名探偵コナン AND・NOWシリーズ


第3話 文化祭


オマケの改方編


プロローグ…新大阪駅。


新一、蘭、快斗、青子の4人は新幹線から降り、大阪の町に到着した。
そして、道順を書いたメモを頼りに最寄のバス停に向かうバスを探しながら、快斗が口を開いた。

「なぁ、新一。」
「あんだよ。」
「オメー、平の奴が文化祭で忙しいからタクシーを使えないって言った時、すげーホッとした顔になったけど、どうしてだ?」
「アイツの言うタクシーは普通のじゃねーからな…。」
「そうなのよ。はっきり言って、凄く恥ずかしいわよ。あの車に乗るの…。」
「そんな派手なタクシーなの?」
「服部の辞書には、“公私混同”や“職権乱用”の項目は無いぜ…、絶対。」
「ちょっと待て…、その“タクシー”ってまさか…?」
「ああ。オメーの想像した通りの物だよ。」
「服部君、大阪府警のパトカーをタクシー代りにしているのよ。」

その言葉に、思わず目が点になったまま、固まる快斗と青子…。

「言っとくけど、冗談じゃねーぜ…。俺がまだコナンだった時に蘭達と一度その“タクシー”で大阪見物したからな…。」
「あの時はホント恥ずかしかったわ…。」

そう言って、当時の事を愚痴る新一と蘭…。
そして、快斗と青子は暫らくの間固まっていた…。



  ☆☆☆


数十分後、改方学園の正門前にて…


「おお!工藤に快!!ねぇちゃん達も、よぉ来たのぉ。」
「何言ってやがる…。警部まで抱き込みやがって…。」

平次は父の名前を使い中森警部を抱きこんで、青子と快斗をここに来させたのだ。

「すっぽかしたら、お迎えが来たんだろ?オメーの言う“タクシー”で…。」
「工藤はようわかっとるのぉ。」

呆れる二人の男を後目に蘭と青子は上機嫌であった。

「快斗、良いじゃないの?折角の学園祭なんだから…楽しもうよ。」

青子のふんわりとした笑顔に毒気を抜かれた快斗は…

「お、おう…。そ、そうだな…。」

と真っ赤になりながら呟いた。

「そうよ新一、折角の招待なんだから、楽しもうよ…。」

新一もまた、その極上の笑顔に毒気を抜かれてしまっていた…。
そこに、和葉が走って来た。

「平次!もう始まってるで!アンタも急がなアカンで!」
「おお!そうやったな…。済まんけど、俺等は色々忙しいから案内出来ひんねん。」
「堪忍な…、蘭ちゃんに青子ちゃん…。」
「良いよ…。青子、別に気にしてないから…。」
「青子ちゃんの言う通りよ…。服部君も和葉ちゃんも主催者側なんだから…。」
「済まんな…、ねぇちゃん達。」
「堪忍な。」

そう言って、平次と和葉は走り去って行った。
後に残された4人は、そんな2人を見て呟いた。

「夫婦だな…、絶対。」
「ああ…、俺もそう思う。」
「やっぱり、似合ってるよね…、あの2人。」
「青子もそう思う…。」

そう言うこの4人も傍から見ればお似合いのカップル2組である。

「じゃあ早速、改方学園へ案内するよ。」
「わりぃな、新一。」
「工藤君、ここの事詳しいの?」
「コナンの時に一度来たからな…。大体の所は判るぜ。」
「何よ、私だってその時一緒に来たじゃない!」
「方向音痴のオメーが、一度来たぐらいで判るのかよ?」
「悪かったわね…、方向音痴で…。」

そう言いながらむくれる蘭を引き連れ、4人は学校の中に入っていった。


  ☆☆☆


数時間後、剣道部の部室前にて…。


「クラスの人達が言うには、服部達はここで剣道部の模擬店をやってるらしいが…?」
「でも、もう3年生は部活を引退してるんじゃあねーのか?」
「アイツは大阪府警の猛者相手に、互角以上に渡り合える実力者だからな…。そう簡単に辞めさせてもらえねーんじゃねーの?」
「なるほど…。」

などと、新一と快斗が話していた時、青子が2人を見つけた。

「あれっ?!アソコに居るのがそうじゃない?」

3人は青子の指差す方に向いた。
そこには、ジャージにタオル鉢巻とエプロンをした平次と、同じくジャージにエプロンという井出達の和葉が忙しそうに模擬店の陣頭指揮をとっていた。
4人は早速、その模擬店に近づいた。

いち早く4人のけはいに気が付いた平次が彼等に話しかけて来た。

「おお!工藤に快!ねぇちゃん達もいらっしゃい!!」
「妙に似合ってるぜ…、服部。」
「工藤、それは誉めとるのか?」
「まぁな。」
「たこ焼きの模擬店か…。大阪らしいな。でも、よく保健所の許可が下りたな。」
「蛇の道は蛇やで…、快。」
「なるほど。」

これ以上の詮索は止そう…。
快斗は心の底からそう思った。


「実質おめーらだけでやってるのか…?他の連中は?」

ここに居る、剣道部の部員が思った以上に少ない事に気付き、新一が聴いた。

「裏方や…。」
「裏方?」
「具体的に言うたら、材料の買出しやら、屋台の組み立てとか、必要な道具を揃えるとか…。」
「なるほど…。当日おめーらが屋台を切り盛りする代わりに、それを後輩達に押し付けた…、と言う事か。」
「人聞きの悪い事言うなや!工藤!あいつ等料理ヘタやから、俺がやる羽目になったんや!」
「ホントかよ?」
「それはホンマやで、快斗君…。」
「和葉ちゃんも料理駄目なの?」
「そうなんや、青子ちゃん…。せやからアタシ蘭ちゃんや青子ちゃんがうらやましゅうてなぁ…。」

和葉はそう言って、盛大なため息をついた…。
それに対して、蘭はこう答えた…。

「それは、私は必要に迫られたから…。」
「あっ!青子、それ判る!」
「青子も幼い時にお母さんをなくしているからな…。」
「うん…。だから、蘭ちゃんが羨ましいの…。よりを戻そうと頑張れる分、青子より幸せだよ…。」
「「「青子ちゃん…。」」」

暫らくしんみりとした空気が漂ったが、平次がそれを吹き飛ばした。

「お前等…、今は学園祭やど!もっと明るくできんか!!」
「服部の言う通りだ…。もっとポジティブにいかねーとな。」
「工藤君と平次の言う通りやで!暗らなったらアカン!!」
「そうだね…。新一。」
「そうだよねっ!快斗。」
「ああ…、その通りだ。」

その後、4人はここで平次の焼いたたこ焼きを食べた。


  ☆☆☆


それから、暫らくして…。


新一は屋台を切り盛りしている2人をじっと観察していた。
それに気付いた快斗が話しかけて来た。

「新一、なにボーと見てるんだ?もう行こうぜ。」
「あ?!わりぃ…、ちょっと考え事しててな…。」
「考え事…?」
「あのな…。」



平×和小劇場…その後の2人(あくまでも新一の想像)


大阪府警の捜査一課の警部大滝は裏路地を抜け、ある一件の屋台に着いた…。
その屋台は、ある若い夫婦が切り盛りしていた。
大滝はそこのノレンをかき分けると…。

「いらっしゃい!!…なんや、大滝ハンか…。」
「平ちゃん…、悪いけど、一本つけてくれへんか?」
「毎度!」

平ちゃん…、そうここはかつて西の高校生名探偵と言われた服部平次が屋台を経営していた…。
彼は、大好きな彼女との結婚を許してもらえず、彼女と共にここに駆け落ちして来たのだ。
その彼女の背中には、2人の愛の証がすやすやと眠っていたと言う…。
そして今日もまた、彼等の仲を唯一認めている大滝から、大阪府警が手を焼いている事件の相談が来た。




「…と言う書き出しで始まる小説のシリーズを考えてみたんだ。」
「面白そうじゃん…。それで、タイトルは?」
「ずばり、“屋台探偵平ちゃん”なんてどうだ?」

そこに平次が怒りながら、割って入って来た。

「待たんかい!工藤!!」
「どうした?服部?」
「勝手に俺の将来を決めんなや!!第一、俺は和葉と駆け落ちする気は無いわ!!」

その言葉に、衝撃を受ける和葉。
だが、新一と快斗はしてやったりと言う顔になり、こう言った。

「平、オメーも結構判りやすいよな…。」
「何がや!快!!」
「誰もオメーの事とは言ってねーぜ。」
「言うてるのも同然やんか、工藤!!平ちゃんと呼ばれる西の高校生名探偵なんて俺しかおらんやんか!!!」
「でも…。」
「でもも、糸瓜もあるかい!!工藤、俺は和葉となんで駆け落ち…!!!!」

そこまで言って、平次は真っ赤になり口を自分で塞いだ…。
だが、既に手遅れである。


「語るに落ちたな…。俺は一言も和葉ちゃんの名前はおろか、身体的特徴も言ってねーぜ。」
「そうだよな。新一は、“平ちゃんの大好きな彼女”としか言ってねーよな?」
「ああ。」

その言葉に真っ赤になりながら焦る平次…。
そこに蘭と青子が追い討ちをかけた。

「良かったね!和葉ちゃん!!」
「和葉ちゃん!!!青子、羨ましいよ!!」

和葉は2人の言葉にユデダコ状態になっていた…。
平次はそんな和葉を意識して、ますますうろたえていた。



その後、2人の屋台はズタボロだったのは言うまでもなく、その後暫らく2人は目が合っただけで照れまくっていたと言う…。



第4話に続く



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