探偵戦隊ディテクティブ・アイズ



Byドミ



第1章



(2)戦隊結成!



「では、君達のコードネームじゃ。戦隊物らしく色の名前を付けた。
新一君は、ディテクティブ・ブラック。蘭君はレッド。服部平次君はグリーン。遠山和葉君はオレンジ。黒羽快斗君はホワイト。そして中森青子君はブルーじゃ。
君らの小道具と衣装もコードネームにちなんだ色で統一されておる。
そしてリーダーが必要じゃが、リーダーは合議の上で決めてくれんじゃろうか」

阿笠博士が言って、それぞれに、コードネームと同じ色の腕時計が渡された。

「腕時計?」
「それは只の腕時計ではないぞ。麻酔針が仕込んであって、その蓋が照準機に・・・」
「麻酔針〜?」
「っとと、違ったわい。それを顔の前にかざして『真実はいつも一つ!』と叫べば、変身出来るのじゃ」
「変身やて?」
「胡散くさ〜」
「第一何だよ、その台詞は!?」
「いいから、やってみなさい!ホレ、試しに新一君から」

阿笠博士の言葉に新一は渋々顔の前に黒い腕時計をかざし、叫んだ。

「真実はいつもひとつ!」
「妙に堂に入ってるなあ、流石は名探偵」
「気障なやっちゃなあ」

快斗と平次が軽口をたたき合う前で、新一の姿が変貌して行った。
一瞬のうちに黒い霧のようなものが体を覆い、頭からすっぽりと何かに覆われていく。
そして現れた姿は・・・。

「新一、黒衣の騎士の格好だね」

蘭が言った。
新一の格好は、先の帝丹高校祭で二年B組が行った劇「シャッフルロマンス」のヒーロー、スペイド王子こと黒衣の騎士のコスチュームとほぼ同じだったのだ。

「なあ、阿笠博士」
「何じゃ」
「この話、原作の第一回と同じ時点から始まってんだろ?何でシャッフルロマンスが既に上演されてんだ?」
「新一君、男は細かい事を気にせんで良い。第一それを言い出すなら、原作ではタイムパラドックスだらけじゃぞい」
「そ、そりゃあそうだけどよ・・・」

「ねえねえ、快斗も変身して見せて」

青子がワクワクしたような顔と声で快斗にねだる。
快斗は仏頂面で呟いた。

「何か嫌な予感がすんだよな・・・」

そして快斗が白い腕時計を顔の前にかざして叫んだ。

「し・・・真実はいつも・・・ひとつ・・・とは限らねえと思うんだけどな・・・」

余計な事までブツブツ呟いたが、時計はきちんと反応した。
快斗の体を白い霧のようなものが覆っていく。
そして・・・。

「えええ〜〜〜っ!?何でキッドなのお?」

青子が叫ぶ。
快斗が変身した姿は、怪盗キッドとほぼ同じだったのだ。

「おい爺さん!いくら何でも探偵戦隊のコスチュームがこれってまずくねえのか!?」
「ワシは爺さんではないと言っておるのに・・・!ふむしかし、君の言うのも尤もじゃ、少し調整するかのお」

そう言って博士はコンピューターの画面に向かいながらキーボード操作を行った。
快斗の姿はほんの少しだけ変わり、シルクハットが短くなり、モノクルではなく顔面の殆どを覆うマスクへと変わった。

「何かダッセー」

快斗がぼやく。

「なあ博士。このコスチュームデザインって、誰がどうやって決めたんだ?」

新一が疑問を口にする。

「君達をスキャンした時、コンピューターが君達の能力や特性、深層心理状態なども調査して、決定したんじゃよ」
「ええ、それじゃあ、快斗が怪盗キッドの姿になったって事は・・・!」

青子の言葉に快斗の肩がビクビクと震える。

「快斗がキッドの大ファンだったからなんだね!どうしたの快斗、脱力して座り込んだりして?」
「あ、いや・・・ははは」
「次は俺の番やな。俺のコスチュームはどんなんやろ?」

平次が顔の前に緑色の腕時計をかざして叫んだ。

「いくでえ!真実はいつもひとつや!」

そして、平次が変身する。

「・・・やっぱり平次らしいわ」

平次の変身した姿を見て、和葉がぽつんと呟いた。
それは、緑色のアクセントが要所要所に使われている他は、どこをどう見ても、剣道の時に身に付ける胴着姿だったのだ。

「何か、あたしらはどんな格好になってまうのか、えらい不安やで」
「そうね・・・女の子達は一緒に変身しましょうか?」
「うん、そうだね、青子もさんせー!」

心細くなった女性陣三人は、並んで一緒に目の前に時計をかざした。
蘭は赤、和葉はオレンジ、青子は青の時計である。

「じゃあ、行くわよ!せーの・・・」
「「「真実は、いつもひとつ!」」」

そして女の子達の姿が変貌していく。
蘭は赤い霧に、和葉はオレンジの霧に、青子はブルーの霧に、それぞれ包まれた。
やがて変身が終わった時、男性陣が叫んだ。

「「な、何〜〜〜ッ!!」」「何やて〜〜〜〜ッ」

変身が終わると、蘭は赤、和葉はオレンジ、青子は青を基調とした色の戦闘服を身に纏っていた。
しかし問題は色ではない。
女の子三人の姿は、今時のスカートが付いた水着にマントを羽織ったとしか言いようがない、露出度が高いものであったのだ。

「わ〜〜〜っ!!見るな見るな見るなっ!」

新一はそう叫んで蘭の前に立ちはだかった。

「何や和葉、その水着センスが悪いで」

平次がそう突っ込み、和葉にポカリと殴られた。

「お子ちゃま体形のアホ子には水着は似合わねえぞ」
「何よお、バ快斗バ快斗バ快斗!」

仏頂面で言った快斗は、どこから出したのかわからないがモップを手にした青子に追っ駆けまわされていた。

「却下!とにかく却下!あれじゃあ正体バレバレじゃねえか!第一何で女の子達だけ顔を隠さないんだ!?」

新一が阿笠博士に詰め寄った。

「決まっておる。女の子は顔が見えないと楽しくないからのお」

阿笠博士がしゃあしゃあと答え、新一たち男性陣三人はガックリとうな垂れる。

「じゃあ露出度の高いあの格好も・・・?」
「いやあ、やっぱり女の子は良いのお」

ニコニコ笑って言う阿笠博士に快斗がボソッと毒づく。

「こんのエロじじい」
「ん〜?黒羽くん、何か言ったかの?」
「いんや、何にも」

阿笠博士に秘密を握られて頭が上がらない快斗は、腸が煮えくり返りながらも黙るしかなかった。
新一が替わって言う。

「仮にも戦隊なんだろ?だったらあれはマジイだろ?露出度が高いと敵の攻撃ですぐに怪我しちまう」
「おお、その事なら心配無用じゃ。見た目には露出度が高いが、体の周りには強固なバリヤーが張ってあってな、守りは万全じゃよ」

博士がしれしれと言い、新一は博士に掴み掛らんばかりになった。

「って事は、おい!男達のフルフェイスと全身を覆ったあの格好は一体何なんだ!?」
「男は見ても楽しくないからのう」

しれしれとした阿笠博士の返答に、幼い頃から親しかった筈の新一も、一瞬殺意を覚えてしまった。

「とにかくだな・・・頼むからあの格好は何とかしてくれ・・・」

新一が言うと、意外な所から意外な反応があった。

「え〜、新一、これ駄目なの?私、結構気に入ったんだけどな」
「せや、工藤くんは露出露出言うけどな、夏場の格好と変わらへんで?」
「良いなあ、蘭ちゃんも和葉ちゃんもスタイル良くて。青子、お子様体形だから似合わないもん」
「そんな事ないよ、似合ってるよ。青子ちゃん、すっごく可愛いもの」

「肝心の女の子達がこれで良いと言って居るのじゃ、問題なかろう」

阿笠博士の言葉に男たち三人は黙り込んだ。
仮面でそれぞれの顔は見えないが、さぞかし仏頂面になっている事だろう。

何故男三人が不機嫌になったのか・・・女の子三人は全く気付いていなかったが、阿笠博士にはわかっていたのであった。

「ホレ。こうやって髪をベレー帽で隠すと、それだけで誰だかわかりにくくなるもんだぞい」

博士がそう言って三人にそれぞれの色のベレー帽を渡す。確かに髪型を隠せば多少は誰なのか(直接知らない者には)解りにくくはなる。
マントで上半身の露出をかなりカバー出来るので、それで我慢するしかなかった。

「博士、せめてマントをもうちょっと長くするとか・・・」
「そうすると動きにくくなるじゃろ」

博士はあっさりと新一の訴えを却下した。
男三人はズルズル長いマントで、動きにくい事この上ないが、それを訴えたところで無駄であろう事は明白だった。
新一も平次も快斗も、ただ溜息を吐くしかなかったのである。

「さて、君達のキャプテンを決めねばならんのう」

そう阿笠博士が切り出した。即座に反応したのは快斗である。

「俺は探偵じゃねえもん、戦隊名からして工藤がリーダーなのは、はっきりしてるだろ」
「けどよ、探偵と言うなら服部だって・・・」
「いやいや工藤、やはりここはお前しかおらへんで、俺たちのリーダーになってくれや」
「オメーら。面倒だからって俺に押し付けようと思ってるだろうが!」
「そんな事はない、工藤こそがリーダーの器だと思うからこそ・・・!」
「せやせや、工藤になら俺も黙って付いて行くで!」
「オメーらなあ・・・突然結束しやがって!」

新一が額に青筋を浮かべ、拳を握り締めて低い声を出した。
その時、あっけらかんと綺麗な声で口を挟んだのは蘭である。

「新一、戦隊物では確か赤がリーダーの色よね」
「お、じゃあ蘭、おめーがリーダーやるか?」
「そ、それはやだぁ。赤は好きだけど、リーダーは嫌!」

その言葉を切っ掛けに、話が色の事に脱線して行く。

「俺、名前が黒なのに、何で工藤が黒で俺は白なんだ?」

そう快斗がぼやくと、平次が相槌を打つ。

「せやなあ、どうでもええと言えばどうでもええ事やけど、色は一体どないやって決めたんやろか?」
「色を決めたのもコンピューターじゃよ。君らの好み、潜在的な傾向、あらゆる点を加味し、尚且つ同じ色が重ならないように調整したのじゃ。例えば、新一君の場合、ブラック又はブルーと出たのじゃが、ブルーは青子君と重なった為に最終的に黒の方が新一君の色になったのじゃよ」

それが阿笠博士の答えであった。
青子が無邪気に言った。

「ねえねえねえ、青子は名前は青だけど、ピンクの方が好き。青は工藤君に譲ってあげるよ」

阿笠博士が首を横に振って言った。

「ピンクは永久欠番じゃよ」
「え〜、なんでぇ?」
「ピンクとは、戦隊物においてはヒロインの色なのじゃよ」

その阿笠博士の言葉に、六人はそれぞれにピクピクと反応した。

『やっぱり女の子らしい可愛い青子ちゃんがピンクに相応しいよね。和葉ちゃんもピンクを身に着ければ結構フェミニンな印象で良いんじゃないかな。だけど、ピンクはヒロインの色、リーダーと恋仲になるのが定番・・・リーダーが新一だから青子ちゃんか和葉ちゃんが新一と?そ、そんなの、いやああああ!』
『アタシにはピンクは似合わへんし・・・蘭ちゃんや青子ちゃんにはよう似合うやろなあ。ヒロインがあの二人のどっちか言うんも少し寂しいもんがあるけど』
『う〜ん、青子ピンクが好きなんだけど、蘭ちゃんや和葉ちゃんを差し置いてヒロインの色取っちゃうの、やっぱり駄目だよね。そんな我侭言っちゃいけないよね』

『蘭には赤も似合うけど、ピンクも良いよなあ』
「蘭、ピンクも良いんじゃねえか?馬子にも衣装って感じでさ」

『和葉も案外ピンクいけてるやろなあ』
「和葉、ピンクやなんて柄にもない格好する積りやあらへんやろな?」

『ピンクは絶対青子の色だよな、可愛いよなあ、うんうん』
「青子はお子ちゃまだから、意外とピンクが合うと思うぜ」

男子3人は、心の声と微妙に異なる言葉を口に乗せる。

「何よ新一、それって褒めてる積り!?」
「悪かったなあ、柄やあらへんで」
「ピンクって子供の色なんかじゃないもん、ば快斗ば快斗ば快斗!」

男三人の表の声にやや険悪ムードが漂い始めたが、阿笠博士ののほほんとした声がそれを断ち切る。

「いずれ劣らぬ可愛い女の子たちが揃っておるのじゃ、その中からヒロインを選び出すのも愚の骨頂というものじゃろうて。ピンクは永久欠番で構わんじゃろ?」

六人はそれぞれ顔を見合わせた後に頷いた。

「まあ隊の半分が女の子という時点で、既に戦隊物の定番から外れてんだよな」
「赤がヒーローでリーダー、ピンクがヒロインいうパターンにはでけへんって事やな」

新一の言葉に平次が頷く。

「探偵って、そんな事にも詳しいんだな」

快斗が面白そうに茶々を入れた。

「別に・・・ガキの頃はやっぱ特撮物位見てただろ?通してじゃなくても、少しは。仮面ヤイバーとかもさ」
「ずっと夢中になっとった言う訳やあらへんけど、セオリーがわかる程度には齧っとったで」
「へえ。俺はマジックショー位しか見た事ないんでね、戦隊物とか仮面ヤイバーとかはさっぱり」
「・・・それって、探偵かどうか以前の問題じゃねえか?」

新一が半ば呆れたように言った。
新一には自分が普通の十七歳に比べ世間の流行には疎い自覚がある。
しかし、黒羽快斗という男はその点では工藤新一の上を行きそうだった。

「と言う訳で、リーダーは新一君に、サブリーダーは黒羽君に、頼むとするかのう」

しれっと博士が言った。
新一が叫ぶ。

「何が『と言う訳で』だ、合議で決めるんじゃなかったのかよ!?俺はリーダーなんて嫌だからな、んな面倒くせえもん!」
「それでは多数決じゃ!リーダーは新一君が良いと思う者は手を上げてくれい!」

その声に、新一を除いた残る五人の手が勢いよく上がった。

「ホレ、皆の総意じゃ、新一がリーダーになるしかないぞい」
「きったねー!みんな自分がなりたくねえもんだからこんな時だけ結束してよ・・・これじゃ多数決の暴力じゃねえか!」

 快斗がポンポンと新一の肩を叩く。

「まあまあリーダー。俺だって不本意だがサブに付くからさ・・・及ばずながらお手伝いさせてもらうぜ」

快斗の殊勝気な言い草に、新一はジト目で快斗を睨んだ。



とにもかくにも、ここに「探偵戦隊ディテクティブ・アイズ」が結成された。
今、正義を守る(核爆)彼らの戦いが始まる!・・・のだろうか・・・。



探偵戦隊ディテクティブアイズ第1章(3)に続く





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