君に会いたい



byドミ



(2)見せたいものが、たくさん溜まっているんだよ



夏の海。
今年は、園子達やコナン君と、何度か出掛けた。
ちょっとサイズも変わっちゃったし、思い切って新しい水着を、買っちゃった。

「蘭〜、この水着姿、新一君に見せたかったんでしょ?」
「もう園子、そんなんじゃないってば!」
「大丈夫、任せて!蘭の水着姿をばっちり写真に収めて、新一君に送ってあげるから!」
「だからもう、やめてってば!」

今は、ここにいない、推理オタク。
たとえここにいても、新しい水着だって事すら、気付いてくれないかもしれない。
でも、それでも、とっておきの格好は、あなたに見せたいって思ってしまう。

似合う水着を、一所懸命、選んだんだもん。




わたしは今年、浴衣を買った。
浴衣を着ていたのは小学生の頃までで、かなり久し振りだ。
コナン君にも、コナン君のご両親から預かったお金から、浴衣を買ってあげた。

浴衣の着付けはすぐに覚えるって事だったから。
何とか頑張って、着付けてみた。
何となく、帯とか少し歪んでないか、心配で、鏡に何度も映して確かめる。
学校から帰って来たコナン君が、わたしの姿を見て目を見開いた。

「わあ、蘭姉ちゃん、浴衣だね」
「自分で着付けてみたんだけど・・・変じゃないかなあ?」
「ううん、そんな事ない。すごく似合ってる。とっても綺麗だよ、蘭姉ちゃん」
「そう?ありがとう、コナン君」

てらいもなく褒めてくれるコナン君の言葉は、とっても嬉しいけれど。
やっぱり、あなたに見て欲しいなあと、わたしは願ってしまう。
あなたがここにいても、絶対に褒めてくれないのは、分かってるけれど。


そしてコナン君と2人で、浴衣姿で、手を繋いで、縁日に行った。
人混みの中で、コナン君がわたしを頼るように手をぎゅっと握る。
わたしは、コナン君に守って貰っているような錯覚を覚える。

コナン君と一緒にいるのに。
わたしは隣を見て、ふっと、あなたの姿を探してしまう。
こういう時、きっとあなたは、ぶっきら棒な言い方をしながら、わたしが人混みではぐれて迷わないように、手を引いてくれる。
慣れない着物姿で辛くないように、さり気なく気遣ってくれる。
あなたは、そういう人だから。




お父さんとコナン君と園子達と、蛍を見に行った。
街灯もない真っ暗な水辺を、小さな無数の灯りが、舞っている。
蛍の群れを初めて見たわたしは、感動していた。

「すごく綺麗だね」
「うん、そうだね、コナン君」

こういう瞬間、あなたがここにいたら良いのにと、わたしは思う。
一緒に、この風景を見たい。
感動を、分かち合いたい。




帝丹高校のげた箱に、今年はツバメがやって来て、巣を作ったの。
糞が迷惑だって一部には不評だったけど、雛がピイピイ鳴いて親鳥に餌をねだる姿も、親鳥がスイスイ飛び回る姿も、癒しだったわ。
もう、雛は巣立っちゃったけど、巣は残ってるの。
きっと来年も、ツバメたちの姿を見る事が出来るよね。

もしもあなたがここにいたら、ツバメの生態について、うんちくをたれるばかりかも、しれないけれど。




今年の春も、堤無津川沿いの桜は、とても綺麗に咲いたし。
新一の家の近くにある日本家屋のアジサイは、やっぱり見事だったし。
雨上がりの空、久し振りに見た虹は、中学生の時、あなたと一緒に見た虹とそっくりだった。


わたし達が学校帰りに時々立ち寄る米花公園では、新しい噴水が出来たし。
米花シティビル前の広場は、改装されて花壇に花がいっぱいだし。
駅前には、新しいビルが建って、その中には大きな書店も入ってる。




新しいもの、前からあるもの。
あなたと一緒に見たかった、あなたに見て欲しかった、色々なもの。
全部はとても無理だけど、写真に撮ったものは、アルバムに収めてるの。



新一。
あなたに見せたいものが、いっぱいあるの。
アルバムに収まり切れなくなってしまう位に、たくさん溜まっているんだよ。



To be continued…….




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お題提供「as far as I know(わたしのしるかぎりでは)」


(1)「機械的な日常だって、貴いものだと知っている」に戻る。  (3)「憎まれ口が恋しいなんて、呆れたものだと思う」に続く。