パパは小学一年生(憧れのお姉さんは小学生編)



By トモ様



(7)



「いつになったらテスト終わるんや」

コナンと和菜は帝丹高校まで蘭達を尾行していたが中に入れず校門の前で悶々と時を過ごしていた。
コナンに至っては学校をサボっているのだが、蘭の事が絡むと普段の冷静さが消え去る彼にはサボってる自覚はおそらくないだろう。

コナンが横を見てみると、嫉妬に燃えた和菜の顔がある。
それはコナンが何度か見た事がある顔・・・和葉が平次に嫉妬している顔にそっくりだった。

(もしかして将来、俺と服部は親戚になるのかよ)

コナンは想像して青ざめた。

「なっなあ和菜ちゃん?」
「なんですか?」
「優一の事・・・好きなのか?」

コナンの言葉に和菜は赤くなりうつむいた。

(やっぱり)

しかしこの後、和菜から意外な事を聞かされる。

「・・・アタシと優一は、おっちゃんのトコやアタシの両親と違って幼馴染みやないんです」

(・・・おっちゃんは止めろよな)

「えっ・・・でも和菜ちゃん、帝丹の制服着てただろ?」

コナンはおっちゃん呼ばわりされた事を心の中で文句を言いつつ、疑問を口にした。

「アタシは中学まで大阪におって、高校から、こっちに一人でやってきて、おっちゃんの家に下宿させてもらってるんです」
「それって優一の近くに居たかったから?」

和菜は恥ずかしそうに頷いた。
蘭と離れたくなくて、両親がアメリカに行くのに一緒に行かなかったコナンには、その気持ちはよく分かる。

「・・・でも、アタシがこっちに来た時には、優一はもう初恋の真っ最中やったんです」

コナンはてっきり、この二人は自分と蘭が素直になれなかった時の関係と同じだと思っていたので驚いた。

「優一は、おっちゃんの探偵事務所でアシスタントしている9才年上のお姉さんに片思いしてるんです」
「まさか・・・その娘の名前って・・・」
「吉田歩美さんです」

和菜の口から出たのは予想通り、現在の自分の同級生である女の子の名前だった。









(8)



「ちょっと園子。あの二人いつの間に、くっついちゃったのよ?」

昼休みになって、別室でテストを受けていた優一が教室に戻ってくるなり蘭の所に行き、二人のラブラブお弁当タイムが展開されていた。
その光景を見せられているクラスメイトが園子の元に集まって来ていて園子に問いただしていた。

「蘭がこの前、新一君に会いに何日か学校を休んだ時に、何かあったのは間違いないと思うんだけど・・・」
「どうしたの?園子」

(・・・蘭の表情を見てると、恋する乙女って言うより、あのおちびちゃんと一緒に居る時と同じ表情なのよね)

恋愛事に関しては鋭い園子。
事実、蘭には息子と食事している感覚しかない。

「ほら、口元が汚れているわよ」

優一の口元を拭いてあげる蘭。
コナンが見たらおそらく発狂するだろうが、これが原因で蘭にちょっかいをだす男が激減する事になるので彼は息子に感謝するべきかもしれない。

「おい工藤、職員室まで来てくれ」

担任の先生が優一を呼びに来た。

「・・・すぐに行きます」
「ちょっと、大丈夫なの?」

席を立とうとする優一に蘭が耳打ちする。

「まかせといて、母さん。ちゃんと工藤新一を演じてみせるよ」

優一はウインクをして出ていったが蘭は心配だった。









(9)



「哀君、どうじゃ?」

博士は地下室にこもっている哀の様子を見に来た。

「何とか今夜までには完成しそうよ」

哀はパソコンのモニターから目を離さないまま答えた。

「そうか・・・じゃあ今夜はあの子達も呼んで、お別れ会でもするかのう」
「そうね・・・ところで博士、タイムマシンの解析は出来たの?」
「それがのう・・・解析は出来たんじゃが、この時代には無い技術や部品がいくつか使われており、今の我々じゃあ作るのは無理みたいじゃよ」

博士は残念そうに答えるので哀は苦笑した。

「それは残念ね・・・やはり20年は掛かるって事ね」
「しかし哀君の方は未来からの技術で完成しそうなんじゃろう?」
「そうよ」
「いくら考えても解らんのじゃが、それは一体誰が完成させた事になるんじゃろうか?」
「現在の私は、未来の私に技術提供してもらっただけだし、未来の私は、このデータを過去に横流ししただけだもんね」
「現在が未来で、未来が現在・・・頭がおかしくなりそうじゃわい」

頭を抱える博士を見て哀は可笑しそうに笑う。

「あら、タイムパラドックスを解決するのは簡単よ」
「本当かね?」

博士は興味深そうに哀の方に身を乗り出す。

「それは・・・」
「それは?」
「・・・タイムパラドックスの事は考えない事よ」

(名言だわ♪)

哀はずっこけた博士を楽しそうに見ていた。









(10)



優一が職員室に入ると夕貴と目暮警部が先客として居た。

「・・・母さん?」

優一は怪訝そうに夕貴を見ていると、夕貴が側にやって来て彼の頭を無理やり掴んで教師達に頭を下げさせた。

「先生方、この度はウチの息子がご迷惑をおかけしました」
「何すんだよ・・・イテ〜!!」

文句を言おうとした優一のお尻を、すかさずつねる夕貴。
工藤新一が、いくら優秀な生徒とは言え、半年近くも学校を休学していては留年させるべきだとの意見の教師も多いので目暮警部と母親と一緒に優一を教師達に謝らせて留年免除させてもらおうと言う作戦を夕貴は哀から受けていたのだ。

「・・・しかしですねぇ奥さん」

それでも難色を示す教師はいる。

「あら、この前のこちらの教師の不祥事をウチの新ちゃんは目暮警部に頼んで表沙汰にならない様にしてくれたんですよ」

痛い所をつかれて難色を示していた教師達も黙ってしまった。

こうして新一は留年を逃れる事が出来たのである。



〜続くんだなぁ・・・これが〜



(闇の男爵娘編)に戻る。  (また会う日まで編)に続く。