The Romance of Everlasting 〜異聞・白鳥の王子〜



Byドミ (原案協力・東海帝皇)



(5)協力者達(あるいは陰謀仲間達)



「蘭!?どうしてだ!?」

思いもかけず、プロポーズにノーの返事をされて、新一王子の頭の中は真っ白になっていました。

蘭の肩を掴んで揺さぶります。

「俺の事、嫌いか?こんな事になったの後悔してんのか!?」

その言葉には、蘭王女は激しく頭を横に振りました。

「ずっと傍に居ると言ってくれたよな?」

その問いには首を縦に振ります。

「じゃあ何故!?」

蘭王女は悲しそうに瞳を閉じ、大粒の涙が頬を流れ落ちて行きました。



  ☆☆☆



新一王太子は横で眠る蘭の顔を見詰めます。
蘭の頬に残る涙の後に胸が痛みました。
あれからずっと泣き続ける蘭が落ち着いて眠りに就くまで新一王子はただ抱き締めて髪を撫で続けていたのでした。

「ったく・・・泣きてえのはこっちの方だぜ」

新一は溜息を吐きました。
いくら考えても訳がわかりません。
蘭が自分を思ってくれている事も、こういう関係になったのを少なくとも嫌だとは思っていない事も間違いないようですが、妃になる件に付いてだけは頑として首を縦に振りませんでした。

「もしかして・・・身分が、とかそんな事考えてんのか?」

有り得る話ですが、新一王子はそれとも少し違うような気がしていました。

「まあ良いさ。実質的にはオメーを手に入れてんだからよ、気長に行くさ。俺はオメーを離す気はねえし、他の女を妃にするつもりなど全くねえ。覚悟しておけよ」

新一王子は眠る蘭の顔を見詰め、髪を撫でながら、決意を込めて呟きました。



  ☆☆☆



ここは工藤王国の米花京にある、お城に程近い大聖堂です。
この国の司教達の中で1番偉い目暮大司教は、今日も勤勉に朝早くから祈りを捧げていました。

「目暮大司教様、お早うございます」
「また遅刻かね、千葉君。もう太陽があんなに高く上っているぞ」

千葉司教候補生が駆けつけて来たのは、目暮大司教が祈り始めてからたっぷり3時間は経った頃でした。
司教候補生の1人である千葉は、目暮大司教の下で修行をしているのですが、人柄は悪くないものの修行はややいい加減で、おまけに困った事に遅刻癖があったのでした。

「大司教様〜、だって、この世界には目覚まし時計も目覚ましビデオもないんですよ〜、起きられません〜」
「ったく・・・あんまり遅刻が続くならお前を司教候補生から外さざるを得なくなるぞ」
「そ、そんな殺生な〜」
「そもそもテレビもビデオもゲームもない世界で、どうやったら夜更かしが出来ると言うのだ?今度から寝坊しないように、鶏舎から雄鶏を1羽借りて行け」

目暮警部が溜息を吐いて言いました。

「ところで、大司教様」
「何だね千葉君」
「この世界においては、われわれが信仰しているのはやはりキリスト教なのでしょう」
「・・・アンデルセン童話なら間違いなくそうだろうが、この世界では微妙だ。千葉君、その件についてはこれ以上突っ込まないように」
「はっ!わかりました!似非西洋風メルヘンの世界では、神様は不明・・・という事ですね。すると我々が祈りを捧げる相手は、一体誰なんでしょう?」
「千葉君・・・たった今突っ込むなと言ったばかりだろうが」

目暮大司教は深い深い溜息を吐きました。









「新一王太子殿下、この度はご成婚おめでとうございます」

3日ぶりに新一王子が寝所から出て来ますと、侍女達が頭を下げて並んで待っていて、年長の美和子がそう声を掛けてきました。

「ご成婚、ね。まあ確かに実質的にはそうなんだけどよ」

新一王太子がやや不機嫌そうに言ったので、侍女達は首を傾げます。
てっきり新一王子はメロメロな状態であろうという4人の予想は見事に外れたのでした。

「殿下、一体・・・」

美和子が言いかけた言葉を遮って新一王子は言いました。

「蘭は疲れてると思うから、何か美味しいものを食べさせて、ゆっくりと休ませてやってくれ」

そして新一王子は部屋を出て行きました。



  ☆☆☆



「工藤、久し振りやなあ、生きとったんか?」
「ああ、服部か・・・」

新一王子が久し振りに、友人や客人などと会う時に使う部屋まで出向きますと、平次公子が所在無げに椅子に腰掛けていました。

「工藤・・・お前、一足早く大人の世界に足突っ込んだんやなあ」

平次公子に言われて、新一王子は飲みかけていたライム水でむせそうになりました。

「情報源は和葉姫か。って事は、オメーは和葉姫とはまだなのかよ?」

新一王子の言葉に、今度は平次公子がライム水でむせそうになりました。

「何でそこに和葉が出て来んねん!」

平次公子が赤く(赤黒く?)なって怒鳴り、新一王子は呆れたように返します。

「やれやれ。意地張り続けてどうするよ。第一、何で和葉ちゃんが俺付きの侍女になったのか、オメーは本当に知らねえのか?俺んとこの侍女は4人とも、あわよくば俺のお手付きになって跡継ぎを産んでくれるようにと期待して、母上が送り込んで来たんだぞ」

平次公子は、目を見開いて椅子から立ち上がり、叫びました。

「ななな何やて〜〜〜〜っ!?かかか和葉もその事知っとんのか!?」

新一王子は、呆れたように平次公子を見遣って言います。

「本当に知らなかったのか、お目出度い奴。まあ、和葉姫の方は、俺が絶対手を出さねえってわかってたから話に乗ったようだけどな」

椅子に寄りかかった新一王子に、平次公子は迫るようにして叫びます。

「な、何でそないな事が解るんや!和葉は気ぃ強うて敵わん女やけど、どこがええんかホンマわからんけど、貴族の男達がよう助平ぇな目で見よるし、工藤、お前も若い男なら、若くて可愛い女にムラムラ来る事あんのやろ!?絶対手ぇ出さへんって、何で解るんや!」

間近にズイと迫って来る平次公子を手で制するようにして、宥めるような口調で新一王子が言います。

「まあ落ち着け、服部。オメーの女に手を出すなんて死んだってするかよ、バーロ!和葉姫にしたってそうだ、おそらくオメー以外の誰に迫られても、死に物狂いで抵抗するだろうよ。俺付きになるのを承諾したのは、その方がオメーと会える機会増えると踏んでの事だと思うぞ」

平次公子は、赤黒くなった頬をますます赤くしてソッポを向いて言いました。

「かかか和葉はたったっただの・・・」
「おいおいおい。この期に及んでまだ『ただの幼馴染』と言い張る気か?それに、あのな・・・実を言うと、俺は今迄女性相手にムラムラ来た事がなかったんだよ」

平次公子が心もち新一王子から遠ざかるように後退りながら今度は顔を青く(青黒く?)して言いました。

「は?何やて!?まさか工藤、王妃様の言わはる通り、もしや男色・・・」

新一王子の顔に不愉快そうな色が浮かび、平次公子の後頭部を思いっ切り殴りつけました。

「あった〜っ・・・何するんや工藤・・・」

平次公子は涙目になり後頭部を押さえて蹲り恨みがましい目で新一王子を見上げました。
新一王子は冷たい目で平次公子を見下ろして言い放ちました。

「気色わりぃ冗談言うな、バーロ!んだからな、蘭が初めてだったんだよ、そんな気になったのは」

平次公子は、さっきの勢いはどこへやら、脱力したように呟きました。

「工藤・・・お前、変わっとんな・・・」
「オメーに言われたくはねえ!オメーは和葉姫以外の女にその気になる事があんのかよ?」

平次公子は再び椅子に腰掛けると、いつもの飄々とした表情を取り戻して言いました。

「若い男やったら、綺麗な女や可愛い女を見たら、本命以外でも少し位はムラムラっと来るもんやで。まあ獣やあらへんのやから、行動には移さへんけどな」
「はあ。そんなもんなのか・・・」

意外だと言わんばかりの新一王子の表情に、平次公子は、今こそ、有希子王妃の心配も無理からぬものだったのだと理解したのでした。

ややあって、新一王子が空になったライム水のグラスを覗き込みながら呟きました。

「けどな、蘭が妃になる件については承諾してくれねえんだ」

平次公子は、意外そうに新一王子を見遣って言いました。

「へっ!?さよか。けど、同衾は承諾したのやろ?まさか力尽くで・・・」

新一王子はちょっと怒ったように顔を上げ、平次公子を真っ直ぐ見ながら言いました。

「蘭の意思を無視して、んな事するかよ!あの時、蘭は確かに頷いた。事に及んでも、初めての事で流石に怯えてたけど、嫌がってはいなかった。あっさりと俺のもんになってくれたんだ。だけどプロポーズにはうんと言わない。だから訳わかんねえんだよ」
「それは、あれちゃうか?姉ちゃんは口が利けへんのやろ?」
「ああ」
「そんな自分がお妃になったら迷惑掛ける思うて遠慮してんのとちゃうか?」
「・・・そっか。その線はありそうだな」

新一王子は、パッと明るい顔になると、立ち上がってさっさと部屋を出て行きました。



後に残された平次公子は溜息を吐きました。
今の新一王子は蘭に夢中で、こういった相談事でもない限り暫らくは平次公子の相手をしてくれそうもありません。

平次公子は、まだ想いを告げてさえいない幼馴染の顔を思い浮かべ、自分達はいつになったらそれらしい雰囲気になれるのかと考え、更に深い溜息を吐きました。



  ☆☆☆



「あらあ、新ちゃん、久し振り〜。もう母親の顔なんか忘れちゃったかなあ?」

有希子王妃は、久し振りに自分の所に顔を出した新一王太子に、からかい口調で声をかけて来ました。

「・・・忘れたくても、忘れられねえよ」

新一王太子が口の中だけで呟きました。

「嘘仰い、ここ3、4日ほどは私の事なんか思い出す暇なんてなかったでしょう」

有希子王妃の地獄耳に、新一王子は黙り込みました。

「ところで新ちゃん、私には紹介して貰えないのかな〜?」
「・・・ああ。勿論紹介するつもりだけどよ、暫らく待ってくれねーか?」

新一王子は、誰の事とも問い返さず、即座に答えました。
有希子王妃が誰の事を訪ねているかは、よく解っているからです。

「良いけど、何で?」
「・・・まだ、プロポーズにOK貰えてねえんだ」
「・・・まさかと思うけど新ちゃん、嫌がる女性を無理矢理手篭めにしたんじゃ・・・」

有希子王妃が軽く睨むようにして尋ねました。
その口調も顔付きも悪戯っぽいもので、本気でそんな事を言っている訳ではない事はすぐに判ります。
それでも新一王子は溜息を吐いて言いました。

「服部にもそう言われたけど・・・俺って信用ねえのな」
「もう、冗談だってわかってるでしょ。新ちゃんがそんな子じゃない事位、私には良くわかってるわよ。まあ、王子様のお妃となると色々あるからね、好きってだけじゃあプロポーズにイエスとは言えないわね。その子の不安を取り除いてあげるのも、大切な事よ。せっかく新ちゃんが惚れるだけの女性が現れたんだから、頑張ってね」

有希子王妃の言葉に新一王子は顔を上げます。

「へえ・・・まあ理解あるとは思ってたけど、えらく物分りがいいじゃん?」
「そりゃあね。新ちゃんの目を信じてる、ってだけじゃないのよ。現実問題として、立場上身分ある女性を形式だけ整えてお妃を迎えたとしても、新ちゃんの性格から言って、跡継ぎは望めそうもないでしょ?」

新一王子は赤くなって溜息を吐きました。

「やっぱまだまだ母上には敵わねえな・・・」



  ☆☆☆



さて、侍女達は新一王子に言われた通り、蘭王女の為に浴室と食事の準備をしました。
蘭王女は1人で入浴し(流石に今回は色々差し障りがあろうと思って侍女達は無理に湯浴みの手伝いはしませんでした)、食事に手をつけましたが、あまり食が進まない様子でした。

「殿下と言い、蘭様と言い、結ばれたばかりの恋人同士としては何だか雰囲気が変ね」

美和子が言い、他の侍女達も頷きました。
和葉が言いにくそうに告げます。

「それがな・・・つい今しがた平次から聞いた話なんやけど、蘭様は新一殿下の結婚の申し込みを断ったんやて」
「ええっ!?何でぇ!?」

年若い歩美が思わず大声を上げ、園子と和葉が口に指を当てて「シッ!」と言いました。
歩美が慌てて口元を押さえます。
侍女達が会話をしているのは、蘭が食事をしている食堂の隣の台所なのです。

「もしかして蘭様・・・自分にはお妃様になる資格がないって思ってんじゃあ?」

そう言った園子の言葉に、美和子が頷きます。

「有り得るわね・・・」

その時です。
侍女達の耳に、微かな声が聞こえました。

「快斗、やっぱり蘭ちゃん、勘違いしてるんだよ。もう実質的には新一王子様と結婚してるって事、わかってないみたい」
「あ、馬鹿っ、しぃっ!!」

「誰っ!?」

美和子が気配を感じた方向へ鋭く目を向けて誰何しました。
和葉が素早く銀のフォークをそちらに向かって飛ばします。

すると、フォークは空中で止まり、次にそのフォークを持った格好の男性の姿が忽然と現れました。
白いスーツに白いマント、そして白いシルクハットを被った男性です。

新一王子に似た面差しのその男性は、にっこり笑ってそのフォークを歩美に向けて差し出しました。
歩美がおずおずとそれを取ろうとしますと、歩美の目の前でそれは赤い一輪のバラに変わりました。
歩美は頬を染めてそれを受け取ります。

「あ、あなたは・・・白い魔法使いキッド!?」

園子が叫びました。

「価値ある宝石を盗んだり、かと思うと貧しい者や弱い者を助けたりする、神出鬼没の大怪盗・・・もとい、白い魔法使い。そうでしょ!?」

園子がキッドに(現れた白装束の男は、勿論キッドでした)指を突きつけて言いました。

「お嬢さん、私の事を知って頂いているとは光栄ですね」

キッドが気障にウィンクして見せます。
新一王子と良く似た面差しのその男に、侍女達は一瞬見惚れてしまいました。

「知っているも何も・・・鈴木カンパニーの至宝・ブラックスターを狙って盗もうとしたでしょう!殿下が守って下さったけど!」

園子は、ともすればキッドに見惚れてボーっとなりそうな気を引き締めて言いました。

「おや、そう言う貴女は、鈴木カンパニー代表鈴木史郎の愛娘、園子さんですね。あれは殿下に阻まれたからではなく、私が求める物ではなかったのでお返ししただけの事ですよ」
「んもう!かいと・・・キッドったら、今はもっと大事な話があるでしょ!」

そう言って空中から出現したのは、可愛らしい少女です。
こちらは蘭王女に良く似た面差しですが、背中に蜻蛉の様な透き通った羽根が付いている為に、人間ではない事が見て取れました。

「こんばんは、私は青子。妖精王の娘で、蘭ちゃんとはお友達なの」

青子がにっこりと邪気のない笑みを浮かべて言ったので、その場の空気は和み、4人の侍女達は毒気を抜かれたような顔をしました。

「妖精の王女様?蘭様にそっくり。もしかして血が繋がってるの?」

歩美がそう問い掛けます。
すると、青子王女が答えるより先に、魔法使いキッドが青子の胸と腰を軽く叩いて言いました。

「どこがナイスバディの蘭さんにそっくりなんだよ、こんなに発育不良でお子様体形の青子が」

次の瞬間、どこから取り出したものか、青子の手に握られたモップで魔法使いキッドは叩きのめされていました。
それを見た4人の侍女達が考えたのは、

『妖精王国でもモップでお掃除をするのかしら?』

という事でした。
青子王女に追い掛け回されモップで叩きのめされるキッドには、先ほどまでの気障で格好良い様子は微塵もありませんでした。



  ☆☆☆



「で、その白い魔法使いと妖精の王女様が一体何の用があってここに忍び込んでいる訳?」

いち早く我に返った美和子が2人の襟首をとっ捕まえて言いました。
園子や歩美と違い、美和子はキッドの気障な言動にいささかも動じていませんでした。

「それは、話せば長い事ながら・・・」

キッドが言い掛けると、美和子が即座に返します。

「簡潔に言いなさい、簡潔に!」

いきなり出鼻を挫かれて、キッドは目を白黒させていました。



「えっとね、蘭ちゃんが王子様ともう結ばれちゃったって事に関係してるの」

青子がそう言って、和葉が不思議そうに問います。

「へ?何やそうなったらあかん理由でもあるのん?」

キッドが意を決したように話し始めました。

「ああ、そんなんじゃなくって・・・あの2人は、時を超え世界を超えて、何度でも巡り会い惹かれ合う定めの永遠の恋人同士、結ばれるのは悪い事じゃないんだが、今の時期ちょっとまずい事があってな」

4人の侍女は、真面目な顔をして話し始めたキッドの言葉に固唾を呑んで聞き入ります。

「有体に言えば、蘭おう・・・蘭さんにはある呪いが掛けられてて、今それを解く為の作業中なんだ」
「白い魔法使い、貴方にそれは解けないの?」

歩美が疑問を口にします。キッドは苦笑して答えました。

「それが出来るなら苦労はしねえ。呪いを掛けたのは強力凶悪な魔女・ベルモットだから」

まだこの時点で、侍女4人はベルモットの名を知らず、首を傾げます。

「呪いを解く為の作業には、呪いを掛けた魔女でさえ直接の手出しはかなわないが、色々と制約があって、その1つに、蘭さんの夫となった者にその作業の意味や掛かった呪いの事を知られてしまったら、全てが水の泡となる・・・ってとんでもないものがあるんだ」

そこで美和子がハッとした様に言いました。

「ねえ、その『夫となった者』ってのは、実質上の事であって、形式上ではないのよね?つまり・・・」

キッドはちょっと苦笑して言いました。

「話が早くて助かる。つまり、蘭さんと新一王子が結ばれた以上、新一王子に最後まで全てを隠し通さなければならない訳だ。あいつ・・・あ、いやさ、新一殿下がもっと愚鈍な王子だったら良かったんだが、妙に聡くて鋭いやつ・・・あ、王子様だからさ」
「でね、ここからが問題なの」

子供子供した印象を与えていた青子が、真面目な顔で一同を見渡しました。

「蘭ちゃん1人で全て抱えるには大き過ぎる。青子達も、出来るだけ蘭ちゃんの力になりたいって思ってる。そして出来れば・・・蘭ちゃんの傍近くに居る貴女達に、事情を全て話して協力して欲しいって思ってるの。でも、それには問題があって・・・」

美和子と園子が、青子王女の言葉に頷いて言いました。

「新一王子には絶対気取らせないって事ね」

キッドが言葉を重ねます。

「そう。癪だがあの聡明で鋭い新一王子を、完全につんぼ桟敷に置かなければならない。それは並大抵の事ではないし、貴女達の忠誠心に反するかも知れない。だから・・・蘭おう・・・蘭さんや俺たちに協力する事を約束し、そして新一王子には決して知られないようにする、って覚悟を決めて貰わなければ、この先を話す事は出来ない」



  ☆☆☆



暫らくその場に沈黙が下りました。

「忠誠心っていう事でなら、何の問題もあらへんで」

口火を切ったのは和葉でした。

「新一殿下が惚れ抜いてお妃様にしたい思うてはる蘭様に協力して守るんは、結局新一殿下の為にもなる事や。アタシはあんたらに協力すんで」

歩美が力強く言います。

「うん!蘭様がお1人で何もかも背負って戦っているなんて、可哀想。みんなで協力して、少しでも早くその呪いが解けるように頑張ろうよ!」

美和子と園子も、それぞれに頷きます。

「知らなかったとは言え、殿下がいち早く蘭様に手を出してしまった事が事態をややこしくしてしまったんだから、私達でフォローするのがむしろ忠実な侍女としての勤めだと思うわ」
「蘭様、いっつもどことなく暗い顔してんのよね。早く心の底から笑って欲しい」

4人の答えに、蘭王女がこれ程に早く侍女達の信頼と友愛を受けていた事を知り、キッドと青子は笑顔で頷きました。

キッドがちょっと茶化すように言いました。

「それにしても貴女達は、ここに忍び込んでいた俺達をよく無条件で信用する気になりましたね」

それに美和子がちょっと笑って答えます。

「馬鹿にしないで、これでも人を見る目くらい持ってるんですからね。それに、蘭様の事でそれだけ真剣に話をしてくれるあなた達ですもの、信頼しない訳には行かないわ」


「あ、せや。キッド、忘れん内に」

突然和葉が言って、キッドに向かって手を差し出しました。

「?何だ?」
「さっきのフォーク、返してくれへん?あれ銀製やから高いんや」

そう言ってにっこり笑った和葉は、経費節減にも努める侍女の鑑と言えましょう。
キッドは苦笑いしながら、さっきバラを出した時に胸ポケットに仕舞っていた銀のフォークを取り出して和葉に渡しました。



  ☆☆☆



「で、まずは蘭さんの身元なんだけど・・・」

キッドがそう言った時です。
台所の入り口でカタリと音がして、一同が振り返るとそこに青い顔をした蘭が立っていました。

「蘭王女。話は聞いていたんだろ?貴女も一緒にきちんと話をした方が良い。おいで」

キッドが「蘭王女」と呼びかけた事に侍女4人は息を呑み、蘭王女は頷いて台所へと足を踏み入れました。



  ☆☆☆



キッド(青子王女も時々口を挟んで)の長い話が終わり、暫らくの間、一同は言葉もありませんでした。
突然、歩美が泣き始めました。

「ううう、蘭様、可哀想・・・」

園子と和葉も目を潤ませています。
美和子だけは年の功か、もらい泣きまではしませんでしたが、何事か考え込んでいます。

「毛利王国・・・あそこは確か・・・」
「美和子さん、どうしたの?」

園子に問われて美和子は顔を上げました。

「あ、いえ、・・・そういう事であれば、蘭様はそれこそ紛れもなく新一殿下の許嫁(いいなずけ)だわ」

蘭が驚きに目を見開いて美和子を見詰めました。

「へ!?それってどういう意味なん?」

和葉の声に、美和子が説明します。

「有希子王妃陛下と毛利王国の英理王妃陛下は大の御親友で、それぞれ嫁ぐ前にいずれお互いの子供達を娶わせる約束をされていたそうよ。有希子王妃陛下のお子様は新一殿下唯お1人。英理様は子沢山だけど、殆どが王子様で、新一殿下と釣り合う年頃の王女様といえば蘭様しか居られない筈よ」

美和子の説明に、釈然としないものを感じて和葉と園子が言います。

「へえ、せやったんか。けどそれやったら何で有希子陛下はアタシ達を新一殿下付きにしたん?」
「そうよねえ、私達の内誰であれ殿下のお手が付いたらお妃様にする、お互い誰が選ばれても恨みっこ無しよ、と有希子様は仰ったものねえ」

和葉と園子の言葉に蘭王女は目を見開き、美和子が苦笑して言いました。

「それは・・・殿下が17歳にもなって全く女性に興味を持たないし、工藤王国からは何も言って来ないものだから、王妃陛下は焦っておられたのよ。このままでは跡継ぎが望めないんじゃないかってね」

皆が納得顔で頷きましたが、1人蘭王女だけはとんでもない話の展開に赤くなったり青くなったりしていました。



  ☆☆☆



「で、蘭王女。もう既に実質的には貴女は新一王子を夫としちまってて、それは今更プロポーズを断ろうが覆される事ではない。ここはもう腹括ってお妃様になっちまった方がいいぜ」

キッドの言葉に、蘭王女は思わず顔を横に振って俯きました。
大粒の涙がいくつも零れ落ちていきます。
こんな場合でしたが、真珠のような綺麗で清らかな涙だ、と一同は思いました。

妖精の青子王女が蘭王女の肩に手を掛けて言います。

「ねえ、蘭ちゃん。もしかして自分が幸せな思いをしたせいでお兄さん達に迷惑掛ける事になったとか思ってる?お父さん達が大変なときに自分だけが幸せな思いをして悪いとか思ってる?」

蘭王女が頷きました。

「そんなん・・・!蘭様1人辛い思いをする事あらへんやんか、マイナスに考えたらあかんで、蘭様が幸せな花嫁さんになった方が絶対お兄様達も喜んでくれはるって!」

和葉が拳を握り締めて言いました。

「ここはみんなで協力して、一日も早く呪いを解いて、みんなで幸せになった方がいいじゃない!」

園子が力強く言いました。

「うん、そして、そのベルモットっていう悪い魔女やっつけて、お父様達を助けないといけないんでしょ?なら、前に進まなくちゃ始まらないよ?」

そう歩美が激励します。

「それに・・・私達の敬愛する新一殿下を頼めるのは、蘭様、貴女しか居ません。どうか殿下の事、宜しくお願いします」

美和子が更に言った言葉は真情が篭っていて、蘭王女の心を深く揺り動かしたようで、蘭王女の瞳は揺らぎました。
しかしそれでも、今の蘭王女は、はっきりと頷く事が出来なかったのでした。
一堂は深く溜息を吐きましたが、この場でそれ以上の無理強いをしようとはしませんでした。



園子がちょっと意地悪そうな顔で和葉に言いました。

「和葉ちゃん、わかってると思うけど、愛しのダーリンにも絶対内緒よ」
「なっ!へへ平次とはそんなんやあらへんって!たったっ只の幼馴染や!」
「はいはい、その只の幼馴染には内緒にしといてね・・・でも私、平次公子殿下の事だって一言も言ってないんだけどなあ?」
「んもう!心配せんかて、平次に喋ってもうたら新一様に筒抜けやってわかっとるさかい、絶対喋らへんって!」

からかい口調の園子と、真っ赤になって言い返す和葉に、蘭王女は思わず微笑みました。

蘭王女はこういう時でも、決して笑い声を立てる事は出来ません。
その様子に気付いた4人の侍女は、そっと顔を見合わせました。
蘭王女にとっては日々の暮らしが難行苦行の連続と言えます。
せめても、愛する人と結ばれる幸せ位は享受して欲しい、それ位したってバチは当たらないだろうと4人は思いました。



「兄弟離れ離れって辛いと思う。ねえ、せめて蘭様のお兄様達、ここに呼び寄せる事は出来ないの?」

歩美が考え込みながらそう言いました。
それに青子が答えます。

「あ、毛利王国の王子様達だったら、とっくの昔にお城の庭に来てるよ」

それには蘭王女も驚きました。
今日まで寝所に篭りきりでしたので、まだ白鳥達を見ていなかったのです。

「そう言えば、ここ数日池に妙にたくさん白鳥が泳いでると思ったら・・・あれ、毛利王国の王子様達だった訳!?」

園子がそう言い終わる前に、蘭王女は駆け出していました。

「あ、蘭様、アカン!そっちは・・・!」

和葉が叫びました。
そう、蘭は筋金入りの方向音痴、ましてやここはまだ蘭王女が右も左もわからない工藤王国の王宮内です。
蘭王女はお城の庭に出る心算で全く見当違いの方向へと走って行き、慌ててその後を4人の侍女と白い魔法使いキッド、青子王女が追って行きました。



  ☆☆☆



新一王子は窓からボンヤリと庭を見下ろしていました。
池にたくさんの白鳥が泳いでいます。

「気のせいか、何か急に白鳥が増えたよな。ん?風変わりな白鳥達が居る・・・」

全身真っ黒な黒鳥や、首が黒い黒襟白鳥など、珍しい白鳥達まで混じっているのです。
新一王子はふと黒襟白鳥に目を留めました。
蘭と初めて会った時、新一王子を攻撃して来た為止むを得ず眠らせた白鳥が、同じ種類だった事に気付いたのです。

「偶然か?いや・・・こんな事が偶然であると考えるより、あの森で蘭の友達だった白鳥達が蘭を追って来たって考えた方が自然だよな」

すると、今新一王子が考えた事を裏付けるかのように、蘭が庭に走り出てきて、件の黒襟白鳥を抱き締める光景が目に写りました。
他の白鳥達も蘭の周りに集まって来ています。

「白鳥って、雄と雌がわかんねえよな。あいつらまさかみんな雄じゃねえだろうな?」

新一王子はそんな事を考え、次いで自分の嫉妬心に苦笑しました。
こんな風だと、猫の子であろうが蘭に近付く「男」全てに警戒しそうです。
やはり早く名実共に蘭を自分だけのものにしたいと新一王子は考えるのでした。



  ☆☆☆



「ハア、ハア、ハア・・・」

蘭王女を追っかけて何とかお城の庭にある池まで誘導する事に成功した侍女達は、ようやく蘭に追いついて荒い息を吐いていました。

「ったく、蘭様ったら、方向音痴の癖に足が速いんだから」

園子がそう愚痴ります。
園子はふと強い視線を感じてそちらを見ました。

黒鳥がじっと自分を見詰めています。

鋭いけれど綺麗に澄んだ瞳で見詰められ、園子の胸は高鳴ります。

「私ったら、白鳥に見られたくらいで・・・あ、でもあれは只の白鳥・・・ううん、黒鳥じゃなくて、蘭様のお兄さんなのよね・・・」


その時、歩美も強い視線を感じてそちらを振り向くと、2羽居る小白鳥の内、ずんぐりむっくりしている方の1羽がじっと歩美を見詰めているのでした。


美和子も強い視線を感じてそちらを見ますと、大白鳥の内2羽がじっと美和子を見詰めていました。


そして、蘭に抱き締められていた黒襟白鳥はふと顔を上げ、美和子の方を何か言いたそうに首を傾げて見ていました。





日が西に傾きかけています。
もうすぐ、白鳥達が本来の姿に戻る時間です。



キッドは今、姿を隠していましたが、視線を感じて窓の方を見上げ新一王子が蘭と白鳥達をじっと見ているのに気付きました。

『このままだとマジイな・・・』

新一王子が、白鳥達が人間に戻る瞬間を見てしまったなら、それこそ一大事だからです。(毛利兄弟達に目くらましの魔法は掛けてありますが、それはそれで新一王子は白鳥達が突然消える光景を見る事になり、不信感を抱かれるのは必定です)

そこで取り敢えず、蘭王女には新一王子の元まで急ぎ戻ってもらう事にしました。



  ☆☆☆



「蘭。庭に居る白鳥は・・・江古田の森で蘭の友達だった白鳥か?」

蘭が部屋に入って来ますと、新一王子が窓から離れそう尋ねてきて、蘭王女は頷きました。

「良かったな。これで少しは寂しい思いをせずにすむだろう」

新一王太子がちょっと微笑んでそう呟きます。
蘭王女は思わず新一王子の胸に飛び込んでいました。
新一王子が優しく蘭王女を抱き締め、口付けて来ます。

蘭はそのまま寝所に連れて行かれ、新一王太子の温もりに包まれて無上の幸福を味わっていました。
そして同時に、その事に罪悪感を覚えていました。
妖精の青子王女が危惧したとおり、蘭王女は「自分が幸福になる事」を後ろめたく思っていたのでした。
声が出せない為、新一王子に抱かれる時もどこか醒めていなければならず、何もかも全て飲み込まれ溺れてしまう訳には行きません。
今の蘭王女は、それが自分だけが幸せになっている事への罰のような気がしてならなかったのでした。



その夜は様々な事があった夜でしたが、新一王子と蘭王女は王宮内のざわめきに全く気付く事無く、お互いを抱き締めあったまま深い眠りに落ちていました。

それは、白い魔法使いキッドが、こっそりと蘭王女の髪の毛に魔法薬を垂らしていた為でした。



  ☆☆☆



太陽が最後の光の矢を投げて地平線に沈みました。
白鳥達が次々と本来の姿に戻ります。

侍女達4人は、話には聞いていたものの、目の前で白鳥達が立派な若者の姿に変身して行くのを見て目を見張りました。
1人だけ、女性の姿があります。
美和子と同じ年頃の、長い黒髪の王女様です。

「え?まさか・・・由美?」

美和子がそう呟くと、由美王女も目を見張って言いました。

「あなたやっぱり・・・美和子?」

そして2人、抱き合って泣き始めました。

そう、2人は共に宮本王国(現・沢木王国)の出身、王女の由美と佐藤中将の娘・美和子は、幼い頃の遊び友達だったのです。
お互いに父親を失うという悲劇を体験しながらも、それぞれ無事に毛利王国と工藤王国で保護され、幸せに暮らして来た事を心の底から喜び合いました。

「ええ!?由美姉上って、養女だったのですか!?」
「全然知らなかったぜ!」

1番年若い光彦王子と元太王子がそう叫びました。
小五郎王と英理王妃は、由美王女を他の王子達と分け隔てなく育てたのです。
その為、由美王女が毛利王国に迎えられた時にはまだ生まれていなかった元太王子と光彦王子は、上の姉が養女である事を知らなかったのでした。

「毛利のお父様とお母様には、本当に良くして頂いて、感謝してるわ」

由美王女がそう言いました。

「由美、お前は私達の本当の兄弟だと思っている、水臭い事を言うんじゃない」

長兄の参悟王子がそう言って、兄弟達は皆それに大きく頷きました。
由美王女は微笑んでそれに応えましたが、その笑顔に僅かな翳りがある事は、誰にも気付かれる事がありませんでした。



毛利兄弟と侍女4人は改めて自己紹介をし合い、蘭の事、そして今後の事について話し合いました。

参悟王子が天を仰ぎ、頭を掻きむしって言いました。

「ああ、何てこった・・・!この数日の間に蘭が傷物にされていたとは・・・!父上に何と言ってお詫びすればいいんだ!」

そこへ美和子が叱咤するように言いました。

「どうお考えか知りませんが、新一王子と深い仲になったのは、蘭様御自身も望まれての事、過ぎた事を今更とやかく言ったって仕方ないではありませんか。とにかくこのままでは、蘭様はただのご側室に過ぎません。早く正式なお妃様になって頂きたいけど、肝心の蘭様がうんと言わないんです」

そのはきはきした物言いに、任三郎王子とワタル王子がうっとりと見惚れています。

どういう訳かわかりませんが、毛利王国は昔から男児の方が出生率が高く、王子達も年若く美しい人間の女性を見る機会があまりなかったのでした。
彼らの身近に居た妙齢の女性といえば、妖精乙女や兄弟である由美と蘭を別にすれば、蘭付きの侍女であるヒカル位だったのです。

「なあ、アタシらだけで秘密を守り抜く言うんはちょっと厳しいで。協力者がもっとおった方がええと思う」

和葉の言葉に園子が頷きました。

「そうね。やはりここは国王陛下と王妃陛下に打ち明けて、善後策を一緒に考えて頂きましょうよ」

力強くそう言った園子を、真王子が熱い眼差しで見詰めていました。

「せやな・・・それが1番やろな。それに、魔法の事に詳しい魔法師団長の紅子はん、薬師長の志保はんにも相談に乗ってもらった方がええんちゃう?」

そう言った和葉は、器量の良さではおさおさ他の侍女達に劣る訳ではありませんでしたが、取りあえずこの場で彼女に粉かけようと思う者は居ませんでした。
何故ならば・・・和葉自身は知らない事ですが、和葉がいつも身に着けている大きなリボンには、平次が赤き魔女の紅子に頼んで作って貰った虫除け呪符が縫い込まれていたからです。



一方歩美は、由美王女と美和子の数奇な運命に、いまだにもらい泣きしていました。

「うっうっ、由美王女も美和子さんも可哀想・・・」

元太王子は、泣いている歩美を見て胸を痛め、早く泣き止んであの大きくて綺麗な瞳を見せてくれないかな・・・と願っていました。



  ☆☆☆



夜の帳の中を国王夫妻の私室まで大勢で押しかけるのは、いくら何でも目立ち過ぎます。

まず、妖精王女の青子が、同じ魔法で姿を隠した園子と共に、有希子王妃の私室へ行く事になりました。
同じく魔法で姿を隠し、和葉は智明王子・光彦王子と共に薬師長の志保の元へ、美和子はキッド・探王子と共に魔法師団長の紅子の元へと、それぞれに向かいました。


「その夜、工藤王宮内を密使や魔法での伝達が飛び交い、暗闇の中、王宮の庭で、世界の命運を決する会談が行われた」と・・・いささか大袈裟ですが後の史書は伝えています。


そして、我等が新一王太子と蘭王女は、その渦中にありながらも魔法薬の効果でぐっすりと眠り、その夜は何も知らず、お互いの温もりに包まれて一時の平和を享受していたのでした。



(6)に続く



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(5)の後書き座談会

ドミ 「ぐわ〜〜〜〜っ!!またしても結婚式まで行き着かなかったあああっ!!」


智明 「では恒例のキャラ座談会を始めたいと思いますが・・・今何か、雄叫びが聞こえませんでしたか?」
探  「ふっ・・・幻聴と思ってほったらかしときましょう」
智明 「皆さんそれで宜しいですか?・・・釈然としませんが、全員の挙手があったので、さっきの雄叫びは幻聴と思って無視する事にします」
平次 「それにしても智明はん・・・あんたホンマに原作では劇的に色々遭ったなあ」
智明 「そうですね・・・ネタバレになるのでここで詳しくは述べませんが」
光彦 「で、今回もとうとう予告破り・・・結婚式までたどり着けなかったんですね」
ワタル「話を膨らませ過ぎたんでしょうか?」
平次 「いや。ちゅうより、ドミはんと会長はんの読みが甘かったんやな。こら果たして2004年が終わる前にこの話が終わるんか、わからんようになったで」
真  「それまでエースヘブンが息災である事を祈っておきましょう・・・南無・・・」
千葉 「う〜ん。この話って、西洋じゃないんですかねえ。もしかしたら僕達、仏教の僧だったりして」
目暮 「笑えん冗談だな・・・まあ今回、辛うじて顔出しだけは出来たので良しとしよう。まだ出番が来ない人達がたくさん居るからな」
任三郎「後何人位出番待ちの人が居るのでしょうかねえ」
参悟 「どれ、台本を・・・う〜む、改定される度に台本が分厚くなってくぞ。それに、とうとうドミさんは、次回どこまで話が進むという予測を放棄してしまったようだ」
元太 「大変だ。俺台詞覚えるの苦手なのによ」
光彦 「元太くんは元々台詞あまりないから関係ないじゃないですか」
ジョディ「私は〜、次こそ出番があるって話でしたけど〜、一体どうなるんでしょうね〜。とうとうテレビで先に〜、私の正体ばれてしまいますで〜すね〜」
園子 「ジョディ先生・・・やっぱ相変わらずその話し方なんですか?」
ジョディ「私は〜、いつでもどこでも〜、こうですよ〜」
和葉 「な、なあ、ところで今回、平次がアタシに虫除けの呪符をつけるやなんて、唐突過ぎるんちゃう?」
平次 「それは、何を血迷うてか知らんけど、お前に引っ掛かったりしたらその男の方が気の毒や思うて、予防してやっただけの話や」
和葉 「何やて!?平次、覚悟はできとんやろな!!」
平次 「あたたたた!ほら、相手の男の方が気の毒やろ?」
歩美 「あ〜あ。本当は、和葉さんにだけ誰も一目惚れしないのは不自然だって言ってドミさんが付け加えた設定なのよね」
園子 「あ、服部くんが・・・もう手遅れみたいよ・・・」
探  「ふっ・・・自業自得とは、彼の為にあるような言葉ですね」
由美 「ああ、辛い過去を背負い愁いに沈む美女。私にピッタリの役柄だわ・・・」
美和子「設定が設定だから仕方ないけど、能天気な由美とは到底思えない役柄ね」
由美 「美和子、何か言った?」
美和子「ううん、別に」

〜各キャラが暴走してお互い勝手に喋り始めてしまい、マイクで音を拾う事が不可能になりました。そのまま暫らくお待ち下さい〜

智明 「という事で収拾がつかなくなるばかりのようですので、次回の行方はわからないままに、この辺でお開きにしたいと思います」


(4)千夜一夜に戻る。  (6)結婚式に続く。