レジスタ!



By 泉智様



(20)



グランドスラム達成のオフにアジアの強豪相手の大会出場という過密スケジュールで疲労が蓄積し、3月から開幕の新シーズンはイマイチだろうと見られていたビッグ大阪だったが。ユース昇格者や大卒の新人、外国籍選手の獲得等の補強がうまく行き。更にはスペインへの移籍が取りざたされた2年連続得点王の比護隆祐が残留を決めたため、名実ともに西の雄としてのチーム陣容を整えることに成功。開幕前の不穏な下馬評を一掃する勢いで、開幕戦から調子よく勝ち星を積み重ねていた。



一方。結婚&進学を契機に大阪に生活の場を移した蘭は、同じ学部に学内推薦で進学を決めた和葉と共に、大学生活をスタートさせた。
新一の卒業式では参列した父兄・卒業生・在校生等の目を引き。
生活の必要から買出しに出れば、新一と一緒でも振り返って見つめる男の視線が絶えず。

「(今からこんなんで、オレが留守のときはどうなることか。もし蘭に学内で虫がついたり、果てにはそんな輩がストーカー化でもしたら・・・。)」

離れていたら離れていたで心配だったのが、一緒に暮らせるようになればなったで心配の種は尽きない。
美しい花を狙う輩はどこにでも居るわけで。
今からこの調子で、傍に居て目を光らせられない「入学後」は一体どうなることかと新一は気をもんだのだが。

「大丈夫!アタシが付いてるし。工藤君はなんも心配せんでもええよ。」
「んもう。そんなに心配しなくても大丈夫よ。新一と違って私、そんなにもてないし。だいいち、既婚者に声を掛ける人なんていないわよ。」
「だといいけどよ・・・。でも、油断すんなよ。」
「工藤って意外と心配性なんやなぁ〜。ま、分からんでもないけどな。」
「るせぇ。」



蓋を開けてみれば。

結婚披露宴がTV中継されたお陰か、蘭に向けられた視線は“新一の妻”に対する野次馬根性・興味半分のモノが大半で。それに雑じってごく僅かに一部女学生らの嫉妬羨望の視線が注がれていたのだが。後者のそれも和葉のガードと蘭の人柄で、日を追うごとに薄まっていった。
新一が深く憂慮・懸念していた男子学生からの熱い視線はといえば。確かに野次馬・興味半分の中に紛れ込むようにして少なからず・・・否、結構あったのだが。

“工藤の女房にちょっかいかけたら最後、退学どころじゃ済まんらしいで”
“工藤の友達の友達の友達っちゅうやつの話やとな。工藤の女房を狙って付回しとったヤツがなぁ、ある日突然行方不明になったらしいんやと。でな。数ヵ月後、ソイツの所持品が富士の樹海で発見されたらしい、ゆうんや。その傍らにはな・・・(怪談めいて話は続く)”
“げええっ、樹海?!オレが聞いた話やと、工藤の女房を狙っとったヤツが、ある日後ろから羽交い絞めにされてどこぞの路地に連れ込まれて簀巻きにされて、どっかの海の沖合いに放られたゆう風に聞いてるで”

などという、新一が耳にしたら、

「何ばかげたことを言ってんだよ#。オレはその筋の人間かっつーの!」

と激昂することは確実の、実に穏やかじゃない、“はっきり言って刑事事件だろう、それは!”という、突っ込みどころありまくりな、出所不明の怪しすぎるネタが、入学から最初のGWまでのわずか数週間のうちに学内中の男子学生の間に流布したのであった。

男子学生の間にのみ流布した関係で、この噂が新一の元に届いたのは蘭経由であるはずは無く。和葉と同じく付属からエスカレーター進学した男子が“面白いネタあんで”と(転入生の新一よりは)長い付き合いの平次に、実に楽しそうな嬉々とした声で電話してきたことによるものだった。


「はああっ?!何だよそれ?!」
「オレに言うなや。医学部に行った堂島と工学部に行った中島と法学部に行った北浜と経済学部に行った梅田と文学部に行った千里と・・まあ、エスカレーターで進学したクラスメート連中がわざわざ、なんでか知らんけど、オレんとこに電話してきたんやからな。」
「何でお前んトコに?」
「オレもそう思たんやけどな。まあ、姉ちゃん絡みのネタで工藤をキレさせてもうたら最後、自分ではどう始末をつけたらええか分からんっちゅうことなんやろ。せやからオレをクッションにして、工藤にチクればアンパイや。自分に火の粉は飛んではけえへんゆうこっちゃろな。」
「・・・。」
「ま、そういうことやろな。でもまあ、安心し。

“オレ等はこんな胡散臭い与太話、はなっから信じとらんけど。外部から入学してきた奴等は、ワイドショーでやってる例の(烏丸)事件のことがあるやろ。工藤本人がどうこう言うんやないんやけど、『工藤家』に対しては滅茶ビビっとるみたいやで。『嫁さんに下手にチョッカイかけると、倍どころか何十倍にもお返しを喰らう』言うてな。ホンマ、笑えるで”

って言うてたんやから。な♪」

「・・・確かにオレの家は(両親の絡みで)付き合う相手が相手(警察・興信関係)だし。オレ自身だって、オメーがしょっちゅうチョッカイをかける所為で“キレキャラ”みたく見られて畏れられてるんかもしんねーけど。だからって自ら進んで刑事事件を起こすようなバカなマネはしねえぜ。」
「分かっとるって。まあ所詮、噂は噂や。出所不明で気味悪いゆうんは確かやけど、新歓の雰囲気が落ち着けば、消えてまうやろ。まぁ、有名人税とでも思て、無視しとけばええんと違うか?」
「まあ、そうかもしんねーけどよぉ・・・。」


指折り数えて報告主を列挙した平次から聞いた不穏な噂のお陰で、(噂の真偽を確かめるべく!と、生命を危機に晒す大冒険を冒してまでも)蘭にチョッカイかける愚か者は居ないことが分かって胸をなでおろしつつも、肝心のけったいな噂の元はどこか分からずじまいなうえ、大阪のクラスメートにまで何故か畏れられてると知って少なからず不愉快そうな新一の様に、平次が腹を抱えて笑うこととなったのであった。

ともあれ。当初の新一の心配は杞憂と言ってもいい位に、蘭の学生生活は平穏無事に始まり、過ぎていったのであった。



  ☆☆☆



さて。そんな風にして始まった蘭の学生生活への杞憂と顛末とに並行して、新一のサッカー人生に飛躍とも言える展開が訪れていた。

前年のシーズンでの活躍が見込まれ、4月に入ってすぐに、U−19日本代表から一気にA代表へと飛び越して召集されたのである。


【工藤選手、おめでとうございます!初のA代表、18歳10ヶ月での代表デビューですが、抱負をお願いします!】
【黒羽選手は18歳9ヶ月で工藤選手よりひと月早いデビューですね。抱負をお願いします!】



この時、同じタイミングで“双子”の片割れである横浜Fマリーンズの黒羽快斗も召集をかけられており、マスコミはにわかに盛り上がりを見せたのであった。
だが、マスコミへの会見が終わって舞台裏に下がった新一と快斗は、マスコミに姿も声も撮られないと確認できる場所まで来たところで示し合わせたようにネクタイを緩めると、一様に苦虫を噛み潰した顔になった。


「やれやれ。愛想振るのも楽じゃないねえ?」
「まあな。(この場に来ても)未だに、実力を十二分に認められて呼ばれたって気がしねえし。」
「クスッ。自信家の新一らしくない物言いだね。・・・でもまぁ、オレも“23人枠確定前の見せ球枠”で呼ばれたって思ってっけど♪」
「でも、楽しまなきゃあ損ってところか?」
「ビンゴ♪流石、新ちゃん。オレの兄貴v。以心伝心だねv。」
「ウインクを付けるな#!背筋が凍る!」
「きゃあ〜っvvv。新一お兄ちゃんったら、マジメなんだからぁ〜v。そんな短気じゃ、奥さんに逃げられちゃうわよぉ〜?」
「#るっせえっ!未だにプロポーズもできてねえヤツに言われたくねえよっ!!!」
「ギャ〜〜〜ッ、お兄ちゃんったら酷いわっ!平ちゃんにまで先越されたってコト、アタシが気にしてるって分かってるくせにっ!」
「いきなりカマ言葉でしゃべるんじゃねえっ、キモチワルイだろうが!ついでに言うなら、お兄ちゃんって連呼すんじゃねえ!オレとお前は兄弟じゃねえんだかんなっ!」
「わ〜っ、新一。冗談だって!ストップ、ストップ!」


冗談で済ませる予定だった快斗は、洒落でも蘭を絡ませたことで新一の逆鱗に触れたことをこの時激しく後悔したのであった。
そんな新一の暴走を止めたのは、蘭の電話ではなく、二人に用事があって二人の居る部屋を訪れた協会のスタッフのノックの音で。


「はい、どうぞ。」

瞬時にスイッチを切り替えて何事も無かったようにスタッフに応対する“兄貴(新一)”の豹変振りに、快斗は自分もポーカーフェースでその場をやり過ごしつつ、内心で呆れ返っていた。
スタッフが退室後にそのへんを隠さず突っ込んで、愛ある(?!)お返しを頂戴したことは言うまでもない。


ともあれ。

新一と快斗は、チームの日程を消化しつつ、A代表の最終選考試合にも出場することとなった。
ビッグ大阪も横浜Fマリーンズも共に、既に代表に複数名の選手を送り出しており。そこに更に新一と快斗が加わることで更にチームの戦力事情が厳しくなる中でのリーグ日程消化を迫られたのだが。それでもビッグクラブの強みか、上位からもれることのない位置で、確実にゲームを消化していったのであった。


「代表選考まであとひと月足らず。メンバーを決定する最終試合まであと3つってところなのにな。すんげえ今更。」
「言えてる。いかにもリーグを見てます、見てるから旬の若手を呼んだんですよ、ってポーズがミエミエだよな。」


巷ではそんな声が大声で交わされる中。新一と快斗は、代表選考試合、ベンチスタートで出場した。



【ミノール・ジャパン。ドイツへの道。代表選考試合、残り3つとなりました。3月末、アメリカでの試合で大敗を喫し、ドイツWCでの予選リーグ突破に黄信号か?!と危惧されたミノール・ジャパン。本日までに、新たに若手を招集し、黄信号を青信号に変えようという意欲を持ってこの試合に臨んでいます!】
【本日のスタメンは・・・(中略)・・・ですね。先日代表に招集されたばかりの若手、工藤と黒羽はベンチスタートですか。監督はどういうタイミングでこの二人を投入するんでしょうね。】
【そうですね。ベンチには、国内組のリーグ得点王の比護のほか、同じく得点力のあるヒデも居ます。スタメンの欧州組の高天原は此処最近ベンチを暖めることが多くなっています。同じく欧州組の一柳はベンチにも入っていません。実戦から遠ざかっている二人の先発ですが、果たして試合勘とスタミナは大丈夫なのでしょうか?!・・・さあ、キックオフです!】



「「・・・。」」


プロになる前から・・・ユースの時代から、いつもスタメンで試合開始の笛を聴き続けてきた新一と快斗は、この日初めてベンチでのスタートを迎えた。
そして、実に歯がゆい思いで試合の流れを見続けることとなった。


「(なっ?!どうしてそこで横に流すんだよ!)」
「(そのタイミングで突っ込めよ!ウラ、取れるだろうが!)」


と同時に、自分たちより代表のキャリアがあり、国内リーグで結果を出してるのに起用されない隆祐やヒデらの悔しさも実感することとなった。


【高天原、倒された!脚を抑えています!でも、ベンチのミノール監督、動きません!・・・高天原、一旦ピッチの外に出ます。】


「ラインが下がりすぎてる。あれじゃあ、相手に入ってくれと言わんばかりだ。」
「攻めも単調だし、突っ込むタイミングが一歩遅い。」
「くそっ!またゴール前でボールを奪われた!」

スタメンの多くが分類付けされている欧州組の、時差と所属チームでのプレー時間が少ないことによるスタミナ不足が早々に露呈する試合展開を、胃が痛くなるような苛立ちを抱えながら、新一たちは見つめた。・・・見つめるしか、なかった。


【日本、GK・楢原のファインセーブでまたも危機を脱しました!楢原、大きく前方にフィード、日本反撃だ!】


そのまま、GK・楢原と、国内組のDF・元宮を中心とした必死の守りでかろうじて前半をスコアレス・ドローで折り返したスタメンの面々は、ロッカールームへと下がっていった。


「「・・・。」」


それを見送った新一・快斗らベンチメンバーは、ベンチ脇で身体を動かし始めた。
ダッシュを繰り返してしっかり身体を温めた後、視線を合わせただけでパス練習の相手に互いを選んだ新一と快斗は、もし後半監督に呼ばれることがあれば、どう動いて流れを掴み、得点するかを考えながら、ボールを回しあっていた。


このまま“お飾り”で終わってたまるか!という気概をこめて。




そんな二人の様子を、TV画面越しに蘭・和葉・平次・真が新一のマンションの居間で見つめていた。


「やっとれんと思とるやろなあ〜、二人とも。」
「・・そうですね。」


イライラする展開に、馴染みのベンチメンバーが歯噛みしているのが容易に想像できて。ミノール監督の采配に今更の呆れの溜息を吐きつつ、平次と真は交代でトイレに立った。


「・・・なあ、何で工藤君や黒羽君を使わへんの?ベンチ漬けにしとくんやったら、今更のように召集する必要なんてあらへんやん#。」
「和葉。」


トイレから戻ってきた平次は、予想してたこととはいえ、戻ってくるなり涙目の和葉に詰め寄られることとなった。
んなもん、オレに言われてもなあ〜、監督の考えやし・・・と、和葉を慰めつつ頭を抱える平次だったが。後半開始後少しして、そんな前半の鬱憤を晴らすことになるのであった。




【間もなく後半のキックオフですが、日本にメンバーの交代があった模様です。前半、足を痛めた様子のあった高天原がベンチに下がり、比護が入りました。】


「おっv!」
「ホンマや!MFは?!」


【今回召集された工藤と黒羽はまだベンチの模様。ミノール監督はこの二人をどこで投入するつもりなのでしょうか?!】


「ええ〜っ?!」
「工藤も快もまだベンチやと?!」


和葉と共に、憤懣遣る方無し、といった風情でしばし試合の行方を見ていた平次だったが。後半開始後少しして、数名のベンチメンバーがアップを始めた様子が一瞬カメラに映し出されたのを見て、表情を変えた。


「和葉、姉ちゃん!工藤がアップを始めたようやで!」
「「ええっ?!」」


身体を冷やさないようウインドブレーカーを着たままの新一・快斗が、黙々と身体を温め始めたのがカメラに捕らえられたのである。


その頃ピッチでは、後半10分を経過して疲れが出てきたのか、一部の選手の足が止まり始めていた。
対して後半から入ったばかりで元気のある隆祐は前線でボールを貰おうとディフェンスに揺さぶりをかけているのだが、なかなか思うようなボールが貰えず、徐々に位置を下げていた。
それに気づいたミノールが“もっと前に居ろ!”と隆祐に指示し、バックラインを上げさせようと中盤の司令塔のトシに通訳を介して大声で指示を出すのだが、なかなか思うようにいかない。
焦れ焦れする展開のまま時間ばかりが虚しく過ぎ。
後半も半ばを過ぎたところで、ようやく日本ベンチが動いたのであった。


【後半25分が経過。日本ベンチに動きがあるようです。おおっ!ここで工藤と黒羽が投入されるようです!ともに本日の試合から、U−19から大抜擢でA代表デビューの18歳の工藤と黒羽!昨シーズン、工藤は所属チームのビッグ大阪の主軸となって、チームをグランドスラムの大偉業達成に導く大活躍をしました。一方の黒羽は、昨シーズン後半から所属する横浜Fマリーンズで活躍を始め、チームをリーグと天皇杯準優勝に導く活躍を果たしています!まさに4年後の日本代表の中心を担うであろう二人が本日A代表の試合にデビューを果たします!ここまで試合は両チーム無得点のまま、70分が経過。この二人の投入で、どう試合が動くでしょうかっ!】


二人がウインドブレーカーを脱ぎ、ミノール監督の指示を聞き、第4審の傍らに立つ様がスタジアムの大スクリーンにも映し出され。途端に場内から割れんばかりの大歓声が巻き起こった。


【お聞きください、この割れんばかりの大歓声!スタジアム中が、工藤と黒羽、二人の登場を待ちわびていました!】


TV観戦する蘭や和葉らの背筋さえもシビレさせるような大歓声の中、新一はボランチの、快斗はトシと組んでトップ下の位置に居た選手と交代の握手を交わすと、ピッチへと勢いよく駆け出していった。
二人が司令塔のトシと何事か話してからそれぞれのポジションに向かう様をカメラが追っていき、そこに場内の期待で満ち溢れた歓声が大いなるエネルギーを持ってうねりをあげ、TV観戦するものたちにこの感動を伝えていた。


「よーし、これからや。これから(試合が)動くで!」


二人が入った瞬間、どこかイライラした様子で観戦していた平次の目が光り。じっとソファに座って観戦する真の膝の上に載せられている拳が握られた。


相手チームのスローインで試合は再開。新一と快斗の二人が入った途端雰囲気が変わった場内と、これまで70分間プレイして溜まった疲労とで動きが鈍っていた相手チームは、そこをすかさず突いてボールを奪った新一の速攻に、反応が遅れた。


『速い!』
『(新一!)』
『(工藤!)』


サイドを速いドリブルで一気に駆け上がった新一は、ゴール前に詰め寄ってきた司令塔のトシ、快斗と隆祐の動きを予測すると、鋭いパスをゴール前に放った。


『(よし!)』
『(オーライ!)』


ゴールに向かって真っ直ぐに突っ込んだトシにつられてDFとGKが動き、その動きとは対照的に横に飛び出した隆祐が新一の出したボールにめがけて滑り込み。快斗は隆祐が外すことも考え、隆祐とは逆サイドからゴール前に詰めよった。


『よしっ!』


【ゴ――ル!後半30分、日本ようやく1点先制っ!入ったばかりの工藤が入れたボールに後半から出場の比護が合わせた!ビッグ大阪のホットラインが貴重な先制点をもぎ取ったぁっ!】


『ヤリィ、新一!』
『快斗もいい詰めしてたぜ!』
『あたぼうよ!これからガンガンいくぜ!』
『オウ!』


新一と快斗が入るまでの70分間、耐えに耐えていた観客は、75分目でようやく得た1点に、大歓喜のウェーブをして祝福した。

その後、相手の凄まじい反撃にメンバーは苦しんだが、耐えて点を与えず。
残り5分というところで先発の一柳に代わって投入されたベテランFWが、快斗のアシストで試合終了間際に勝利を決定付ける1点をもぎ取り。

日本は苦戦の末、2−0で勝利した。



この試合の結果、得点に絡んだ新一と快斗、そして先制点を決めた隆祐へのファンの期待と評価はうなぎのぼりになった。

そして、次の選考試合ではスタメン出場で、今度こそ代表は、観客をハラハラさせることなく試合を決めてくれる・・・そう誰もが期待したのだが。

ミノール監督の考え(構想)は、そう簡単に変わることはなかった。



  ☆☆☆



「はああああっ?!」
「どうして?!」


新一と快斗が鮮烈なA代表デビューを果たした1週間後に持たれた最終選考3試合の2試合目。1試合目で二人が入って一気に流れが変わったこともあって、今度こそ若い二人のスタメン確実とマスコミもファンも期待していたが。蓋を開けてみれば、スタメンは前の試合で足を痛めた高天原の代わりにヒデが入り、(新一と快斗の召集の切欠ともなった)アメリカでの大敗の際に使った1トップのフォーメーションを再び、という形になったこと以外、変化はなく。またも新一・快斗・隆祐は我慢のベンチスタートとなった。


今度の相手は、大会目前のこの時期に、なんでこんな世界ランク格下の相手と?!というマッチメイクで。
新一・快斗・隆祐らの突破力や得点力を発揮するまでも無く、代表チームは得点を重ねていった。


「・・・ザルやな。本番直前にこの程度の相手とのゲームなんて、意味ないやろ。協会は何を考えとるんや。」
「・・・。」


TV観戦する平次の罵声を聞くまでも無く。今回は選考ではなく景気づけが目的の親善試合か?!と勘繰りたくなるような内容で。新一ら4人は、ベンチから一歩も出ることなく試合は終わり。無言で会場を後にした。



  ☆☆☆



それから5日後の最終選考3試合のラスト、最終試合にもかかわらず。新一たちはまたもベンチスタートだった。





試合前日。

どれほどマスコミの批判を浴びようと、あくまで自分のポリシーを貫いて不動のメンバーで臨むミノール・ジャパンの23人枠に4年後の光ともいうべき新一・快斗らが入れるかどうか。
この2試合の起用内容では、ズブの素人が見ても厳しいと分かる状況の中。
突如呼ばれてカメラの前に突き出された格好となった新一と快斗の周りには、それでも愛想と色よいコメントを求めるマスコミが群がった。


「「(オレ達にどんなコメントを期待してるんだか・・。)」」


回答前に一瞬視線を交わしただけで互いの気持ちを読んだ新一と快斗は、ポーカーフェースで


「「残れるかどうか分かりませんが、試合に出れたら、勝利に向けて精一杯頑張ります。」」


とのみ応え、その場を離れた。

その画はその日のうちにニュースとなり。
それを見た蘭や青子ら二人の身内(ともいうべき面々)やチームメートは、二人の心中を慮って一様にフクザツな心境になったのであった。








「新一。何、考えてる?」


最終選考2試合目とは異なり、今度は世界ランクが日本と拮抗する相手との最終試合。

前評判どおり膠着した試合展開をじっと見据えたまま、新一は快斗の問いかけに応じた。


「んなもん、決まってんだろ。」
「今日も、このまま終わるかも分かんねーのに?」
「当たり前だろ。準備を怠ったら“噛合わねえ歯車”で終わっちまうかんな。」
「・・・成程な。」


二人の目の前では、激しく好守が切り替わり、監督と通訳が怒号を飛ばし、時にライン際まで飛び出てジェスチャーもする。

そして、観衆からは歓声と溜息が繰り返される。


そんな喧騒の中。新一と快斗の周囲だけは静かな雰囲気に包まれていた。


「オレさ、正直、今日までの3試合。結構堪えた。・・・・・ここまで意固地に使われないって経験。これまでなかったからさ。・・・新一が居なかったら、くさってたかも。」
「・・・快斗。」
「なんだよ、そんなに驚かなくてもいいじゃんか。オレだって、たまには凹むんだぜ。」


いつにない快斗の弱気発言に、ようやく新一は快斗に視線を向けた。
そして、いつになく拗ねた様子の快斗に、驚きの表情から一転、穏やかな笑みを向けた。


「バーロ、オレもだよ。昨日のインタビュー。一人だったらマスコミから逃げてたかもな。“何を言わせたいんだ?!”なんてさ。」
「新一。」
「でも、お前や比護さんやヒデさん、それに他にもオレ達と同じ立場思いの人がいるからさ、2・3試合程度のベンチ漬けでキレてらんねーよな。ま、確かに歯がゆいんだけどさ。でも、お陰で分かったこともあるんだ。」
「分かったこと?何だよ、それ?」
「・・・・・。オレ達ってさ、ユースにトップにと沢山経験積んできただろ。でさ、そん中で、少ない時間でも必ず結果を出してた人が、何人かは居たじゃねーか。」
「ああ。」
「逆に、同じような状況でも、そうはならない人も居た。」
「・・・ああ。」
「その違いって何だろうなって、ずっと思っててさ。」
「うん。」
「それが何か、何となく分かった気がするんだ。プロデビューしてからの2年間と、今回の3試合でね。」
「・・・どういうことだよ。」

快斗のもの問いたげな視線をスッとやり過ごし、新一の視線はほんの一瞬、ベンチに並ぶ選手たちの快斗を通り越して数人先に居る、ベテランの選手の上に止まった。

「こういうのをプロっていうんだって思ったんだ。」
「へっ?!」
「野球で言うなら、代打のためにベンチに居る選手の心境っていうのかな。チャンスは1回だけ。それをものにしなければ“席”がなくなってしまう。・・・そんな立場。」
「・・・。」
「いつ来るかわからない、たった1回の出番のために、準備をしてる。だから、どんな短い出場時間でも、集中したプレイができる。・・・・・今、ベンチで出番を待ってるオレもそんな立場に居るんだな、ってさ。」
「・・・。」
「スピリッツでデビューして暫くの頃を除けば、これまで大抵スタメンでこれてさ、それが当たり前のようにしてたけど。いざここ(代表)に来てみれば、そうじゃないじゃん。こういしてる今でも“用があるから呼んだんじゃねえのか?!”って思ってはいるんだけど・・・大事なことはそうじゃないのかな、ってな。」
「・・・イマイチ分かったような、分からんような話だな。」


どうにも要を得ない顔の快斗にフクザツな笑みを返した新一は、ピッチに視線を戻した。


「いいよ、これはオレがそう思ってるだけのことだから。」
「何だよ。」
「要は、どんな状況であれ、準備を怠らないってこと。使ってもらうためにな。」
「!」
「自分の力とかキモチはどうあれ・・・選手の起用を決めるのは、監督だからさ。」


そう言い切った新一の横顔を、目を瞠って見つめた快斗は、しばしして、悔しそうにピッチに顔を向けた。


試合は0−0のままじりじりと時間が過ぎ。最終選考試合で本番まであとひと月というところまで来ていながらどうにも“これなら、本番もいける!”という感じが持てない内容に、観衆もTVの解説もじれったさをにじませる空気を漂わせていた。


【ああ〜っ、ここで前半終了のホイッスル。0−0で折り返しです。ドイツ行きのキップを手にする23人を決める最後の試合。後半のこり45分でどう展開するのでしょうか?!】


スタメンがロッカールームに引き上げ、ベンチメンバーはハーフタイム中をアップの時間に充てる、その様子がサラッとカメラに写された後、CMあけのTVは前半のハイライトをOAしていた。
その画を見ながら、新一のマンションではいつもの面子が難しい雰囲気を隠すことなく休憩をとっていた。


「ハイ、平次。京極さんもどうぞ。」
「お、サンキュ。」
「ありがとうございます。」


蘭が淹れた珈琲を和葉がサーブし。平次と真は受け取ってマグに口をつけた。
もう、ミノール監督の采配について話すことはない、といわんばかりの平次の背を見ながら台所に戻った和葉は、お茶請けの用意をする蘭を手伝おうと声をかけた。


「蘭ちゃん・・・大丈夫?」
「ん、和葉ちゃん?大丈夫。平気よ。・・・一番歯がゆいのは新一だろうから・・・。」
「・・・そうやね。」


この時、そう言った蘭の脳裏には、召集を受けて出立しようと荷物の最終確認をしていた新一が、苦い笑みを浮かべながら言ったことが甦っていた。


『呼ばれたから行ってくるけど。多分、スタメンはないだろうな。下手したら、呼ばれただけで終わるかもしんねー。』
『まさか。』
『その“まさか”がありえるんだよ。監督の起用を見てるとな。声に出して言うことじゃねえんだろうけど。』
『新一。』
『でも・・・呼ばれたからには、呼ばれたままで終わらせるつもりはねえよ。確かにちょっとしか時間がねえけどさ。A代表の雰囲気を掴み取って、たとえ1分でも“使ってやろう”って気分にさせてみせる。』
『・・・。』
『でも・・・もし、どうしても見てるのが辛くなったら、チャンネル変えてもTV切ってもいいぜ。』
『新一?!』
『でも、オレ、諦めねーから。もし使ってもらえたら、その時は応援してくれよな。・・・じゃ、行ってくる。』


背広を羽織り、襟元を直し、スーツケースを手にした新一が玄関で靴を履く様子を見ながら蘭は、泣きたいのをぐっとこらえて微笑んだ。


『・・・切らないわよ。チャンネルも変えない。最初から最後までずっと見届けるわ。3試合全部。』
『蘭。』
『今から“使われないかも”なんて言ってたら、本当になっちゃうわよ?ジョーカーを持ちたいって感じたから呼ばれたんじゃないかな?私はそう思ってるよ。』
『・・・。』
『もし出られなくても、それもいい経験になると思う。きっと、新一のキャリアにプラスになると・・・私は思う。』
『・・・そうだな。』
『・・・。』
『サンキュ、蘭。』
『へへっ、どういたしまして。』
『行ってくる。』
『ん・・・。行ってらっしゃい。』


この時、笑顔で見送らなかったら、新一が最終選考1試合目で途中から使われることはなかったかもしれない。腐らずにはいられなかったかもしれない。

3試合目前半終了時点まで出番が無く、それ以降も無かったとしても。


「(蘭は、きっと見てくれてる。だからオレは、試合終了のホイッスルを聞くまで準備を怠っちゃいけねえんだ!)」


快斗や隆祐、他のベンチ入りしていた選手らとパスをしながら、新一は蘭を想い、気合を入れなおした。


【後半、日本のキックオフで始まりました。メンバー交代は両チームともありません!】


後半は、スコアこそ0−0だが、立ち上がりから徐々に、日本が押される時間帯が増えていった。


【またも楢原のファインセーブ!日本、押されています!ミノール監督、ライン際まで出て、トシと元宮に大声で指示を出しています!】


そしてとうとう、後半29分、相手チームが楢原の守るゴールを奪った。


【ああ〜っ!後半29分。日本、先に点を取られてしまった〜っ!残り時間16分。日本は、試合を振り出しに戻せるか?!】


解説が悲痛な声を上げ、カメラはベンチを映し出した。
先制点を奪われてベンチが動くかと思いきや、ミノール監督は動かなかった。


【日本ベンチ、選手交代の様子がありません!1点を先制され、ますます押されている!ああっ!元宮のクリアで何とか難を逃れた!】


「監督は何で動かないんだ?!」
「左サイドのヤツ、足止まっとるやないか!」
「みんな、焦ってるぞ!落ち着け!」


スタンドからは野次や怒号、それに雑じって激励の声援も僅かに飛んでいた。
それでも監督は動く様子を見せない。


「今日は最終選考の日なんだぞ?!負けて終わる気か?!」
「比護を出せ!」
「工藤を使え!」
「黒羽に変えろ!」


観客のイライラが頂点に向かってゆき。時間も終わりに近づいた後半38分。やっと監督が重い腰を上げた。


【日本ベンチ動きますね。どうやら、一柳に代えて比護、笠原に代えて黒羽、稲田に代えて工藤、一気に3人を投入する模様です。】


「よっしゃあっ!」
「やっとか!」
「遅いわ!」


【遅きに失して無ければいいんですが。後半終了まで7分を切っています。ロスタイムは、あってもせいぜい1〜2分といったところでしょう。残り時間10分弱で劣勢を跳ね返し、まずは同点に追いつくことができるのでしょうか?!】


交代に大歓喜する歓声を背に受けてピッチに駆け込んできた3人に、中で待ち受けたフィールドプレイヤー7人が駆け寄り、監督からの伝言を受け取った。


そして、日本のスローインで試合再開。

疲労の色が濃かった左サイドの稲田に代わった新一は、ボールを受けると一気に前線へ駆け上がり。それに合わせて、チーム全体が前がかりになって攻めに入った。
新一はチームでも折り紙つきの巧みなボールキープで相手のディフェンスを次々とかわし、多くのディフェンスをひきつけた。


『(新一!)』
『(よし!)』


そして一気に逆サイドに振って、フリーでボール落下地点に駆け込む快斗に絶好のパスを放った。


『ナイス、新一!』


快斗はそのパスをノートラップでシュート。


【工藤―黒羽の速攻!日本、交代からわずか数分で同点に追いつくか?!】


思わず解説者も目を瞠る速攻で同点か?!と手に汗を握ったのだが。相手GKの決死のディフェンスで、ゴールはならず。コーナーキックに変わったのであった。
だが、面子が変わってすぐにチームが変わったような速攻に、試合の流れが日本側に傾きつつあると誰もが思うような雰囲気になっていた。


【後半41分。日本のコーナーキックです。キッカーはトシ!】


チーム司令塔のトシがコーナーに立ち、ゴール前をざっと見渡した。
ヒデ・隆祐・快斗・新一、それぞれの位置取りを確認するトシの目に、新一が視線で何事かを訴えてきた。
それを見たトシは、ゴール前にあげると見せかけてゴールから少し離れた新一の居るところへボールを出し。この動きにゴール前を固めていたディフェンスが動いたスキマに新一が力強いシュートを放った。


【トシ、ゴール前ではなく、工藤に出した!工藤、すぐさまシュート!】


新一の中距離からのシュートは、ディフェンスに視界を阻まれたGKの反応を鈍らせ。再度ネットにズバッと突き刺さった。


【ゴォォォォォ〜ル!日本、同点〜っ!後半42分、コーナーキックから工藤のゴールで同点に追いつきました!まだまだ試合は分からない!】


この新一の力強いシュートに観客は大歓喜・大歓声のスタンディングオーベーション。

チームメートは抱きついて祝福した。


「工藤・・・。お前っちゅうヤツは・・ホンマ凄い奴っちゃ。」
「やったあっ!」
「残りあと3分やけど、これやったら、まだまだイケルで!」


TVの前では、蘭と和葉が抱き合って喜び。
平次と真は新一を、自分たちの仲間ながらに空恐ろしいヤツだと感嘆していた。


大歓声の中、試合は再開され。勢いづいた日本の押せ押せムードで残り時間、押し捲った。
しかし、2分と表示されたロスタイムまで押し捲りながらも追加点は奪えず。1−1で試合は終了した。


【工藤君、大金星ですね!】


試合終了後。得点を決めた新一はインタビュースペースに招かれて開口一番目をキラキラさせたインタビュアーに取り囲まれた。

・・・が。

ニコヤカにお礼は言いつつも、追加点が奪えず残念だったことを述べ。

“23人に選ばれますよ、きっと!抱負をお願いします!”・・などと訳の分からない確信めいた口調のインタビュアーの向けたマイクに困ったように微笑むと、選ばれるかどうかまだ未定ですからと前置きした上で、そうなったら頑張りますと応えてその場を辞したのであった。



  ☆☆☆



「お帰りなさい。」
「ただいま。」


試合終了の翌日。早々に帰阪した新一は、チームの練習に参加後、自宅に戻った。
出場時間は、新一の当初の予想以上にもらえたし、結果もシッカリ出して周辺が騒がしくなった・・・とはいえ。いつもどおりな雰囲気の愛妻に拍子抜けしつつ、否、どこか安堵した新一は、平常心でドイツ行きのキップを手にした23人の発表のその日・・・試合終了の2日後・・・を迎えることができた。


「あ〜。そういえば、今日だったね。新聞見るまで忘れてた。」
「オイ。」
「あら。選ばれると思ってるんだ?」
「・・・期待1割、諦め9割、かな。」
「ウソだぁ〜。期待9割のマチガイでしょ?!」
「てめ、このっ!」
「きゃははははっ♪」


わざとふざけた調子でいてくれる蘭のお陰で考えすぎず構えずにいられるんだと実感しつつ、新一は後ろから蘭を羽交い絞めにすると、頬にキスを贈った。


「結果はどうあれ。蘭の言った通り、この3試合はオレのキャリアにとって良い経験になったよ。」
「・・・ん。」
「サンキュ、蘭。」
「私こそ。・・・あの試合。新一を信じる勇気を試された気がした。」
「へっ?!」
「ちゃんと全試合フルタイム観戦したから///!」
「蘭。」
「新一のプロ魂、魅せて貰いました!だから、私こそありがと///!」


嬉しい台詞に加え、耳朶まで赤く染まった蘭の姿にクラクラした新一は、今が朝で、出勤時間(爆)が迫っていることに、歯噛みしたい悔しさを感じた。


「バーロ。お礼を言うのはこっちだ。」
「へっ?!」
「でも、もう、感謝の気持ちを示してる時間がねえかんな。続きは夜までオアズケな!」
「ええっ///?!」


耳元に熱く囁いて、驚いて振り向いた蘭に熱い口付けを落とし。新一は意気揚々と練習に向かった。


「もう・・・ばか///。」


頬を染めて、恥じらいで赤く染まった指先を口元に当てている蘭をその場に残して。



   ☆☆☆



「工藤、今日やな。」
「何が。」
「またまた〜。23人のことに決まってるやろ?!」
「そうそう。で、自信のほどは?」
「ありませんよ。たった2試合、しかも一試合の半分も出てませんし。ムリですよ、きっと。」
「そうかな〜。出た試合、出た試合で必ず点に絡んでたじゃん。」
「いけるって、きっと。」
「そんなことないですよ。」


練習の合間にも、チームの仲間からドイツ行き決定のX−DAYということで隆祐と共に話題の中心となった新一は、マスコミに言われるときとは違った穏やかで柔らかな笑みで言葉を返していった。


そんな新一と隆祐が午前に引き続き行われた午後の練習を終える頃。
フロントスタッフが二人を呼びに練習場に姿を現し、二人が選出されたことを告げた。

それから間をおかず地元マスコミのスポーツコーナーの担当者がインタビューに駆けつけ。


【おめでとうございます!代表に選ばれた感想と抱負を一言ずつお願いします!】


二人はジャージ姿のまま、夕方のニュースに登場することとなったのであった。





後日。

同じく23人に選出されたヒデと快斗に、揃ってそれぞれの口調で準備不足(着替えのスーツを用意してなかったコト)を指摘された隆祐と新一は、苦虫を噛み潰した顔を見せて二人にからかわれることとなったのであった。
でも、それが日本にとっての大会終了までの間の、若手の4人にとっての唯一のリラックスタイムだったと知るまでにそう時間はかからなかった。


ミノール・ジャパンは、新一ら次世代の期待を背負う4人を加えたことで、益々周囲からの強いプレッシャーを背負うこととなったのである。




to be countinued…….




(19)に戻る。  (21)に続く。