蘭を巻き込みたくはなかったのに・・・自分が情けなかった。 蘭は来るなと言った。しかし、そんなことを新一ができるはずがない。絶対に蘭を無傷で助けてやる!!!そう誓った。
すぐに新一は警部にこのことを報告、すぐさま警視庁に捜査本部が設立された。新一・ジョニー・小五郎はそれに出席した。 会議は3時間にも及んだ。
翌日の午前0時半。 小五郎は誘拐事件の事を聞いて怒ろうとはしなかった。まだ死んだわけではない、絶対に。そう信じていた。 小五郎「新一、ちょっといいか?」 新一「は、はい・・・。」 小五郎と新一は屋上に向かった。そこには目暮警部と小田切刑事部長がいた。 小五郎「け、警部殿に小田切部長まで・・・。」 目暮「ああ、毛利君に工藤君か・・・。」 新一「・・・。」 新一はずっと黙っていた。 小田切「君があの工藤新一君かね。」 新一「はい、そうです・・・。」 小田切「・・・今回は刑事課全体が協力する。いつものお礼も兼ねてな。」 新一「ありがとうございます。」 そう言うと警部と刑事部長は階段を降りていった。 小五郎「新一・・・。頼みがある。」 新一「はい・・・。」 小五郎はため息を一つ入れた。柵によりかかり、タバコに火をつけた。 小五郎「蘭を巻き込んでしまったお前を俺は殴ってやりたい。しかし、過ぎたことは仕方がない。・・・どうか、蘭を頼む。」 小五郎は頭を下げた。今まで怒られたことしかない人にいきなり頼みごとである。誰だって戸惑うだろう。 新一「......。」 新一はしばらくの間黙っていた。もちろん答えは『YES』だ。がしかし、添える言葉がなかったのだ。 小五郎「すまない、今まで厳しい言葉だけ言い続けちまって・・・。愛娘の蘭を手放すのは辛かった。だが・・・一生逢えなくなるのはもっと辛い・・・。蘭を守ってくれ、頼む......。」 小五郎の目から雫が零れ落ちた。『鬼の目にも涙』とはこのことだろう。 新一は屈んで小五郎の方に手を添えた。首を少し縦に振った。そして・・・ 新一「・・・もちろんです。お義父さん・・・。」
その頃、ジョニーは刑事課のパソコンを借りて、調べ物をしていた。 ジョニー「?・・・これは?」 FBI、米連邦捜査局についてのページにこんな事が書いてあった。 1994年、1人の捜査官がある組織の潜入捜査を実行、しかし音信不通になり当局は死亡したと確定した。名前はスコット・クロスフォードという。 ジョニー「組織、か・・・。」 ジョニーはとりあえずメモをしておいた。なんにも役に立たないかもしれない。ただ自分の勘がそうさせていた。とそこに目暮警部と小田切刑事部長がやって来た。 ジョニー「あっ、警部。刑事部長も」 目暮「おう、ジョニー君。こんな所で何をしているんだね?」 ジョニー「少し知りたい事があったのでインターネットで調べ物を・・・」 目暮「そうか。新一君から聞いたんだが体調は大丈夫なのかね?」 ジョニー「仕事柄、こういうことは多いですんで・・・。」 すると小田切刑事部長が口を開いた。 小田切「ジョニー君。これは・・・スコット捜査官についてか。」 ジョニー「ご存知なんですか?」 小田切「ああ。実は・・・。」 小田切刑事部長は話し始めた。
1993年の10月、まだ小田切氏が警部で目暮警部や小五郎が新米刑事だった頃、FBIからスコット捜査官がやって来た。日本でも組織による科学者の誘拐事件が多発し始め、国家公安委員会はFBIに協力を要請。その援軍がスコットだった。彼はFBIの中でも優秀、且つ常識をぶち壊すことで有名だった。その頃に優作も協力しており、この時に幼い新一に出会っている。 翌年の1月、スコットは単独で潜入捜査を実行。しかし、それ以来戻ってこなかった。
ジョニー「そうだったんですか・・・。」 目暮「彼はとにかく行動派だったからな。慎重な態勢を執っていた我々に見かねて・・・」 小田切「目暮!!奴はそんな男ではない!!」 小田切がいきなり怒鳴り、ジョニーは驚いた。 小田切「・・・失礼、ジョニー君。とにかく2週間後までに我々は武装なども協力する。」 ジョニー「ご協力ありがとうございます。」 ジョニーは深々と頭を下げ、その場を後にした。 小田切「彼も似ているな、スコットに。」 小田切はそういい残して、自分の書斎へ行った。
期限まであと二週間・・・。奇しくもその日はクリスマスイブだった。
12月17日、期限まで1週間・・・。 午後3時。
蘭は衰弱していた。 食事はできていたものの、暖房も効いていないところで何もできない状態だった。 蘭「新・・・一。」 蘭はひたすら新一の名前を呼んでいた。 蘭「新一・・・。」 その様子をバーボンとキャンティが見張っていた。 キャンティ「なーんでこんな仕事しなきゃいけないんだろーかね。」 バーボン「仕方ねーだろう。逆らっても何処にも行く手配がねーんだ。」 キャンティ「しっかし、ビフィーターは何を考えているんだろうね。人質とはいえ、死ぬかもしれない状態にして・・・。」 そう言って、キャンティは蘭の方向に顔を向けた。 バーボン「さあ?あいつはイカれてるからな。」 バーボンは持っていたビール缶を一気に飲み干した。
阿笠亭にて。 ジョニーは新たに射撃訓練場を作り、そこで練習をしていた。防音効果により銃声はかなり響いていた。 ジョニー「......。」 ただひたすらオートマチック、ワルサーPPKSを撃っていた。(※ワルサーPPKS:八発マガジンのオートマチック銃。『世紀末の魔術師』でスコーピオンこと浦思
青蘭が使用していた銃である) 見事に的のど真ん中に当たっていた。 そこに探がやって来た。 探「・・・。集中してますね。」 ジョニー「ああ、探君か・・・。君も練習しておけば?」 探「そうですね・・・。少しやっておきましょうか・・・。」 探は棚からマグナムを取り出した。(※マグナム:6発搭載の銃。『ルパン三世』にて次元
大介が使っていた銃) 防音用のヘッドホンを装着し、練習を始めた。
一方、リビングでは新一・平次・快斗が談話をしていた。 平次・快斗・探の3人は事件の翌日に工藤亭に駆けつけていた。もちろん女性陣も一緒に・・・ 平次「とにかく今は戦力増強せなあかん。」 快斗「そうだな・・・とは言ってもできるだけ犯人は傷つけずに逮捕するんだろ?新一。」 新一「ああ、だが蘭に何かしたら・・・。」 新一の周りにはとてつもなくどす黒いオーラが放っていた。その光景に2人は固まってしまった。 平次「それはまあおいといて・・・場所は何処とかいうてなかったか?」 新一「米花町の廃工場とだけ。といってもここら辺じゃ3個もあるんだ。」 快斗「一斉に捜索してやりたいが、蘭ちゃんの体力を考えると・・・。」 新一「ああ、時間がない。」 とその時、新一の携帯が鳴った。 蘭からだった。 新一「もしもし?」 ビフィーター『廃工場の捜索は済んだかね?』 間違いない。あの男だった。新一は2人に軽く頷いた。 ビフィーター『あまり探されてもいけないと思ったんでヒントをやろう。その工場は『鉄の輪のすぐ近く、3分の2、13分の1工場』にある。探偵さんなら楽勝だろうな・・・。』 新一「おい!蘭は無事なんだろうな!?」 ビフィーター『心配するな。ちゃんと生かしてやっているよ。まあそちらのやり方によっちゃ気が変わるかもな。せいぜい足掻くんだな。』 新一「待て!!おい、コラ!!」 ブツッ!!! また切られてしまった。まだ蘭は死んではいない。だが一刻を争う状態なのは分かる。 ここ一週間は最高気温が12度程度で終いには少々雪まで降る始末。この状況下で何も与えられなかったら餓死は必至だ。 快斗「どこか言ってたか?」 新一「ああ、『鉄の輪のすぐ近く』とだけ。」 平次「なんのこっちゃね!」 三人は考え込んだ。とそこにベルが鳴った。 二階から志保が降りてきてドアを開けた。ちなみに阿笠博士は地下室で発明品の製作に当たっていた。 園子「ヤッホー。志保さん、お久しぶり!」 志保「園子さん、でしたっけ?そちらの方は?」 志保はその子の隣にいた少し色黒い青年を指差した。 園子「この人は京極真さん。まあ話は中でしましょう。」 そう言って園子たちは家の中へ・・・ 園子「あっ、新一君。服部君に・・・えっと黒羽君まで。」 平次「おっ、京極の兄ちゃんやないか!久しぶりやなー。」 真「お久しぶりです、皆さん。」 真は一昨日まで、チベットにて修行をしていた。蘭の誘拐事件については既に園子から聞いていた。話しているときに園子が泣いてしまい、少し反省していた。 志保「京極真さん、ですか?」 真「はい。初めまして、えーっと・・・。」 志保「私、宮野 志保っていいます。」 真「初めまして、志保さん。」 真は志保に一礼した。今時あまりいない好青年だ。 志保「ところで園子さん、今隣に和葉さんと青子さんがいらっしゃいますが・・・」 園子「ホント!?志保さんも一緒に行きましょう。」 と言って半ば強引に志保を連れ出した。 快斗「真さん、今回の事件については・・・」 真「既に園子さんから聞いております。」 真は今さっき起きた事を新一から聞いた。
同じ頃、工藤亭は・・・ 園子「お久しぶりー!和葉ちゃん、青子ちゃん。」 和葉「あっ、園子ちゃんやん!久しぶりやなー。」 園子「?青子ちゃん、その人は?」 青子「彼女は小泉紅子ちゃん。占いとかできるんだって!!」 紅子「初めまして、小泉紅子です。」 園子「こちらこそ。」 園子は志保と紅子の顔を見た。同じ声、同じ雰囲気、年や髪の色が違っても瓜二つである。 園子「(世の中って狭いもんねー)」 そう心の中で呟く園子であった。 ちなみに「蘭がいないのに随分のん気な空気だな」と思われた方もいるだろうが、これは彼女たちなりのそれぞれの励ましなので悪しからず。
場面は戻って阿笠亭・・・。 真が来て少ししてジョニーと探、さらに阿笠博士もリビングにやって来た。 阿笠「おお、全員そろったわけじゃな。」 ジョニー「そうみたいですね。」 ジョニーと真は軽く自己紹介をし、すぐに新一達と談話を始めた。 新一「問題はこの2つの分数だな・・・。」 平次「うーん、なんのこっちゃね。ほんまに」 探「鉄の輪って言うのも気になりますね・・・」 ジョニー「うーむ。」 やはり東西・さらには海外から来た名探偵と敏腕刑事でも解けなかった。 すると真が口を開いた。 真「あのー、『鉄の輪』って東都環状線のことじゃないですか?」 快斗「・・・そうだ!!でも分数の意味は?」 一同「うーん。」 全員がうなだれていた。と、今度は博士が口を開いた。 阿笠「分数を50音で考えてみるのはどうじゃ?」 新一「いや、それじゃ13分の1はないぜ?」 ジョニー「もしかして濁点がつく奴を別に考えてやってみたら・・・。」 ジョニーの言うとおり、分数を50+5音で考えてみた。 分母の方が大きいのでこれは横の行(あかさたな・・・)になる。反対に分子は縦の段(aiueo)になった。 3分の2は3行目の2段目、つまりサ行のイ段なので『シ』。 13分の1は13行目の1段目、つまりダ行のア段なので『ダ』。つなげると「シダ工場」になった。 新一「シダ工場・・・。そうだ!!!最近志田工場ってのがつぶれたって聞いたけどそこにいたのか・・・。」 平次「それってどこなん?」 新一「・・・事務所の近くだ。」 探「なるほど、どおりで手の込んだものが何回も起きるわけですよ。」 快斗「うっし!!そうと決まれば・・・」 ジョニー「待て待て、まだ期限まで1週間あるんだ。それに京極さんの武器も作らなくちゃ。」 阿笠「任せておけ。わしにとっちゃ朝飯前じゃわい。」 博士は手を握って胸に当てた。 新一「とりあえず今日は寝よう。」 気がついたら7時を回っていた。全員工藤亭にて夕食を取り、就寝した。ちなみに平次・和葉、快斗・青子、探・紅子、そして志保・ジョニーである。 ジョニーは1人起きて電話をかけた。 ジョニー「・・・目暮警部ですか?ジョニーです。・・・実は・・・。」 ジョニーは警察に電話をかけていた。いったいなにをするのだろうか?
第9話に続く
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