シャッフルロマンス・リベンジ
〜2年B組クラスメートたちの陰謀〜



byドミ



(後編)



劇は終盤に差し掛かる。
服部平次の心配(期待?)をよそに、今回はなかなか事件が起こりそうにない。



トランプ王国とブリッジ公国を争わせ、支配しようとたくらんでいた帝国。
その黒幕、真の支配者である魔王と、スペイド王子との、最後の戦いの場面になる。

「私の国と姫の国に仇なす事など、この私が許さん!」

スペイド王子が剣を構える。



「演技と言っても、剣の構えなんか堂に入ってるわね、彼」

舞台袖でひそひそと囁き交わす女生徒たち。

「何でも、フェンシングなんかも一通りは齧っているらしいからね」
「ほんとに、何でも出来るのね、工藤君って」

下手したら器用貧乏になりかねない彼がそうならなかったのは、おそらく「探偵になる」という強い信念であろうと園子は思う。
真と言い、新一と言い、平次と言い、確固とした目標を持ち、その為の努力は惜しまない。
かたや女たちには、そこまでの目標があるわけではない。
その差は一体何だろうと、園子は少し寂しく思う。



客席では、大勢の女子生徒がボーっと新一のスペイド王子に見惚れている。
それは、新一のファンならずとも例外ではない。



遠山和葉は、いつの間にか頬を染め、手を握り締めて舞台に見入っていた。
服部平次は、それを憮然とした顔で、横目で見遣る。

『和葉のやつ、俺相手にこんな目ぇしたとこ見た事無いで。工藤の黒衣の騎士姿がむっちゃ格好ええなんぞ言いよってからに・・・そやからこいつを連れて来とうなかったんや』



中森青子は、やはり頬を染めて舞台に見入っている。

『工藤君って、快斗と顔が似てるのに、なんかこんな時って気障で格好良いよね。快斗ってエッチでひょうきんで意地悪で・・・たまにはこんな風にすればきっと快斗も格好良いと思うのに・・・』

快斗は青子の姿を見て溜息を吐く。

『工藤が格好良いだと?青子のやつ、意外とミーハーだよな・・・それにしても、工藤って俺と同じ顔じゃん。怪盗キッドは駄目で(まあ、事情を話したら結局赦して貰ったけどさ)、探偵なら良いのかよ・・・』



  ☆☆☆



舞台では、魔王とスペイド王子の一騎打ちが始まっていた。

「Hey,Cool - guy,come on!」

魔王が叫ぶ言葉は台本と少しずれていたものの、この場面には合っていた。

雷鳴が轟き、風雨が強くなる。
スペイド王子の頬に雨の雫が当たる。

『冷たっ!ったく、演出過剰なんだよ!水なんか使ったら、後の片付けが大変だろうが!』

新一が思わず心の中で毒付く。

本当に、このシャッフルロマンスは、たかが高校生の学園祭の劇にしては、大道具・衣装・小道具・音響・照明、全てに渡って凝りまくっている。
昨年準備していたものが、全て没になってしまうのは勿体無いと言う気持ちも、それなりにわかる様な気がする。



それはさて置き、戦いは迫力があった。
なにしろ、魔王をやっているジョディ先生が、手加減なしで剣を繰り出してくるのである。
勿論本物ではないが、当たれば痛いし、第一、舞台の上でヒーローが敵役にやっつけられるのでは、みっともない事この上ない。
新一は演技を忘れて、本気で剣を交わしていた。

魔王が朗々とした声で言う。

「愚かな人間たちよ。最初に不信の種を蒔いたのはお前たちだ。争いの種を蒔いたのはお前たちだ!我はそれを利用したに過ぎぬ!」
「・・・例えそうだとしても、和解の妨害をし、人々の心の弱い部分に付け込み、争いを更に拡大させたお前を、許すことは出来ない!」
「愚かな・・・」
「ああ、そうだ。人間とは愚かな存在だ。けれど、その愚かさを正す事が出来るのもまた、人間なのだ!私は、愛する姫のいるこの世界を、愚かだけれど明日に向かって必死に生きている愛すべき人々のいるこの世界を、守り通してみせる!!」

スペイド王子の会心の一撃に、とうとう魔王は倒れる。
倒れた魔王は、断末魔の苦しい息の下で、最期の言葉を告げる。

「王子よ・・・忘れるな・・・人間たちが愚かな争いを再び繰り返すとき・・・我は何度でも甦って来る・・・」

スペイド王子は、消え行く魔王の亡骸を見つめて、静かに呟く。

「お前が甦る度、私たちが、そして私たちの子孫が、何度でもお前を倒して見せる」



「せんせ、すっごい!最高でした!」
「演技上手なんですね!」
「ほんと、台本だけで、合わせる暇も無かったのに、良くあそこまで出来ましたね!」

最終幕の前の僅かな休憩時間、舞台裏でジョディは生徒たちに囲まれ、次々と賛辞を受けていた。

「王子様がー、とっても良かったですからねー、私も夢中になっちゃいましたー」

ジョディの話し方はまたいつも通り。けれど誰もそれには気付かない。



ラストシーンは、ハート姫とスペイド王子の結婚式である。
姫を抱きしめての誓いのキスも、新一が地で行ったことは言うまでも無い。

観客達は、毒気を抜かれた状態であった。

そしてまさに幕が下りようとする瞬間に、あろう事か、場内に携帯電話の音が響き渡った。



この場にそぐわない強面の男が、あわてて携帯を取る。
周りから「こんな時は電源を切るか、マナーモードにするのが常識だろ」という白い目で見られ、冷や汗を流しながら、男は携帯で話をする。
その表情が急に引き締まると、その男の合図で、体育館の中に散らばっていた強面の男たちが一斉に立ち上がり、急ぎ足で出て行く。
非番だった筈の佐藤美和子警部補も、高木ワタル刑事も、表情を引き締めて駆け出して行った。



「舞台の神様が、今回は気ぃ利かせて、事件が起こるのを最後まで待っててくれたんかも知れへんな」

平次が感心したような声で呟く。
勿論平次も、今ぞろぞろと出て行った男たちが警視庁捜査1課の面々だとは、とうに気付いていたのである。



客席はざわめいていた。

「うぬぬぬぬ・・・まあ今年は最終幕までたどり着けただけで良しとするか。事件体質のあやつにしては、まあ上出来よね」

園子が半ば残念そうに言う。

「ごめんね、園子・・・」
「蘭が謝る事じゃないって。ったくもう、本当にそんな所が夫婦してんだから」
「もう、園子!・・・新一、行くんでしょ。待ってるから、頑張って」
「ああ・・・。蘭、待ってろ。すぐに解決して戻って来っからよ」

新一は肯き、スペイド王子の結婚式の衣装のまま、駆け出していく。
その後に、帽子をかぶり直した平次が続く。

「新一くん、蘭だけじゃないわ、私たちみんなここで待ってるから、早く帰って来てね!」

園子が新一の後姿に向かって叫んだ。



幕は閉まったものの、客席の人々はまだ立ち上がらず、ざわざわしていた。
園子がマイクを持ってしゃべる。

「お集まりの皆さん、本日はありがとうございました。これにてシャッフルロマンスの上演は終了いたします。この後は、全校集会となりますので、帝丹高校関係者以外の方は、速やかにお引き取りください」

ようやく客席の人々は立ち上がり、ざわめきながら体育館を出て行く。

「ちょっと園子どう言う事よ。全校集会だなんて・・・」
「あ、蘭、今日の昼、学園祭実行委員会で急遽決まった事なのよ、気にしないで。もう、学園祭全体の企画は終わって、後は後夜祭を残すのみ。これから、帝丹高校全生徒に伝えられる大切な話があるの」
「なあ園子ちゃん、あたし、平次を待っときたいねんけど、関係者やあらへんから出とかなあかんやろか」
「和葉ちゃん、あなたは良いの。準関係者だから」
「園子、何よ、何だかいい加減なのねえ」
「気にしない、気にしない」



「蘭ちゃん」
「あ、お義母さま」
「とっても素敵だったわよ。今年は劇が最後までやれて良かったわね」
「ありがとうございます」
「この先も、新ちゃんの事、よろしくね」
「はい」
「事件の事は、新一と平次君がいるから大丈夫だろうし、私達はこれで失礼するよ」
「お義父さま。今回、何のお構いも出来なくて」
「何の、私達は内緒で来たんだからそんな事は気にしなくて良いんだよ」



工藤夫妻(アダルト)が去った後、蘭の周りに旧2年B組の女生徒たちが詰め寄る。

「ねえねえ蘭、今の工藤君のご両親でしょ!?」
「お義母さま、お義父さまって・・・蘭・・・!!」

蘭は思わず真っ赤になって口元を押さえる。
園子が苦笑する。

「やれやれ、どの道時間の問題か・・・」



「蘭、良かったわよ。あなたって結構女優に向いてるかもね」

英理が声を掛けてくる。

「女優だと〜〜〜、許さんぞ〜〜〜!」

小五郎がわめく。

「あなた・・・どの道、新一くんが絶対反対するでしょうよ」

小五郎が、目を怒らせたままそっぽを向く。

「お母さん、お父さん・・・」
「今年は最後まで劇が出来て、良かったわね」
「うん。・・・ねえお母さん、才能あるとも思わないけど、私は絶対女優なんてやらないよ」
「まあ、新一くんが許さないでしょうからね」
「新一はね・・・勿論反対すると思うけど、私が絶対にやりたいって言ったら、結局折れると思う。でもね、私が・・・新一以外の男の人に、恋する演技なんて出来ない。触れられるのなんて我慢できない。だから・・・」

蘭のその言葉を聞いて、その場に居合わせた全員が顔を赤くする。

英理は肩を竦め、小五郎はますます不機嫌そうになった。

「お母さん、だからね、人気絶頂の女優だったお義母さまが引退しちゃったのって、とっても良くその気持ちが判る気がするの」





客席で――

「快斗、何してんのよ、青子たちは関係者じゃないんだから、帰らなきゃ」
「いや青子、これからが面白くなりそうなのに、見逃す手は無いぜ」

快斗が青子に布を掛けて取り去ると、服が江古田高校の制服から帝丹高校の制服になり、顔も少し変えられて平凡な目鼻立ちの少女の姿になった。
快斗自身も、帝丹高校の制服を着た、平凡な目鼻立ちの少年に変身する。

「顔があいつらとおんなじだからよ、顔も変えねーと目立っちまうからな」
「ねえ快斗、1つだけ訊きたいんだけど」
「何だ青子?」
「いっつも、どうやって衣装の調達してるの?」
「・・・・・・」





「おい歩美、俺たちも帰んねーと」
「元太くん、これから起こる事、少年探偵団としては見届ける必要があると思うの!」
「そうですね。何だか久し振りにわくわくしています。何だか面白そうな事がありそうな予感がしていますよ」
「けどよ光彦、俺たちどう見たって高校生には見えねーし、すぐに見つかっちまうぜ」
「まだみんなが移動している今のうちに、あそこに身を隠しましょう!」







  ☆☆☆



「工藤くん、服部くん、おかげで助かったわ。協力ありがとう」

佐藤警部補が、きりりと引き締まった表情と口調で言う。

「いえいえこの位。お役に立てて良かったです」
「君たちのお陰で、怪我人も出ずに解決したわ。全くもう、いくら強盗殺人犯がこの辺りに潜伏してるって情報があったからって、全員で帝丹高校の体育館に詰めてるなんて・・・ちょっとはあちこちに散らばっていれば良いのに、なんて手際の悪さかしら」

佐藤警部補がぷりぷり怒って言う。

「ははは・・・」

新一は警官たちが全員帝丹高校の体育館に集まっていた本当の訳を知っているだけに、乾いた空しい笑い声をたてた。

捜査1課が最近血眼になって追っていた連続強盗殺人犯。
帝丹高校付近に潜伏しているという情報があったのは本当だが、それにかこつけて、捜査1課の刑事たちが高木・佐藤刑事のデートの見張りをしていたなんて、正義感が強く純粋な佐藤刑事には、口が裂けても教えられない事実であった。



新一は、白鳥警視に電話を掛けて釘を刺す。

「真面目に仕事をしないと、俺にも考えがありますからね」

佐藤警部補が絡む事以外では真面目に仕事をしている可哀相な白鳥警視に対して、新一は酷な一言を言い放ったのだった。



  ☆☆☆



事件を解決させた新一と平次が帝丹高校に戻って来た。
新一は劇の衣装のままだが、優雅な身のこなしと持って生まれた品の良さの所為か、街中を歩いても仮装行列には見えず、ごく自然に当たり前のようにマントを翻しながら歩いて帰って来た。



体育館に入って新一は驚く。
全校生徒が集まっている様子なのだ。
舞台の上には、旧2年B組の面々が揃っている。
「有志」と言いながらどうやら全員集合で、1人も欠けていない。
事前の準備にはどうしても参加できなかった者まで、当日のスタッフとして参加をしていたようだ。



新一が戻ると、舞台の上に蘭と2人並ばせられる。
去年のクラスメートたちは、舞台袖にと去っていく。
園子が言った。

「蘭、新一くん、今から記念撮影するからね」
「?・・・いいよ、別に。この格好での写真なら、去年も取ってるし」
「駄目よ、舞台から離れんじゃないわよ!」

・・・その時になって、新一は、何か様子がおかしい事に気付く。
何となく嫌な予感がした。
そして、今まで迂闊にも気付かなかった、舞台天井にある丸い物に気付く。
そこには大きなくす玉がぶら下がっていた。



不意にくす玉が割れると、中から紙吹雪と紙テープと垂れ幕が落ちてきた。
垂れ幕に書かれている文字は――。



「HAPPY WEDDING! 工藤新一&毛利蘭」



昨年のクラスメート達が、次々にクラッカーを鳴らす。

「おめでとう、工藤!」
「うまくやったな!」
「蘭、おめでとう!」
「幸せになれよ!」
「毛利を泣かすんじゃねーぞ!」
「もう、毛利じゃねーって」
「そか、でも、蘭さんなんて工藤が恐ろしくて呼べねーぞ」
「蘭、幸せになってね」
「私達、みんな応援してるから」
「工藤くん、蘭を泣かせたら許さないからね」
「頑張れよ!」

次々に、新一と蘭に言葉が掛けられる。







全校生徒は最初ざわめいていたが、やがて大きな拍手が沸き起こった。
園子がマイクを持って言う。

「我が校が誇る高校生名探偵の工藤新一君と、名探偵眠りの小五郎の娘で空手都大会優勝者の毛利蘭さんは、既に全校が認める公認の仲でしたが、去る8月××日、正式に籍を入れ、夫婦となりました!!」

体育館が割れんばかりの大歓声が上がった。



舞台裏の倉庫からも声が聞こえる。

「えーーーっ!!!うっそーーーーっっ!!!」

新一が慌てて倉庫の入り口を開けると、そこには歩美、元太、光彦の姿があった。

「おめーら・・・」

新一が呆れたように目を細める。

「えっへへへ」
「あはははは」

元太と光彦が誤魔化し笑いをする。

「蘭お姉さん、新一お兄さん、おめでとう!」

満面の笑みで言う歩美の言葉に、新一はふっと笑う。

「おめーら、しょうの無いやつらだな」

歩美はその新一の表情がコナンと同じだと思い、そしてまた胸の奥に正体不明の痛みが走るのを感じた。

「もう今更何だし、ここに居てかまわねーけど、この事は俺たちだけの秘密だぜ」

新一が気障に片目をつぶってみせると、少年探偵団の3人は、無言でコクコクと肯いた。



「ま、まさか園子・・・!!」

蘭が親友の方を見遣る。
園子は両手を広げて言った。

「ばらしたのは私じゃないわよ。企画には乗ったけどね」





「工藤、何や前にも感じたんやけど、帝丹高校ってどえらいとこやなあ・・・」

平次がぽんと新一の肩を叩いて言った。

「ほんまやね。けど、去年の学園祭の後、工藤くんが帰って来とった事、結局外部には、ばれへんかったんやろ?帝丹の生徒って外部には口が堅いようやし、大丈夫ちゃう?」

和葉が慰めともつかない様な事を言う。

「まあ、ばれちまったもんはしょうがねえ。もし外部に漏れたらその時対応を考えるさ」

新一が言う。

「ふふ、結局新一っていっつも前向きなのよね。でも新一がそう言ってくれるから、いつも大丈夫だって私には思えるの」

蘭が微笑んで言う。

『『この2人には敵わへんで・・・』』

平次と和葉は同じ事を思ったが、口には出さなかった。







「へえ、工藤くんって、結婚してたんだ〜。何だかこんなのも素敵だね」

青子の言葉に、少し驚いたように快斗が言う。

「へぇ?おめーさ、残念とか思ってんじゃねーの?」
「どうして?どうして青子が残念だなんて思うの?工藤くんたちが夫婦で劇の主役やってたなんて、とっても素敵なお話じゃない」

青子が不思議そうな顔をして快斗を覗き込む。
その邪気の無い目に、快斗は完敗である。

「い、いやそれはさ・・・(おめーが工藤くん素敵なんて言うからよ・・・でも、そういった意味は全く無かったみてーだな。そうだよな、こいつって本当に天然なんだ。俺としたことが、つい焼餅妬いて冷静に判断できなかったぜ・・・)」



新一は突然飛んできたカードをマントで受け止める。
カードに書いてあったのは――



「結婚おめでとう

           怪盗キッド」



という至ってシンプルなメッセージ。

新一は体育館内を見渡すが、キッドは勿論、新一に似た黒羽快斗も、それらしい姿は見当たらない。

「大方帝丹の学生に変装して紛れ込んでんだろうが・・・しっかし、相変わらず、気障な野郎だ・・・」

新一は忌々しげに呟く。
新一には、自分が人の事を言えないくらい気障な奴だという自覚は全くもって無い。





  ☆☆☆



昨年のクラスメートたちが次々と声を掛けてくる。

「工藤、水くせーぞ」
「そうそう、お前達のキューピッド、2年B組にも内証なんて」
「俺達、みーんな、お前達の事応援してたんだぜ」

新一はバツの悪そうな顔をした。

「悪かったよ。卒業までは、誰にも話すなって校長達に釘刺されてたからよ」
「そう言うが、情報源は学校の方だぜ」
「そうそう、口の軽い教師がポロっともらしたんだからな」



この騒ぎを治めようと血相を変えて飛んできた教師たちは、情報源が教師だと聞いて青くなる。



「職員室の会話を立ち聞きしたのはおめーだろ」
「誰でも出入りするところで、軽々しくそんな話をするやつが悪いのさ」
「旧2年B組の連絡網をなめんなよ」
「次の日には全員に知れ渡って今回の企画になったんだぜ」
「工藤くん、蘭、本当におめでとう!」
「高校卒業したら、披露宴やるんでしょ。私達も、呼んでくれるわよね」

新一は、柄にも無く感動していた。

付き合った時間は短かった、昨年の2年B組だったが、その繋がりは、半端な物じゃなかった。
この仲間達の事は、一生忘れない。

そう思った。







体育館入り口にて、結局どうする事も出来ずにうろうろしている教師陣に混じって、金髪の女が佇む。
言わずと知れた、ジョディである。
ジョディはごく真面目な顔をして、口元に微かに微笑を浮かべ、誰にも聞き取れない小さな声で呟く。



「Congratulations!! Be happy, Angel and Cool -guy!」







新一と蘭が、旧2年B組の友情に浸って感動していると、園子が突然言った。

「て事で、新一くん、蘭、今から昨年の2年B組主催の、全校生徒による、『工藤新一くんと毛利蘭さんの結婚を祝う会』よ!」

ついさっき、スペイド王子とハート姫の結婚の儀式で神父役だった男子生徒がそのまま神父役で、皆の前で結婚の誓いをさせられる。

「ちゃんと誓いのキスもしろよ」
「今更照れんなよ」
「さっきも大勢の前でやったろうが」

口々に囃し立てる昨年のクラスメート達の言葉に、新一も蘭も真っ赤になったが、全校生徒が固唾を呑んで見守る中、このままでは治まりがつきそうにないのははっきりしていた。

新一は意を決し、半ばやけくそで、蘭の頬に手を当てると唇を重ねた。

体育館が今度こそ割れるかと思われるほどの歓声と悲鳴と怒号に包まれる。

「いよっ御両人!」
「さすが、現役夫婦!」

口笛交じりの皆の冷やかしの声。

新一は嘆息する。

『俺、感動したの、ちょっと早まったかも・・・』



旧2年B組主催の「工藤新一くんと毛利蘭さんの結婚を祝う会」は、その後更に2時間ほど続いた。
2人が、昨年のクラスメート達及び全校生徒から、さんざん遊ばれてしまったのは、言うまでも無い。





Fin.



++++++++++++++++++++++



<後書代りの、東海帝皇会長とドミの対談>



ドミ「会長さん、『THE SALAD DAYs』、次は、学園祭のお話です」
会長「って事は、シャッフルロマンスのお話で?」
ドミ「まあ、そうなりますね」
会長「で、平和の2人も勿論登場するんですよね」
ドミ「え?そこまで考えて無かったですけど。私が考えてたのは、ただ2年B組のお話という事で。それにもう、お話書いちゃってますし」
会長「でも、あのお話なら当然平和がつきものでしょう」
ドミ「わかりました・・・書き直します」



ドミ「会長さん、大変です!お話の書き直した部分が、ノート型パソのぶっ壊れで全部データが飛んでしまいましたぁ(涙)」
会長「それは気の毒に・・・大変でしたね。で、どんなお話になってたんでしょう?」
ドミ「平和と、せっかくだから高佐と警察の面々も出して・・・事件も起こして、とかなり話が膨らんでたんです〜」
会長「そうですか・・・で、少年探偵団と怪盗キッドは?」
ドミ「少年探偵団と怪盗キッド?いえ、全然予定に無かったですけど」
会長「次のクリスマスのお話で彼らが出る予定になってるんですから、いきなり出すより今回も出しておいては?」
ドミ「はあ・・・やってみます」



会長「ドミさん、お話の進行具合はどうですか?」
ドミ「長くなったんで前後編に分けたんですけど、まだ前編が書き終わりません〜〜。次いでだから、優作さんたちや小五郎さんたちも出しちゃいました。白馬くんと紅子さんも。京極さんと博士と志保さんは出て来ないけど、もう殆どオールスターキャストですよ。それぞれの登場場面書くだけでも大変なんです!」
会長「それはそれはご苦労様。で、ジョディ先生は?」
ドミ「は?ジョディ先生?まるっきり考えていませんでした」
会長「次のクリスマスのお話でジョディ先生が出て来るから、ここで居ないのはおかしいでしょ?」
ドミ「そ、そ、それはそうかも知れませんけど・・・(ああ、いつになったらこの話書き上がるんだろう)」



ドミ「会長さん・・・やっと書き上がりましたよ(へろへろ)」
会長「ご苦労様。次は、クリスマスのお話ですね。頑張って下さいね♪」
ドミ「・・・・・・」





注)上記の会話はフィクションですが、一部事実も混じっています(笑)



「シャッフルロマンス・リベンジ(前編)」に戻る。  Adventure of the Christmas(1)に続く。