第１１話・結婚式協奏曲　対決！！キッドＶＳ最強の探偵団！！！（前編）

名探偵コナンＡＮＤ・ＮＯＷシリーズ

第１１話　結婚式協奏曲

対決！！キッドＶＳ最強の探偵団！！！（前編）

キッドが予告状をばら撒いた後、警察の対策本部では…。

中森達は対キッド対策特別本部で予告状の解読と今後の対策を練っていた。

「先ずは予告状の解読が先決ですね…。」
「そやな、工藤ハン。キッドが何時現われるか判らん以上、対策の立てようがないからな…。」
「ですね、本部長。」

優作と平蔵が予告状をみながら考え込んでいると、かなり落ち込んだた様子の小五郎が英理に引っ張る様に現われた。

「貴方も“眠りの小五郎”と呼ばれてるんだから、少しは協力しなさいよ。」
「るせぇ！こんな事本部長殿達が居る前で言いたかねーが、俺はキッドに今回のイベントをメチャクチャにして欲しいと願っているんだ！！」
「貴方！！」

英理がそう小五郎をたしなめながら、申し訳なさそうに平蔵達を見つめた。

だが、その時…。

「毛利さん、その気持ちよぉ判りますわ…。実を言うとこのワシも密かにそれを願っとるんですわ…。」
「と、遠山刑事部長殿…。」
「そんな…。現職の刑事部長のセリフとは思えませんわ。」
「中森ハン、アンタなら判ってもらえるハズや…。目の中に入れても痛ないぐらい可愛がってる大事な娘が、幾等本人同士が想いあってたとしても嫁にやる父親の寂しさちゅうモノが…。」

そう言われた中森は突然泣き出してしまった。

「毛利さんも遠山刑事部長も卑怯ですわ！！わ、ワシが折角キッドを口実に我慢していた想いをぶちまけるなんて…！！！」

そう言って声を詰まらせて泣き続ける中森を平蔵と優作が慰めた。

「判ってましたよ…。」
「中森ハン、以前メモリーズエッグの件で《注：詳しくは映画世紀末の魔術師を参照》部下達に言うとった事忘れたんですか？“キッドは人を煙に巻く天才だ！だからキッドと出会っても慌てず、騒がず、どんな事が起こっても冷静さを失ってはイカン！慌てて冷静さを失えば奴の術中に嵌ってしまう事を忘れてはならん！！！”と…。そう言ってる本人がキッドを口実にとか言って冷静さを失のうてますやんか…。管轄外は承知の上やけどワシが２課の連中の指揮を取りますよってに…。」
「平蔵本部長の言う通りですよ…。久しぶりの現場復帰に色々拙い部分も有るかも知れませんが、私の息子も居ますし…。」
「工藤ハンの言う通りや…。ワシの息子も結婚式で舞い上がっとっても事件が起これば冷静さを取り戻すと思いますよってに。」

その後、小五郎、銀三、遠山刑事部長の３人は近くの居酒屋でチビチビと自棄酒を飲む事になったのは言うまでも無い…。

　　☆☆☆

同じ頃、新一達は…。

新一、平次、探、そして快斗の４人は係員によって別室に集められ黒の燕尾服（新郎の正装）に着替えさせられていた…。
４人とも場慣れしているのかすっかり落ち着いて…と言いたかったが一人例外がいた。

「なぁ工藤、どないしよ～？！俺、和葉とホンマに結婚せなアカンねん～！」
「何を今更…。第一、他の女と結婚する気すらねーくせに…。」
「鬼の平蔵の息子さんとは思えないぐらいうろたえてますね…。」
「全くだ…。（まぁ、その方が楽で良いけど…。）」

其処に朋子が現われた。

「ようこそ、ロイヤルガードの皆さん。」
「「ロイヤルガード？！」」
「どう言う事でしょうか？朋子奥様？」
「言った通りの意味ですよ。日本警察の救世主工藤新一、大阪府警本部長の息子にして西の名探偵と言われている服部平次、そして警視総監の息子にして怪盗キッド専任の探偵白馬探…。あなた方の慧眼《物事の真実を見抜く鋭い眼力又は見解》をもってキッドのマジックを打ち破って頂きたいのです。」
「んじゃあ、俺は？」
「貴方は若くして亡くなった伝説のマジシャン黒羽盗一の一人息子快斗君ですね…。その天性のマジシャンとしての目で彼のトリックを暴いて欲しいのです。」
「おばさん、この４人で“人魚の瞳”を守れと…？」
「いいえ。後一人、園子の相手役を勤めるＫ－１グランプリの優勝者が居ますわ。」
「どちら様なんですか？」
「それは未だ教えられません…。彼はキッドに対する最後の砦。いかにキッドが変装の名手にして希代のマジシャンであったとしても格闘家になりすましたり、対峙するのは難しい筈ですわ。」
「なるほど、賢明ですね…。」
「工藤探偵も朋子奥様もそれは杞憂と言うものですよ。キッドは既にこの中に潜んでいるんですから…。」

そう言って探は快斗を睨みつけた。

「白馬、オメー未だ俺の事疑っているのかよ？！以前オメーと一緒にキッドを目撃しただろーが！！」（マジック快斗３巻）
「確かに…。だが、キッドの残した毛髪と言う動かぬ証拠がある以上、君がキッドの最有力容疑者である事は間違い無い…。」
「だけどよー白馬、俺の父さんのファイルによるとキッドが最初に現われたのが１９年前のパリ《コナン１６巻》だったんだぜ？快斗がキッドなら年齢が合わねーんじゃねーのか？」
「確かに、中森警部も２０代の頃から追いかけて来たと言ってましたからね…。」
「だろ？だからいい加減俺を疑うのは止めろよな。」
「工藤探偵、僕はキッドが２人いると推理してるのですよ。」
「｢２人？！｣」
「そう、２人…。一人が黒羽快斗君…。そしてもう一人、中森警部が２０代から追いかけているもう一人のキッド…。」
「成る程、一様筋は通っているな…。」
「一様とはどう言う意味ですか？」
「オメー、その髪の毛をキッドから直接引っこ抜いた訳じゃねーだろ？」
「確かにそうですが…。」
「だったら、キッドが捜査を混乱させる為にわざと中森警部の知り合いの髪の毛を残した可能性だって有るんだぜ？」
「ですが、そう簡単に髪の毛が手に入るとも思えませんが…？」
「入るんだよ。普通の人なら日に数十本ぐらいの単位で抜け毛が有るんだ。オメーだってくしでブラッシングすると髪の毛が絡んでいた事があるだろーが。」
「確かに、毎日ブラッシングしていても髪の毛が絡みますが…。」
「だったら、キッドが洗面所に偲び込んで髪の毛を盗む可能性が有る筈だぜ？」
「ぐっ…！！」

そう言って言葉を詰まらせた探を新一が部屋の隅に連れて行った。

「ったく、そんなに疑わしいならわざと無警戒を装って尻尾を出すのを待ってた方が良かったのに…。」（ひそひそ）
「どう言う事ですか？工藤探偵…？」
「父さんからこう言った狩の仕方を教えてもらったんだよ。草食動物や犯罪者というのはえてして警戒心が強いのだって。」（ひそひそ）
「成る程、それで…？」（ひそひそ）
「だからヘタに動いて余計な警戒感を与えるよりも、わざと無関心を装うんだよ。」（ひそひそ）
「成る程、わざと無関心を装う事で相手はそのうち警戒していたのは気のせいだと思って警戒を解く…。」（ひそひそ）
「そこを一気にと言う訳さ…。」（ひそひそ）
「成る程、さすが日本警察の救世主ですね…。」（ひそひそ）
「まぁ、父さんの受け売りだけどな…。」（ひそひそ）

そんな２人の秘密会議を快斗はジト目で見つめていた…。

　　☆☆☆

　
同じ頃、対策本部では…。

優作と平蔵は予告状と未だ睨み合っていた。

「それにしてもこの予告、まるで予言やな…。」

そう言って予告状を見つめる平蔵。
其処には、次のような事が書かれていた。

〔今宵、挙式を挙げるカップル達に闇の帳が下りる時、白き魔盗現われ“人魚の瞳”奪われるであろう。その時、いかなる真実もその魔盗の前に霞まん…。〕

「“白き魔盗”と言うのはキッドの事なんでしょうね…。」
「まぁ、他に考えられへんからな…。」

其処に茶木警視が怒りながら現われた。

「平蔵さん！これは一体どう言う事ですか？！貴方は大阪府警の人間でここは管轄外の筈ですよ？！オマケにさっき部下達に聴いたら、中森君が毛利探偵や遠山刑事部長と一緒に居酒屋で自棄酒を煽っているそうじゃないですか？！」
「まあまあ茶木ハン、ちゃんとその辺の話をしますよってに少し落ち着いてくれまへんか？」

その後、平蔵と優作が今までの話を掻い摘んで茶木に話した…。

　　☆☆☆

一方、新一達も朋子から同じ予告状を受け取り、推理を始めていた。

「予告と言うより予言だな…。これは…。」
「確かにそうですね…。」
「相変らず俺らに喧嘩売っとるような内容やな…。」

平次も予告状を見た瞬間、今さっきまでうろたえていたのは何だったのかと言うぐらい落ち着きを取り戻し、推理に参加していた。
そんな３人を無視する様に快斗は窓の方をボーっと見ていた。
だが、それはあくまで見た目だけの事で、本当は窓越しに（正確には窓に彼等を映して）様子を伺い、彼等の推理に聞き耳を立てていた。

（しょうがねーだろ？今回はいきなりの事で準備に手間取って予告状まで気を回す余裕が無かったんだよ…。）

そう思いながら…。

　　☆☆☆

　

同じ頃、対策本部では。

茶木は今までの話を聞き、ようやく納得した様子だった。

「話は判りましたが、ここは東京です！ですから捜査の指揮権は私が握ります！！」
「茶木さん、こんな事言いたくは無いんですが、今はそんな縄張り争いしてる場合ではないと思いますが…。」
「工藤さん！今だから言うんです！！キッドが現われた時、指揮に混乱が起こればそれをキッドに付け込まれてしまうのは確実です！それを事前に防ぐ意味でもその辺をしっかりとしなければならないのです！！！」
「茶木ハンの言う通りやな。ここはお任せしますわ。」

平蔵の言葉に少し安堵したのか、茶木は落ち着きを取り戻し、早速予告の解読に入った。

「とにかく予告状の解読が先決ですな。」
「そうですね、予告時間が判らないと対策の立てようが有りませんからね…。」
「時間を示しとると思われるのはここだけやな。」

そう言って平蔵は予告状の最初の一文を指差した。

「“カップルに闇の帳が降りる時”と言うぐらいだから今夜だと思うが、時間が判らん。」

茶木が考え込む様に呟いていると、優作が首を捻っていた。

「変ですね…？」
「何がですか？工藤ハン。」
「今日は満月でしかも一日中快晴だと天気予報で言ってましたからね。」
「なんやて？！それやったら、今晩は月明かりがあるから闇の帳が降りる事があらヘンやんか！！」
「すぐに確認だ！！」

　　☆☆☆

同じ頃…。

新一達も同じ事で悩んでいた。

「工藤探偵、その話は本当ですか？」
「テレビの天気予報で言ってたけどな。」
「可笑しいやんか！それやったら今晩は月明かりがあって闇の帳が降りる事があらヘンやんか！！」
「そうなんだよ。」
「早速、私の叔父の研究室で調べてもらいましょう。」

　　☆☆☆

　

数分後、対策本部では…。

「工藤さん、本部長、キッドの現われる時間が判りましたぞ！！」

２人は気象庁に問い合わせていた茶木からの意外な言葉に驚いた。

「なんやて？！」
「ど、どう言う事ですか？！茶木警視？！」
「さっき気象庁に問い合わせたら、今夜は皆既月食があるそうなんですわ！！」
「皆既月食やと？！」
「なるほど！満月の夜に月食という名の闇の帳が降りる時と言う意味だったのですか！！」
「そのようですわ！！」

　　☆☆☆

　

一方、此方でも同じ結論に達していた。

「月食？！」
「白馬、それホンマか？」
「ええ、先ほど確認しました。間違い無いそうです。」
「よっしゃ！！早速オヤジに頼んでサーチライトや、バッテリー付きのライトで光源の確保や！！」
「そうですね！！」
「オッ、オイ、待てよ。」

白馬と平次が喜び勇んで朋子に光源の確保を依頼しているのを新一が慌てて止めていた。
それを快斗は無関心を装いながら聴いていた。

（まぁ、これだけの錚錚たる面子が揃っているんだ。予告の暗号がすぐに解かれるのは計算の上だぜ…。だけど平に白馬、光源の確保が簡単に出来るかな？）

　

　　☆☆☆

同じ頃、対策本部でも同じ事が行われていた。

「待って下さい！茶木警視！！光源の確保は恐らく無理です！！」
「何ですって？！どう言う事ですか？工藤さん！！」
「それは…。」

優作が理由を述べようとした時、朋子がかなり怒った様子で現れた。
それに気付いた茶木が早速、サーチライト設置の許可を得ようと話し掛けた。

「奥さん、ちょうど良かった！実はキッドの事でご相談が…。」
「茶木さん、実は私も同じ事で来たんですよ。」
「それはちょうど良かった！実はキッドが今夜の月食に現われる事が判りましたので、是非奥さんに…。」
「申し訳有りませんが、私はそれを止めに来たんですよ。」
「ええっ？！」
「？？！」
（やはり…。）
「お、奥さん、それは一体どう言う事なんですか？！」
「それは…。」
「その月食を利用して何らかのイベントを企画しているから…。じゃないですか？奥さん。」
「な、何ですって？」
「そうか！奥さんは今夜の天体イベントに合わせて日程を組んでたんか！」
「ええ、その通りですわ。工藤さん、服部さん。」

　

　　☆☆☆

一方、新一達も同じ事を話し合っていた。

「だから待てって言ったんだよ！！今頃園子のおばサン対策本部に向って行ってる筈だ！」
「我々の推理を向こうもすると踏んで、先手を打って止めに行ったのですね…。」
「工藤、お前気付いとったんかいな？！」
「いや、白馬から聴いた時にひょっとしたらと思ったんだよ。」
「なるほど、朋子奥さんは最初からその事に気付いて今回のイベントをこの日に合わせたのですね。」
「ああ、多分な…。」
（そうさ、名探偵。あの奥さんはそのつもりでこの日に合わせてたんだよ…。）
「それやったら、ライトを使う事は…。」
「恐らく無理でしょうね…。」

　　☆☆☆

一方、対策本部では…。

「しかし奥さん、キッドが月食の時間に現われる事が確実な以上、黙って指を咥える訳には…。」
「それを如何にかするのが貴方がたの仕事の筈ですよ。では、私はイベントの最終打ち合わせが有るので…。」

そう言い残して、朋子はさっさと対策本部を出て行ってしまった…。
後に残された者達は、しばし呆然としていたが…。

「ほ、本部長、暫らくここをお願いします！ワシはもう一度、奥さんを説得して来ますので！」

そう言い残し、茶木は朋子を追いかけて行った。

後に残された２人は…、

「工藤ハン、奥さんの説得出来ると思いますか？」
「多分無理でしょうね…。」
「そやな。ほんならワシは自衛隊の知り合いに頼んで軍用の暗視スコープを用意してもらいますわ。」
「そうですね。私も米軍の知り合いに頼んでみますよ…。」

そう言って、２人はそれぞれの携帯を取り出した。

　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　★　　　　　　　☆

　

男性陣が対キッド対策に追われている頃、女性たちは別室でひたすらお色直しをしていた。

　

毛利家の場合…。

「きゃあ！蘭ちゃん似合っているわよ～！！」

超ハイテンションな有希子はそう言いながら真っ白なウエディングドレスに身を包んだ蘭の化粧をしていた。

「お、おば様…。」（／／／／／）
「んもぅ、おば様なんて他人行儀な言い方しないで～！“お義母様”って呼んでよね～！！」

そんな蘭と有希子のやり取りを英理はかなり呆れた顔で聴いていた。
そして、蘭のドレスを見て不思議そうに聴いた。

「有希子、このドレスどう見ても特注のような感じがするんだけど？」
「あら？英理、ようやく気付いたの？これは蘭ちゃんが１６歳の時に注文した特別製よ。このドレスを当時一人暮しを始めたばかりの新ちゃんに送った時にこんな逸話が残っているんだから。」

回想、約２年前のロスにて…。

『母さん！！何なんだよ、これは？！！』

新一は国際電話で文句を言って来ていた。

「あら？新ちゃん、見て判んないの？そんなんでよく探偵を目指すなんて言えるわね～！」

『バーロぉ！俺はこれが何なのか聞く為にわざわざ国際居電話をかけてるんじゃねー！！どう言うつもりでこんな物を送りつけたんだ？って聞いてるんだ！！』
「だって、新ちゃん一人暮し始めたでしょお？！」
『それがどうかしたのかよ？！』
「だからね、新ちゃんも健全な男の子だし、蘭ちゃんと２人っきりで万一間違いでも起ったらと思って…。」
『なっ！何バカな事言ってるんだよ！！母さん！！第一、これ今の蘭の体型じゃ大きすぎるじゃねーか！！！』
「あらぁ、よく今の蘭ちゃんの体型が判ったわねぇ？！これは一様≪←強調≫蘭ちゃんが大きくなった時を想定して注文したのよ？まぁ、万一の時はおっぱいとかが張って大きくなっているからその為の用心も兼ねているんだけどね…。」

『ふざけんじゃねー！！その時は俺が買ってやるからそんな心配するんじゃねーぞ！！！』

「ですって…。だからね、蘭ちゃん。リハーサルの今回は新ちゃんの顔を立てて私の作ったドレスにしたの。本番の時は新ちゃんが責任を持って作ってくれるから安心してよねっ！蘭ちゃん！」

そう言って微笑む有希子を英理は呆れきった顔で見つめ、蘭はクーラーが効いているにも関わらず熱中症のように赤くなっていた。

　　★★★

遠山家の場合…。

「はい！これで出来あがりやで、和葉。」

そう言って和葉の母は嬉しそうに微笑んでいた。

其処に静華が口を挟んだ。

「あら、和葉ちゃん、えらい別嬪サンにしてもろたなぁ。」

確かに、今の和葉はトレードマークのポニーテールこそしているが何時もの彼女とは思えないぐらい美しくなっていた。

「お、おばちゃん、誉めてもなんも出て来いひんで…。」（／／／／／）
「おばちゃんなんて他人行儀みたいな言い方せんといてんか。今日からは“お義母ちゃん”と呼んで欲しいわ。」

それを聞いた和葉は真っ赤になってうろたえていた。
それを見た静華は心底嬉しそうに話し始めた。

「はぁ、あのアホがやっとイベントとは言えここまでこぎ着ける事が出来たわ…。私はあの時からずっとどうやって責任を取らせるか考えとったからなぁ…。」

　

回想、平次と和葉が手錠で繋がっていた状態から助けられて直ぐの服部邸…。

「あ、アタシもうお嫁に行けヘン様になってもうたぁ！！」

そう言って泣きじゃくる和葉を心底バツの悪そうな顔をした平次と静華、そして平蔵と遠山夫妻が聞いていた。
そして、最初に口を開いたのは静華であった。

「ホンマにこのアホはとんでもない事しよったなぁ、アンタ！これは今までのイタズラとは訳が違うんやで！！！」
「せやけど、オカン。手錠の件は俺が悪いにしたって、風呂は和葉が悪いし、トイレは不可抗力や…。」

ポカッ！

（↑静華が平次を殴った音）

「アホッ！そんな問題とちゃうわ！！エエか平次、嫁入り前の女の子が一番見られたくないもんをアンタは見てしもうたんやで？責任を取るのが筋と言うもんやろ？」
「責任って…？」
「平次が和葉ちゃんをお嫁に貰うんや！」
「な、なんやてぇ～？！？！？！」
「お、おい、静、幾等何でも早いんとちゃうか？」
「わかっとるがな。そやから今から和葉ちゃんがお嫁に来れる様になる年まで平次の小遣いをカットして和葉ちゃんとの新生活の足しにするんや！」
「そ、そんな！！オカン…！！」
「なんや？！文句有るんか？！」

そう言って睨みつける静華に対して平次が文句など言える筈も無かった…。

　

「ホンマにあのアホも素直やないで…。あの後なんやかんや文句言いながらもその積み立て金に一切手を付けてヘンのやから…。」

そう言って１００万近い貯金残高がある通帳を和葉に見せた。
それを見た和葉がこれ以上無いぐらいに真っ赤になっていたのは言うまでも無かった…。

　　★★★
　

中森家の場合…。

「青子ちゃん、すっかり綺麗になって。後で工藤さんにメイクアップしてもらうからちょっと待ってね…。」

そう言って微笑む快斗の母を青子はユデダコ状態で聞いていた。
その後、有希子の手によって蘭の双子の妹みたいに美しくなった青子の姿があった…。

　　★★★
　

小泉紅子の場合…。

「紅子様、これで終わりです。」
「さすが、坊ちゃんですね。こんなお美しい御方を好止められるなんて…。」

そう言いいながら、紅子にメイクアップを施す白馬邸のメイド達…。

それを彼女は当然の様に聞き入れていた。

　　★★★
　

そして、園子の場合…。

「園子様、良く似合っていますわ。」
「園子様、今日はこんなにめでたい日なんですから、もう少し嬉しそうにしてもらえませんか？」
「そんな事言われても、相手が誰だか判らないのに喜べないわよ。貴方達、本当にママから聞いてないの？」

そう言われて、園子のメイクアップを担当しているメイド達は表情を曇らせた。

「申し訳ありません。」
「私達も奥様にお尋ねしたんですが、奥様から“園子に漏らすといけないから”と教えてもらえなかったのです。」

それを聞いた園子はふかぶかとため息をついて、こう呟いた。

「全く、ママもどう言うつもりか知らないけど、緘口令を敷き過ぎよ…。」

　　☆☆☆
　

その後…。

イベント開始を告げる教会の鐘の音色（もちろんテープである）が鳴り響き、地上初のイベントが開始された。

続く…。

　　