銀盤の恋人たち



byドミ



(13)夜明け



大みそか。

その日の練習(と言っても、氷上ではなく、陸上で、走り込みや柔軟体操、バレエなどが中心であった)が終わった蘭は、自宅の部屋でコタツに入り、1人、ボーッとテレビを見ていた。
父親は居間で、別のテレビを見ながら飲んでいるようだ。
別居している母親には、明日会いに行く事にしている。

新一は、蘭と共に陸上トレーニングをした後、怪我を押して、1人、氷上でのレッスンをしている筈だ。




蘭の両親は、蘭が幼い頃からずっと、別居している。
幼い頃は、両親はラブラブだったように思うのに。
いつ頃からか、仲違いして、母親が出て行ってしまったのだ。

蘭が新一と初めて会ったのは、両親の不仲に蘭が心痛め始めた頃の事だった。


父と母の事は、今ではある程度、理解出来ていると思う。
早く母親に帰って来て欲しいと、今も願っているけれど。
両親の仲は、決して悪い訳ではなく、犬も食わないケンカが持続しているだけなのだと、今の蘭は分かっている。


けれど、幼い頃、父と母のケンカが多くなった頃の蘭は、小さな胸を痛めてばかりいた。

そんな時に、長野の母の実家近くの小さな湖で出会った、新一の存在が、蘭の支えとなり、蘭の心を温めてくれたのだ。
まだ小さかった蘭には、それが恋だと自覚出来ていなかったけれど。


母方の祖父が亡くなり、祖母が伯父の家に引き取られ、長野の母親の実家がなくなってしまってから、蘭がその湖を訪れる事もなくなり。
会えなくなって初めて、蘭は新一がどんなに大きな存在だったのかを、思い知ったのだった。


新一とまた、会う為に、そして共に過ごす為に、蘭は、スケートを続けて来た。

一昨年、新一と再会して。
思いがけず、ペアの相方にと乞われ。

それから2年間、蘭は幸せだった。
色々とあったけれど、新一と共にいられて、誰よりも傍にいられて、蘭は幸せだった。


長年やって来たフィギュアスケートには、今ではかなり愛着を持っているし、より上手になりたい、せっかくなら試合に勝ちたい、より高みに行きたいという思いが、ある。
けれど、何と言っても、蘭がスケートを続けて来られたのは、新一への想いがあるから、だった。


今回、新一が怪我をした事、それは誰しも「仕方がない事で、蘭の所為ではない」と言ってくれるけれども。ペアでは、怪我がつきものなのだと、その覚悟がないといけないのだと、皆から慰められるけれど。
蘭としては、自分の気が散っていた事、睡眠不足があった事が原因で、元はと言えば、自分がスケートをやっている理由がヨコシマなものだったからと思えて、ならなかった。


それでも、新一が期待をしてくれているし、蘭が頑張らないと迷惑をかけるから。
オリンピック代表になって、世間から期待が掛かるから。
練習しなければと思うのに、氷の上に立とうとすると、蘭のエッジが新一の腕にかかったあの瞬間の事が思い返され、足がすくんでどうにもならない。


蘭がテレビ画面を見ていると、年が改まる時を待つ各地の様子が映し出されていた。
その中に、長野もあり。
蘭は、新一と初めて出会った、そして初めてスケートをした、あの時の事を思い返していた。


「あの、湖を見に行こう。わたし達の始まりになった、あの場所に」

蘭は、唐突に、そう思った。
そして、本棚の上にある箱から、蘭の祖父母から貰った古い年賀葉書を探しだした。

そこに、母・英理の生まれ育った、祖父母の家の住所が書いてある。
蘭は立ち上がり、身支度をし、ボストンバッグに着替えなどの荷物を詰め、葉書を手にして部屋を出た。
幸い、今夜は、初詣用の臨時列車が終夜動いているところが多い。
祖父母宅の最寄り駅の名前は、覚えている。

方向音痴の蘭であるが、最寄駅から住所を頼って行けば、何とかなるだろうと思った。


黙っていなくなると、父親や他の人に心配されるかもしれない。
蘭は、書き置きをして、居間でテレビを見ている父親の後ろを、足音を忍ばせて通り、玄関から外に出た。



   ☆☆☆



「何じゃと!?蘭君がいなくなった!?」
「・・・彼女、思い詰めていたものね。大丈夫かしら?」

阿笠邸を訪れた新一から、新年のあいさつもそこそこに聞かされた話に、阿笠博士とフサエは、心配そうに眉を寄せた。

「初心に帰ると書いてありましたから、悪い方へ思い詰めている訳ではないと思います。失踪する気ではないようですし」

心配しているのは新一も同じだけれど、自分自身に言い聞かせるように、そう言った。


「そうね。小さな子供ではないのだし、彼女の事は、そこまで心配する必要はないかもしれない。ただ。私が気になっているのは、スケート協会やマスコミだわ。全日本での事故の事はともかく、その後、蘭ちゃんが滑れなくなっていた事もあるし、レッスンに暫く姿を現さないとなると、代表権を取り消すべきではないかという声も、あがって来るかも知れないし」
「そうですね。蘭は、逃げ出した訳ではない。ただ、自分を見詰め直そうとしているだけ。でも、周りがそうと理解してくれるとは、限らない。正直オレ個人には、オリンピックに行けようが行けまいがどうでも良いけど。蘭がこれ以上苦しむような事にならなければ・・・」
「工藤君・・・」

新一の言葉に、フサエは目を見張る。

「蘭をペアに誘った事は、あの時なりのベターな選択だったと思うし、後悔した事はないです。でも、もしかしたら蘭に、色々な苦しみを背負わせてしまっているのかもしれないと、気がかりだった事も、確かです。でも、今となっては、メダル云々はともかく、オリンピックで今のオレ達に出来る最高のスケートを見せなければ、世間が納得しないでしょう。オレ個人なら、世間からどう見られようが構わない。蘭は、弱い人間ではないけれど、それでも、周りから色々言われたら、傷付くだろうと思います」
「そうね。私としても・・・彼女の意思を尊重したいけど、行方不明が長引くと、色々と取り沙汰されかねないから、早くに彼女を連れ戻した方が良いと思う」
「オレ、迎えに行って来ます」
「行き場所に、心当たりはあるの?」
「初心に帰るって言ってましたから、多分、オレ達が初めて出会って、蘭が初めてスケートをした、あの場所かと」
「分かったわ。それは、工藤君に任せます」


新一は、すぐに、隣の我が家にとって返して、出かける支度をしようとしたが、その時、新一の携帯に着信があった。

「ん?鈴木か?珍しいヤツから・・・もしもし?」
『新一君!蘭が・・・蘭が・・・!』
「鈴木、落ち着け!蘭がいなくなった事なら、オレも知ってる!」
『アンタ、それを知っているんなら、何、落ち着いてんのよ!』
「オレは今しがた、蘭の家に行って、蘭が書き置きを残して家を出た事を聞いた」
『わたし、わたし。さっき、あけおめコールをしたら繋がらなくて。よく見たら、蘭からのメール着信があって・・・ちょっと気分転換に行って来るけど、すぐ帰るから心配しないでねって・・・わたしが、他の事にかまけている間に、蘭が、蘭が・・・!』
「だから、落ち着けってば!蘭の行った場所に、心当たりはあっから!」
『新一君?』
「蘭が初めてスケートをした小さな湖があるんだ。オレ達が初めて会った場所でも、あるな」
『わ、分かっているなら!』
「だから。これから、蘭を迎えに行く。オメーは心配せずに待ってろ」
『・・・バカね。アンタの方が、心配しているクセに・・・』
「うっせーな・・・」
『ねえ。その湖がある場所って、長野の、英理小母さんの実家があった所?』
「ああ」
『住所、分かる?』

新一は、園子に、おおよその住所を告げた。
園子は、ちょっと考え込んでいる風だった。

『新一君。蘭の事は、任せたわ。見つかったら連絡してよね』
「ああ。わーった。それじゃ」


新一は電話を切ると、阿笠博士・フサエ夫妻に改めて挨拶し、工藤邸に戻って身支度と旅支度を整え、蘭に数時間遅れで米花駅へと向かった。



   ☆☆☆



蘭は、母親の実家最寄駅の名前は覚えていたが、それが何線に存在しているかも分からなかったし。
時刻表の見方も知らない上に、乗り換えに戸惑ったり間違った方に行ったり散々で。

懐かしい駅に着いた時は、冬の遅い朝も、さすがに明けかけていた。

初詣客も殆ど降りないような田舎の小さな駅で、駅前のタクシーも、呼び出さないと来ないような状況だった。


住所を頼りに、駅前の交番で場所を調べて貰い、おそらくこの湖だろうという所に、タクシーに乗って連れて行ってもらった。
そこに着いた時、ようやく山の上から、朝日が射した。

ご来光であるが、蘭にはそういう事を感じる心の余裕もない。
周りに人家も何もない所でタクシーの運転手は大丈夫なのかと心配していたが、蘭は料金を支払いお礼を言って、タクシーを降りた。


かつて歩いた記憶のある木々の間の小道に、心躍らせながら、蘭は歩く。
そして、目の前が開けた。
さして大きくはないが、天然のスケートリンクとしては充分過ぎる広さの湖が、目の前にあった。


昇り始めたばかりの日の光を受けて、湖面がキラキラと輝く。
蘭は、愕然とした。


「凍っていない・・・!」


幼い蘭が冬休みに訪れた時には、天然のスケートリンクになっていた湖面が、今は全く凍っていない。
そう言えば、最近は地球温暖化の影響で、暖冬が多くなったように聞いていたが。

あの、思い出の湖に、氷が張らなくなるなんて。

あの頃、いつも、天然のスケートリンクで遊ぶ子供達で賑わっていた湖だが、全く人気がなかった。


「そ、そんな、そんな・・・!」


蘭は涙を流して、座り込んだ。

この世に、確かなものなんて、何もない。
思い出すらも、全てが蜃気楼のように消えて行く。


蘭は、自分を支え続けていた土台が崩れてしまったような気がして、絶望的な気持ちになった。
そこへ、声が掛かった。


「遅かったじゃねえかよ。オメーの方がオレよりずっと先に出発したのに」
「・・・新一?」

蘭は驚いて立ち上がり、振り返った。
真っ白な息を吐きながら、そこに立っているのは、蘭の想い人でペアの相手である、工藤新一だった。

新一と別れてからまだ半日も経っていないのに、随分、久し振りのような気がする。
蘭が呆然としていると、新一が近付いて来て、蘭の目の前に立った。


蘭の目から、ぶわっと涙が溢れた。


「新一!あのリンクが、なくなっちゃった!わたしの、わたし達の、想い出の・・・!ずっとずっと、わたしの支えだったのに・・・!」

蘭が涙でぐしゃぐしゃ顔になりながら訴えていると、突然、新一に抱きしめられた。

蘭は、目を見開いた。

勿論、不快なのではない。
けれど、スケートリンク以外の場所で、触れられるのは初めでだったので、驚いたのだ。


「想い出は、ちゃんとあるだろ?オレ達の心の中に」
「新一?」
「なくなってなんかない。大丈夫。ここに・・・胸の中に、ちゃんとあっからよ」
「で・・・でも・・・」

新一が蘭を抱き締める腕の力が強くなり。
蘭は、おずおずと新一を抱き締め返した。


「だって!何もかも、変わって行ってしまう。お父さんとお母さんは、あんなに仲が良かったのに、今は別居してるし。わたし達の想い出の湖は、凍らなくなってるし。変わらないものなんてない、確かなものなんてない、信じられるものなんて、どこにもないの・・・!」


蘭は、どこかで、自分の言っている事が理不尽だと思いながらも。
初めて、感情的に新一にぶつかっていた。


「蘭・・・変わらないものなんて、ない。何もかもが、少しずつ変わって行く。オレだってオメーだって、あの頃の子供じゃねえだろ?」
「じゃあ、この世に信じられるものなんて、何もないの!?」

蘭が、顔を上げると。
思いがけず、優しい表情で蘭を見詰める新一の顔がそこにあった。

「蘭、そうじゃない。そうじゃ、ねえんだ。変わっていくからこそ、大事なんだよ」
「新一・・・?」
「変わるから。星々ですら、永遠のものではねえから。だからこそ、人は、今の一瞬一瞬を、大事にして生きてかなきゃなんねえんじゃねえか?」
「・・・!」

変わるからこそ、大事。
蘭は、そういう風に考えた事はなかった。

「オメーが居て。オレが居て。巡り会えた、それは、確かな信じられる事、だろ?」
「新一・・・」
「蘭。オレは子供の時・・・この湖で出会った少女に、恋をした」
「えっ?」

蘭は、マジマジと新一を見詰めた。
新一は、頬を染めて蘭を真っ直ぐに見詰め返す。

「でもな。オレ、今も、その頃と同じ気持ちってワケじゃ、ねーんだよ」

蘭は一瞬、心が冷える。
新一は昔蘭の事が好きで、今はもう気持ちが変わったのかと、思ったのだ。

「2年前に、再会して、成長して綺麗な女性になったその子と会って。幼い頃の仄かな想いは、ずっと大きく確かな想いになった。オレの気持ちは、確実に、変化してる。昨日より今日、今日より明日と、もっとオメーの事、好きになる」
「し・・・新一・・・」
「蘭。好きだ」
「新一・・・わたしも・・・ずっと新一の事・・・」

蘭が、嬉しさのあまり、胸詰まらせそうになりながら、ようやく言うと。
新一の顔が近付いて来て、蘭は自然と目を閉じた。
蘭の唇に、柔らかく温かなものが重なった。



   ☆☆☆



蘭は、鳥の羽ばたきの音で、目を覚ました。
蘭を包む優しい温もり。
隣にあるのは、愛しい人の寝顔。

蘭は、幸せな気持ちで、新一の逞しい胸に頬を寄せた。

いつの間にか、1月2日の朝を迎えているようだった。


今いるところは、新一の母方の実家で。
とは言え、現在は誰も住んでいる訳ではなく、別荘のようになっているという事だった。
普段は、近所の人に謝礼を払って管理を任せているらしい。


新一と湖の前で出会ってからすぐ、新一に連れられてこの家に入り。
心配しているだろう各方面に連絡を入れた。
小五郎が、「早く帰って来い」とも言わずに、受け容れてくれたのは意外だった。
もっとも、新一は、後で小五郎の雷を受ける事になるだろう事は、覚悟していた。

そして、新一が持って来た食糧で簡単にご飯を作って腹ごしらえをし、飲み物で温まり。

2人とも殆ど寝ていなかった為、すぐに寝床に入ったのだけれど、想いが通じ合ったばかりの若い2人、いくら睡眠不足でもそのまま眠りに落ちる筈もなく。
お互いを深く求め合い、肌を重ね、ひとつになったのだった。


蘭の下腹部には、鈍い痛みと違和感が残っている。

正直、痛みもあったし。
恥ずかしさや怖さが、全くなかったと言えば、嘘になるけれど。
そういう事を遥かに超えて、愛しい人と想いを通じ合わせてひとつになれた幸福感が、蘭を包んでいた。


蘭が新一にすり寄った気配で、新一は目を覚ましたらしい。
新一の腕が蘭をグッと抱き寄せ、優しい声が降って来た。

「おはよう、蘭」
「お、おはよう、新一」

蘭は、気恥しさに頬染めながら、新一の胸に顔を押し付け、小さな声で答えた。
新一の手が、蘭の顎を捉え、上向かせられる。
そのまま、新一の唇が蘭のそれに深く重ねられ、唇の隙間から舌が侵入して来て、蘭の舌に絡められた。

「んっ・・・」

新一の手が、蘭の体を這いまわる。
蘭の体は、熱くなり。

そのまま2人は、情熱と、知り始めたばかりの快感の波に、身を任せた。


幾度もお互いを求め合い、ようやくそれが落ち着くと、2人ただ寄り添ってまどろむ。
何もかも忘れて、恋人の腕の温もりの心地良さに酔った。


お腹が空けば、何か適当に作って食べ。
お風呂に入ったり(新一は一緒に入りたがったが、さすがに蘭がまだ恥ずかしがって拒否したので、それは実現しなかった)。
それ以外の時間は殆ど、寝床の中で生まれたままの姿で過ごし、肌を重ねたり寄り添って眠ったりの繰り返しだった。


そうして、3が日も終わり、1月4日の朝を迎えた時。
蘭の携帯が鳴った。
相手は蘭の親友。
既に連絡は取っているので、心配はしていない筈だが、胸騒ぎがして、蘭は慌てて電話に出た。


「もしもし、園子?」
『蘭?きっと、ハネムーン中だろうから、邪魔したくはなかったんだけど』

ハネムーン中の言葉に、蘭はぶわっと真っ赤になった。
外れてもいないだけに、尚更である。

『大変よ!蘭がいなくなった事、マスコミにすっぱ抜かれたの!』
「えっ!?」
『阿笠フサエコーチは、リンクからマスコミをシャットアウトして、蘭と新一君の不在を隠してたんだけど、蘭が大みそかの夜中に家を抜け出してた姿を撮影して、ネットに流していた人がいて。蘭のお父さんも、それは撮影日付を誤魔化してるか映像処理したものだろうって言明を出して、何とか抑えているんだけど。蘭と新一君が姿を見せない事は事実だから、今、ある事ない事、色々取り沙汰されてるの』
「そ、そんな・・・」

蘭は、携帯の音声を大きくして、新一にも園子の声を聞かせた。
新一も、難しい顔をして考え込む。

「オレ達、今すぐ、帰った方が良いか?」
『そんな事して、どこで誰に見られるか、分からないじゃない。親しいわたし達からは、2人にとって必要な事だったって分かってるけど、世間はそう見てくれないだろうって思うのよね』
「まあな。変装して帰って、練習風景を見られたくなかったからって言い訳会見するのも、無理があるか?」
『実は、その事態を打開する、うちのママのアイディアがあるんだけど。乗る気、ある?』


その後の園子の提案に、新一と蘭は驚きつつ。
大きく頷いたのであった。


その後、2人は、藤峰家の居間で朝ご飯にした。
新一が持って来た食糧も、さすがに底を尽きかけていたので、そろそろ買い出しに出かけようと思っていたが。
園子の提案に乗るなら、その必要は無くなる。


「さすがに、元旦から全く滑ってねえし、体は、なまってるだろうな」
「・・・そうね。わたしは、全日本が終わってから全く滑ってないから、尚更よね」
「でも、それはすぐに取り戻せる。ただ、問題は、オメーが滑れるかどうかだ」
「何となく、だけど。今は大丈夫って気がする」
「そうか?」
「実際に、リンクに立ってみないと、何とも言えないけど。今は、あの瞬間を思い出しても、最初ほど胸が痛い事もないから」
「・・・でも。無理は、しなくて良いからな。オレは、オメーが嫌なら、オリンピックになんか出なくて良い。メダルなんか、そんなもの、どうだって良いんだ」
「新一・・・」
「もし、周りから何か言われたらその時は、オレが全力でオメーを守るよ」
「ありがとう。でも、フィギュアのペアでパイオニアになるのが、新一の夢だったんじゃ、ないの?」
「あー・・・っていうか。オレさ。スケートって、嫌いじゃねえけど、特別好きなスポーツって訳でもなかったんだよな」
「えっ!?」

新一の言葉に、蘭は目を見張った。

「大体、スポーツは全般的に好きだったけど、特に好きなのって本当はサッカーでさ。子供の頃、あの湖で、可愛い女の子と出会う事がなかったら。その子との約束がなかったら。オレは、たまの趣味程度にしか、スケートはやってなかっただろうぜ」
「え!?ええええっ!?」
「ずっとずっと忘れられなくて。オメーとまた会う為に。オメーと一緒に滑るって約束の為に。ただそれだけの為に、オレはスケートを続けて来たし。スピードスケートからフィギュアスケートへの転向を考えたのも、それだけの為だった」

蘭は、目を丸くしていたが。
突然、笑い出した。

「蘭?」
「ご、ごめん。実はわたし・・・わたしだけが、不純な動機で、スケートやってるんだって・・・すっごく、負い目に感じてたんだ。まさか、新一もおんなじだったなんんて、思わなかった」
「・・・蘭・・・」
「わたしも。新一の事、ずっとずっと、忘れられなくて。新一との約束の為だけに、スケートを続けて来たんだもの・・・」
「そうだったのか・・・」

2人、微笑み合う。
そして、どちらからともなく、唇を重ねた。

「ずっと、探したよ。なのに、すぐ近くに住んでたし。親同士も知り合いだったし。灯台もと暗しとは、この事・・・ら、蘭!?」

蘭が今度は泣きだしたので、新一は慌てた。

「ありがとう・・・新一・・・ずっと、わたしの事、想ってくれて、探してくれて・・・」
「蘭。それは、お礼を言われる事じゃねえ。オレの為に、オメーを探してたんだから」
「わたしね。ずっと、自信がなかったの。新一の事が好きだったけど、わたしなんか、釣り合う筈ないって思ってて。ペアをやるからには頑張って迷惑かけないようにしなくちゃって肩肘張ってて。気持ちを伝える勇気もないクセに、新一が他の女の人と親しくしているのを見ると、胸が苦しくなって・・・でも、今考えると、自分で自分に足枷はめて、勝手に悲劇のヒロインになってただけだったなって・・・」
「・・・オレ達、意外と似た者同士だよな。オレも、ずっと、自信がなかった。オメーが男性としてオレを見てくれる自信がなかった。だから、殊更、あくまでペアのパートナーだって、オメーにもオレ自身にも強調し続けて・・・」
「新一・・・」
「もしかして、蘭の方も同じ気持ちでいてくれるのかもしれないって思ったのは、あの湖で、わたし達の想い出の場所が無くなったって泣くオメーの姿を見た時だった」
「・・・」
「オメーの気持ちに確信を持ったのは、抱き締めた時に、オメーが嫌がるそぶりを見せなかったから、だな」
「ふふっ。ホントに、似た者同士で、同じような事で悩んでたんだね、わたし達」


そして。
2人が再び顔を近付けた時。
家の表で、クラクションが鳴った。



   ☆☆☆



蘭の「失踪」がマスコミですっぱ抜かれ。
その後、スケート協会お偉方の怒りの談話が寄せられ。

他の選手達は、心痛めながら、成り行きを見守っていた。
自分達のレッスンを欠かす事は、なかったけれど。


そこへ、蘭の親友である鈴木園子から、連絡があり。
皆、その提案に、驚きつつも、乗る事にした。


そして、松の内が終わろうとする頃、「フィギュアスケートオリンピック代表選手が、全員失踪」という、とんでもないニュースが、世間を駆け廻った。
これには、スケート協会の理事達も、大いに頭を抱える事となった。

蘭と仲が良い女子シングルの選手達が、蘭へのスケート協会の対応に抗議するかのような書き置きを残していたから、尚更である。


同時に、スピードスケート4種目で日本代表選手となっていた服部平次と、モーグルスキーで日本代表選手になっていた黒羽快斗が、行方不明になっていたが、こちらはフィギュアスケート選手の「大量失踪」の陰に隠れて、気付かれていなかった。



そして、1月第2月曜日、成人の日。
鈴木財閥から申し入れがあり、マスコミと、スケート協会理事の面々が、長野のとある場所に集められた。
そこは、先頃完成し、オープンを数カ月先に控えた、鈴木財閥が中心になって作ったレジャー施設であった。

「ようこそ、長野ベルウッドランドへ」

会長夫人の鈴木朋子が、挨拶をした。

「ここは、四季を通じて、ウィンタースポーツをとことん楽しめる施設ですわ」

集められた一同は、顔を見合わせる。

「我々が集められたのは、鈴木財閥が作った新しいレジャー施設の紹介記事を書いて宣伝しろって事ですか?」
「いいえ、そのような事は。皆さま方を集めた本当の理由は、おいおい、説明いたします」

そして一同は、ランド内を巡る特殊車両に乗せられた。
従来からあった普通のスキー場に隣接して、斜面に沿って広大な屋根が取り付けられた広い建物があった。

「夏でも人工雪を使ってスキーが出来る、屋内人工スキー場です」

そこには、普通のスキー場のコースの他、モーグルスキー用の特殊な形状のコースが作られていた。

「ん?誰か、滑ってる?」
「すごい、上手いなあ」

モーグルスキー用のコースで宙返りをしていた人物が、一通り終わった後、普通にスキーで滑って一同の方に向かって来た。
ゴーグルを外して出て来た顔を見て、一同が声を上げる。

「黒羽選手だ!」
「モーグルスキー全日本チャンピオンの、黒羽快斗選手!?」

快斗は、にっこり(というより悪戯っぽく)笑って、一同に向かって優雅にお辞儀をする。
なかなかに人を食った態度だ。

「黒羽君、この施設の雪の具合はどう?」
「なかなかですね。北欧とか北米の雪の感じに近い。良いスキー場ですよ、ここは」
「あ、あの。鈴木会長夫人、黒羽君、これは一体?」
「彼には、このスキー場のチェックを兼ねて、オリンピックに向けての練習をして頂いているんです」
「ホテルの居心地も良いし、飯も美味いし、全部タダ。思う存分練習出来て、すげー助かってますよ」

そう言って快斗は、ニッと笑った。

「・・・我々は、スケート協会の者で、スキー場は管轄外なのだが」

スケート協会理事の1人が、イライラしたように言った。

「存じておりますわ。まあ、焦らないで下さいませ。では、次に、待望のスケート場の方へと参りましょう」

そして一同が連れて行かれたのは、木立の間に大きな池があるところだった。
池の上には広範囲に屋根が掛かっており、周囲には、一見柵に見える手すりがつけてある。

「ん?これは、凍っているのか?」
「屋外スケートリンク?」
「ご名答ですわ。ここは、自然環境を活かして作られた、子供専用のスケートリンクです」
「ちょっと待て。今年は暖冬で、今もそこまで冷え込んでいる訳ではない。この池が凍る筈ないが・・・人工的に凍らせているのか?」
「四季を通じて?でも、それでは、膨大な電力を食うのでは?」
「皆様。氷をよくご覧になって下さいませ」

一同は、スケートリンクに近寄り、氷の表面を撫でてみる。

「これは、もしや、樹脂で作った人工氷のスケートリンクか!?」
「その通りです。実際の氷に近い感じにする為に電力を使って冷やしておりますけど、水を氷にする程に電気を食う訳ではございませんの。元々池だったところの水を取り除いて、人工の氷を入れました。元の自然環境を出来るだけ活かしながら手を加えて作った、自慢のスケートリンクです。四季を通じて、自然の風景を堪能しながら、子供達に楽しくスケートをして貰いたいと思っておりますわ。屋根をつけたのは、雨や雪の日でも遊べるようにです」

石の間に目立たぬように、雨を流せる排水設備もついている。

「・・・ここは、子供用のリンク。という事は、大人用のリンクも?」
「はい。大人用のリンクも、屋外屋内、取り揃えてございます」

最初に案内されたのは、やはり自然の中の湖のようにしつらえてある、屋外人工スケート場だった。
そして、そこでも、滑っている者が1人いた。

「すごい、上手い!速い!」
「もしかしたらあれも、前日本を代表する選手なんじゃないか?」

その言葉に呼応するかのように、その者は滑って一同の前までやって来た。

「この色黒は・・・スピードスケートの、服部平次選手!?」
「おお。服部君、いつから、ここで練習してるんだ?」

スケート協会自体は、スピードスケートとフィギュアスケートの双方を管轄している。
なので、服部平次の事は、ここに来ているスケート協会理事は皆、よく知っていた。

「何や、オレも、フィギュアの選手達と同時期に失踪したんやけど、全然、騒ぎにもなってへんのやな。残念や」
「な、何だって!?」
「あ、鈴木はん、ここの人工氷は、ホンマもんの氷と殆ど遜色あれへんで。気持ちよう滑れるわ。ここで思う存分練習させてもろうて、おおきに」
「それは、良かったわ」

一同はざわめいた。
この流れで行くと、もしかしたら、屋内スケートリンクには・・・と、誰もが想い始めたのである。


そして、案内された屋内リンクでは、何人かの男女が滑っていた。

集められた一同にどよめきが走る。
そこにいるのは、「失踪」した、フィギュアスケート全日本代表選手達だったからだ。


「こ、これは一体、どういう事なのですか!?」
「見ての通りですわ。彼らは、ここで、今回のオリンピックの為に、秘密特訓をやっておりましたの」

ざわめきは、更に大きくなった。

「な、何故、失踪という、世間を騒がせる形を取ったのですか?」
「元々、それは本意ではありませんでした。本来は、本当にこっそりと、という積りだったのです。毛利蘭さんの不在が取り沙汰されて、騒ぎになってしまったのは、我々の意図するところではなかったのです」
「ですから、秘密裏に事を運んだ事が、騒ぎの元になった訳でしょう?」
「そうです、最初から言って頂ければ、何もこんな・・・」
「皆様ご存知のように、毛利さんは、一時期、精神的ショックで、氷の上に立てなくなっておりました」

スケート協会理事の面々は、顔を見合わせる。
そして、リンクの上を見た。
そこでは、優雅で華麗な舞を見せている、毛利蘭の姿があった。

「そこで、まず最初に、毛利さんにおいで頂いたのです。ここの医務室には、メンタルケアも行える医師が控えておりますし。ただ、毛利さんのケアが上手く行って、また滑れるようになる保証はありませんでしたので。そちらの目処がついてから、公表する予定にしておりましたの」

一同のざわめきが大きくなった。

「毛利さんご本人の努力と、周りの者達の協力で、無事、立ち直って、滑れるようになりました。きっと、オリンピックでも、素晴らしい演技を見せてくれる事と信じています。結果がどう出ようと、どうか温かく見守ってあげて下さいませね」


鈴木朋子会長夫人は、そう締めくくってにっこりと笑った。

朋子は、あからさまに責める言葉は使わなかったけれど。
今回、マスコミの一部などの心ない対応が、蘭を追い詰めて潰しかねなかったのだという事は、集められた面々皆が理解した。



「失踪」していた選手達が、実は長野の施設で、オリンピックに向けての集中練習を行っていたという事は、好意的な記事で紹介される事になる。

そしてその後、鈴木財閥の好意で、オリンピック選手達の多くが、長野ベルウッドランドで集中強化練習を行う事になった。



   ☆☆☆



話は少し、さかのぼる。

1月4日に、藤峰家の表でクラクションを鳴らしたのは、鈴木財閥から派遣された、新一と蘭の迎えの車だった。
そして、2人はそのまま、長野ベルウッドランドの宿泊施設に連れて行かれた。

ホテルもコテージもあるが、2人はコテージへと案内された。
そこには、園子が待っていた。

「ホテルだと、2人一緒に部屋に入るのを、この先、教科練習に来る他の選手に見られて、取り沙汰されるかもしれないから。コテージで2人きりの方が良いでしょ?」
「そ、園子!」

蘭が真っ赤になって怒鳴ったが、異存がある訳ではない。

「ま、ずっといちゃいちゃしてたいだろうけど、新一君は、真面目に練習もしてよ。一応、秘密特訓の為にここに来たって設定になってんだから」
「園子。わたしは?」
「蘭は、メンタルケアが先。専門の先生を手配してるから。それでも、どうしてもダメだった時は、それはそれで、仕方ないと思うよ。色々手を尽くして頑張ったけどダメだったって、そういう風に公表するしか、ないでしょ?」
「でも、多分。わたし、大丈夫だと思う」
「・・・蘭がそう言うんなら、良いけど。でも、無理はしないで」


コテージに荷物を置いて。
スケート靴を持って、リンクに向かった。

蘭は半分怖々と、リンクに立ってみる。
数日間のブランクの所為で、全く元のようにとは行かないが、特に問題なく滑る事が出来た。

「はあ。愛の力って、偉大ね・・・」
「園子!」
「おい、鈴木!オメーな!」

新一と蘭は、赤くなりながら顔を見合わせた。
実際、そうなのだろうと思う。

蘭が滑れなくなったのも、新一への気持ちゆえ。
そして、立ち直って滑れるようになったのは、新一と気持ちが通じ合ったから。

そもそも、スケート自体、2人がお互いへの気持ちゆえに続けて来たものだったのだ。


それでも蘭は、トラウマ防止の為に、一応、メンタルケアは受ける事にした。


久し振りにリンクに立って、毎日何時間も練習して、スッカリ勘が取り戻せた頃。

他のフィギュアスケートの選手達が「失踪」して、そして何故か、モーグルスキーの快斗とスピードスケートの平次も、合流して来た。

新一と蘭の他、探と紅子のカップルも、コテージに。
そして、他のメンバーはそれぞれホテルのシングルに、部屋が割り当てられた。


とは言え、まだ、オープンしていない施設だし、マスコミとスケート協会に「公表」する前の時点では、他の種目の全日本代表は来ていないし、そこにいるのは事情を知る内輪の人間達だけだったので。
練習以外の時間は、お互い、好き勝手に行き来して交流していた。


マスコミとスケート協会に「公表」する前の日。
蘭達の泊まっているコテージに、選手でもないのに何故かずっと長野ベルウッドランドに留まっている園子、それに、青子と和葉と志保・紅子が訪れて、女同士のお喋りに花を咲かせた。
色々なお喋りをしたけれど、蘭が新一との事をからかわれる話が殆どだった。


「蘭ちゃん、無事恋人同士になれたんやね。ええなあ」
「うん。新一が、わたしが嫌ならオリンピックもメダルもどうでも良いんだって言ってくれたのが、一番、嬉しかったかな」
「だから、逆に、立ち直れたんでしょ?」
「うん」

蘭の幸せそうな笑みに、一同、砂を吐くしかない。


「今でも、スケートが好きでやっている人達に対して、すごく、申し訳ないなって気持ちがあるんだけどね。わたし、スケートをやる動機が、とても不純だったもの」
「だから。前に言った筈よ、蘭さん。動機なんて何でも良いんだって。たとえ男の為でもお金の為でも名誉の為でも。真面目に練習して結果を出せるなら、文句なんて言わせないわ」

志保が、妙にエキサイトして言う。

「あはは、アタシも平次と同じ事やりたくてスケート始めたんやし、青子ちゃんも前に、そないな事、言うてたよね」
「青子は、純粋な動機とか、不純な動機とか、分ける方がおかしいって思うな。始めるきっかけは別に何だって良いんだって思うよ」
「そうそう、真面目に思いこんで悩むのは蘭の良いトコでもあるけど、困ったトコでもあるわよねえ」
「多分。工藤君には、蘭さんのそういう所がすごく可愛く見えてるんだって思う」

志保が言ったので、周りは一瞬、シンとした。

「え?私何か、変な事、言った?」
「いや。志保さんって、工藤君の理解者なんだって、思って・・・」
「まあ、お隣さんの幼馴染だからね。でも、理解する事と、好きになる事は違うから。理解すればする程、好きになれない相手っているものよ。彼の事、嫌いじゃないけど、どうしても、男性として心惹かれる事はなかったわ。それはきっと、彼も同じだろうけど。お互いに、可愛げのないヤツって思ってるわよ」

蘭にとって。
以前だったら、多少胸がざわついただろう志保の言葉も、今は心穏やかに聞ける。
新一と心が通じ合った事で、新一に愛されている自信を持った事で、色々な事が変わったと思う。


「蘭、以前から綺麗で可愛かったけどさ。ホント、綺麗になったよね」
「うん。アタシも、そない思う」
「工藤君との演技の時なんか、前もすごくラブラブでドキドキしたけど。今は、桁が違うよね」
「そうですわね。ここの人工氷でさえ、融けそうな位、熱いですわ」
「蘭さんは、不純な動機って言ったけど。フィギュアスケートは、芸術なのだから。心豊かになる事は、演技に反映されるわ。2人の今の演技を見ていると、素敵な恋愛はそれだけで、素晴らしい芸術だって思うもの」

志保の言葉に、皆、逆に仰け反ってしまった。

「志保さん。何ぞ、ええ事でもあったん?」
「それは、内緒」

そう言って艶然と笑った志保の顔に。
彼女にもきっと何か色気づいた良い事があったに違いないと、確信した一同であった。



ちなみに、女子達がお喋りに興じている頃。
部屋を追い出された・・・もとい、自主的に外に出ていた新一は、平次の「スピードスケートの練習」に付き合わされていた。
けれど、当然の事ながら、今も現役でスピードスケート選手をやっている平次のスピードに、ついて行ける筈もなかった。


「オメー、速くなったな」
「アホ。お前が遅くなったんや。今からでも戻ってけえへんか?再来年辺りにはオレのライバルに返り咲けるかもしれへんで」
「オレは、蘭と一緒じゃなかったら、スケートをやる積りはない」

平次が、じっと新一の方を見る。
そして、溜息をついた。

「ま、別々のリンクやけど、仕方あらへん。けど、選手生活を引退した時は、同じ土俵でのライバルやな」


2人とも、いずれは、探偵になる積りでいる。
新一は、大きく頷いた。



(14)に続く


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銀盤の恋人たち(13)後書き


今更ですが。

「銀盤の恋人たち」は、スポ根モノの顔をしたラブコメです。

本気でスポ根書く気は、全くナッシング、なので、各選手の恋愛模様で調子の上がり下がりがあるという、軟弱な展開で、あいすみません。
真剣にスポーツに打ち込んでいる人から見たら、まったくもって腹立たしい事でしょう。


まあ、一応小説で、漫画じゃないですけど、漫画の二次創作でもありますし、「漫画的荒唐無稽」を目指しています、実は。
リアル追求はせず、好き勝手させて頂きました。
また、決して、リアルのスケート協会やマスコミに対して、どうこう言う気はありません。この物語の都合による、架空の状況だと考えて頂けると、幸いです。


園子ちゃんと新一君との間の呼び名が原作と違うのは、2人の関係性も、原作とは違うからです。
蘭ちゃんを介して園子ちゃんも大分新一君と親しくなってきたので、「工藤君」から「新一君」に呼び方が変わりましたが、新一君の方は「鈴木」のままです。

言い訳になりますが、新一君の「変わるからこそ大事」って台詞、実は、ずっと前に書いていたんですよね。
原作で、園子ちゃんが言った時は、ビックリしました。
パクったようになってしまって、ごめんなさい。


いよいよ、オリンピックです。
でもまあ、試合描写は付け足しですし、あんまり詳しくは書きません。
ご容赦ください。


(12)「いくつもの壁」に戻る。  (14)「サブリナ公国へ」に続く。