レジスタ!



By 泉智様



(16)



2月下旬。

東アジアのリーグ覇者が集う大会に参加したビッグ大阪は好成績を収めた。
大会中、昨シーズンの疲れを見せずに活躍した新一と平次は、他のメンバーより一足早く帰国。学生生活最後となる卒業式に出席した。

卒業式代表の答辞は、転校以来ずっと主席をキープしてきた新一ではなく、2学期末と学年末で新一と共に主席を取った平次が務め、和葉と静華の感涙を誘った。そして新一の婚約者として優作・有希子と共に参列した蘭も、色々あった1年間を頑張りぬいた新一の姿に感涙の涙を浮かべたのであった。

「服部先輩、工藤先輩!ボタンください!」
「服部君、工藤君!一緒に写真撮ろう!」
「服部先輩、工藤先輩!握手してください!」
「服部先輩、工藤先輩!これ、受け取ってください!」

群がる後輩や卒業生に囲まれて写真・握手・花束・プレゼント攻め、あるいはボタン攻勢にあう新一と平次を、蘭と和葉、そして工藤夫妻と静華はそれぞれの思いを抱えて見つめていた。

「はあ〜っ。平次ときたら、最後の最後までもててんなぁ〜。」
「そうだね〜。新一も大変そう。無事出てこれるかなぁ?」

彼が戻るのを待つ二人は、婚約者の立場としては実にびみょ〜な気持ちを抱えつつ、蕾がまだ固い桜の木の下に立っていた。

「かあ〜っ、死ぬかと思ったわ。」
「なんなんだよ、あの人だかりは。」

ほうほうの体といったう様子で彼が出てきたのは、蘭と和葉が二人で話し始めてからゆうに時計の針が半分は回ったころだった。しかし、抜け出すのに苦心惨憺した二人であったが、身に纏っていた学ランにはいささかの乱れもなかった。

「お疲れ様、新一。」
「おう。・・上着くれるか?」
「上着って・・これ?」
「ああ、それ。」

卒業式が始まる前に蘭に一言頼み事をしておいた新一は学ランを脱ぐと、式典の最中蘭がコートのようにして持っていた上着を学ランと引き換えに受け取ってサッと身に着けると、上着のポケットに入れておいたネクタイを締め、襟元を直した。

「新一。コレ、どうするの?」
「ああ、それは・・。」

受け取った学ランを受け取ったなりのままで持って新一の様子に見惚れていた蘭は、身支度を終えた新一が学ランを手に取って自分の肩に掛けるのを、新一が『よし』と学ラン姿の蘭に満足そうに呟くまで、別世界の出来事のように受け止めていた。

「よ、よしって///どうして私に学ランを着せるのよ。」
「どうしてって・・ソレに付いてるボタンから全部、お前のモンだから。」
「えっ///。」
「帝丹だとブレザーだから、また違うジンクスがあるんだろうけど。此処(改方)は学ランだからな。ってえことは、ジンクスの対象はボタン。特に制服の第2ボタンなんだろ?」
「う、うん///そうだけど・・・。」
「心臓の上にあるソレと着てる男の心(ハート)を掛けて2つ目ってことなんだろ?」
「う、うん///。」
「ってことは、制服全部ならその男丸ごとってことになるよな。だから、ボタンもひっくるめて全部お前にやるのが、この学ランの一番正しい行き先ってことになるだろ?」
「///!ま、丸ごとって・・新一、アンタねえ///。」
「流石にズボンはまだこの場では脱げないからなぁ。これは後でな。」
「新一///!」

1年間の遠恋の想いも含めて、身も心も全部蘭にのみ捧げる

茶化した言葉の裏に有る新一の真意が分かった蘭は、耳まで朱に染めつつ、新一に勧められるままに学ランに袖を通して、新一に抱きしめられているような心地よさを味わった。



  ☆☆☆



「お前、どっち向いとんねん。」
「キャッ!」

そんな新一と蘭の様子をほほえましそうに見ていた和葉は、不機嫌そうな声と同時に頭に振ってきた何かに不意を突かれ、叫び声を上げた。

「あら、平次。あないに仰山の女の子に囲まれとったのに、大事なモンは守りきって出て来たんやなあ。流石、ウチとあの人の子ォや。」
「うっさいなぁ、オバハン。黙っとき。」

和葉の頭上を襲撃したのは、平次のいでたちを頭のてっぺんから足のつま先まで確かめてから意味深な発言をした母を睨みつけた平次が、大急ぎで脱いで、新一と蘭を和葉の視界から消すために被せた学ランだった。

「平次。それに、おば・・お義母ちゃん。」
「和葉、オカンの言うことなんか気にしいなや。それより、ソレは今からお前のモンや。」

平次の香りに頬を染めつつ被された学ランを取った和葉は、所在なさげにソレを抱えて持って、すかさず平次によって肩に掛けなおされた。

「平次///。」

自分のナリに慌てて学ランを確かめてみると、ボタンはいずれも有るべき場所に引っ張られた様子もなく付いていて。平次の意図も新一のソレと同じだと瞬時に悟った和葉は、蘭に負けず劣らずなほどに全身を赤く染めた。

「何ボーッと突っ立ってんねん。行くで、和葉。“オカン(の墓前)に無事卒業したって報告に行く”言うてたやろ。」

そんな和葉の様子に自分の意図が伝わったと満足した平次は、満足そうな母の視線から逃れるようにして声を上げると、サッサと校門に足を向けた。

「あ、ウン。」
「オカン、俺らは墓参りしてから帰るよって、オヤジとおやっさんにそう言うといてや。」
「ハイハイ。二人とも気ぃ付けてな。」

学ランを和葉に渡してしまったことで上半身シャツ一枚となった平次に掛けるブルゾンを、こうなると予想していた静華から受け取った和葉は、慌てて平次の後を追った。

「平次、待ってえな。もう!・・ホンマ、足早いねんから。」

ようやく追いついた和葉からさも当然そうにブルゾンを受け取って、さくさくと歩く平次の精悍な横顔を見ながら、和葉はまだ後方に居るであろう蘭たちを気にしていた。

「・・なあ、工藤君と蘭ちゃんに挨拶せえへんでも良かったん?」
「構へん。工藤とはもう話しついとるしな。この後すぐ東都に帰らなアカン言うてたから、長々立ち話しとったら、かえって迷惑になってまうわ。」
「もう。」

平次と和葉がそう話しながら校門を後にしたのに遅れて新一も、静華と挨拶を交わした後、蘭・両親と1年間世話になった学び舎を後にした。



  ☆☆☆



「新ちゃん、1年間お疲れ様。立派だったわよ〜。」

新一が東アジアの強豪と戦っている間に、新居には家具が搬入され、寮は引き払われていた。
2月に入る頃には自由登校になっていた蘭は、優作・有希子と荷物の整理と新居の手入れをしつつ、大阪で生活を始めていた。そして卒業式に間に合うように帰国した新一は、映画の関係で大阪の新居に滞在中の両親を交え、新しい生活を始めたのであった。

そして迎えた新一の卒業式。
その翌日には蘭の卒業式が行われるため、卒業式を終えるとすぐ東都に向かう必要があり。優作がレンタルした車で新一たちは移動していた。

「悪い、抜けるのに時間掛かっちまって。まさか今更、ボタン目当てに取り囲まれるとは思わなかったからよぉ〜。飛行機の時間、大丈夫か?」

平次とは異なり、公に婚約発表をした自分が沢山の女生徒に取り囲まれるのは想定外だった新一は、優作の運転する車の後部座席で疲労困憊といった風体でネクタイを緩めていた。

「大丈夫よ、この程度の遅れは想定済みだったから。それにしても甘いわねぇ、新ちゃんv。女の子たちにとって“これはこれ、それはそれ”なのよv。それにしても・・蘭ちゃん、ちょっと貸してくれる?・・ふふ〜ん。流石は、私の息子ねv。ちゃんとボタンを全部死守したのねぇ。よしよし、合格v。」
「母さん。納得したなら、返せよな#。それはもう、蘭のモンなんだかんな。」
「はいはい、分かってるわよ。・・・それにしてもあの場で学ラン着せて、しかもあ〜んな発言しちゃってぇ。新一もオトコねぇ。優作そっくりv。」

有希子の発言に取り繕うように咳払いをしつつ運転する父・優作の狼狽振りに、無事に空港につけるか心配になりつつ、にやけた目の有希子から学ランを受け取った新一は、頬を染めた蘭にそれを渡すと、拗ねた口調で切りかえした。

「るせえ#。蘭を舐めるように見ている視線が沢山あったんだ。虫除けだよ、虫除け。」
「あらァv。あのアッツイ視線は、てっきり高校生や父兄の中に居る熱烈な私のファンからのモノって思ってたのにィ。違うのォ?」
「母さん(汗)。全てが違うとは言わねえが、普通に考えれば、蘭や遠山さん目当ての視線だって分かりそうなモンだろうが#。」
「あらぁ、つまんないの。・・でも、ずいぶんたくさんのチャレンジャーが居るのねえ。この分だと、結婚してからも暫くは虫除けの苦労が続きそうね。」
「全くだ#。蘭は変装してねえ母さんたちと一緒に居て、婚約指輪とオレとお揃いの(フサエ阿笠ブランド)指輪を嵌めてんだ。“オレの婚約者”なんだって一目で分かりそうなモンだろうに#。それに東アジア大会前の父さんの映画の製作発表パーティーに出席して蘭のお披露目をして。それが居合わせていたワイドショー関係者によってOAされたんだ。それでも言い寄るヤツは、余程のバカか間抜けか世間知らずってことだろ。・・にしてもなあ〜。はあ〜っ。何か手を打たねえとな。」
「そうね。それはおいおい考えましょう。それはそうと、服部君のところはどうなってるの?」
「あそこも婚約してるよ。けど、ウチと違ってまだ公にはしてねえんだ。くっついたって噂は流れたんだけど、クラスや学年が違うヤツは噂を信じたくねえのか、遠山さんはまだフリーだと思い込んで、式の後、告白しようと狙ってたんだよ。」
「あらあら。それは大変ね。」
「でも・・和葉ちゃん、誰にも呼び出されてなかったみたいだけど。」
「同じクラスの連中は二人の進展を感づいてたかんな。さり気にガードして、服部のお母さんに無事に渡したんだよ。」
「成程ね。新ちゃんと服部君のクラスメートが皆、園子ちゃん級の気遣いをしたってことね。」
「園子級って・・。」

有希子の喩えがピッタリというべきかズレているというべきか。
言い返す気力をなくした新一は、シートに深く腰掛けて蘭から渡されたペットボトル飲料に軽く口をつけると、空港到着まで軽く仮眠に入った。

「新ちゃん、相当疲れてるみたいね。ユース代表に東アジア大会、結婚式の準備と休む間もなかったから。」
「そうですね。」

新一の膝に学ランを掛けた蘭は、安心しきったように目を閉じる新一が、無意識にシートに掛けなおした自分の手を取ったことに気づいて、そっと苦笑したのであった。









「おはよう、新一。」
「おはよう、蘭。今日は早いな。」
「当たり前でしょう。皆との約束が有るんだから・・って・・んもう、新一!昨日あんなに念を押したのに、まだそんな格好なの?!」

新一の卒業式後、新一と東都に戻った蘭は結婚式まで自宅で過ごすことにし、朝、新一を迎えに工藤邸を訪れたのであった。
大阪では事実上の新婚生活に入っているせいか(米花の)工藤邸の合鍵も受け取っている蘭は、着替えは済んでいるもの出かける準備は出来ていない新一を見て夫婦喧嘩?!を繰り広げた。

「だってよぉ〜。オレはもう父兄席の人間だろうが。3年の教室に行くのはマズイんじゃねえか?園子の呼び出しってだけでも胡散臭いのに。勘弁してくれよ。」
「今更ぐだぐだ言わないの。皆が待ってるんだから、早く仕度して!・・んもう!ネクタイ曲がってる!シャキッとしなさいっ!」
「ぐえっ?!・・ら、蘭。苦しいって!分かった、分かった。ちゃんとするから。」

本来は“新婚”なのに既に“熟年夫婦の貫禄十分”といった新一と蘭の“尻に敷きぶり敷かれぶり”を、リビングのソファで寛ぐ優作は新聞の影から、朝の片づけを済ませた有希子はダイニングから窺いながら、視線を交わし、苦笑したのであった。

「じゃ、お義父さま、お義母さま、行ってきます。」
「気をつけてな、蘭君。時間になったら、有希子と毛利君たちと一緒に行くからね。」
「はい。」
「朝早くから新ちゃんが世話かけちゃってゴメンね、蘭ちゃん。この子ったら、蘭ちゃんが居ないとホンット!だめなんだから。これからもよろしく頼むわね。」
「はい///。」
「・・・。父さん、母さん。行ってくる。」
「父兄席で待ってるよ。園子君たちによろしくな。」
「そうね。早く行きなさい、新一。時間が押してるんでしょ?・・・それとも、私たちが一緒でないと不安で仕方ないとか?」
「ばーろっ!オレはいくつだっつーの#!幼稚園児じゃねえんだからちゃんと行けるよ!」
「ハイハイ。じゃあまた後でね、新ちゃんv。蘭ちゃん、ヨロシクね〜。行ってらっしゃいv。」

今更のようにガキ扱いされてフテる新一を連れて、蘭は最後の通学路を昔のように新一と並んで歩いた。

「・・・これで最後かぁ〜。なんだかあっという間だったなぁ。」
「・・だな。」
「でも・・最後の日も、新一と一緒にこの道を歩けて良かったv。服が違うのはちょっと寂しいけど・・。」
「蘭。」

移籍に伴い転校し、つい先日卒業式を終えた新一の姿を目の前にした蘭は。
婚約し、これからも一緒に居られる仲となった新一が、もう帝丹の生徒ではなく、同じ服を着て卒業式に向えるわけではないことに、一抹の寂しさを感じていた。

「・・・ゴメンな。移籍しなくてもポジション取れてたら、お前に寂しい思いをさせずに済んだろうに・・。」
「えっ?!違うよ、そんな意味で言ったんじゃないの!私はただ・・。」
「分かってる。・・・移籍話が出たからこそ、告白する勇気がでたし。・・お前が見ててくれる、待っててくれてるって思えたから、今まで以上に仕事を頑張れたし。思ってた以上の結果を出せて、結婚できるまでになったんだしな。・・・もし移籍しないでいたら、ベンチ要員のままで、告白なんて出来てなくて。学校を卒業したら、こうして当然のように隣を歩ける仲になれてたかなんて・・分かんねーしな。」
「うん・・・。」
「制服じゃなくてスーツだけどさ。・・でも、今、こうして・・いや、これからもお前の隣を歩けること。・・・オレは、スッゲー嬉しいと思ってる。」
「うん・・・。」
「ちゃんと見てるから。・・今日は、オレが見守ってるから。堂々と卒業証書を受け取って来いよな。」
「うん///・・・。」
「オイオイ、今から泣いてどうすんだよ。」
「だって・・・。」
「・・ったく、しょうがねえな。」
「///!新一。」
「学校に着くまでに顔をなおせよ。式の前からお前が泣いたって園子にバレたら最後、大変なことになっからな。」
「(プッ)・・そうだね///。」

家を出たときは繋がれてた手が、涙ぐんだ蘭を慰めるように優しく頭に触れ、そのまま泣き顔を隠すように抱き込んで。
肩に掛かる幸せな重みと温もりに互いに浸りながら、高校までの長くない道のりを、二人は歩いたのであった。



  ☆☆☆



「おおっ、来たぞ!」
「久しぶりっ、工藤!」
「きゃ〜っv、工藤君だわ〜。久しぶり〜っv。」

正門を潜った途端、其処には旧2−Bの面々を筆頭に全校生徒が待ち受けており。

「Welcome、新一君。久しぶり。今日は来てくれてありがとv。」

お祭り騒ぎのような大歓声の中、仲間の間をかいくぐって登場した園子によって、人を通すために道が開けられ。新一と蘭は蘭のクラス:3―Bの教室に入ったのであった。
先導役の園子に壇上に用意された椅子を勧められた新一と蘭は“この状況は・・さらし者か突き上げか?”という嫌な有難くない予感に顔を見合わせると、諦めたようにため息一つ吐いて、勧められるままに席に着いた。

「園子・・・。この席の配置はどういうことだ?」

蘭の卒業式だというのにテンションの低い新一の声が教室に響き渡り。新一の心情を察した蘭は、苦笑せざるを得なかった。
というのも、机が後ろに固められ。椅子のみが壇上の二人を取り囲むように数列の環状になって置かれていたからである。

「そりゃあ、決まってるじゃない。新一君は我ら帝丹○○回卒業生きっての出世頭。しかも私の大親友の蘭を掻っ攫い、数日後には結婚するんだもん。・・・で。皆がこの1年間の遠恋のアレコレを聞きたがってるから、二人の結婚前に“卒業記念・マスコミでは訊けない大質問大会”をやろう!ってことになったのよ〜。さあ皆。入って入って〜。」
「はあっ?!」
「ええっ///?!」

司会兼インタビュアーを買って出ているらしい園子の手には、いつの間にか、本来なら放送室にあるはずのマイクが握られていて。このインタビューが校内放送で全フロアに生放送されることが、容易に想像できた。

「(計画的すぎねえか?、オイ#。)」

だが、逃亡しようにも周りを固められ、逃げ場がない二人は、文字通りのさらし者状態の中で、マスコミが居合わせたら耳ダンボなノリの突撃インタビューを受けることになったのであった。

やむなく園子に対し(蘭を困らせ泣かせてはいけないだろうと小声で脅して)“質問内容如何では拒否権行使OK”を強引に取り付けた新一は、腹を括ると、可能な限り、きちんと一つ一つの質問に答えていった。

当初は「いつ付き合い始めたか」とか「キスはしたのか」とか「遠恋が実った理由は何だと思うか」といった、当たり障りのないものから始まったが。
次第に「ノワールの黒澤の怪我で入院してたとき、付き添った蘭と病室でアヤシイ行いをしてなかったか」とか「一線を越えたのか?超えたなら、それはいつか?」という男子が好きそうな下世話なものが入るようになり。

「ちょっと、あんたら無粋!」
「それしか考えることないの?!」
「ホント。こんな日にまでそんなオトコ部屋の話を出さないでよね!」
「じ、冗談だって。」
「そうそう、こういう質問も礼儀のうちと思ってなあ。マスコミじゃ言えねーじゃん。」
「どこが礼儀よ!場と工藤君の立場をわきまえなさいよね!」

すかさず新一が(蘭の気持ちを慮って)拒否権行使で強行突破する前に、列席した女子連中の鋭い突っ込み・野次で場内が騒然とし、さりげなくセクハラ質問がスルーされる一幕もあった。
ともあれ、そんな(蘭の立場を慮る)女生徒たちのガードもあってか、「因縁の相手となったノワールの選手たちや元オーナーについてどう思っているか」とか「新婚旅行はどこに行きたいか」とか「子どもは何人ぐらいを考えてるか」とか、セクハラによる紛糾以降はちゃんと蘭の目の前でも答えられる質問がなされ。

新一と蘭は、時折頬を染めつつも、互いに顔を見合わせながら、なしうる限りで回答し。仲むつまじいところをギャラリーに見せ付けたのであった。



  ☆☆☆



「さあ〜て、お前ら。お楽しみのところ悪いが、そろそろ時間だぞ。工藤と毛利もご苦労だったな。」

開始から1時間ほどして卒業式のため体育館に移動の時間となり。
職員室で楽しんでいた?!教師たちが3年生のフロアに上がってきて。
校内放送で全校生徒を耳ダンボにしていたインタビューは終焉したのであった。

「やれやれ、やっと終わったか。・・じゃ、蘭。父兄席に居るから、また後でな。」
「ウン。」

いつもの習慣で蘭の頬にキスを落とした新一が教室を去った後。その劇的瞬間を捉えた生徒たちが大歓声を上げたことを新一は・・一応・・耳にし。照れたように頬を掻いていた。

「アツイわね〜、流石新婚!」
「ホント、ホント。妬けちゃうな〜。」

一方の蘭はクラスメートにからかわれ。頬を染めつつもまんざらでもない様子だったが。

インタビューの最中も窓の外を見て上の空気味だった志保は、輪の中心となって幸せそうな蘭を遠巻きにみつつ、寂しそうに微笑んだ。

「(羨ましいわね・・・。私は・・仮に試験に合格っても、ああして一緒に居られるか分からないもの・・。)」

隆祐に海外移籍の話があることを、母と(ビッグが東アジアの試合の最中で)帰省中の姉が、受験中の自分を慮って小声で話しているのを、志保はたまたま立ち聞きしてしまったのである。

「(どうしてこのタイミングなの?どうして隆祐は私には何も言ってくれないの?どうして?)」

机に向っても集中できずに苦悶する志保の思いは、今この時も顔に出ていて。

「(・・志保?)」

輪の中心に居る蘭は、インタビューを受けながらも気になっていた志保の様子に、心を痛めるのであった。





「お疲れ様、新ちゃん。し〜っかり、聞かせてもらったわよv。ふふっ。敷地内にワイドショー関係者が居なくて、ホント、良かったわねv。」
「・・・・・やっぱ、体育館でもOAされてたのかよ。」

父兄席に着いた新一を出迎えたのは、在校生と父兄の好奇心満面の視線で。
ため息一つでゲンナリ感を吐き出した新一は、携帯や父兄がそれぞれに持つカメラで撮影されているのを自覚しつつ、新一は小五郎と英理に会釈すると、父兄席の最前列に陣取った両親らの間に空けられていた席に座ったのであった。

「それにしても。何だよ、母さん。その袋は。」
「ああ、これ?・・フフッ、ちょっとね。」
「・・・。」

園子の呼び出しといい、母のイミシンな笑みといい。
今日はろくでもないことがまだ起きそうだとイヤな予感にかられながら、新一は式典の進行を見守った。





「在校生、送辞。2年○組、○○○○。」
「ハイッ。」

式典前のOAのノリを引きずったまま行くのかと懸念されたが、それはそれ。式典は、厳かに進められていった。

「卒業生、答辞。3年B組、阿笠志保。」
「ハイッ。」

志保の名が呼ばれ。B組の列の中から、志保が壇上へと足を進める姿を有希子は感慨深げに見ていた。

「・・流石、志保ちゃんね。でも・・移籍してなかったら、新ちゃんがああしてたかもしれないわね。」

有希子の目には、久しく志保と主席を争っていた新一の姿が、其処に重なって見えているようであった。

「・・どうだか。でも、確かに、流石だよな。」
「そうね。」

壇上に立った志保は、校長に一礼すると懐から答辞を取り出し。広げようとして・・。


「その前に、皆さんに提案したいことがあります。」

広げようとした答辞をそのままに壇上のマイクを取ると、校長ほか学校関係者に目配せし。
会場に向って振り返ると、動議発動ともいうべき言葉をつむぎだした。

「皆さん。本日は私たち第□○回卒業生のためにお集まりくださり、ありがとうございます。本日、私たちはこの学び舎を巣立っていくわけですが。皆様にお礼のご挨拶をする前に、今回、卒業生一同の総意をもって決議し、先生方、および在校生の皆さん方にも了承していただいた事項をこの場で発表させていただきたいと思います。」

この志保の台詞に、保護者席からざわめきが起こった。

「先日行なわれた第○○回天皇杯においてMVP。そして同シーズンのJ1で新人王を獲得した工藤新一選手は、高校2年の3学期まで、われわれの同級生でした。」

そして志保がここまで言った時、新一・蘭の両親と園子を始めとする旧2−Bの面々の顔に笑みが広がったが、蘭も新一も気付かなかった。

「彼は、移籍により転校するまで、常に私と主席争いを繰り広げてきた良き好敵手であり。同時に、幼稚園からこの帝丹学園に通う、私たちの素晴らしい友人でもありました。大阪に移ることとなり、我々の同級生であり続けることは不可能となりましたが、彼は文武両道が校風の大阪の高校に転校してからも学業に励み。主席を維持し続けると同時に、プロサッカー選手として、素晴らしい結果を出しました。その結果は、皆様もご存知のことと思います。・・・今回、卒業を迎えるに当たり、彼が2年次にクラスメートだったメンバー全員から、“長年この学び舎で共に過ごした、この素晴らしい友人と共に、同窓生として巣立ちたい。”という要望が、職員会と生徒会に提出されました。」
「「(えっ?!)」」
「要望が提出されたのは、3学期に入ってすぐのことであり、急な事もあって、当初、職員会はこの申し出に難色を示しました。しかし、彼のその当時のクラスメートは諦めませんでした。すでに学内選考あるいは推薦で進学を決めたメンバーが中心となり、僅か半月もしないうちに、本日卒業する3年次だけでなく、在校生・OB会に連絡。在校生全員の了解、及び、全国各地に居るOBより、約1千通の同意のハガキを取り付け、職員会に提出。急遽開かれた理事会において、満場一致で、彼を帝丹学園“特別名誉卒業生”として遇し、本日、共に卒業生として表彰する、という決定を勝ち取ったのです!」

ここで、卒業生・在校生だけでなく、保護者席からも盛大な拍手が沸き起こった。

「「/////!」」

此処まで言って口調を改め壇上から降りてきた志保は、B組の列で呆気に取られて立っていた蘭の手を取ると、真っ直ぐ新一の前に向ったのであった。

「・・・新一君。そういう理由で、私たちは、貴方を招待したの。・・・受けてくれるわね?」
「ちょ、志保。一体・・・。」

焦る蘭を、教室での憂い顔から一転、柔らかな笑みで見つめた志保は、軽く肩をすくめた。

「婚約報道で驚かされたから、二人にサプライズを贈りたいって皆が言ったのよ。だから、貴方達のご両親には話して、協力してもらったの。・・蘭、新一君。驚かせてごめんなさいね。おば様にお願いして、貴方の(帝丹の)制服を持ってきてもらったの。急な事で悪いけど、貴方に“うちの卒業生として”挨拶して欲しいから、着替えてもらえるかしら?・・というわけだから、蘭。新一君をお願いして良い?部屋はちゃんと先生方にお願いして、用意してもらってるから。」
「「志保。」」
「用意が出来たら、B組の席の後ろに立っていて。私はこれから答辞を読まなくちゃならないから。・・じゃあ、宜しくね。」」

そう言って有希子に目配せした志保は、問答無用!といわんばかりの声色で簡単にあらましを伝えると、サッサと壇上に戻ってしまったのであった。

「・・・参ったな。蘭をダシに使いやがって。拒否権ねーじゃねーか。」

万事心得ていた有希子から蘭に渡された袋には、確かに新一の“帝丹の”制服が入っていて。“蘭から渡されたら、新一君は拒めないでしょう?”という志保・園子を始めとする“旧2−B”の面々の声が聞こえる気がした。

「折角“改方”の答辞を服部に任せて楽させてもらったのになあ〜。・・・でもまあこうなったら仕方ねーか。・・・行くぞ、蘭。」
「は、はいっ。」

新一はブツブツ零しつつも素直に席を立って、案内しようと待ち構えている先生の居る方に向かって、歩を進めた。

「ただ今の提案を、工藤君は“快く”受けてくれました。」

そんな新一の様子を壇上で確認した志保は満足そうに微笑むと、再びマイクを手にした。そして志保が発した内容に、再び拍手が沸きあがった。

「本日の招待に当たり、彼に気持ちも“同窓生”に帰ってもらうために、ご家族のご協力を仰ぎ、彼の、我が校の制服を用意していただきました。私の答辞の後、彼の“特別名誉卒業生”証書授与と彼より挨拶をいただくことになっています。・・・本日ご臨席の保護者の皆様、在校生、そして卒業生の皆様。これから私が答辞を読み上げますが、その後、彼の準備が出来るまで、お待ち願えますようお願い申し上げます。」

ここで一旦言葉を切って一礼した志保に、体育館中から拍手が起こった。

「(とんだ“前座”だけど。・・・これで良いのよね?園子。)」

頭を上げた志保は、ニッと笑う園子に軽く微笑みかけてから改めて壇上に向きなおると、今度こそ“答辞”を広げ、凛とした声で読み始めたのであった。

だが。その内容は申し分なかったのだが、新一を“嵌める”為のスピーチの方がもっと凄かったために、答辞が読み上げられている間、場内はどこか引き締まった雰囲気にはならなかったのである。



  ☆☆☆



「・・・まさか、お前までが“騙される側”だったなんてな。」
「うん・・・。ゴメンね。」
「バーロ、怒っちゃいねーよ。」

新一の着替えを手伝う為・・否、逃亡防止のために付き添いを任ぜられた蘭は、扉の向こうからかすかに聞こえる志保の答辞を必死に聞いていた。

「発起人は志保や園子だけってんじゃねえみてーだし。それに・・・忙しい仲、皆が望んで走り回ってくれたとなれば、断れねーだろ?」
「新一。」
「こうなるとは予想してなかったから、何言えばいいか分かんねえけど。まあ、今回の“表彰”に至る経緯を聞いて感じた事を話せば良いんだろうし。・・・心配いらねーよ、蘭。」

そう言いながら、慣れた手つきで帝丹の制服特有のネクタイを締めた新一は、着ていたスーツをきちんとしまうと、手を差し出した。

「お待たせ。・・・行こうか。」
「うんっv。」

新一の顔にはいつも通りの不敵な笑みがあって。
朝、道すがらに“同じ制服で卒業式を迎えたかった”という願望が叶った形となった蘭は、満面の笑みを浮かべると、新一に手を取られ、体育館内に戻ったのであった。



  ☆☆☆



二人がB組の席の後ろに着いた時、志保の“答辞”が終わった。答辞の原稿を校長に渡した志保は、新一の姿を確認し、満足げに微笑むと、再びマイクを手にとって、進行役の教頭先生の台詞を奪った。

「それでは・・お手元のプログラムには含まれて居ませんでしたが、ここで“帝丹高校名誉卒業生”第一号に認定されました、我らが同窓生・工藤新一君より、ご挨拶を頂戴したいと思います。・・・工藤君、よろしくお願いします。」
「ハイッ。」

志保の声掛けに場に相応しい返礼をした新一は、蘭を一瞥すると壇上に上った。

「“帝丹高校、名誉卒業生認定証書。第一号。工藤新一殿。貴方は・・・・・此処に、貴方を名誉卒業生として認証する。平成○×年3月1日。帝丹高校校長○△×□”。」

まず、新一に授与される名誉卒業生認定証書が読み上げられ。
校長は、新一に手渡す前に卒業生・在校生・保護者に内容を示すように、威風堂々・高々と証書を掲げた。

「・・・おめでとう。これからの君の活躍に、私も、今日此処に集った皆さんも集えなかった皆さんも注目し、期待しているよ。頑張ってくれたまえ。」
「ハイッ。」

そして、マイクに拾われた校長先生の言葉と新一の返事が場内に響いて。証書が手渡された瞬間、盛大な拍手が沸き起こった。拍手が収まるのを待って校長に場を譲られ、壇上に立った新一は、列席者に向うと一礼し、挨拶を始めた。

「本日卒業される、第□○回卒業生の皆さん、そして先生方、及び在校生、ご臨席の皆様。本日は、私に“名誉卒業生”としての認定を頂き、第□○回卒業生の一員として認めてくださり、本当にありがとうございました。」

この始まりのお礼の言葉に、卒業生として各クラスに分かれた“旧2−B”の面々の中には、感無量の面持ちで涙ぐむ者も居た。意外にも、(式典前のインタビューで新一にセクハラ発言をした)男子生徒にそうした者が多く、蘭をはじめとする女子連中の驚きを誘ったのである。

「先程“卒業生答辞”を述べられた阿笠志保さんから、この表彰に至る経緯を伺ったのですが。正直に申し上げまして、私は驚くと同時に、友人達の深い友情に感動しました。・・・約1年前。私は、自分の一身上の都合で転校する事になりましたが、転校後も、彼らとの連絡が途絶える事はありませんでした。・・・皆が受験生として忙しい中、私に励ましの手紙を送ってくれたり、時には予定を合わせて試合観戦に来て大声援を送ってくれたり。・・・秋には個人的に辛い局面に立たされましたが、そんな時でも私を信じ、励ます手紙や電話をくれたり、私の・・・誰よりも大事な人を・・・悪意ある中傷から、友人達は、一丸となって守ってくれました。」
「!(新一・・・!)」
「そんな彼らの励ましが、どれほど私の支えになったか。・・・言葉に出来ないほどに、感謝しています。・・・・・私が、チームに貢献し、個人的にも結果を残せたのは、偏に、私の大事な人と、彼らのお陰といっても過言ではないと感じています。・・・今回、彼らの大半が、受験直前の忙しい時期にも拘らず、私を共に卒業する仲間としたいと、全国各地に散らばる1千人余のOBに協力を申し出て、この“証書”を用意してくれました。・・・この“証書”には、私の友人達の友情だけでなく、先生方・在校生・保護者・OBの皆様方の期待・激励も込められている、私はそう感じています。」
「(新ちゃん/////。)」
「本日、この“証書”と共に、皆様のお心を頂戴し、これからの自分への叱咤・激励として受け止め、これからも皆様のご期待にお応え出来る様、頑張って参りたいと思います。
・・・簡単ですが、これにてご挨拶の言葉に返させていただきたいと思います。本日は本当にありがとうございました!」

急なことにも係わらず堂々と素晴らしいスピーチをした新一の、静かに深々と一礼した姿に向い、場内から割れんばかりの惜しみない拍手が送られた。

「しんいち・・・。」

長く続く拍手に答えるように顔を上げた新一は、改めて壇上の校長・教頭を始めとする諸先生・理事たちに一礼すると、もう一度卒業生・在校生・父兄一同に一礼し、壇上を降りた。
感動に頬を紅潮させつつ、今まで座っていた父兄席に向かおうとしていた新一だったが、


「工藤、お前の席は此処だぞ。」
「「えっ?!」」

“旧2−B”の担任でもあり、今年の蘭の担任でもある教師が、新一に席を示した。

「お前の“席”はやっぱ、“此処”だろ?」
「「/////!」」

先生にまでそう言われ、用意されていた新一の席は“蘭の隣”だった。
事こうなるまでは、何故空いているのか不思議だったものだが。済んでみれば、皆の意図がありまくりだとよく分かって。
顔を見合わせた新一と蘭は、頬をかきつつ、うつむきつつ、甘酸っぱいこの状況を受け入れたのであった。



  ☆☆☆



「工藤〜、逃げるな!まだお前には仕事があるからな!」
「はあっ?!」

そのまま“卒業生”として在校生と父兄に見送られ、式典を後にした新一は、クラスメートに羽交い絞めにされて3−Bの教室へ連行された。

「「・・・はあっ?!」」

そして、蘭と二人、更なるサプライズに大きく口を開けることとなった。

「もうっ!何度も言わせないでよね!今回の事案を出しついでに、卒業生と在校生にアンケートをとったの。“ミスター帝丹・ミス帝丹は誰かいいか?”ってね。“ミス&ミスター”に選ばれた二人への特典は、来年の受験案内パンフに、卒業生代表として写ってもらおう!ってことになったワケ。」
「「・・で、その二人ってのが・・。」」
「だから、さっきから、あんたたち夫婦だって言ってんでしょうが。これも決定事項だから、拒否権は無いわよ?」
「うげっ!」
「新一君。拒否したら、次点の誰かが蘭と来年のパンフに載って、歴史に残っちゃうのよ〜。それでも良いの〜?」

蘭を引き合いに出す、これまでにもお馴染みの文句で。
園子のニヤケ目も同じなら、渋面の新一も同じで。

投票時点では一応“他校生”の新一への一票は無効票では?!という心中のギモンは、

“蘭の隣に新一以外の男子を立たせられるか!”

という園子の凄まじいオーラの前に、言葉になる前に吹き飛んでしまうのであった。

「・・・分かったよ。もう、煮るなり焼くなり好きにしろ!ってんだ。」
「商談成立v。・・じゃ、業者さん呼んで始めましょうかv。」

そして、既にドアの外でスタンバっていた業者が機材を片手に沢山の写真を取り。
卒業生・在校生によって作られたおびただしい数のギャラリーが、校舎のあちこち・そこかしこからこの光景に携帯カメラを向け、あるいは歓声をあげ。
学校から生徒たちがハケたのは、新一・蘭の撮影が終わって、二人に握手や花束やプレゼント攻勢を掛ける波が収束してからであった。

「ホント、してやられたな///。」
「そうね///。」

改方ならボタンだが、帝丹はブレザーなのでネクタイがジンクスの対象で。

パンフ撮影が終わった後の攻勢の波に、公衆の面前で互いのネクタイを交換しキスをするよう迫られた二人は、照れる蘭に、結婚式の予行だと割り切った新一がちょっと強引にキスをする・・という展開で、ジンクスを強力に有効にしたのであった。

「まさかこんなに慌しい式になるとは思いもよらなかったぜ。」
「ホントね。でも、ネクタイ交換が出来て嬉しかったよv。」
「それは・・(虫除けの)キスが出来て嬉しかった・・ってことか?」
「///!ばっ・・何を言ってるのよ!あんな・・大勢の人の前で///・・・恥ずかしくなっかったの?!」
「・・・そりゃあ、多少はな///。でも・・それで虫除けできるなら、それにこしたことはねえし。それに・・お前とキスできるチャンスは一つでも逃したくねえしな。」
「///!・・・・・ばか///。」





行きは違う服装で向った道を、帰りは同じ服装で歩く。

高校生活最後の日も、新一と蘭の二人が変わらず隣同士で歩く光景を、西に傾きかけた太陽が暖かく照らし出していたのであった。




to be countinued…….




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