銀河探偵伝説



By 槇野知宏様



(16)



「第一一艦隊全滅。ルグランジュ提督は自決」
「工藤艦隊は補給と整備の後、ハイネセンへ進攻する構え」
「各惑星の警備隊及び義勇兵は、続々と工藤提督の下に集結しつつあり」

 それらの報告がもたらされると、まさに内憂外患と言うべきだな、と、グリーンヒル大将がそう呟き、救国軍事会議は重苦しい空気に押し潰された。
彼等は首都に戒厳令を布き、政治、経済、社会の各方面を武力によって統制運営しようとしたが、混乱は防ぎようがなかった。
外出禁止令によって一般犯罪と事故は減少しは良いが、物価の高騰、消費物資の不足が目立つようになり、市民の不安と不満が高まるのを恐れた救国軍事会議は調査に乗り出した。
経済統制を一任されていたエベンス大佐は自分のオフィスにフェザーンの商人を召喚して意見を求めたが、返って来たのは手厳しい批判だった。

「流通機構の統制を止め、報道管制を緩和し、人心の安定を図る事です。でなくて経済も社会も健全になりえない」

これは正論ではあったが、エベンス大佐にしてみれば有難みがなかった。救国軍事会議の少人数で首都星ハイネセンを支配するには、通信、運輸、流通の統制が必要不可欠なのであり、経済の健全化など知った事ではない。
軍人が経済政策を考案すると多くは国家社会主義に陥ってしまう。目の前にいる軍人も例外ではない事をフェザーン商人は知った。

「経済は生き物であり、統制したところで予定通りに決して動く事はありません。軍隊では上官が部下を殴って命令をきかせますが、そういう感覚で経済を論じられても困りますな」

 その不遜な言い方に大佐は激昂してブラスターに手をかけたが、さすがに思いとどまって兵士たちに命じて商人をオフィスから放り出した。
商人は放り出したが、物価高騰、消費物資不足という事実は放り出すワケにはいかず、彼がやったことは幾人かの悪徳商人の逮捕、徴発した物資を放出する事であり、なんら根本的な解決に寄与するものではなかった。
奇妙かつ深刻な噂が救国軍事会議内部に流れ始めていた。同志の中にトリューニヒトへの通報者がいる、と、いうものである。統合作戦本部長代行、宇宙艦隊司令長官は拘禁に成功したが、肝心の最高評議会議長だけが襲撃を避ける事が可能だったのか。
宇宙艦隊司令長官ビュコック提督は漠然たる情報をどうやら手にしていたらしいが、それでも為す術がなかった。そうなるとトリューニヒトはクーデターの詳細を知っていたに違いない。
数少ない同志が互いに疑心暗鬼に陥っては有益な事はない、と、思ったグリーンヒル大将はベイ大佐という男に命じてトリューニヒトの再捜索を命じたが、不審の声は低くなっただけで消えはせず、陰湿な雰囲気が彼等の間に漂い始めた。
焦慮と不安のうちに幾日が過ぎ、事態は一向に改善されない状況下で一つの破局が訪れた―――後世に言う「スタジアムの虐殺」がそれである。

 ハイネセン記念スタジアムは、首都星と同じく建国の父であるアーレ・ハイネセンの名前をとってつけられた。たびたび国家的な式典が行われる場所でもあり、国家意識の高揚を図る上からもこの名が付けられた。独創性に欠けると言われてもやむを得ない。
その日、六月二二日。三〇万人を収容するスタジアムに市民たちは集合した。人々の流れは朝の早いうちから始まり、正午には二〇万人に達した。
戒厳令は多人数の集会を禁止している。公然とそれを無視する行動に救国軍事会議は驚き、集会の目的を知って―――暴力による支配に反対し、平和と自由を回復させる集会―――この大胆で挑戦的なスローガンで驚愕が怒りへと変貌した。
主催者は三〇名の反戦派の議員たちであり、救国軍事会議側は議員の名前を見出して唸り声を上げた。戒厳令にも関わらず、それまで拘禁されずにいたのは、政府と軍部の最高幹部だけに集中して、議会内には手が回らなかったのである。
集会を解散させ、議員たちを拘禁すべし―――この命令を受け、三〇〇〇名の武装兵を率いてスタジアムへ急行したのはクリスチアン大佐であったが、この人選が間違っていた事を救国軍事会議は後刻になって後悔する事になる。
話し合いで解散させる気など彼は毛頭もなかった。入り口を固め、銃で群衆を威圧して議員たちを呼び出した。秩序回復のための行動である、と、いうクリスチアン大佐の言い分と、暴力による乱したのは救国軍事会議である、と、いう議員たちの言葉は真っ向から対立して平行線を辿ったままだった。
エベンス大佐より自制心が乏しかったクリスチアン大佐は議員の一人に対してブラスターを引き抜いて発砲したのである。撃たれた側は胸を血に染めて倒れたが、逆にそれは群衆たちを激発させるには十分過ぎた。
無数の怒号と暴れだした人々の足音によってクリスチアン大佐の悲鳴は掻き消され、その姿は群衆の足下に消えた。兵士たちはビーム・ライフルを発砲して市民たちを薙ぎ倒したが、エネルギーが切れたり、市民にそれを奪われると、怒り狂う人海の前に為す術がなく、殴り倒され、踏みつけられる。
スタジアムでの騒乱を知った救国軍事会議は驚いて鎮静化に乗り出したが、数十挺のビーム・ライフルが市民に奪われた事を知ると、対話の余地なしとして力ずくの鎮圧に移った。
多数の無力化ガス弾がスタジアムに撃ち込まれた。ガス自体には殺人能力はないが、ガス弾の直撃を受けて少なからぬ死者が出た。ガス弾に対抗するかのように火炎瓶や投石が救国軍事会議の兵士たちに降り注ぎ、こちらも少なからぬ死者と多数の負傷者を生み出した。
ガスを吸って倒れた人々を救国軍事会議は戒厳令法違反として刑務所へ送ったが、それでもかなりの人々が逃亡に成功した。それを追跡逮捕する人員も不足しており、警察は協力どころかサボタージュの動きを見せ、報道管制をしても人々の口を全て塞ぐ事は不可能であった。事後処理も困難を極め、死者だけでも市民が二万余、兵士が二五〇〇名にのぼったのである。

「全市、全惑星が一斉に蜂起したらどうなるのか。そうなれば我々の手には負えない。まさか皆殺しには出来ない・・・」

救国軍事会議のメンバーの一人がそう呟いたが、誰も反論しなかった。自分たちが市民の支持を受けない少数派である事を彼等は今更ながら思い知らされたのである。

 首都星ハイネセンにおける「スタジアムの虐殺」の報が報道管制の網をかいくぐって、新一に届けられたのは七月に入ってからである。
工藤艦隊の将兵の中には家族や恋人が「スタジアムの虐殺」に巻き込まれて死亡したり負傷した者も少なからずいたので、艦隊は一日だけ喪に服した。
これで彼等は自ら進んで死刑承諾書にサインした事になる―――新一は蘭にそう漏らした。完全に後方環境を整備した新一がバーラト星系第四惑星ハイネセンに向けて艦隊を動かしたのは七月末の事である。
この出戦によって内乱が終着がつくであろう事は明らかであり、艦隊司令部以外の誰もが緊張の色を隠せなかった。




 同盟から視線を転じて帝国の情勢を見てみる。
ラインハルトの本隊から分離したジークフリード・キルヒアイス上級大将の元に命令が届けられたのは七月に入ってから程なくの事である。
彼はラインハルトから用兵だけでなく、行政についても自由な裁量を任せられていたので、着実に辺境星域を平定していった。大規模な会戦はなかったにせよ六〇回を超す戦闘に悉く完勝し、占領した惑星は民衆の自治に委ねると共に惑星間の治安を守る事に腐心した。
民衆への暴行や略奪行為の厳禁も門閥貴族たちとの差を民衆に知らせる上で大きな効果があった。そのせいかキルヒアイスを“辺境星域の王”と呼ぶ者もいた。無論、面と向かってではないが。
彼が率いる艦隊はキフォイザー星域で貴族連合の副盟主であるリッテンハイム候が率いる五万隻の艦隊と交戦し、リッテンハイム候を戦死に追い込んだ。指揮官を失った艦隊は全滅状態であった。
五万隻の艦艇中、二万五〇〇〇隻が完全破壊され、五〇〇〇隻は戦場を離脱して何処かへ逃げ去り、残余は悉く捕獲されるか降伏した。そしてリッテンハイム候が根拠地としていたガルミッシュ要塞の将兵も反抗もせず降伏した。リッテンハイム候の戦死が将兵の戦意を削いだ事は確かな事実であった。
一方、シャンタウ星域で貴族連合軍と相対したオスカー・フォン・ロイエンタール大将は、血の気は多いが効率良く組織され、巧みにコントロールされた敵艦隊を目の当たりにして、彼は敵の指揮官が代わったのを悟った―――メルカッツが前線に出て来たのだろう、と。
兵数においてロイエンタール艦隊はメルカッツ艦隊より劣る。彼は幻想家ではなく、敵の力量を正当に評価する事が出来た。ここは後退する、と、ロイエンタールは決断した。後退すべき時に後退を決断出来る能力も名将が持つ資格である。
シャンタウ星域を放棄しても戦略的には何の差し障りはない。すぐさまロイエンタールは敵に隙を見せ付けるかのように後退を開始したが、これを旗艦「ネルトリンゲン」で確認したメルカッツは腕を組んだ。彼の目にはロイエンタール艦隊の動きが不自然に見えたからである。参謀たちも敵の罠があるかも知れないから注意すべきである、と、進言した。
敵の艦隊行動は不審だが、それ以上にメルカッツを悩ませたのが血の気が多い青年貴族たちであった。そのため彼の用兵はどうしても慎重を第一にせざるを得なかったし、ロイエンタールが本気で逃走を目的としているのなら、これ以上の流血をせずシャンタウ星域を確保する事が出来るのだ。相手がラインハルト本人ならともかく、危険は回避すべきである。
貴族連合軍は追撃のスピードを落とした。ロイエンタールはそれを確認したが、なお油断せず艦隊陣形を柔軟に変化させつつ用心深く後退した。やがてシャンタウ星域外縁部に達し、敵味方の距離が開くと素早く艦隊を球形陣に再編すると最大戦速で逃走した―――こうしてシャンタウ星域は貴族連合の手に落ちた。

「ロイエンタールはオレに宿題を押し付けたな」

ロイエンタールから、シャンタウ星域からの撤退、と、いう報告を受けたラインハルトはそう言って苦笑し、傍らのオーベルシュタインが口を開いた。

「メルカッツ提督は閣下がお生まれになる以前から軍人として名声のあった方です。彼に自由な手腕を振るわれては、事態はいささか面倒になるでしょうな」
「自由な手腕か・・・確かにそれは問題だが、ブラウンシュヴァイク公にメルカッツにそうさせるだけの器量があるとは思えないな」
「御意。メルカッツ提督を相手にするより、その背後にいて彼を悩ませる輩こそ相手にするべきでありましょう」


 メルカッツが“禿鷹の城(ガイエスブルグ)”要塞に帰還すると、あらんかぎりの美辞麗句が彼に浴びせられたが、浴びせられた側はそれに応じる事無く淡々としていた。

「これは我が軍が獲得したというより、敵が放棄したもの。自分たちの力を過信するのは禁物です」

我ながら陳腐な説教だ、と、メルカッツは思う。しかし大貴族たちの危うさを見ていると、初歩から固めていかなくてはどうしようもない、と、いう気がして来るのだ。

「そうか。提督は慎重だな」

いささか鼻白んでブラウンシュヴァイク公は言った。面白みのない男だ、と、思ったに違いない。そう思われてもメルカッツは何とも感じなかった。
この性格が損か徳かは、彼には分からない。多くの武勲を立てたにも関わらず今まで元帥になれないでいたのは面白みのない性格のためであろう。しかし陰謀渦巻く宮廷で陥(おとしい)れる事無く今日まで来たのも、この性格故ではないか。
七月末になってラインハルトから古典的な決戦状がVTRで送られて来たが、その内容は貴族連合軍の幹部を激怒させるには充分過ぎるほどの内容だった。
ラインハルトは言う―――蒙昧で臆病な貴族共よ、爪の先程でも勇気があるなら要塞を出て堂々と決戦せよ。その勇気が無いなら、自尊心を捨てて素直に降伏するが良い。
生命を救ってやるばかりか、無能なお前たちが食うに困らぬ程度の財産だけはくれてやる。先日、リッテンハイム候が卑劣な人柄に相応しい惨めな最期を遂げた。同じ運命を辿りたくなければ、無い知恵をしぼって、より良い道を選択する事だ。

「おのれ、金髪の孺子め。よくも言いたい事を・・・」

若い貴族たちは怒りで発狂しかねないほどだった。ラインハルトの注文通りである。この程度で理性を失う相手には、この程度の挑発をすれば充分なのだ―――メルカッツは苦々しく認めざるを得ない。
やがて、ラインハルト軍の先鋒であるミッターマイヤーの艦隊が“禿鷹の城”要塞周辺に出没し始めた。要塞主砲“禿鷹の鉤爪(ガイエスハーケン)”の射程外で行動したり、接近しては遠ざかり、遠ざかっては接近する―――挑発しているのは明らかだった。
メルカッツは出撃を固く禁じたが、激発した若い貴族たちは立て続けに出撃し、ミッターマイヤー艦隊に襲い掛かったのである。ミッターマイヤーは油断していたのか、その艦隊はもろくも壊乱し、司令官のミッターマイヤーは、かなりの軍需物資を放棄して逃走した。若い貴族たちにはそう見えた。

「逃げ足の速いヤツだ。“疾風ウォルフ(ウォルフ・デア・シュトルム)”の疾風はそういう意味か?」
「メルカッツ提督も慎重の度が過ぎる、と、いうものだ」

敵の軍需物資を奪い、勝ち誇って要塞に帰還した彼らをメルカッツは、司令官の命令に背くもの、として軍法会議にかけようとした。
これは軍組織の秩序を守る上では当然の事だった。結果が勝利したとはいえ、司令官の命令が無視されたのでは今後に支障がある。しかし若い貴族たちにとって不本意極まるものだった。彼等は勝利に陶酔し、英雄気取りだったのである。
彼等は口々にメルカッツの慎重さを、勇気がない、と、批判し、更には軍法会議で処断されるくらいなら自殺した方がマシだとメルカッツやブラウンシュヴァイク公に詰め寄った。
ここまでくれば自己陶酔の極みであり、メルカッツは歯牙にもかけなかったが、盟主であるブラウンシュヴァイク公は貴族たちを嗜めることすらせず、逆に彼等を煽り立てた。
副盟主であったリッテンハイム候の死を知って以来、ブラウンシュヴァイク公の盟主ぶりはメルカッツや少数の貴族たちなどには鼻につく一方になっていた。
熱狂的というより狂信的な叫びを目にしたメルカッツは、もはや一言も発しなかった。彼の失望が絶望に転化したのは、或いはその時であったかも知れない。

 八月一五日、ミッターマイヤー艦隊の来襲が“禿鷹の城”要塞内を駆け巡った。以前と異なり、この日のミッターマイヤーは長距離攻撃用のレーザー水爆ミサイルを撃ち込み、積極的に攻撃して来る。
若い貴族たちはメルカッツの命令や軍規などを全て放り捨てて、我れ先に乗艦に飛び乗り、管制官の指示もまだるっこしく出撃して行く。彼等からすればミッターマイヤーなど敗軍の将であり、態々(わざわざ)出て来ても結果は同じ、と、タカを括っていた。ミッターマイヤーはミッターマイヤーで嘲笑を禁じえない。

「貴族の馬鹿息子どもが、穴の中に引っ込んでいれば長生き出来るものを。態々、宇宙の塵になるために出て来るとはな」

年齢的に彼も“馬鹿息子”と同世代であるが、戦歴と武勲では比較にならない。ミッターマイヤーにしてみれば、前回の敗走が擬態だという事すら看破出来ないような輩と戦うのは殆ど馬鹿馬鹿しくさえあるのだった。
だが、この日は盟主ブラウンシュヴァイク公が出撃している事が判明したため、彼の責任は重大なものだった。二度や三度負けてみせるぐらいの事は耐えなければならない。
ミッターマイヤー艦隊が後退すると、貴族連合軍は総力を挙げて攻勢に出る。その脆さに不審を抱く人物が連合軍にいた。ブラウンシュヴァイク公とメルカッツの中間点にいるアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト中将である。彼はラインハルトやメルカッツと同じ戦場に立った事のある熟練した提督である。

「深追いはするな。罠かも知れんぞ」

彼は血気に逸る味方に注意喚起した。十分在り得る事なので貴族たちは猪突を止め、態勢を整えようとすると、ミッターマイヤーは反撃に転じて来る。再反撃すれば戦いつつ後退して連合軍の前進を促す。
それが幾度となく繰り返された。ミッターマイヤーのタイミングは絶妙を極めている。こうして貴族連合軍はラインハルトが緻密に作り上げた縦深陣の奥へ奥へと誘い込まれて行ったのである。
戦線は前後に細長く延び、味方同士の通信にも弊害が表れてきた頃、またしてもミッターマイヤーが反撃に出た。例のパターンか、と、軽く見た貴族たちが再反撃を試みようとした瞬間(とき)、ミッターマイヤー艦隊は信じがたい速度と圧力で貴族連合軍に肉迫し、最初の一撃で先頭集団を文字通り粉砕したのである。
何が生じたか理解出来ぬまま、多くの貴族たちが乗艦と共に火球と化していた。第一撃を免れた各艦のオペレーターたちが戦況の急変を叫んだ時、更に第二撃が加えられ、闇の中に多数の火球が生じた。

「見たか、馬鹿息子ども。戦いとはこういうふうにするものだ。貴様等の猿にも劣る知能で、憶えておける限り憶えておけ」

復讐の楽しみをミッターマイヤーは欲しいままにした。若い貴族たちの拙劣さに比べれば、彼の戦闘指揮は芸術品とさえ言える。
貴族連合軍は艦列を乱した。統一された指揮系統はその以前に失われている。ミッターマイヤーの巧妙を極める戦術に対し、彼等は各艦ごとの各個撃破に命運を託するしかなかった。無論、そんな事で対抗出来るワケもなく一艦、また一艦と血祭りに挙げられて行く。

「後退しろ、後退だ!味方に構っている暇はない、逃げる事だけ考えろ!!」

戦況不利と見たファーレンハイトが自ら急速後退しつつ指示し、貴族たちもそれに従った。だが戦闘宙域に味方を置き捨てて逃走する連合軍の右側面からケンプ、左側面からメックリンガーの両提督が膨大な兵力を一挙に叩き付けて来たのである。
連合軍は一秒一分毎に味方を撃ち減らされ、その艦列は次第にやせ細り、密度を薄めていった。漸くケンプたちの猛攻を振り切った、と、思った時、更にビッテンフェルト、ミュラーの艦隊が両側から殺到して来た。
旗艦「ブリュンヒルト」の艦橋でラインハルトは会心の笑みを湛えていた。それは辛辣を極める戦法であった。敵の逃走ルートを想定し、そこに多数の兵力を伏せて置く。この場合、逃走ルートは最初の進撃ルートと同一であるから想定は容易である。
そしてこの時、逃走する敵の正面に立ち塞がって必死の反撃を招くような事はしない。敵の先頭をやり過ごして、側面または背後から攻撃する。これは位置的に有利であるだけでなく、戦闘より逃走に注意が集中している敵を心理的にも圧倒出来るのだ。
生死は問わぬから、ブラウンシュヴァイク公を私の前に連れて来い。成功した者には賞金を与え、一兵卒でも提督に昇進させてやる。機会を掴め―――ラインハルトが味方を励ました。
その指令は味方の戦意を欲望へと変貌させた。闘志を失って逃走する貴族連合軍は、今や狩りの獲物でしかなかった。各処で追い詰められ、捕捉され、短い絶望的な反撃の末に破壊若しくは降伏へと追い込まれていく。
ブラウンシュヴァイク公が気付いた時、旗艦「ベルリン」周囲には味方艦が一隻もなく、背後にはミッターマイヤーとロイエンタールの艦隊が近付きつつあった。彼は慌てて旗艦を反転させて“禿鷹の城”要塞へと逃走を開始した。
その時、無数の光点がブラウンシュヴァイク公の前に出現した。後衛に控えていたメルカッツが急追して来る」敵に対して至近距離から主砲斉射をあびせたのである。この猛烈で整然とした砲火により、ラインハルト軍は少なからぬ損害を被(こうむ)った。
ミッターマイヤー、ロイエンタール等が急いで後退するよう指示したが、突進する勢いの激しさと将兵の多くが冷静さに欠ける精神状態にあったため、その命令は徹底しなかった。
敵の混乱を視認したメルカッツは万全の出撃態勢にあった直属部隊に命令を下した。その部隊は大型艦は保有していないものの、機動性に富んだ駆逐艦、雷撃艇、単座式戦闘艇ワルキューレからなる近接戦闘向きの部隊であった。
これらが混乱するラインハルト軍に襲い掛かり、密集隊形を余儀無くされた艦艇を次々と破壊していった。今や火球となって炸裂するのはラインハルト軍の先頭集団の方が多く、追撃どころか自己防衛に専念するしかなかった。
ミッターマイヤーもロイエンタールもブラウンシュヴァイク公を逃した悔しさと味方の醜態とで歯軋りしたが、彼等は戦場で感情に身を任せる愚かしさを知っていたので、味方の崩れかかっている艦列を烈しく叱咤して支え、後退と再編を同時に並行させる。凡庸な指揮官であれば、到底不可能な難事であった。
メルカッツに十分な兵力があれば二人の勇将を完敗に追い込む事も可能だったかも知れない。だが彼に与えられた兵力は少なく、その意図は全くなかった。ブラウンシュヴァイク公を守った、と、いう最低限な仕事をこなしたメルカッツは“禿鷹の城”要塞へと退去した。

「メルカッツめ、伊達に年齢(とし)を食ってないな。達者なものだ」

若い元帥はそう言って敵将を称えた。どうせ敵は“禿鷹の城”要塞に追い込まれたのだ。慌てる必要など少しもないのだ。


「何故、もっと早く救援に来なかった!!」

メルカッツと再会した時、ブラウンシュヴァイク公が発した第一声は感謝の言葉ではなく罵声であった。
歴戦の名将は顔色を変えず、それを予測していたかのように黙って頭を下げた、。それを見た彼の副官であるシュナイダー少佐は全身から怒気を漲(みなぎ)らせて一歩前に出ようとしたが、その肩を上官が掴んだ。
別室に退くと、メルカッツは怒りに震える副官に諭す様に言った―――公は病気なのだ、と。シュナイダーは軽く目を瞠(みは)った。

「病気ですか?それは一体・・・」
「精神面のな」

メルカッツが考えるブラウンシュヴァイク公の病理は、無意識の傷付き易い自尊心だった。本人は自覚していないだろうが、自身がもっと偉大で無謬(むびゅう)の存在である、と、信じているのだ。
それ故に他人に感謝する事が出来ず、自分と異なる考えの所有者を認める事が出来ないのだ。彼と異なる人物は反逆者にしか見えず、忠告は誹謗(ひぼう)としか聞こえない。
随(したが)ってシュトライトやフェルナーが彼のために策を立てたりしたものの、容(い)れられる事なく、かえって彼の陣営を去らなければなかったのだ。当然ながら、このような気質を持つ者は、社会に多種の思想や価値観が存在する事を認めない。

「その病巣は、前にも言ったが五〇〇年にも及ぶ貴族の特権の伝統だ。寧(むし)ろ、公爵は被害者なのだ。一〇〇年前ならあれで通じたかも知れんのだがな」

まだ若いシュナイダーは上官ほど寛容あるいは諦観(ていかん)する気になれなかった。メルカッツの前から下がると、エレベーターで要塞の展望室に上がる。半球面をなす透明な外壁の向こうには無数の星々の輝きが見えた。

「なるほど、ブラウンシュヴァイク公は不運な人かも知れないが、その人に未来を託す人々はもっと不運ではないのか?」

若い士官の憮然とした問いに、星々は黙って沈黙を守って輝くのみだった。



 帝国側から同盟側に話を戻してみる事にする。
八月に入ってバーラト星域外縁部に達した工藤新一率いるイゼルローン駐留機動艦隊は、艦隊を布陣してハイネセン進攻の機会を窺(うかが)っていた。
ハイネセンまでの距離は六光時、約六五億キロメートルである。恒星間を航行する宇宙艦隊にとっては指呼(しこ)の距離と言って良い。この距離までに新一が進出して来たのは軍事的なものだけでなく、政治的な意味もあるのだ。
ハイネセンを選挙する救国軍事会議は、バーラト星域を実効支配出来ない惑星レヴェルの政治勢力に過ぎない事。第一一艦隊の敗北により彼等は宇宙空間における戦力を喪失した事。
以上により、救国軍事会議の全面敗北、クーデーターの失敗、同盟憲章秩序の復活は時間の問題である事―――それ等の諸点を行動により同盟領全域に誇示して見せたのである。効果は絶大であった。
新一の名声―――彼に言わせると虚名―――も、それを増幅させたのは無論である。それまで評議会政府とクーデター派の何れを支持するか決断を下せずにいた者まで、次々と旗色(きしょく)を鮮明にして、新一の下に参集して来た。
各星域の警備隊(スペースエリア・ガード・グループ)、各惑星の巡視艦隊(パトロール・グループ)、退役の将兵などから、義勇隊への参加を希望する民間人まで。もっとも義勇隊の編成は順調にはいかなかった。
新一は民間人を戦争に巻き込む事を嫌ったし、ありていに言えば、戦争に参加したがる民間人の精神構造を疑いたい気分だったが、彼らの自発的な意思は拒否する事は出来なかった。
彼等は同盟憲章にある「抵抗権」―――人民が権力の不正に対して実力行使する権利―――まで持ち出して、渋る青年司令官を押し切ったのである。そこで新一は義勇隊の参加資格に年齢制限を加える事にした。
一八歳未満と五五歳以上の民間人は排除しようとしたのだが、どう見てもビュコック提督と同年代の老人が、自分は五〇歳だ、と、主張する一方、空戦隊の若い中隊長―――元太、歩美、光彦―――を見た一七歳の希望者が、彼等が自分より年長と思えない、と、係官に食って掛かったりして、探や紅子、蘭をして、楽ではない、と、苦笑させた。
新一を喜ばせたのは、故郷に引退していた前統合作戦本部長の服部平蔵元帥が来て、支持を声明してくれた事だった。彼は新一たちが士官学校の学生だった当時の校長でもある。
新一たちは彼を尊敬しているが、息子の平次に言わせると、尊敬はするが、食えない親父、と、いう事だ。しかし敵に回さずにすむ事が新一たちには嬉しかった。そんな事はグリーンヒル大将だけでたくさんだった。
以前は救国軍事会議に同情的な言動のあった人々も多く参加して来た。「スタジアムの虐殺」が知られた後でもあったが、クーデター派を非難する彼らの声は一際(ひときわ)大きかった。生真面目な美和子、渉、真などは彼らの変節や日和見の態度を手厳しく批判したが、彼女たちに対して新一は言うのだった。

「人間は誰でも身の安全を図るものです。オレは形勢の有利不利より蘭や友人たちを守るためには二者の間を泳ぎ切る自信はありますけど、多数の人間は形勢の有利な方に靡(なび)くのは当然の事。まして他人なら尚更の事ですね」

歴史を見ても、動乱時代の人間というものはそういうものである。そうしなければ生きてはいけないし、状況判断能力と柔軟性、と、いう表現を用いれば非難する事もない。寧(むし)ろ、不動の信念、などという代物の方が往々にして他人や社会に害を与える事が多いのである。
民主共和制を廃して銀河帝国皇帝となったルドルフ・フォン・ゴールデンバウムなど信念の強さでは誰にも及ばない。ハイネセンを占拠している救国軍事会議の面々も信念によって行動しているはずだ。信念と言えば、新一は、必勝の信念、などというセリフを聞くとこう言うのだ。

「信念とやらで勝てるなら、これほど楽な事はない。誰だって勝ちたいんだからな」

新一はそう思っている。彼に言わせるなら、信念とは願望の強力なものに過ぎず、何ら客観的な根拠を持つものではない。それが強まれば強まるほど視野は狭くなり、正確な判断や洞察力が鈍る。信念、と、いう単語は辞書に載ってれば良く、口に出して言うものではない。
もっとも彼を良く知る工藤艦隊の幕僚たちに言わせると、蘭を守る事が新一の信念であり、偉そうに言える立場じゃない、と、苦笑するのだった。
それにしても、建国の父の名を与えられた惑星ハイネセンを武力攻撃する史上初の人物は帝国人ではなく、新一なのである。民主政治を守る、と、いう信念の下には涙を呑んで故郷を攻撃する事も躊躇(ためら)わない、などと言う悲壮感の美学は新一とって無縁であった
士官学校の頃から新一は大艦隊同士の決戦による覇権争奪が古いのではないか、と、思っていた。必要な時間に必要な空間を確保し、一定の宇宙空間を、一定の時間、使用出来ればそれで良いのだ。
恒久的なスペースの確保を狙うから、自(おの)ずと航路帯、戦場も限られ戦わざるを得なくなる。しかし敵のいない場所を、敵がいない間だけ使用できれば良いのではないか、と。
この戦略思想を新一は“宙域管制(スペース・コントロール)”と、名付け、それまでの艦隊決戦主義を“宙域支配(コマンド・オブ・スペース)”と、して、それより一段と柔軟で合理的な戦略思想を体系化してみたいと思っているのだった。


 その頃、惑星ハイネセンの統合作戦本部の一室で一人の男が同志を励ましている。

「まだ、終わったワケではない。我々には“月女神(アルテミス)の首飾り”がある。これがある限り、工藤新一といえどもハイネセンの重力圏内に突入する事は出来ない」

グリーンヒル大将が力強く言うと、一同の顔に僅かな光が射したのを見て、彼は繰り返した―――まだ、我々は負けていない、と。


「我々はまだ勝ってはいない」

メインスクリーンに浮かび上がる翡翠色の美しい惑星に視線を投げながら、新一は幕僚たちに言った“月女神の首飾り”の事など、彼の念頭にはなかった。どれほど強力なものであれ、兵器や要塞などのハードウェアを一度も恐れた事はない“月女神の首飾り”を無力化する手段などいくらでもある。
有人惑星を武力占領するのは、容易な事ではない。それ自体が巨大な補給・生産基地であり、それを攻撃する側は大量の軍需物資を必要とする。アムリッツァ会戦の初期において、同盟軍の多くが有人惑星を占領しえたのは、帝国軍の戦略的後退の結果であり、いわば罠への道に餌をばら撒かれ、みさかいなく食いついたものである。
ハイネセンの場合はそうはいかないが、最大の弱点は“月女神の首飾り”というハードウェアに対する信仰にある。それを叩き潰してしまえば、同時に抵抗の意思も挫けるだろう。
三六〇度、全方向に対して攻撃能力を有する一二個の軍事衛星。ありとあらゆる兵器を装備し、太陽光によって半永久的に動力を補給する準完全体鏡面装甲の一二個の大量殺人システムだが、それは一度も武勲を立てる事もなく新一の手で破壊されるのだ。
彼が恐れているのは、民間人と軍人とを問わずハイネセンにいる一〇億人の人間の存在だった。彼等は全てクーデター派にとって貴重な人質となりうるのだ。これに対して、新一は何らかの手を打たなくてはならなかった。
彼らの執念に打撃を与え、無益な抵抗をさせないようにするにはどうしたら良いのか。このクーデター自体が当人たちの意思はともかく、銀河帝国のローエングラム侯ラインハルトによって計画された、と、いう事を明らかにするのだ。
物的証拠はないが、現に帝国では大規模な内戦が発生している。それをもって状況証拠とするのは可能であろう。あるいはクーデター鎮圧の後、物的証拠を見出せるかも知れない。
必要なのはそれを証言する人物である。幕僚たちとの協議の末、その役目は新一に決まった。詳しい台本や物的証拠が必要なら、探や紅子に指示して作って貰っても良い。アンフェアな事は承知の事だがやるしかないのだ。
それ以上に重要なのは“月女神の首飾り”に対する攻撃方法であるが、彼には一隻の戦艦、一人の人命をも犠牲にしない戦法を既に脳内に描いていたのである。
 通信スクリーンに新一が現れたのは、窮地に立った救国軍事会議のメンバーたちにとって不快極まる驚きだった。彼は、今回のクーデターがローエングラム候ラインハルトの策謀によって引き起こされた、と、途方もない証言をして彼等の大義を全面的に否定したのだ。
今や、救国軍事会議が支配しているのは惑星ハイネセンの地表のみである。ほかの三次元的空間は尽(ことごと)く敵の手中にある。
敵―――工藤新一という青二才の司令官。彼は救国軍事会議唯一の宇宙戦能力を有していた第一一艦隊を撃破し、クーデターの成果をハイネセン一星にだけ封じ込め、去就の定まらない人々を自軍に引き込んでしまった。見事な力ではあるが、グリーンヒルは新一に対して一つ言うべき事があった。

「工藤新一という男を見損なっていたかも知れない。我々が帝国の手先だ、と、いう見え透いた政治宣伝をするとはな。ああも我々を貶(おとし)める必要はあるまい」

一同が大きく頷く。それを見ながらグリーンヒルは続けた。

「今回の行動は我々自身の意思によって始まった。リンチ少将が帝国から帰還し、見事な作戦計画をもたらしてくれたからこそだ。ローエングラム候など関係ない・・・そうだろう、リンチ少将?」

リンチは酔いに濁った目を赤く光らせると、何かに駆られたかのような表情をつくった。

「お褒め頂いて恐縮だが、あの作戦を立案したのはオレじゃない」
「何!?」

リンチを除いた面々の顔を不吉な疑惑が斜めに過(よぎ)った。誰もが躊躇う中、グリーンヒル大将が質問した。

「では誰だ。誰があれだけの作戦を立てた?」
「銀河帝国元帥、ラインハルト・フォン・ローエングラム侯爵」

あらためて一同の頭上に落ちかかった沈黙は、無言の悲鳴に満ちていた。どの顔にも血の気がない。

「何だと・・・」
「工藤新一・・・何時もオレを見下したような眼で見ていたあの孺子の発言が一〇〇点満点の解答だな。このクーデターは金髪の孺子が考えた代物なんだ。ヤツは内戦で貴族共を片付ける間、同盟に内輪揉めさせておきたかった。アンタ等は金髪の孺子の掌の上で下手なダンスを踊ってたのさ。これが金髪の孺子がオレに示した作戦計画だ」

そう言うと、リンチは埃に塗(まみ)れたジャケットのポケットから小さな薄いファイルを取り出して、グリーンヒルに向けて放り投げた。引っ手繰るように彼はそれを取り上げてページを捲(めく)る。
数ヶ所の辺境星域で騒乱を起こす。それにより首都の兵力を分散させ、真空状態を作り上げた状態に乗じて政治・軍事の要地を占拠する・・・グリーンヒルは荒い呼吸をするとファイルを投げ出した。

「そこまではシナリオ通りに進んだが、その先は八方塞(ふさ)がりになってしまった。演技者であるアンタたちの実力がなかったからさ」
「帝国軍の提督にしてやる、と、言われてローエングラム候の策略の片棒を担いだのか!?」

そう言ってリンチに詰め寄ったのはエベンス大佐である。両目は怒りに燃え、ブラスターを引き抜こうという勢いである。

「それがあったのも事実だが、それ以上に自己の正しさを信じて疑わない人間に、弁解のしようもない恥をかかせてやりたかったのだ。救国軍事会議というご大層な代物が、帝国の野心家の道具でしかなかった、と、分かった気分は?」

語尾がアルコールに塗れたリズム感を欠く、異様な笑いが室内にいる人々の心を酸の様に侵食した。エル・ファシルでの逃亡で、過去の人生を汚泥に浸し、弁解の余地も無く酒浸りの日々を過ごして来たリンチは、その間、誰に向けようもない怨念で自らの身を焼き続けて来たのだろうか。狂笑するリンチ以外、微動だにしなかったグリーンヒルたちの耳にオペレーターの強張った声が響いた。

「敵の攻撃が始まりました!」
「一二個の衛星のうち、どれに攻撃を仕掛けて来たのだ?」
「一二個全てに同時にです!!」

一同は視線を互いに交差させた。驚きより戸惑いが彼等の表情にある。
軌道上を自由に動く一二個の衛星は互いを防御・支援するようプログラムされている。複数の衛星を同時攻撃した方が良いが、戦力を分散させる危険もある。
一二個全てを同時に攻撃するとは、彼等にとって常識を外れていた。工藤新一は何を考えているのか?
スクリーンが作動し、衛星に向かって宇宙空間を直進する物体を捉(とら)えた。その正体が判明した時、室内にをざわめきが駆け抜けた。

「こ、氷・・・」

グリーンヒル大将は呻(うめ)いた。それは巨大な―――戦艦より遙かに巨大な氷の塊だった。




続く





注:「銀河英雄伝説」は田中芳樹先生、「名探偵コナン」「まじっく快斗」は青山剛昌先生の著作物です。


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