FLIERS LOVE



by.中村亮輔様



〈2〉



「よお、工藤。どないしたんや?何や難しい顔しとったけど、具合でも悪いんか?」
突然大阪弁の男に話しかけられ、オレは回想をやめた。
「何でもねーよ。バーロ!ちょっと昔の事を思い出していただけだよ。っていうか急に話しかけるな!」
突然話しかけてきた大阪弁の男は服部平次。
オレと同い年の副操縦士だ。
だからオレはよくこいつと一緒に仕事をする。

「昔の事……か。それはどんな事何や?元カノの事か?」
服部はニヤニヤしながら訊いてきた。
オレは無言で服部の頭を殴った。
「痛ー…何も殴らんでもええやんか。」
「オメーが余計な事戯れ言ほざくからだ!」
「戯れ言や言うても俺の考えそっくりそのまま口に………」
「服部〜〜オメー、まだ言うか?」
「い、いや…もう言わへんさかい、機嫌直してーな、工藤〜」
「だー!わかったからくっつくな!暑苦しい!」
オレはそう言うが早いか、服部を押し飛ばした。
「何も押さんでもエエやんけ。」
「うっせー!バーロ!それよりさっさと仕事行くぞ。」
「へいへい。ところで今日はどこ行きなんや?」
「PM2時発ロンドン行き、そして着いたら一時間休んで今度は現地発のやつで戻ってくる。」
「か〜。国際線かい。疲れるわ。」
「何言ってんだ。オレ達が動かすのは、離着陸だけで、あとは全部オートパイロット(自動制御装置)がやってくれるだろ。」
「せやかて……」
「はいはい、行くぞ。」
そう言ってオレはてこでも動かない服部を引きずってカフェテリアをあとに
した。

事務室に行く途中でオレ達は服部と同じ大阪弁のスチュワーデスに話しかけられた。
「平次〜、工藤君〜。」
話しかけられた方向を見ると、服部の幼馴染みの遠山和葉が走ってきた。
「和葉。どないしたんや。」
「いや、恋人ほっぽって仕事に打ち込むどっかのアホを捜しにきただけや。」
「なんやて?いつ俺がお前のことほっぽった?」
「いつもやんか。毎日毎日、仕事仕事でろくにデートもしてくれへんやんか。これからも仕事ばっかりやったらあたしもう工藤君に鞍替えするさかい。よぉ〜、覚えとき。」
「なんやて〜。」
この時オレは心の中で
『……また始まったよ。この二人の名物、夫婦喧嘩が……』
と思っていた。
このままだと埒があかないので、仲裁に入った。
「はいはい、夫婦喧嘩はよそでやりましょう。」
「「誰も夫婦喧嘩なんぞしとらへん!」」
……恐い恐い…。
「おい、服部。そろそろ時間だ。行くぞ。」
「ほんならまたな、和葉。」
「待ってえな。平次。」
その時オレは
『……いつの間に仲直りしたんだ?』
と思ったが口には出さなかった。
そしてオレ達は漸く事務室に入った。



〈3〉に続く。





(作者の言葉)
FLIERS LOVEの第2話です。今回は浪速カップルを登場させました。〔大阪弁が間違っていたらごめんなさい。〕
次回は漸く蘭が登場します。
その他にも某怪盗(←この話ではやっていませんし、父親も生きています)や某空手家、彼等の彼女も登場の予定です。

by 中村亮輔



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