C-K Generations Alpha
to Ωmega
特別版 ベイカー街(ストリート)の亡霊(スペクター)
By東海帝皇(製作協力:ドミ)
Vol.1 覚醒!禁断のAI
二年後……。
『よう、工藤。元気にしとるか?』
「ハハハ、オメーはいつも元気だな。」
平次からの通信に呆れるコナン。
「それにしてもオメー、何か毎日のように俺に電話かけてねーか?」
『まあ、ええやんか。せっかく初姉が、通話料がかからん方法を教えてくれたんやから、使わなそんやんか。』
「はあ、やっぱりオメーも関西人だな……。」
更に呆れるコナン。
『あ、そう言や、明後日の夜、米花シティホールで「コクーン」つーゲームの発表会が行われるの知っとるか?』
「知ってるよ。俺の父さんと阿笠博士が製作に関与したからな。それがどうしたんだ?」
『つー事は、お前もそこ行くんか?』
「ああ。俺は別に行く気は無かったんだが、父さんが発表会のパーティーに出るんで、その挨拶をしとこうと思ってな。」
『ほー、なるほどな。』
その時、
「コナンくーん、お風呂よー。」
蘭が呼ぶ声が聞こえてきた。
それを聞いたコナンは平次に言った。
「という訳で、今日はここまでだ。」
『えー、そら残念やなあ。』
「おい、服部。和葉ちゃん、オメーが俺と毎日通話してる事知ってんのか?」
『ああ、知っとるで。』
「だったら、あんまり和葉ちゃんをやきもち焼かせるよーな事はすんなよ。」
『ハア?オレは別にそんな事してへんけどなあ。』
(オメー、全然気付いてねー。)
ジト目なコナンであった。
☆☆☆
翌日、帝丹高校にて……。
「あー、明日のコクーンの発表会が楽しみだわ〜〜〜♪」
頬を染める園子。
「楽しみって、何が?」
との蘭の問いに対し、
「だって〜〜、真さんと一緒にコクーンにチャレンジ出来るんですもの〜〜〜★」
園子は思いっきり惚気る。
「全く、園子ったら……。」
「真さんが絡むとホントこーなのね……。」
呆れる蘭と舞であった。
「あっ、そうだ!ねえ、もし良かったら、舞も発表会のパーティーに参加しない?」
「えっ、でも私、招待券もってないわよ?」
「大丈夫だって。ほら、これアンタにあげるから、明日いらっしゃいよ。」
園子は、舞に招待券を渡す。
「うわー、ありがとー園子!」
大喜びの舞。
そこへ、
「あれ、園子さん達も発表会に行くんですか?」
「あら、瑛祐君。」
「アンタも行くの?」
「ええ、瑛海姉さんがテレビ局からチケットをもらって来てくれて、それを僕にくれたんですよ、ほら。」
「まあ!それコクーン体験参加チケットじゃないの!」
「さすがはフリーアナを姉に持つのは違うわねえ。」
「いやいや。でもおかげで、明日は燃えられそうです!」
「あ、でもアンタ、葉槻ちゃんはどうなるのよ?」
「それなんですが、葉槻さんは明日は優華王妃様の所へ番を張るそうです。」
「そうなの、それじゃ仕方ないわね。まあ、明日は私も真さんと。ムフフフフ……。」
「ああ、これで王子様とパーティーで……。」
園子と舞の頭の中はすでに、翌日の発表会へとトリップしていた。
「あ、あんた達ったら……。」
二人のにやけ振りを見た蘭は、思いっきりあきれ返っていた。
☆☆☆
同じ頃、江古田高校では……。
「ねーねー、快斗ー。」
「んー、何だ青子?」
「明日、米花シティホールでやるコクーンの発表会に行こうよー。」
ねだる青子。
「発表会に?何でまた?」
「恵子がね、コクーン体験参加チケットの抽選に当たったんで、青子も応援に行こうと思って。」
「ほーっ、あの恵子がね……。」
「ね、快斗、行こ。」
「おいおい、応援はいいけど、俺達パーティーの招待券持ってねーから、会場に入れないじゃんか。」
「あ、そうか……。」
しゅんとなる青子。
その時、
「招待券ならありますよ。よかったらどうですか?」
探が二枚の招待券を二人に見せる。
「えー、ホントにいーの、白馬君!?」
招待券を見て、目をキラキラ輝かす青子。
「しかもこれ、コクーン体験参加チケットのオマケつきじゃねーか!」
「うっわー、すっごーい!!」
更に狂喜する青子。
「けどオメー、これどこで手に入れたんだ?」
「実は、諸星副総監が父に、このコクーン体験参加チケットつきの招待券を二枚くれましてね。それを父が僕にくれたんですよ。でも、僕には用がなくなったので、君達にあげましょう。」
「うっわー、ありがとー、白馬君!」
大喜びの青子。
「しかしオメー、今回はやけに気前がいいな。何か悪いモンでも食ったのか?」
「いやいや、別に他意なんてありませんよ。」
謙遜する探だが、
「紅子殿に誘いをかけたら、断られて用無しになったのではござらぬか?」
紅葉がツッ込む。
「ぶっ!?そ、そ、そんな事は……。」
「図星だな、オメー。」
探の様子を見て、得心する快斗。
「大体魔法オタクのあいつに、ハイテクの話を持っていく事自体に無理があったんじゃねーのか?」
との快斗のツッコミに対し、
「い、いや、実は紅子さんがコクーンのゲーム体験参加を断ったのは、コクーンに不吉な影を感じたからで、会場のパーティーに行く事自体は断った訳じゃないんですよ。」
弁解する探。
「つー事は、その不吉な影を俺達に押し付けようとゆー訳か。」
「な、な、何を言うんですか、黒羽君!同じC-Kジェネレーションズの仲間に対して、そんな不埒な事は考えてませんし、第一、僕は不吉な影を信じていませんから。」
「あー、て事は、紅子ちゃんの事を信じてないんだー。」
「な゛っ、そ、そんな事は……。」
青子の更なるツッコミに止めを刺されたかのような探。
「こんな不誠実な奴はほっといて、俺達がその不吉な影を祓ってやろうぜ。」
「うん、快斗がんばろーね。」
意気上がる二人の横で、灰になった探を、紅葉はちょっと気の毒そうな目で見ていた。
「ふー、やれやれ。けど、明日のパーティーには、主殿も来るのでござったな……。」
胸元から招待券を取り出して悦に入る紅葉であった。
☆☆☆
また同じ頃、改方学園では……。
「ねえ、和葉ちゃんにへーたん。」
菫が現れる。
「どしたん、スミレちゃん?」
「ウチ明日、東京の米花シティホールに行くんや。」
「米花シティホールって、お前まさかコクーンの発表会に招待されたんか!?」
「うん。」
平次と和葉にチケットを見せる菫。
「あっ、これコクーン体験参加チケットやん!!」
「ほーっ、お前すごいやないか。」
「スミレちゃん、羨ましいなあ。」
「へっへー。」
自慢げに微笑む菫。
「あっ、それと桐華さんからパーティーのチケットを二枚もらったんやけど、ウチと一緒に行こうやん。」
菫は、二人にチケットを見せる。
「な、何でオレ等も行かなあかんねん。」
「だってこのコクーンのステージの一つの『オールドタイムロンドン』は、コナン君のお父ちゃんの工藤優作せんせーが監修やから、へーたんも興味を持つんやないか思て。」
「アホか。オレはホームズよりもエラリー・クイーンちゅうのは、お前かて知っとるやんか。それにこのチケット、ただのパーティーチケットやんか!」
「そやかて、スミレちゃんを一人で東京に行かせたんのをもし静華オバちゃんが知ったら、平次どーなるやろなあ。」
「ぐっ、そ、それ言われると……。」
言葉に詰まる平次。
「なら決まりやね。」
したり顔の菫。
「安心しいや。アタシも同行したるさかいなあ。」
「何言うてんねや。お前の目的は、これを口実に蘭ねーちゃん達と会うのが主やんか。」
「アンタかて、コナン君と会えるかもしれへんのやから、別にえーやんか。」
「こここここら和葉あ!!お前何つー事言うんねや!?」
「まあまあ。」
エキサイトする平次を宥める菫。
「でもオレ等にもパーティーのチケットくれるなんて、あの百鬼夜行のねーちゃん、結構太っ腹やなあ。」
「こら平次。そーゆー言い方は失礼やろ。でも何で桐華さんが?」
「何でも、ミカエルグループがコクーンの開発の援助をしたんで、その関係でパーティーのチケットをもらったんやて。」
「「ほー。」」
納得する平次と和葉。
「んふふふ、これで明日はダーリンと……。」
「まあ、これでオレも堂々と工藤に会えるな。」
すでに発表会に頭が向いている二人を見た和葉、
「こ、この二人は……。」
呆れるように見ていた。
☆☆☆
その夜……。
「ねえ、新一。」
「ん、何だ、蘭?」
「明日はコクーンの発表会ね。」
「ああ、そうだな。」
「新一はゲームには参加しないの?」
「ああ、俺別にそんなのに興味ねーし。」
「あら、でもホントは参加したいんでしょ?」
「いーんだって、別に。オメーが参加出来ねーんなら、やったって何の意味もねーし。」
そんなコナンを見た蘭は、
「うふっ、ありがと♪」
と言いながら、後ろからコナンに抱きついた。
「わわわっ!?ら、蘭!?」
コナンは蘭に抱きつかれた途端、顔がトマトのように真っ赤になった。
「けど、無理しなくったっていいのよ。今度のコクーンには、おじ様が考えた、新一好みのステージがあるみたいだし、それに参加したっていいじゃない。」
コナンをやさしく抱きしめながらささやく蘭。
しかし、その当人は、
「そそそそ、それは……。」
思考が完全に停止してしまい、それに答える余裕など全然なかった。
☆☆☆
同じ頃、虎姫邸では……。
「桐華姉さん、明日は、コクーンの発表会ですね。」
「ええ。我がミカエルグループも出資して出来上がったゲーム、是非とも成功して頂かなくてはね。」
明日のコクーン発表会の事で話し合う桐華と武琉。
「パララケルス王国の国営企業も資金提供をしたと、聞きましたが。」
「ええ。あの国は、いずれは豊富な埋蔵資源が枯渇する未来を見越して、世界最先端の技術者を養成して来ましたし。その線で、今回もかなりの協力をしている筈ですわ。殿下も明日は、おいでになる筈です。」
「そう言えば、本来高校生以下の子供限定で、ゲーム体験をさせると聞きましたが……。」
「ええ、そうですわ。だから、武琉さんには資格があったのですけどね。」
「僕は、ゲームには興味がないので、それは他の方に任せますよ。」
「殿下は20歳ですけど、特別にゲーム参加する事が認められています。」
「はあ、なるほど。姉さん、一緒に参加出来なくて、残念でしたね。」
「まあ、その程度の事は、別に……仕方がありませんわ。」
「でもまあ、高千穂警視はもっと年が行ってますから、ゲームには絶対参加出来ませんしね。」
武琉の言葉に、それまで穏やかな笑顔だった桐華のこめかみが、ピクリと震えた。
「そう言えば、明日、高千穂警視は発表会に招待されているのかな?」
「……何故、あの横取り泥棒猫の年増女が、招待されるんですの?」
桐華の言葉に、武琉は今更ながら、地雷を踏んでしまった事を悟る。
「あ、いや!その……警察官ですし、アルファトゥオメガのメンバーですから、舞さん達みたく、招待されているのかと……。」
「……。」
桐華の背後から、ズゴゴゴゴと、効果音付きで、黒いオドロ線が湧き起こり始めた。
「でででも!仕事が忙しいでしょうから、明日は来ないでしょうね、はははは。」
「……武琉さん。ワタクシは、暇を持て余してるんだろうと言いたいのですか?」
「ええっ!いや、そんな事は!姉さん!」
……その後の惨状は、敢えて伏せさせて頂く。
合掌。
☆☆☆
翌日……。
『ここ米花シティホールでは、日本のゲームメーカーがシンドラーカンパニーと共同開発した……。』
とアナウンサーが取材しているそばで、シンドラー社長や、各界の著名人とその子息達が、米花シティホール内へと入っていった。
その会場内では、コクーンの設置準備が着々と進められ、また、会場の入り口では、不審者を防止する為、セキュリティチェックが行われていた。
「つったく、テレビゲームの発表会如きで、物々しいたらねーな。」
愚痴る小五郎。
「けど、発表会にこぎつけるまで、産業スパイとかが色々暗躍していたみたいだよ。」
説明するコナン。
「コクーンの登場で、ゲーム業界の地図が一挙に変わるって言われてましたものね。」
光彦も補足説明する。
その時、
「うわ、何だあれは?」
元太は、廊下の窓から見えた、整然と並べられた球体型の物体を見つける。
「あっ、もしかして!あれですよ、コクーンって。」
「俺もコクーンやりてーぞー。」
「それは無理ですよ。僕達パーティーには呼ばれたけど、コクーン体験者には選ばれてませんから。」
そこへ、
「よおー、こんちわー、みんな。」
初音が挨拶してきた。
「こ、これは服部警視長殿!」
途端に身を硬くする小五郎。
「初音さんも来てたんですか。」
「まーね。」
「けど、よくこれたもんだなあ。」
「警察のお仕事はどうしたの?」
との元太と歩美の問いに対し、
「実は、ウチの故郷の企業がコクーンの開発資金を提供した関係で、警視総監からこのパーティーに来る諸星副総監の護衛の名目で、ウチも行く事が許されたんや。」
答える初音。
「なるほど、一種の『任務』って訳ね。」
哀が返す。
☆☆☆
「ハハハハ、ラッキーラッキー★」
元太は、喜びながらパーティー会場に出された料理を次々と食べていった。
その近くでは、小五郎もパーティーの酒類を飲みまくり、蘭から注意を受けていた。
その時、
「ラッキーなのはあの子達よ。」
歩美が、バッジを貰っているちびっ子達の方を見た。
「ゲーム参加のバッジを貰っている所を見ると、噂のゲームに選ばれた子供達ですね。」
「警視副総監の孫、財界実力者の孫、与党政治家の息子、日本の将来を背負って立つ、二世三世が勢ぞろいって訳だ。」
「まるで、日本の世襲制の悪しき構図が凝縮された光景ね。」
哀が、冷ややかに見つめる。
「「「「ええっ!?」」」」
小五郎や探偵団が一斉に哀を見る。
「こうした世襲制と共に、人間の過ちの歴史が繰り返される訳よ。」
哀は更に辛辣に言い放つ。
「そして……。」
哀はふと、ある所に視線を移した。
「話題に箔をつける為に賓客を招く所も、ある意味見苦しいかも知れないわね。」
「あっ、あれは確か、パララケルス王国のレオン王太子じゃねーか!」
「あ、ホントだ。」
小五郎とコナン達は、来客とシークレットサービスに囲まれた、初音の従兄弟のレオン・レムーティス王子の姿を見かけた。
「見た所、バッジを付けてるみたいだね。」
「やれやれ、あの王子もコクーンに参加するってか?参加者は高校生以下の子供って話だってのに、王子様は確か成人してる筈だよな。」
ぼやく小五郎。
「初音さんがここに来たのは、従兄弟の護衛も兼ねてだったんだね。」
「そのようね。」
その時、
「やあ、お久しぶりですね、みなさん。」
「あ、レオン王子。」
コナン達に気づいたレオンが挨拶に現れた。
「王太子もコクーンのパーティーに?」
「ええ。ウチの国の会社が開発に関わった関係から、義父のアストラ国王の名代として、挨拶にやって来たんですよ。」
「ほう、成る程。」
「王太子様も色々と大変ね。」
「ねえ、王子様もコクーンに参加するの?」
「ええ。」
「うわー、いーなー。」
「あ、そう言えば、初音さんや王太子の故郷のパララケルス王国って、世界でも屈指の超技術立国でしたよね。」
「と言うか、資金だけじゃなくて、王太子が言う様に、かなり高度な技術もあのコクーンに生かされてると見たが……。」
コナンは、ステージ上に並ぶコクーンに目を移した。
「私としては、高校生以下の子供が条件の中でひとり特別扱いで、少し嫌だったのですが。ゲームの技術的チェックをする為には、実際にやってみない事にはと思いまして。」
「王太子自らが人柱って事なのかしら?」
哀が冷めた目で突っ込みを入れる。
「パララケルスでは、色々ありましたからね。名前と血統だけで王族は務まらないのですよ。ん?そう言えば、レミィは今日は一緒じゃないんですか?」
義妹の事を尋ねるレオン。
「レミィちゃんなら、今日はお留守番だって。」
「ここんトコバトルが続いたので、休養するそうですよ。」
「そうですか、それなら仕方ありませんね……。」
残念そうなレオン。
「やっぱり彼女の事が心配そうね。」
「そりゃそうですとも。サリー姉上の妹であれば、私にとっても妹ですからね。妹を心配するのは、兄として当然の事です。」
哀に対し、毅然と答えるレオン。
その時、
「らーん!」
園子が近づいてきた。
「はーい、ボーイズ&ガールズ。」
「あっ、園子さん!まさかそのバッジ!?」
「あ、これ?鈴木財閥が資金援助した関係でね。」
「いーですねー。」
「ほしーなー。」
羨ましがる光彦と元太。
そこへ、
「諦めな、立場が違うんだ。」
「そもそもお前等、招待されてんのか?」
と自慢しに来た子供が四人。
それを聞いた園子が、
「失礼ね!この子達はれっきとしたうちの招待客よ!」
と注意する。
「これはこれは、鈴木財閥のご令嬢。」
慇懃に挨拶する、狂言師の息子・菊川清一郎。
「いいか、人間てのはな、生まれた時から人生が決まってるのさ。」
そう言うのは、諸星副総監の孫・秀樹。
続いて、財閥系銀行頭取の孫・江守晃が、
「そーそー。綺麗な服も着る人間を選ぶって訳。」
と自慢すれば、
「選ばれなかった人間は、外から指を加えてみてればいいんだ。」
与党政治家の息子・滝沢進也がバカにする。
そこへ、
「君達、来客に対して、そういう物言いは無礼極まりないのでは?」
レオンが彼等に意見する。
「なんだ、アンタ?」
「僕達に向かって、ずいぶんえらそうな事を言うじゃない。」
「あなた、自分の立場をもっと弁えた方がいいのでは?」
「全く、僭越にも程があるぜ。」
レオンに対して毒づく4人。
これに対し、
「僭越なのはオメーらじゃねーの?」
「なっ、何だとお!?」
「そうよ!あんた達、彼が誰だかわからないの?」
「王太子に対して、すっごく無礼じゃない?」
反論するコナン達。
「えっ、王太子って……。」
「あっ、こ、この人!」
「こ、こいつ確か!」
「パララケルス王国のレオン王太子!」
レオンを前にうろたえる諸星達。
「あんた達、王太子に対する無礼、よもやただで済むと思ってないでしょうね?」
「あ……。」
「う……。」
「え……。」
「し……失礼しましたぁー!!」
園子の威嚇に、諸星達は尻尾を巻いて逃げ出した。
「やれやれ、なんつーガキどもや。」
少し離れた所で、料理をがっつきながら様子を見ていた初音が苦々しそうに呟く。
「全くよねえ。」
「一体どう言う教育を受けとんのやろなあ。」
「ホンマに。」
「ありゃどー見ても碌なモンじゃないわね。」
舞・和葉・菫・恵子も相槌を打つ。
「おお、来とったんか、お前等。」
「ええ、たった今ここに。」
「ん、和葉。」
「何、初ちゃん?」
「平次どーしたんや?」
「ああ、アイツ?アイツは殺人事件の推理で遅れる言うて、しゃーないからアタシ達が先に来たんや。」
「全く、相変わらずやなあ。まあ、それにしても……。」
初音は再び、諸星達に視線を移し、
「あんな礼儀知らずのガキンチョどもが、親の仕事を継いでいくなんて、ホンマにロクなモンやないで。」
溜め息をつく。
そこへ、
「けど、今時あのような子供達が生き残れるほど、この世の中は甘くありませんわ。」
「そうですね。」
紅子が、探のエスコートを受けながら、初音達の元へと現れた。
「うっわー、紅子さん、ごっつー綺麗やわあー!」
「何だか気品が溢れてるみたい。」
「二人とも高貴さをモロに感じるで!!」
「超お似合いじゃん!!つーか、結局パーティには参加したのね……。」
パーティーに調和したスタイルの紅子の立ち振る舞いと、彼女をエスコートする探の身のこなしの良さに驚嘆する和葉達。
その時、
「あっ、和葉ちゃんに舞ちゃん!」
「それに菫ちゃんに紅子さん、恵子ちゃんも!」
「義姉上!」
和葉達に気付いた蘭が、園子達と共に近づいてきた。
「やあ、こんばんわ、蘭ちゃんに園子ちゃん。」
「ウチ達今着いたんよ。」
「へー、そうなのー。」
「よお、久しぶりやな、レオン。」
「義姉上もお元気そうで何よりです。」
「あ、所で服部君は?」
「へーたんなら殺人事件で遅れるって。」
それを聞いたコナン、
「全くアイツは、事件があるとすぐに首をツッ込むんだから……。」
と呆れていた。
これを聞いた一同、
(自分だって人の事言えない癖に……。)
ジト目でコナンを見ていた。
「所で初音さんと和葉ちゃん達、何を話してたの?」
「ああ、あの礼儀知らずのガキどもの事や。」
初音は、会場内をドリブルで駆け抜ける秀樹達に苦々しく視線を移した。
「全くあの子達は、他人の迷惑っつー事を考えないのかしらねえ。」
「あれが二世三世さんなんて、ロクなモンやないなあ。」
愚痴る舞と菫。
「けど、あの手のは逆境にはとても脆いですから、どうせ偉い地位に着いたって、終わりを全うするなんて絶対に不可能ですわ。」
紅子が厳しい評価を下す。
「いや、それどころか、その地位につけるかどうかすら怪しいわね。」
「それもそーやなあ。あっはっは……。」
それに応える様に舞も厳しい事を言い、菫は高笑いする。
「ホホホホホ……。」
紅子も笑い飛ばしていたが、その時!
ブワッッッッ……!
「「「え゛?」」」
突然三人のスカートが思いっきり舞い上がった。
「この姉ちゃん、毛糸の熊ちゃんパンツだなあ。」
「こっちはイチゴのワンポイントのピンクパンツだ。」
「こっちの方は黒いレースですねえ。」
「こいつ等悪趣味な下着つけてるなあ。」
スカートの中を批評する四人の子供。
そして……、
「「「きゃあーーーーっっ!」」」
三人の絶叫が響き渡る。
「あっ、お前ら!」
初音は、三人のスカートを舞い上げた犯人である秀樹達を見つけた。
「ちょちょちょちょっとアンタ達!何て事すんのよ!?」
との舞の抗議に対し、
「あんた達、俺達をバカにしてもらっちゃ困るな。」
「そんな品の無い下着つけてる方に言われたくはありませんよ。」
「全く、最近の女子高生ときたら、嘆かわしい事この上ありませんね。」
「ホント、世も末だぜ。」
言い放つ、秀樹・江守・菊川・滝沢。
ブチッッッッ!!!!(×3)
「こっ、このガキンチョども〜〜〜〜っっっ!」
「何つー事を〜〜〜〜っっ!!!」
「ただじゃ済ませませんわね……!!!」
完全にブチ切れて、怒りに震える舞は胸元からドラグファイヤーの護符を、菫は両手に闘気を、紅子は手のひらに炎の玉を、それぞれ構えようとする。
「わ゛ーーーっ、ちょ、ちょっと待てえ!!!」
血相を変えたコナン達が、必死に三人を抑える。
「は、離して、蘭ちゃん、園子!」
「お、落ち着いて、舞ちゃん!」
「ちょちょ、ちょっとスミレちゃん!」
「と、止めんといて、和葉ちゃんに初音さん!」
「このガキども、許せませんわ!!」
「そ、そんなにエキサイトしないで下さい、紅子さん!」
「と、とにかく落ち着いて!!」
恵子と共に必死に紅子を抑える探だが、実は彼も、
(諸星副総監には、後で父から厳しく言ってもらわねば……!)
と腸が煮えくり返るような気分でいたが、その一方で、
(けど、黒レースの下着、中々似合ってましたね……。)
などと不埒な事も考えたりしていた。
そこへ、
「こら、君達、やって良い事と悪い事があるのがわからないのか?他のお客様の迷惑になるから外に行きなさい。」
秀樹達を叱責する声が。
「誰だあんた?」
「コクーンの開発を担当した樫村と言います。」
自己紹介をするチーフスタッフの樫村忠彬。
これに対し、
「爺ちゃんの銀行が助けてやったから、ゲームを完成出来たんじゃん。」
ぶーたれる江守。
しかし、
「公衆道徳というものを、お父さんやお母さんから教わらなかったのかい?それと、目上の人に対する話し方も。」
樫村は問い返す。
「偉そうに……。」
「もうお金貸してやんねーぞ!」
「おじさん、アタシ達の事知らないんじゃない?」
「俺達に楯突くと、明日にはクビになっちゃうかもよ。」
なおも暴言を吐く秀樹達。
そこへ、
「やめなよ、みんな。」
と秀樹達を注意する声が。
「ん!?あっ、お前は武琉!」
傲岸不遜な態度をとっていた秀樹達は、近づいてきた武琉の姿を見るなり、急に顔色を変えた。
「だめじゃないか、みんな。せっかくのパーティーなのに、それをぶち壊すような真似をしちゃ。」
毅然とした態度で秀樹達を諭す武琉。
「わ、悪い……。」
「すまない……。」
「これは失礼しました……。」
「ごめん……。」
今までの態度とはうって変わって、武琉に謝る秀樹達。
そして、すごすごとその場を立ち去って行った。
これを見た樫村もその場を後にする。
「うっわー、なんてかっこいいおじ様かしらー。誰かさんとは大違いね。」
小五郎を冷ややかに見る園子。
これには小五郎も俯くしかなかった。
「けどあんた、凄いじゃない!」
「あのジャリん子共を黙らせるなんて、やるじゃん!」
「いや、そんな……。」
舞と菫から褒められて、満更な気分の武琉。
「でも武琉君、あなたあの子達の知り合いなの?」
「いや、知り合いも何も、彼等は僕のクラスメートなんですよ。」
「え゛!?あのガキンチョ達が!?」
「何か信じられへんなあ。」
意外そうな顔つきをする一同であった。
「そう言えば、何で秀樹達と言い争いになってたんですか?彼等が何か悪い事でも?」
「いや、アイツ等のパーティーでの態度が悪かったんで、あんなのが二世三世なんてロクなもんじゃないって、みんなで色々言ってたのさ。」
「けど、武琉君や王太子はあのガキどもと違って、二世三世としての風格に満ち溢れてて、とっても良いわよ。」
「えっ、い、いや、そんな僕は……。」
「私はそんな器ではありませんって……。」
「そういう奥ゆかしい所が一番好かれるのよね。」
「灰原の言う通りだな。」
『アハハハハ……。』
それから少し経って……。
「皆様、ステージをご注目下さい!ただ今、コクーンのゲームステージの為にアイデアを提供して頂いた工藤優作先生が、アメリカからご到着です!」
会場の拍手喝さいの下、壇上に上がる優作。
「フッ……。」
コナンもそれを見て、満更でもないようだ。
「あらあら。」
蘭もその様子を見て何気に微笑む。
そこへ、
「いやあ、やっと帰って来れたよ。」
阿笠博士が話しかけてきた。
「二週間もどこに行ってたかと思ったら、父さんの仕事だったんだ。」
「プログラムの最終段階で手伝いをな。」
「そう言えば有希子おば様は?」
「久しぶりに日本へ帰ってきたから、同窓会をやるんだそうな。」
「もしかしてそれって、帝丹高校の?」
「そうじゃよ。」
「だからお母さん、最近楽しそうだったのね。」
「けど、帝丹高校の母さんの同期ってたら、英理おばさんだけじゃなくて、オッちゃんもじゃねーのか?」
「ワシも詳しくは判らんのじゃが、何でも女性だけの同窓会じゃそうな。」
「それで最近、仲間ハズレにされたお父さんが機嫌よくなかったのね。」
(おいおい、別にオッちゃんだけが仲間ハズレにされた訳じゃねーだろに。)
「あ、そうそう、ほら、お土産じゃ。」
博士は、コナンにある物を渡す。
「ゲームの参加バッジ?嬉しいけど……。」
コナンは探偵団の方を向き、
「俺一人でやる訳には行かねーよ。なあ、蘭?」
「あら、いいじゃない。ねえ、博士。」
「そうじゃのう。それに、君だったら熱中するんじゃないかなあ。まだ秘密じゃが、ゲームは百年前、19世紀のロンドンが舞台だ。」
「100年前のロンドン!?相変わらず父さん、あの世界が好きだよなあ……。」
「親子そろってな。ふぉっふおっふおっ……。」
「ホントね、クスス……。」
その時、会場の照明が一斉に落とされる。
「何だ、何も見えんぞ?」
小五郎がワイングラスを持ちながら歩いた時、
ドンッ!
「うわっ!」
「おっと、失礼……。」
と一人の男とぶつかった。
「つったく、暗闇で動き回るなっての!」
ぶーたれる小五郎。
が、その男――シンドラー社長は、とても険しい顔つきでパーティー会場を後にした。
一方、壇上が光に照らされ、
「それでは、次世代ゲーム機、『コクーン』をご覧頂きましょう。」
との司会者の紹介と共に、ステージからコクーンの筐体がコンパニオンガールと共に競り上がってきた。
司会者の説明を聞いていた探偵団は、
「見てるだけじゃつまんねーな。」
「ゲームはやっぱりやるもんですよ。」
と羨ましそうにコクーンの筐体を見ていた。
☆☆☆
カツカツカツ……。
米花シティホールの地下通路を歩くシンドラー社長。
彼はストップウォッチを見ながら、
「あと七分……。」
と呟いた。
☆☆☆
「コクーンの開発責任者である樫村忠彬氏は、大学時代の悪友でしてね、今回の仕事を通じて久しぶりに旧交を温める事ができました。」
会場内でインタビューに答える優作。
その後、
「樫村氏は何処でしょう。会いたいのですが。」
スタッフに頼む。
直後、コナンの姿を見かけ、近寄ろうとするがファンのサイン攻めに会う。
これを見たコナン、
(元気そうで安心したよ。)
アイコンタクトを取る。
優作も、
(お前もな。)
と返す。
☆☆☆
同じ頃、米花シティホールの地下通路を歩いていたシンドラー社長は、とある一室のドアの前で立ち止まる。
そこには、『樫村ルーム』と言う表札がかかっていた。
ドアを開けて、部屋に入るシンドラー。
そこには、巨大な水槽を前に、パソコンを操作している樫村の姿があった。
足音に気付いた樫村が振り返る。
「すぐに会場に戻らなくてはならない。さっさと行ったらどうだ?ヒロキから託された『DNA探査プログラム』をいくらで売るつもりだ?」
訪ねるシンドラー。
それに対し、
「私はあなたを強請るつもりなどありません。ただ償って欲しいだけです。」
と返す樫村。
「ヒロキは知ってしまった。シンドラー帝国を崩壊させる、あなたの秘密を。しかし人工頭脳は、ヒロキの力が無くては完成できない。あなたはヒロキにハードワークを課して、完成を急がせた。」
橿原が話しているのを聞きながら、シンドラーはストップウォッチを見た。
「精神的に追い詰められたヒロキは、人工知能が完成した暁には、あなたに殺されると思った。だから、自分の分身ともいえるノアズ・アークを電話回線を使って逃がし、マンション屋上から身を投げた……。」
樫村は一呼吸置いた。
「それから暫くたって、私のコンピュータに『DNA探査プログラム』のデータが侵入してきました。それはヒロキの遺志を継いだ、ノアズ・アークの仕業でした。私はヒロキの魂の叫びに思えました……。」
これを聞いたシンドラーは、
「償いはする。全てを世間に公表して、どんな裁きでも受けるつもりだ。」
謝罪の意思を見せる。
「だがその前に見せてくれないか?ノアズアークが君に送ってきた、『DNA探査プログラム』を。」
「わかりました。」
橿原は、再びパソコンデスクの方を向く。
その直後、何かとても追い詰められたような表情をしたシンドラーは、手袋をはめ、袖口から短剣を出して、これを構えた。
橿原は、『DNA探査プログラム』を呼び出し、
「これこそ正に、時を超え、現代に運ばれてきた、ロンドンの亡霊……あっ!!?。」
と振り向いた時、
「ぬううーーーーーっっっ!!!」
シンドラーが短剣を持って樫村に突っ込み、彼を一突きにした。
そしてすぐさま、ドライブにCD-ROMディスクを入れ、データを消去し、間髪いれずにその場を後にした。
☆☆☆
「全く快斗ったらあ!こんな時間まで昼寝してるなんて、何考えてんのよお!」
「何言ってんだアホ子!オメーだって時間があるから少し昼寝させてって言って、そのままグーグー寝てたくせに!紅葉が俺ん家に迎えに来なかったら、ずっと夜まで寝てたかもかもしんねーんだぞ!!」
「まあまあ。喧嘩はそのくらいにするでござるよ。」
言い争いをしながら、米花シティホールへと急ぐ快斗と青子、紅葉の三人。
そこへ、
「うわあーっ、遅刻だあーっ!!」
と血相を変えながら、誰かが後ろから猛ダッシュで快斗達を追い越していった。
「あれ、瑛祐君だ。」
「アイツもコクーンのパーティーに参加するのかな?」
「だとすれば、拙者等も続くでござるよ!」
紅葉は、一気に早足で駆け出した。
「あっ、まってよ、紅葉ちゃん!」
「あいつ、ホントに足速えなあ!」
快斗と青子も、紅葉を追う様に、更に早く走り始めた。
☆☆☆
「う……。」
橿原は、シンドラーに刺されて深手を負いながらも、『J』『T』『R』のキーを叩き、そして力尽きた。
その直後、橿原のパソコンのモニターが強く光り出し、両サイドに設置された大型コンピュータが、鼓動を開始したかのように、作動し始めた。
『我が名は、ノアズ・アーク!』
To be countinued…….
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