春先迷路
byドミ
(3)二つの世界
「・・・なるほど。分かりましたよ警部、犯人も、トリックもね」
「何っ?それは本当かね、工藤君!?」
アア。
ココハ、ジケンゲンバダ。
アイツハ、コマカナカンサツヲシテ、ロンリテキニスイリヲクミタテテイク。
マルデ、カツテノオレノヨウニ。
イマノオレハ、イシキガボンヤリシテ、スイリモロクニデキナイ。
モシカシタラ、アイツガホンモノデ。
ニセモノナノハ、オレノホウダッタノカモシレナイ。
・・・アイツハ、タンテイトシテモ、カンペキダ。
アソコニ、オレノイバショハ、ナイ。
オレハ・・・。
オレハ、ダレダ?
☆☆☆
<side Ran>
最近、おかしい。
新一に心配かけたくないから、何も言わないでいるけど。
あの事故の後から、何故か、感じるようになった。
新一の視線。
新一の気配。
これじゃまるで・・・新一があの事故で、本当は死んでしまったかのようだ。
「縁起でもない!」
わたしは、頭を振る。
新一は、数か月の不在(本当は、不在じゃなくて、わたしのすぐ傍に居たんだけどね)から、やっと帰って来て。
事故でも大した怪我もなくて。
何もかも、これからだっていうのに。
胸がざわつくこの感じは、何だろう?
あの、事故の時。
店の中で突然靴ひもが切れ、胸騒ぎがして、急いで店を出たわたしは、ちょうど、トラックが新一の前に迫っているところを、目撃した。
「新一〜〜〜〜っ!!」
死なないで!
心の中で、そう叫んだのを、覚えている。
あの瞬間、真っ白になって、何か大きな力というか光のようなものが、放たれたような、感じがあった。
でも、それはたぶん、大きなショックでわたしの感覚がどうにかなっていたんだろうと思う。
わたしは、超能力も何もない、ただの女の子。
もしもの時は、わたしの命を引き換えにしてでも新一を助けたいとは思っているけれど。
あの瞬間わたしには、願うだけで、何をどうする事も出来なかった。
新一が無事助かったのは、新一自身の力。
並外れた運動能力と、並外れた強運と、並外れた意思の、力。
新一が無事だった事は、本当に、心の底から嬉しかった。
でも。
もしも、あの時、新一が死んでいたら?
わたしは、生きていられるだろうか?
「だから!そんな縁起でもない事、考えないのよ、蘭!」
わたしは、頭をもうひと振りした。
帝丹高校では、3学年の春、ゴールデンウィークの前に、修学旅行がある。
長崎・ハウステンボスから、熊本阿蘇を回り、九重・由布院・別府と、中九州を横断するコースだ。
新一や園子、高校時代を共に過ごして来たクラスメート達と、一緒の旅行は、とても楽しみだった。
勉強も厳しくなって来るし、部活も最後の大会が近いし、旅行の準備もあるしで、多忙な毎日。
だけど、充実している。
そんなある日、園子が血相を変えてわたしの所へ来た。
「蘭!この写真、見てよ!」
園子が差し出したのは、この前撮った、卒業アルバム用のクラスの集合写真。
「これが、どうかしたの?」
わたしは写真を覗き込んで・・・息を呑んだ。
「え〜っ?な、何、これえ!?」
「ひ、光の加減か何かよ、きっと!」
皆がざわめく。
新一が。
新一1人だけが、妙に・・・薄ぼんやりと映っていた。
「良く見てよ!後ろの人が透けて見えてるよ!光の加減じゃ、こんな事にはならないって!」
わたしの背を、ぞわりとしたものが駆け昇る。
動悸がおさまらない。
わたしは、立ちあがろうとして、よろけた。
「蘭!」
園子が、わたしを支えてくれた。
「顔が真っ青だよ!保健室で少し休む?」
わたしは、首を横に振った。
血の気が引いたのも、よろけたのも、精神的ショックが原因だって、自分で分かってるから。
「大丈夫よ。ありがと」
「蘭。ごめんね・・・蘭の前で、無神経な事言って」
大騒ぎしてたクラスメイトの子が、わたしに謝る。
「ううん。気にしないで。だって、本当に、そういう風に写ってるんだものね」
皆が、深刻な面持ちで、顔を見合わせていた。
誰にも、言ってないけど。
あの写真を撮る時、新一の後ろに、人影のようなものが見えた。
新一の後ろから手を伸ばしたその影は、すぐに消えてしまった。
目を背けてはいられない、本当に、新一の身に何かが起こっているのかもしれない。
まさか。
あの、事故現場は、今迄にも何回か交通事故が起こっている。
トラックの運転手さんも、いきなり、ハンドルもブレーキも利かなくなったって、言ってた。
もしや、トラックが突っ込んできたのは、自縛霊か何かが、新一を連れて行こうとしたのでは?
そして、今もその霊は、新一を連れて行こうとして、さ迷っているんじゃ?
「あのさ。蘭」
数人の女子が、顔を見合せた後に、言いにくそうに切り出した。
「何?」
「きっと、蘭を不安がらせると思って、今まで言わなかったんだけど。この写真を撮った時、工藤君の後ろに、一瞬、人影みたいなのが見えたんだよね」
「あ、あなた達も、見たの?」
わたしは、息を呑んで言った。
園子が、顔色を変えた。
「えっ!?って事は、じゃあ蘭も、あれを見たんだ」
「う、うん・・・」
「蘭!新一君は嫌がるだろうけど!マジで、お祓いに連れてった方が良いと思うよ!」
「・・・・・・」
園子の言う通り、本当にお祓いに行った方が良いかもしれない。
わたしだけじゃなく、みんなが見たって事は、絶対絶対、気の所為じゃない!
それに、新一がいくら知力体力に優れていても、幽霊相手に、まともに戦えるとは思えないし。
「でも。わたし、良い霊能者に心当たりなんかないよ」
「霊能者どうのこうのって、何の話だ?」
当の新一の声がして、わたしはビックリして跳び上がる。
「新一!あの・・・」
「蘭。オレ、目暮警部から呼ばれたから、今から出るな」
「新一!待って!」
わたしは、不安に駆られて、新一の袖を掴んだ。
「・・・どうしたんだ、蘭?」
行かないで。不安なの。
その言葉は、心の中に留まってしまう。
新一は、ふっと優しく微笑むと、わたしの頭をポンポンと叩いた。
「じゃあ、行って来る」
去って行く新一の後姿を、わたしは見送る。
その後姿が、「霊がどうこう」と言っているわたし達を拒絶しているように、わたしには見えた。
お祓いなんて言ったって、新一はきっと、拒否するだろう。
どうしよう。
「蘭。修学旅行の時に、霊験あらたかな神社に立ち寄ろうよ。わたし、調べとくから」
園子が、いつになく真剣な顔で、わたしに言った。
うん。神社へのお参りだったら、新一も拒絶しないだろう。
彼も決して、「人智を超えた何か」をバカにしている訳では、ないのだから。
神様の力を借りて、新一の身を守れるのなら、そうしよう。
「でもまあ。それはそれとして、旅行は目一杯楽しもうよ。みんなも、ね?」
園子の言葉に、皆がうなずく。
どうしても、不安は消えないけれど、闇雲に心配ばかりしていても、どうなるものでもないのだから。
☆☆☆
<side Shin-ichi>
ココニハ、ダレモ、イナイ。
コノキョウシツニハ、ダレモ、イナイ。
アノコノカオヲミタラ、スコシイシキガハッキリスルカトオモッタノニ。
アノコ・・・蘭。
蘭ヲミタトキダケ、オレノトケテシマイソウナイシキハ、シッカリスル。
オレハ、チュウヲタダヨイ、蘭ノソンザイヲサガシタ。
ソシテ、ミツケル。
タシカ、シンカンセントヨブレッシャノナカデ。
アイツト、タノシソウニワライアッテイル、蘭。
・・・蘭ガ、アイツトイッショニイルトコロハ、ミタクナイ。
デモ、アイツトトオクハナレテシマウト、オレノイシキハボヤケテキエカカル。
ソレニ、蘭ヲミルコトガデキナイノハ、モットイヤダ。
オレハ、レッシャトトモニタダヨッテ、ニシヘトムカッテイッタ。
ナガサキ。
ココハ、カツテ、ゲンシバクダンガオトサレタバショダ。
モウスデニジョウカサレテイルレイガオオイガ、イマモサマヨッテイルレイタチモイル。
「キミ。キミハマダ、シンデマモナイノダネ」
ホトンド、チリョウトカシタレイカラ、コエヲカケラレタ。
・・・オレハ、マダ、シンデナイ。
「ハヤク、ウエニノボッタホウガイイ。ワタシノヨウニ、ココニシバラレテシマウマエニ」
ダカラ、オレハ、シンデナインダ!
「マダ、ワカイヨウダシ、コノヨニミレンモオオカロウ。ケレド、ナマエモタチバモワスレテ、ラクニナッタホウガイイ」
イヤダ!
オレニハ、ゼッタイ、ワスレラレナイタイセツナ・・・。
「オレハマダ、シンデネ〜〜〜〜〜ッ!!」
サケンデ、ソノモウリョウカラ、ニゲダシタ。
「新一!あんた、こんなとこにいたの!?」
「オマエハ・・・」
コノオンナ、ドコカデミタコトガアルヨウナキガスル。
チカラノツヨイ、アクリョウダ。
「新一!アンタ、あんなに、強く澄んだ輝きを、放ってたのに!弱々しく消えかかってるし、どす黒く変わって来てる!一体、どうしちゃったって言うの!?」
「シンイチ・・・ソレガ、オレノナマエカ・・・」
「前は、アンタがどこにいても、すぐに見つけられたのに!探したよ!たった今、どす黒い想念が放たれて・・・」
「!」
「新一!待って!」
オレハ、ヤサシイスンダヒカリニヒカレテ、ソノバヲハナレタ。
アタタカイ。
コノヒカリハ・・・。
「蘭・・・」
オレガムカッタサキニアッタノハ、ハウステンボスノホテル。
エンカイジョウデ、オオクノヒトガ、ショクジヲシテイル。
アア。
テイタンコウコウノ、セイトタチダ。
「蘭」
ランハ、アイツノトナリデ、タノシソウニワラッテイタ。
蘭ガエガオナノハ、ウレシイ。
ケレド、トナリニアイツガイルノガ、ツラクテクルシイ。
ニクイ。
オレノカラダヲノットッテ。
蘭ノトナリニイルアイツガ。
ニクイ。
ショクジガオワッタアト、ソレゾレニ、マチナカニデカケテイク。
蘭モ、アイツトヨリソウヨウニシテ、スウニンノぐるーぷデ、デカケテイタ。
「新一!」
蘭ガ、トツゼン、アイツノウデヲツカンダ。
「どうした、蘭?」
アイツガ蘭ヲフリカエリ、ヤサシイマナザシデコタエル。
「あ、ううん・・・今、一瞬、新一の姿が薄れたような気が、して・・・」
「蘭。オレは、大丈夫だぜ。せっかく、コナンから元の姿に戻って、あの事故でも生き延びて、こうやってお前と一緒にいられるんだ。この旅行も、目一杯、楽しもうと思ってるぜ」
「うん・・・」
「こらあ。集団行動なのに、何2人でいちゃついてんのよ!」
「そうそう、そういうのは、2人っきりの時にやんなさいって!」
「んもう!いちゃつくとか、そんなんじゃないってば!」
蘭ガ、ホオヲソメテ、マワリノモノタチニイイカエス。
ホントウナラ、蘭ガホオヲソメルアイテハ、オレダッタハズダ。
蘭ノトナリニイテ、蘭ノエガオヲミルノハ、オレダッタハズダ。
蘭ノカタヲダキヨセ、ソノクチビルニフレルノモ。
ソシテイツカ、ムスバレルノモ。
オレダッタハズナンダ・・・。
「門限、8時だから、あんまり遠くまで行けないよ」
「ああ、わーってるって。ちょい洒落た喫茶店があっからさ、みんなでお茶しようぜ」
「本当は、蘭と2人っきりが良いんでしょ?気を利かせようか?」
「おいおい。単にお茶飲むだけだし、変な気を回すなよ」
ヨーロッパノかふぇフウノ、シャレタキッサテンデ。
ミナ、ケーキダノオチャヤコーヒーダノヲ、タノンデイル。
オレハモウナガイアイダ、ノンダリタベタリスルコトモ、ナクナッテイルノニ。
蘭ガ、トナリニコシカケルアイツニ、ソットヨリソウ。
クルクルカワル、蘭ノヒョウジョウガ、ドレヲトッテモイトオシイ。
ソレハゼンブ、オレダケノモノダッタハズナノニ。
「カエセ」
クウキガフルエタ。
ソコニイタミナノヒョウジョウガカワル。
イママデ、オレノコトガミエテイナカッタハズナノニ、ミナ、キョウガクノヒョウジョウデ、オレヲミテイタ。
ハデナオトヲタテテ、キッサテンノガラスガ、ゼンブワレテクズレオチタ。
「きゃああああっ!」
「何これ〜〜っ!?」
「いやあ、助けて〜!」
オレハ、アイツノホウヘトムカウ。
ソシテ、ソノクビニ、オレノテヲカケタ。
「新一!」
「新一君!」
「工藤君!!」
「うっ!体が動かない!」
「金縛り!?」
ミナ、ソノバヲウゴケナイデイル。
「カエセ。オレノカラダヲ、カエセ!」
「ぐっ!うううっ!」
「いやあああっ!新一、新一ぃ!」
蘭ガ、ヒツウナコエヲアゲタ。
オレノテガ、ユルム。
「新一はせっかく、あの事故から助かったのに!新一を殺すなら、代わりに、わたしを殺して!」
コロス?
オレハ、ダレモコロスキハナイ。
ヒトヲコロスコトナド、ゼッタイニデキナイ。
オレハ、タダ。
ジブンノカラダヲトリモドソウト・・・。
「よせ、やめろ、蘭!」
オレカラカイホウサレタアイツガ、ケッソウヲカエテサケブ。
オレハ、アイツカラハナレ、蘭ヲソットダキシメタ。
「オマエトイッショナラ・・・タトエキエテモ、ホンモウダヨ、蘭・・・」
「止めろ、蘭には手を出すなあ!くそっ!動け、オレの体!」
「蘭、らあん!お願い、止めてえ!」
アイツト、マワリノモノタチガ、ウゴケナイママニ、サケンデイル。
蘭ガ、メヲミヒラク。
ソシテ、オレヲマッスグニミテ、イッタ。
「あなたは・・・新一?」
パシィィィィン!!
蘭の呼びかけに、オレは突然、正気に戻った。
そして、状況を理解する。
「新一!」
蘭が、オレを見て、手を伸ばす。
「ウソ!新一君!?どうして!?」
園子と、他のクラスメイト達が、オレとアイツを見比べて、驚愕の表情を浮かべていた。
そして、アイツは。
能面のような表情で、オレを見ていた。
オレは、その場を離れて飛翔した。
「何、何だったの!?今の、工藤君だったわよね!?」
「まさか、新一君の生霊!?」
クラスメイト達がざわめく中、蘭は、オレが去って行った虚空を見つめ、アイツは黙って佇んでいた・・・。
☆☆☆
「こ、ここは、一体?」
オレは。
上空から、米花町を見下ろしていた。
事故が起こった、あの、歩道橋。
血を流して倒れているのは・・・オレ?
血の海の中で横たわっているオレの瞳は、瞳孔が完全に開いていて、生気がない。
もう、命はそこになかった。
死んだオレの体の傍に屈み込んだ蘭は、震える手でそっとオレの瞼を閉じる。
「しんいち・・・新一・・・しんいち・・・」
繰り返される、蘭の呼びかけ。
大きな声ではないが、その悲痛さは、オレの胸を抉った。
「こ、ここは、一体・・・」
オレは、再び呟いた。
☆☆☆
あれから、もう1ヶ月かあ。
工藤君が亡くなってから?
長い休学から帰って来て、またこれから活躍するんだって、思ってたのにね。
毛利さん、どうしてるのかな?
毎日、学校には来てるよ。でも、魂が抜けたみたいな感じ。
工藤君が帰って来てから、せっかく、ひっついたばかりだったのにね。
彼女、見ちゃったんでしょ?工藤君が事故に遭うところ。
工藤君も一緒に、帝丹高校を卒業する筈だったのに。
そう言えば、もうすぐ、ヤツの誕生日だったんだろ?18歳になる筈だった・・・。
5月を迎えた教室で、クラスメイト達の呟く声が、聞こえて来た。
これは・・・この世界は・・・。
蘭が、虚ろな瞳で、とぼとぼと道を歩いている。
その横にいるのは、園子だった。
「蘭・・・」
「園子?どうしたの?」
「ううん、何でも。・・・さあ、帰ろっか」
蘭は、心配げな顔をした園子を振り返り、今にも消えそうな、はかない微笑みを浮かべた。
「ごめんね、園子。心配かけて」
「え!?ううん、全然全然!そんなの、気にする事ないって!」
園子が慌てて両手を振る。
蘭は、前を向いて、言った。
「園子。誰かを殺す事は、新一が最も厭う事だった」
「う、うん・・・」
「だから。わたしは、生きてる」
「蘭・・・」
虚ろな瞳をしながら言う蘭の言葉が、胸を締め付けた。
「・・・許されるなら、わたしも一緒に、逝きたかった」
「蘭!」
「新一がいない世界で、わたしが生きて行ける筈がない。こうして生きているなんて、信じられない」
「何をバカな事言ってるの!?」
「新一が目の前で死んでしまったあの日から、わたしの心は、死んでしまった。今も、世界は灰色で、何の希望も、持てないの」
「蘭・・・!」
「でも、命を断つ事は、新一が絶対に嫌がる事だから。わたし、生きてみるよ。いつか、新一の元に行けるその日まで」
「蘭!新一君はバカよ!こんなに新一君の事を想っている蘭を残して逝っちゃうなんて!もう、殺しても飽き足らないわ!」
園子が、蘭を抱きしめながら叫んだ。
ああ、本当にその通りだぜ。
オレは・・・アイツは、大バカ野郎だ!
「何で園子が泣くのよ?」
「だって!蘭が涙も流せないでいるから、わたしが代わりに泣いてあげてんじゃない!」
「園子。ありがとう。あなたがいてくれて良かった。本当に、そう思ってるよ」
蘭が園子を抱きしめ返す。
ああ、本当だな。
蘭の傍に、園子がいてくれて良かったって、オレも思うぜ。
この、時空間は。
オレが、あの事故で、死んでしまった世界。
けれど、この世界に、幽霊として漂っている筈のオレは、いない。
オレの(そっち方面には、いささか心もとないが)知識によると、亡くなって暫くの間は、霊魂はまだこの世に留まっている筈だ。
しかし、あの事故の直後から、既に、「この世界のオレ」の気配は、全くない。
「新一」
あの女、ヒラサカ姫が、オレの目の前に現れた。
気の所為か、脅えているような気配がある。
「あん?」
「何か、分かったの?」
「ああ」
オレは、真っ直ぐにヒラサカ姫を見据えて、言った。
「まだ色々、分かんねえ事も多いけどよ。ひとつ、ハッキリした事がある」
「それ・・・は・・・?」
「あの事故の瞬間まで、アイツとオレとは、同一人物だったって事がな」
(4)に続く
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<後書き>
どうしても、幽霊新一君の視点だけでは、お話を進める事が困難なので、今回は、蘭ちゃん視点の部分を入れてみました。
場面だけじゃなく、幽霊新一君は、意識が混濁し始めますから。
元ネタの漫画では、実は、「新一君の体を乗っ取った何者か」視点の部分もあるんですけど、小説でそれを入れると、とってもややこしくなるので、しません。
元ネタでは、これから先の行事は、「高校2年春の野外合宿」でした。
が、こちらでは、修学旅行にしています。
場所は・・・すみません、あっちの方が、書く私に馴染みがあるんで、九州に設定してしまいました。
と言いながら、実はハウステンボスは、行った事がなかったりするんですけど。(ミステリーツアー、行きたかったなあ。クスン)
高校の修学旅行って、普通、2学年の秋にある事が多いと思いますが。
私は、「お話の都合上」、帝丹高校の修学旅行を、3学年春に設定する事が多いです。
「コナン後」にしたい、ってのが大きいのと。
新一君の18歳のお誕生日を、絡めたくなっちゃうんですよね、とある理由で(って、ばればれ?)。
元ネタと進行が全く同じなら、全4話ですが、少しオリジナルの部分を入れる関係上、もしかしたら全5話になるかも、しれません。
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