名探偵コナンAND・NOWシリーズ


第11話 結婚式協奏曲


招待状(1通目)、毛利蘭×工藤新一。



数日後、帝丹高校の教室にて…。


帝丹高校の男子生徒達が結婚式イベントの事を話していた…。

「オイ、聞いたか?あのイベント。」
「ああ。女子達が噂してるからな…。」
「俺達には関係ないぜ…。出席しようにも相手がいねーし…。」
「だよな。ペットの結婚式なんかに出てもつまらねーし、ましてや男どうしなんてな…。」
「だよな。毛利みたいな良い女は皆相手が決ってるし…。」

そんな話をしていると、一人の男子生徒が現れた。
彼はいわゆるプレイボーイと呼ばれる程の好青年で実際何人かの女子が密かに相手として考えていた。
「何だよ?オメーら随分としけた面してるじゃねーか?」
「悪かったな…。」
「俺達はお前と違ってもてねーからな…。」
「巷じゃ一万組の合同結婚式イベントで盛り上がってるみてーだが、俺達みたいな独り者には関係ねーんだよ…。」
「つまんねー野郎達だな…。折角のイベントなんだから駄目で元々と思って申し込んで見ろよ?」
「ふん!其処まで言うのなら、オメーは誰に申し込むんだよ?!」
「当然、毛利。」
「「「「なっ?!?!?!」」」」
「ほ、本気かよ?!」
「命知らずも良いとこだぜ…。」
「何ビビッているんだよ?どうせ、あの名探偵は事件でいない可能性の方が高いから俺が代理で…。」

その時、彼は気付くべきであった。
彼に話しかけている男達が真青な顔で首を振っていた事に…。

その時、突然…。

「悪ぃな…。そんな事まで気を使ってもらってよぉ…。」

地獄の底、否魔界の最深部から聞こえてきそうな低い声と共にその男(あえて誰とは言うまい…。)は肩を掴みながら話しかけてきた…。

肩を掴まれた男は後に語る…。

「奴は絶対に魔王だ!!俺の肩を掴んだ手はマイナス一億K(ケルビン≪※1≫)ぐらいに感じたんだ!!!誰も信じてくれないと思うが、毛利は工藤の暗黒の力を押さえる為に神が遣わした大いなる生贄なんだ!!!」

≪※1≫ケルビン…絶対温度の事、人類が知りえる最低の温度単位で0K(ケルビン)=−273.15℃。理論上、マイナスになる事は(人類が知りうる限り)絶対にありえない。

その時、彼は余りの恐怖に文字通り凍りつき、真っ青になって答えた。

「い、いえ、そ、そんな事は有りませんです…。はい…。」
(((おいおい、敬語や文脈がメチャクチャだよ…。)))

他の者はそう思ったが、口に出す勇気(無謀とも言う)がある人物は誰一人としていなかったと言う…。

「そんなに気を使ってもらえるなら、頼んでも良いか…?」
「わ、私ごときで宜しければ幾等でも…。」
「そっか。じゃあ、代理を頼もうか…。」
「あ、あの、代理と言うと…?」
「あ?んなもん決ってるだろ?警視庁の依頼の代理だよ…。」
「は…?!」
「あったりめぇだろーが!俺ですら見た事の無い蘭のウエディングドレス姿を…。」

ミシッ…。

肩を掴んだ手に少し力が入ったようだ…。

「俺ですら聴いた事の無い蘭の誓いの言葉を…。」

ギリギリ…!

更に力がこもって来たようだ…。

「俺ですらやった事の無い蘭との誓いのキスを…。」

ミシミシッ!

この時、彼は掴まれた方の肩にヒビが入ったような気がした…。

「何でオメーらごときにくれてやらなきゃいけねーんだよ?!」

バキャッ!!

この時、彼は自分の肩が砕け散った…。と、本気で思った。

「そうは思わねーか?オメーら?」
「え゛?!あ、そ、そうですね…。そう思います…。」

突然話題を振られた男達は、そう言って愛想を振った…。
だが、この時あまり奴の恐ろしさを知らない後輩連中がある質問をした。

「あ、あの、工藤先輩…。」
「うん?何だ…?」
「も、もし、仮に毛利先輩に結婚を申し込んだ男がいたらどうするんですか…?」

ある意味、当然の質問である…。
だが、彼の事をよく知っている人間にとってその質問は、聞き出す答えの方が恐ろしくて出来ないものでもあった…。

「あ?んな事か…?」
「は、はい…。」
「そうだな…。そんな事する野郎は失踪でもしてもらおうかな…?」
「失踪…?」
(“ぶっ殺す!!”じゃねーのか…?!)

彼をよく知っている者達はそう思った…。

「し、失踪って…?」
「まぁ、早い話が富士の裾野にある樹海に消えてもろうんだな…。」
「そ、それは殺すと言う事ですか?!」
「おいおい、人聞きの悪い事をいうなよ…。ヘタに殺したら遺体の後始末をしなきゃいけねーだろ?オマケに殺人となれば時効まで15年も逃げ回らなきゃいけねーんだぜ?」
「は、はぁ…。」
「だったら、遺書でも残してもらって失踪してもらったら、単なる自殺として処理されるじゃん。」
(な、成る程…。)
(さ、さすが日本警察の救世主、そこまで考えるか…。)
(ある意味、“ぶっ殺す”より恐ろしい…。)

男達はそう思った…。
が、口に出して言う勇気がある者は誰一人としていなかったのは言うまでもない…。

「それとも群馬の山奥で事故にでもあってもらおうと言うのも有りだな…。」

そうブツブツ呟きながらその男(誰であるかは判りきっているが、あえて語るまい…。)は立ち去って行った…。

後に残された男達は真っ青な顔でひそひそ話し合っていた…。

「せ、先輩、今のは例え話ですよね…。」
「お前、そんなに死にたいのか…?」
「へ…?!」
「お前等、米花町が“性犯罪撲滅モデル地区”に指定されてるの知らねーのか?」
「性犯罪撲滅モデル地区…?」
「つまり、痴漢や強姦のようないわゆる性犯罪が起っていないんだよ。」
「言われてみれば、確かに…。」
「でも、それって被害者の女性が訴えないだけで本当は有るんじゃ?」
「いや、ちゃんとした理由が有るんだ…。」
「理由…?」
「ああ。考えてもみろよ?痴漢常習者にとって米花町は生きて帰る事の出来ない暗黒の地なんだぜ?」
「な、何で…?」
「まだ判らなねーのか?!そいつ等が真っ先にターゲットにしそうな女性は誰だと思うんだよ?」
「それは美人だし、スタイル抜群だし、当然毛利せんぱ………………………………。」

後輩連中はそこまで言ってようやく気付いた。
そう、痴漢ども(その他性犯罪者を含む)にとって彼女は有名人(空手の東都チャンピオンとして有名)にしてスタイル、ルックス共にトップクラスであり、しかも本来恐がりでもある彼女は夜道などはビクビクしながら歩いている筈である…。
正に狙ってくれと言っていいようなものだろう…。(もちろん、彼女にその自覚が無いのは言うまでも無い。)
だが、そうして成功したとしても、彼等の末路は哀れなものである…。
何故ならその時、超個人的な執念深さで日本警察の救世主が文字通り地獄の果てまで追い掛けるからだ。
そして最初の警告(もちろんその時も警察に突き出す事は忘れない)を守らないバカの末路はもちろん…。


昼なお暗い富士の樹海のど真ん中、そこには野ざらしのドクロが幾つか転がっていた…。


その多くは自殺志願者の哀れな末路だが、中には自らの意思ではないのにここに来ている連中もいる…。

その中にはある一人の少女を何回も痴漢しようとしたり、追い駆けまわそうとしたバカ共が含まれていた…。


ヒュウゥゥウウゥゥ………。(←男達の心に寒寒とした風が吹き込んだ音)

「じ、じゃあ群馬の山奥でって言うのは…?」
「以前、工藤が愚痴ってたんだよ…。そこにすげーへッポコな刑事が居るんだって…。」
「ああ、俺も聴いた事がある。俺がその気になれば幾等でも誤魔化せるんじゃあねーのかって愚痴ってた…。」
「そ、それじゃあ…。」
「群馬県警は事故だと思っても実際には…。」
「殺人事件になるのが幾つかあるんじゃねーのか…?」

チーーーーーーーーン。(真っ青)

その後、帝丹高校の男達が毛利に結婚を申し込む事はもちろん、ナンパする事すらタブーになったのは言うまでも無い…。
そしてこの瞬間、蘭の結婚式イベントの相手役が決った事も…。


続く



第11話「結婚式狂想曲・プロローグ」に戻る。  第11話「結婚式協奏曲・2通目 遠山和葉×…?」に続く。