とんとんとん……。
「主任、工藤先生がお会いしたいそうです。」
優作より言付けを受けて、樫村を迎えに来たスタッフがドアを叩いた。
「主任……失礼します。」
返事が無いのを不審に思ったスタッフが、ドアを開けて入った。
「……主任!どうしたんですか、主任!!」
椅子の上で血を流しながら倒れている樫村を見て、スタッフは絶句した。
C-K Generations Alpha
to Ωmega
特別版 ベイカー街(ストリート)の亡霊(スペクター)
By 東海帝皇(製作協力:ドミ)
Vol.2 大騒乱!乗っ取られたコクーン
「んー、真さんまだかしら……。」
腕時計を見ながら、真の到着を待つ園子だが、何やら落ち着かないようだ。
「まあ、落ち着きなさいよ、園子。コクーンの体験会までまだ時間があるんだし。」
「そんくらいわかってるんだけど、それでも落ち着いてなんていられないのよー。」
そわそわする園子。
そこへ、
「やあ、お待たせしました。」
と彼女に声をかける者が。
「えっ、あっ、真さん!」
「申し訳ありませんでした、園子さん。道が混雑していて、乗ってたバスが遅れたもので……。」
「いやいや、いーのよ、そんな事ぐらい。ささ、早くコクーンの体験バッジを貰いに行きましょ。」
「あ、あの、園子さん!?」
園子は強引に真と腕を組んで、その場を後にした。
「全く、ホント調子がいいんだから。」
「まあ、ええやん、蘭ちゃん。」
「あ、そう言えば、舞ちゃんと菫ちゃんは?」
「あの二人なら、紅葉ハンと一緒に、ステージ上でやっとる陽介はんと沖野ヨーコのミニジョイント見に行ったで。」
「ハハハハ、いずこも同じか……。」
苦笑いする蘭。
その時、
「あ、そう言えば新一、どこ行ったのかしら……。お父さんもいないし……。」
蘭は会場内を見回していた。
☆☆☆
「ふわ〜〜〜っ、退屈やなあ……。」
パーティー会場で食うだけ食った初音は、メインイベントには興味が無いかのように大あくびをした。
「あらあら、あいも変わらず『花より団子』ですのね、初音さん。」
青いパーティードレスに身を包んだ桐華が、初音に話しかけてきた。
「ほっといてくれや、桐華。それより何か用か?」
「ええ、ちょっと仕事で来れない父の代理として、チーフスタッフの樫村さんに挨拶しようと思ったのですが、姿が見えないので、あなたに心当たりが無いか聞こうと思いましたの。」
「いや、残念やけど、ウチも心当たり無いで。でも、スタッフに聞けば判るかもしれへんなあ。」
初音は、近くを通りかかったスタッフに樫村の所在を聞いた。
「桐華。橿原ハンなら、ここにいないんやったら、このホールの地下室にいる言うてたんやけど、一緒に行ってみるか?」
「ええ。」
桐華は初音と共にホールの地下室へと向かった。
「あら、初音に桐華さん。」
「まあ、あ、あなたは!?」
「おお、晴香やないか。」
初音と桐華は樫村の所へ向かう途中、高千穂晴香警視とばったり出会った。
「なんや、アンタもコクーンの発表会に来たんか?」
「ええ、レオンから招待状を送ってもらって。」
桐華がムカッとした顔をして、次いで余裕の笑みを装い、高笑いしながら晴香に突っ込みを入れた。
「おほほほほ、福岡県警って、よっっぽど、ヒマなんですのね。でももし九州にシャドウドールが現れたら、一体、どうなさるおつもりですの?」
「そんなの別に問題ないわ。だって、高千穂道場の優秀な門下生が対処するもの。」
「……なんてグータラな次期当主候補なんでしょう。」
「あら。シャドウエンパイアとの戦いは、短期決戦じゃなく、長期にわたるものなのよ。常に臨戦態勢では、逆に疲れてしまうわ。リフレッシュ休暇が必要だと思うけど?」
「……ああ言えばこう言いますのね。」
「そうそう、桐華さん、あなた、ついこの間、ご学友達とトロピカルランドに遊びに行ったと聞いたけど。それも、もしかしたら、シャドウドールの襲撃に備えての事だったのね、えらいえらい。」
「……っ!そ、それはっ!」
「常に、シャドウエンパイアとの戦いに備えるなんて、不肖わたしには真似出来ないわね。」
「い、一体誰から、そのような情報を……!」
「あ、うちが話したんや。何や、拙かったか?」
「う゛……!」
「ところで、コクーンの発表会が始まろうというのに、初音と桐華さんは一体どこへ?」
「コクーン開発の樫村ハンに会いに行こ思うてな。」
「そう。じゃあ、わたしは先に行ってるわね。」
「ほな。また後で。」
そう言って初音が桐華を促していこうとしたが、そこへ。
「お待ちなさい!」
桐華が晴香の手をガッシと掴んだ。
「ワタクシ達が樫村さんに会っている間に、上手い事レオン王太子殿下に取り入ろうとしても、そうは参りませんわよ!」
「……別にそんな事、考えてないけど。」
「いいえ、信用なりませんわ!あなたも、ワタクシ達と一緒に来てもらいます!」
「……やれやれ。仕方ないわね。」
「時間があらへん、早よ行くで!」
晴香を加えた一行は、再び樫村の所へと向かった。
「この下に樫村ハンがおるようやな。」
三人が地下室の階段を降りようとした時、血相を変えたスタッフが上がってきたのを見た初音は、スタッフを呼び止めた。
「おい、どうしたんや、そないな顔して。」
「た、大変です、樫村さんが……。」
「!樫村さんがどうしたんですの!?」
「樫村さんが……何者かに刺されて……!」
「「「な!!?」」」
それを聞くや、初音と桐華、晴香は血相を変えて、地下室へと駆け出していった。
「樫村ハン!」
勢いよくドアを開けた初音と晴香は、
「「……!」」
パソコンチェアーに沈み込むように座していた樫村を見て、言葉を失う。
「なっ、こ、これは……!」
桐華も目の前の惨劇に思わず絶句する。
「いっ、一体誰がこんな事を……。」
「それは判らんけど、ともかく状況を確かめへんとなあ。」
と言うや初音と晴香は、調査時に指紋がつくのを防ぐ為、ポケットから手袋を取り出して両手にはめた。
そして、樫村の脈に触れた時、
「ん!?」
と何かに気付く。
「どうしたんですの、初音さん!?」
「……樫村ハン、まだ生きとるで……!」
「えっ!?」
「微かながら、脈が動いとるのを感じたんや。どうやら、運良く急所を外れとったようやな。」
「ですがこのままでは、樫村さんは……。」
「ああ、そや。このままでおったら、間違いなく死んでまうわ。」
「なら、話は早いわね。」
そう言うや晴香は、右掌を樫村の傷口にかざし、
「医を司るスクナビコナよ、かの傷つきし者に再び命の息吹を…………。」
何事か呪文らしき言葉を呟く。
すると、
ほわっっ……。
晴香の掌から光が発せられ、それと同時に樫村の傷口が塞がっていった。
「……取りあえず、傷は塞いだから、これ以上の出血は無いわね。」
「すまんな、晴香。」
「けど、樫村さんどうしましょうか。早い所病院に搬送しませんと……。」
「うーん、そやなあ……。」
困惑する桐華を前に、初音が思った時、
ピロロロロ……。
初音のケータイが鳴り出した。
ピッ!
「はい、こちら服部。」
『あ、初音さんですか。』
「何や、渉か。」
『はい。今米花シティホールから連絡を受けまして、目暮警部達とそちらに向かう所です。で、ふとあなたがそちらに行ってたのを思い出しまして、連絡を入れたんですが。』
「ああ、実はな、ウチは今その現場におんねや。」
『えっ!?今状況はどうなってます!?』
「取りあえずな、樫村さんに応急処置を施して……。」
『応急処置って……、樫村さん、生きてるんですか!!?』
「ああ。けど、危ない状況には変わりが無いんで、救急車を大至急手配してくれや。」
『わっ、判りましたあ!!』
「あ、それと、パトカーに救急車を先導させて、救急車のサイレンを鳴らさんように頼むで。」
『あ、樫村さんが生きてると判ったら、危険な状況になりそうなんですね。やってみます!!』
ピッ!
「取りあえずこれで、こっちの方は片付いたとして……。」
「けど一体誰がこんな事を……。」
桐華は、心配そうに樫村を見ていた。
その時、
「!」
初音は何かに気付いたかのように、周囲を見回す。
「どうしましたの、初音さん?」
「いや……、今誰かが見ていたような気が……。」
「そうなの?」
「んー、それともウチの気のせいやろか……。」
顎に手を添えながら、現場で待つ初音達であった。
☆☆☆
米花シティホールの裏口に、二台の車が到着し、そこから目暮警部達が降りてきた。
「千葉君、全ての出入り口を封鎖だ。」
「了解。待機中の全車へ!」
「お偉方がたくさん来ているようだ。」
「ええ。警視副総監、財界の実力者、代議士も多数。それに、パララケルス王国のレオン王太子も来場しています。」
「現場は取りあえず、服部警視長と高千穂警視が確保しております。」
目暮に報告する白鳥警部と高木警部補。
「福岡県警の高千穂警視が、何故ここに?」
「なんでも、この発表会に招待されたとの事で。」
「何かと、気を使いそうだ。」
目暮警部は表情を引き締めた。
☆☆☆
まだサイン攻めにあっている優作。
そこへスタッフが耳打ちをする。
「えっ、樫村が!?案内してください。」
「はい。」
優作は、スタッフと共にその場を後にする。
直後、
「さあ、お待ちかね。皆さんにはコクーンの会場へと移動してもらいましょう。」
司会者のアナウンスが入る。
☆☆☆
たったったったった……。
米花シティホールの地下道を駆け抜けて現場に到着するコナンと小五郎。
「警部殿!」
ドアを開ける小五郎。
現場にはすでに、目暮警部と白鳥警部が入っていた。
「おお、君も来ていたのか、毛利君。」
「バルコニーで酔いを醒ましていたら、パトカーの音が聞こえましたもので。所で被害者は?」
「コクーンの開発責任者の樫村氏だが、幸いにも刺された所が急所を外れていた上に服部警視長や高千穂警視が早期に応急処置を施したお陰で、運良く致命傷は免れたのだよ。」
「ですが、なおも危険な状態にあるとかで、病院に搬送してもらいました。」
「現場を見た所、樫村氏を指した凶器は持ち去られているようだ。」
「そうでしたか。」
(血をぬぐっている……。よっぽど大切な凶器なのか、残しておくと持ち主が判ってしまう凶器だったのか……。)
現場を検証するコナン。
「それにしても、開発責任者がなぜ、こんな地下室へ?」
との白鳥警部の問いに対し、
「あ、はい……。主任は、人の出入りが頻繁な所は集中できないからと、一人ここへ……。」
応えるスタッフ。
その間にコナンは、
(!『R』と『T』と『J』に血の跡がついてる!)
キーボードの異変に気付く。
その時スタッフが、
「あの、実は不可解な事が一つありまして、ハードディスクのデータが、全て破壊されているんです。」
と報告する。
「データが!?」
「ライバル会社の破壊工作!?」
そう思った小五郎だが、
「遅いんじゃない?だってコクーンはもう完成しちゃってるんだもん。」
と言うコナン。
「こいつ、いつの間に!?」
コナンを掴もうとする小五郎だが、コナンは軽くそれをいなし、
「ねえ、机の上のキーボード、何かのメッセージじゃない?」
注目をそちらに向けさせる。
「「「えっ!?」」」
それを聞いた小五郎達は、キーボードを見る。
「キーに血が!意識を失う間際に押したようです。」
「『R』と『T』と『J』。」
(『R』『T』『J』……『T』『J』『R』……『T』『R』『J』……。)
キーに残されたメッセージを考えるコナン。
(『J』『T』『R』……『J』『T』『R』?100年前のロンドン……?ハッ、まさか!?)
コナンは何かに気付いたようだ。
☆☆☆
「はーっ、取れたバッジはこれだけかあ……。」
歩美は掌にある2つのバッジを見て溜め息をつく。
「仮面ヤイバーのレアカードよりもコクーンで遊びたい子もいるんですねえ……。」
光彦も同様に溜め息をつく。
「けど、誰がコクーンで遊ぶんだ?」
元太が尋ねると、
「私はいいわ。あなた達の内の誰がお行きなさい。」
哀が辞退を申し出た。
これを聞いた光彦、
「灰原さんが行かないのなら、僕も辞退します。コクーンへは歩美ちゃんと元太君が行って下さい。」
と辞退する。
「うっわー、ラッキー!」
素直に大喜びする元太。
そこへ、
「よー、こんばんわ。」
「あら、どうしたの、みんな。」
会場入りした快斗と青子が話しかけてきた。
「あっ、快斗お兄さんに青子お姉さん。」
「俺、コクーンに乗れるんだ!」
「ほーっ、そいつは良かったな。」
「快斗さん達もコクーンに乗るんですか?」
光彦は、快斗や青子が身に着けているバッジを見て訊ねた。
「ああ、そうだけど。」
「あれ?光彦君と哀ちゃん、バッジは?」
「残念ですが……。」
哀の顔を見て、残念そうな顔をする光彦。
「……。」
この様子を見た青子は、
「あ、そうだ!ねえ、快斗。」
「ん、どーした、青子?」
「あのね……。」
と耳打ちをする。
「オメー、ホントーにいいのか?恵子と一緒にチャレンジするのをあんなに楽しみにしてたじゃねーか。」
「いーのいーの。光彦君達に楽しんでもらえるなら。」
「何の話ですか?」
「あのね、光彦君に哀ちゃん。」
「よかったらこれ、オメーらにあげるよ。」
そう言いながら快斗と青子は、バッジを外して哀と光彦に渡した。
「えっ!?ほ、本当にいいんですか!?」
「ああ。やっぱり少年探偵団は4人いねーとさまになんねーからな。」
「あら、ずいぶん太っ腹ね。」
「あ、ありがとうございます!!」
深謝する光彦。
「よかったなあ、光彦!」
「哀ちゃんも一緒だね。」
大喜びの探偵団。
「ほう、なかなかやるではござらんか、お二方。」
「結構気前いいじゃない。」
「微笑ましいですよね。」
様子を見ていた紅葉や恵子、瑛祐も、何気に満悦していた。
「ごめんね、恵子。一緒に行けなくて。」
「いーっていーって。機会はこれからいくらだってあるし。」
「やっぱり子供達が喜ぶ姿を見るのはいいものでござるからな。」
「そーそー。」
「全くだ。」
いい気分の快斗達であった。
その時、
「コクーン体験者の方は、会場に移動して下さい。」
とのアナウンスが入った。
「それじゃあ行ってきます!」
「頑張って来るぜえ!」
「ホントにありがとう、快斗さんに青子さん!」
「それじゃね。」
「おう、頑張って来いよ!」
「恵子もがんばってね!」
「オーケー、任せといてよ。」
「行って来まーす!」
恵子や瑛祐、探偵団達は、快斗達に見送られてその場を後にした。
☆☆☆
「いよいよコクーンの体験会やね、菫ちゃん。」
「うん、そやねえ。」
「一体どんなゲームなのかしら?」
「未だかつて無いくらいに面白いゲームではござらんかな。」
「それはまず間違い無いわね。」
「何かワクワクするなあ。」
和気藹々にメイン会場に現れた蘭達。
そこへ、
「全く、冗談じゃないわ!!!」
何故かお冠の園子が真と共にメイン会場に戻って来た。
「どうしたのよ、そんなに怒って。」
「これが怒らずにいられるモンですか!真さんの分のバッジも取っといてって、あれほど口をすっぱくして言ったのに、手違いで確保できなかったなんていうのよ!!」
「そっ、園子さん落ち着いて……。」
園子をなだめる真。
「う〜〜〜っ、せっかく真さんと一緒に未知の体験を楽しもうとしたのに、それが出来ないんじゃ、こんなの着けてたって、何の意味も無いわ!!」
怒りの園子はバッジを取り外し、、
「あ、そうだ。ねえ、蘭。これアンタにあけるわ。」
蘭にバッジを渡した。
「えっ、そ、園子!?」
「いーからいーから。これで新一君と未知の世界を体験してきなさいよ。ほら、彼もあそこで並んでるでしょ?」
列に並んでいるコナンを指差す園子。
「どーして新一がゲーム参加の列に?」
「まーまー、そんな事はどーでもいーから、早くお行きなさいよ。気になるんでしょ、彼の事。」
「え、ええ……。」
「だったら、これ以上の話は無用やで、蘭ちゃん。」
「そーそー。」
「ほな、ウチと一緒に行こか。」
「うん、ありがとう、園子にみんな!」
蘭は菫につれられて、コクーン体験者の列に加わった。
「これでいいでしょ、真さん。」
「ええ、そうですね。ハハハ……。」
ちょっぴり困惑気味な真であった。
その間にコナンや探偵団達のコクーンへの搭乗は進んでいき、蘭も後ろ目でちらりとコナンを見ながら、菫に続いてコクーンに搭乗した。
「50名、全員搭乗完了。ブレインギア、装着完了。カプセルリッド、クローズ。」
とのアナウンスと同時にコクーンが閉じられていく。
「ホストハードウェアにアクセス。ブロックコード入力。カプラー接続。座標軸微調整、ポイント修正完了。ロックオン。フェードインシステム起動。パワー、セット完了。」
メインコントロールルームから、準備完了を確認したシンドラー社長は、
「ゲーム、スタート。」
のゴーサインを出した。
瞬間、ステージ上のコクーンにスポットライトが照らされ、同時にシステムが機動を始めた。
コクーンに乗り込んだコナンは、その中で、
(あるはずだ、このゲームの中に、事件を解く鍵が……!)
と考えた。
「さあ、始まりましたよー。」
コクーンの稼動にワクワクする園子。
「新たなるゲームの神話を築くニューゲームをまじかで見れるなんて、最高ね!」
舞も身を乗り出して、コクーンを注視する。
そこへ、
「あらあら、皆様方楽しそうですわね。」
紅子と桐華が園子達のそばに現れた。
「あっ、紅子ちゃん、こっちこっち。」
青子は、隣にあいている二つの席へ二人をいざなう。
「どうも、青子さん。」
「あ、そう言えば桐華さん。陽介君は?」
「彼なら、事務所の社長さんや沖野ヨーコさんと共に、スポンサーの方々と控え室でお話してますわ。もうそろそろ来ると思いますが。」
「芸能人も大変やねえ。」
「……しかし……。」
「ん、どうしたの、紅子ちゃん?」
「このコクーン、何となく嫌な感じを受けるんだけど……。」
不安そうにコクーンの筐体を見る紅子。
「やーだ、紅子ちゃんったらあ、またその話?」
「何の事ですか?」
との真の問いに、
「あのね。紅子ちゃん、白馬君がコクーンの体験チケットをあげようとした時に、不吉な影を感じて固辞したの。それで青子達がそれを貰ったんだけど、結局は光彦君と哀ちゃんにあげちゃったのよね。」
と答える青子。
「そうだったのですか。」
「やあねえ。不吉な影だなんて、そんなの気にしすぎよ。」
楽天的な園子。
「だといいのだけど……。」
紅子はちょっぴり不安げにコクーンを見つめた。
「……。」
樫村の事が念頭にあって、その事に頷いていた桐華だったが、初音からその事について釘を刺されていた為、何も答えなかった。
☆☆☆
「何だって!?」
「そのような事が……!」
会場外の廊下で、初音や晴香から橿原が何者かに瀕死の重症を負わされた事を聞いた快斗と探は、一様に驚いた。
「でも一体誰がそんな事を……。」
「何か怨恨でも絡んでたんでしょうか。」
「そこまではウチもわからへんけど、ただ、樫村ハンのキーボードの『R』『T』『J』の部分に血痕が残されとったんが、ちと気にのうてな。」
「『R』『T』『J』?」
「考えるに、何らかのメッセージである事は間違いないでしょうね。」
考えをめぐらす探。
「『R』に『T』に『J』って…………ハッ、それってまさか!?」
「『J』『T』『R』、『Jack The Ripper(ジャック・ザ・リッパー)』の事やろ、初姉。」
と言ったのは、今会場に到着したばかりの平次であった。
「おお、さすがやな、平次。」
「けど服部君。なぜ君がこの事件の事を?」
「実はな、ここに入った時に、ちょうど佐藤警部に呼び止められてな。そんで事件の事知ったんや。」
「なるほどね。」
納得する晴香。
「しかし、ジャック・ザ・リッパーって言ったら……。」
「そう、19世紀末のロンドンに実在した殺人鬼『切り裂きジャック』。5人の女性をナイフで殺害し、ロンドンを恐怖のどん底に陥れたサイコキラーをロンドン警視庁は結局逮捕できず……。」
「連続殺人事件は迷宮入りとなった……。」
「正に謎の殺人犯やな……。」
思考をめぐらす一同。
「ん、待てよ?」
「どしたん、快斗?」
「『J』『T』『R』と言えばさっき、阿笠博士があのコクーンの舞台の一つに19世紀末のロンドンがあるって言ってたけど……。」
「つー事は、もしかしたら、コナンはその樫村ハンのメッセージから、ゲームの中に犯人の手がかりがあると確信して、コクーンに乗り込んだ可能性が高いかもしれへんなあ。」
「工藤の事や。それくらいやっとるやろ。」
「それなら俺達も、コクーンのメインコントロールルームへ行ってみようぜ。」
「そうですね。」
「では行きましょう。」
一同は、その場でコクーンのメインコントロールルームへと向かった。
☆☆☆
「ここがメインコントロールルームや。」
ドアの前に立つ一同。
「では、行きましょうか。」
探がドアを開けようとした時、
「やあ、君達。」
と声をかけた者が。
「あっ、優作センセに阿笠博士。」
「それに毛利のオッサンに目暮警部はんも。」
「おお、これは服部警視長に高千穂警視。それに白馬君や服部君も。」
「君達もここに用かね?」
「ああ、そや。その様子やと、優作センセも同じ事考えとったようやな。」
「まあ、そう言う事かな。」
「では、行きましょう。」
一同は部屋のドアを開けて室内に入った。
「ん?」
室内のシンドラー社長が、入室してきた一同に気付く。
それに対し優作が、
「シンドラー社長、こちら警視庁の服部警視長と目暮警部です。」
と紹介する。
「警視庁?警察が何の用だね?」
「一時ゲームの中止をお願いします。」
要請する目暮警部。
それに対し、
「中止?バカバカしい。」
一蹴するシンドラー。
その時、
「ん?」
メインコントロールルームの照明が数秒点滅した。
この直後、スタッフが、
「シンドラー社長、システムに異常です。制御が出来ません!」
顔色を変えて報告する。
「……!」
良からぬ予感を感じ取る優作。
「ちょっと失礼。」
阿笠博士がデスクに座り、異変を察知すべくキーボードを叩く。
「あー、何だあ?蘭、お前まで何やってんだあ!」
ディスプレイに映し出された蘭を見て一喝する小五郎。
「あいつ、やっぱり行ってたか。」
快斗も、ディスプレイのコナンを見て一言。
その時、
『我が名は、ノアズ・アーク。』
の声が、メインコントロールルームや会場内に響き渡った。
「なっ……!?」
これを聞き、驚愕するシンドラー社長。
「な、何や……!?」
「今のは……!?」
周囲を見回す初音達。
「な、何、今の声……?」
「ノアズ・アークって……!?」
メイン会場で着席していた園子や和葉達も周囲を見回す。
『我が名はノアズ・アーク。ゲームはもう止められない。体感シミュレーションゲーム<コクーン>は、僕が占拠した。』
「え!?」
これを聞いた園子は、思わず立ち上がった。
会場内はざわめく。
そもそも、ノアズ・アークの事を誰も知らず、いきなりの占拠発言に、認識が追い付かなかったのだ。
「何?どういう事なの?そもそも、アンタ、誰よ!?」
園子が矢継ぎ早に質問をする。
が、それに対する応答はなかった。
その頃、コントロールルームでも、メイン会場と同じ声が流れていた。
しかし、一同はやはり意味が分からず、ざわめくだけだった。
「な、何です、ノアズ・アークって!?」
との目暮警部の問いに対し、
「確か、一年で五年分の成長をする人工頭脳ですね?」
シンドラーに尋ねる優作。
「そうだ。二年前、私が息子同然に可愛がっていたヒロキが完成させた。」
答えるシンドラー。
(ヒロキ!?)
「「「「!」」」」
何か思い当たる節を感じた初音と、彼女の反応に気付く快斗・平次・探、そして晴香。
「だから今は、ヒロキと同じ年齢だ。」
シンドラー社長は、顔に汗を浮かべて言った。
一同は、それだけの説明では何も意味が分からない。
しかし優作は、何らかの情報を得ているらしく、その言葉に頷くと、デスクから、
「ノアズ・アーク。子供達のゲームを占拠してどうするつもりだ?」
と問いただした。
『我が目的は、日本という国のリセットだ。』
「何……!?」
更に驚愕の表情を浮かべるシンドラー。
☆☆☆
その頃……。
「ほーっ、ここがコクーンかあ……。」
「どんなのかなあ。」
コクーンの世界に到着したゲームプレイヤー達が、一箇所に集まっていた。
その中にいたコナンは、その周囲を見回し、
(あれは……レオン王太子も来てたのか。)
と賓客の姿を認める。
その時、
「コナン君。」
「えっ、ら、蘭……姉ちゃん!どうしてここに!?」
コナンは、蘭に呼びかけられて驚く。
これに対し、
「新い……コナン君が心配だからでしょ!」
と蘭は言った。
更に、
「コナンくーん!」
「やあー!」
少年探偵団もコナン達に合流する。
「お、お前達まで!」
「いやあ、ここにたどり着くまで苦労したぜ。」
「何だかんだ言っても、コナン君もゲームがしたかったんですね。」
「ま、まあな。」
更にそこへ、
「はーい。」
「こんにちわ、コナン君。」
「やっほー。」
「す、菫ちゃんに恵子さんに瑛祐まで……、全く、なんつー面子がそろってんだよ……。」
コナンが呆れたその時、
『コクーン初体験のみんな、ゲームの始まりだよ。』
のアナウンスと同時に、五つの石の門が出現した。
『僕の名前はノアズ・アーク。宜しくね。』
「よーろーしーくー。(×多数)」
『今から五つのステージのデモ映像を流すから、自分が遊びたい世界を選んで欲しい。でも、一つだけ注意して欲しい。これは単純なテレビゲームじゃない。』
この説明の後、参加者は驚愕する事になる。
『君達の、命がかかったゲームなんだから。』
(俺達の、命!?)
説明を聞いて訝しがるコナン。
☆☆☆
「何ですって!?」
「ええっ!?」
ノアズ・アークの説明を聞いて、驚愕する園子と青子。
『全員がゲームオーバーになっちゃうと、現実の世界には戻れなくなっちゃうんだ。だから真剣にゲームをしなきゃね。たった一人でもゴールにたどり着けば、君たちの勝ちだ。それまでの間にゲームオーバーになっちゃった子もみんな目覚めて、元の世界に帰る事が出来る。これが僕の決めたルール。理解してくれた?』
「ちょ、ちょい待ちいや!」
「な、何それ!?」
「滅茶苦茶も甚だしいでござる!」
「で、殿下!?」
和葉や舞、紅葉に桐華も思わず立ち上がる。
「やはり不吉な影が……。」
不安が的中した事に、顔をゆがめる紅子であった。
「で、殿下!?」
「お、王太子!?」
パララケルス王国のレオンの側近達もこの異常事態に蒼ざめながら身を乗り出す。
「どういう事?」
「こ、これって一体……!?」
不安になる蘭と瑛祐。
蘭だけでなく、コクーン世界内の子供達も急に不安になる。
『全員がゲームオーバーになった時は、特殊な電磁波を流し、君達の頭の中を破壊しちゃうからね。つまり、日本のリセットを賭けた勝負と言う訳さ。』
『……!』
この説明を聞いた時、園子と青子達は、一様に絶句した。
会場内の者達も、これは元々のゲームの一環などではなく、尋常ではない事態が起きている事に気付いて、ざわめきが大きくなる。
コントロールルームは、会場内とは別の緊迫した空気に包まれていた。
「日本のリセットとは、どういう意味だね!?」
問う優作。
それに対し、
『現実の世界の声は、ここにいるみんなには聞こえないけど、今大人から質問があったから答えるね。』
コクーン世界の子供達にその答えを教える。
『君達を見ていると、穢れた政治家の子供は穢れた政治家にしかならないし、金儲けしか考えない医者の子は、やっぱりそう言う医者にしかならない。日本を良くするには、そういうつながりを一度チャラにしなくちゃ。』
この説明に対し、
「いー加減にしろお!人間の命を弄ぶ権利が、お前にあるのかあ!?」
激昂する小五郎。
これに対し、
『無いよねえ。ヒロキ君の命を弄ぶ権利が、大人に無かったように。』
怒りを込めて反論するノアズ・アーク。
「む……。」
これを聞き、唸るシンドラー会長。
『さて、子供達がお待ちかねだから、そろそろゲームを始めよう。』
ステージ説明に入るノアズ・アーク。
『まず最初のステージ、<ヴァイキング>。君達はヴァイキングになって七つの海に繰り出し、強い意志と勇気で、数々の冒険に挑戦するんだ。二番目は、<パリ・ダカールラリー>。世界の名ドライバーに混じって、過酷なレースで優勝を目指してもらう。三番目は、<コロセウム>。優れた武器・防具を手に入れて、ローマ帝国で君達の腕試し。手ごわいグラディエーター達を倒していくんだ。四番目は、<ソロモンの秘宝>。君達には、トレジャーハンターになってもらう。世界各地に隠された秘宝を探し出すんだ。そして五番目は、<オールドタイム・ロンドン>。ここでは、ホラーっぽいサスペンスを楽しんでもらう。1888年のロンドン、現実には迷宮入りとなった連続殺人事件の犯人、ジャック・ザ・リッパーを君達の手で捕まえるんだ。』
ステージ説明を終えたノアズ・アークは、ディスプレイを消し去った。
(やっぱり、ここに何かありそうだ。樫村さんを瀕死の重症にした犯人の手がかりが……。)
説明を聞き終えたコナンは、考えをめぐらせる。
同じく説明を聞き終えた子供達は、各々各ステージに足を運んでいった。
が、皆の表情は、一様に不安が色濃く出ていた。
「えーっ!?」
「な、何やて、そないな事が!?」
「うっそー!?」
「何でー!?」
「まさか、そんな事が……!」
コナンから樫村が何者かに刺されて瀕死の重症を追った話を聞いて驚く蘭・菫・恵子・瑛祐、そしてレオン。
「ああ、俺はその鍵がこのコクーンの中にあると睨んでここに来たんだ。」
「あのノアズ・アークがこの様な所業にでたのも、それに何か関係があるからかしら?」
「まず間違いねーな。」
哀の問いに答えるコナン。
「それで俺はオールドタイム・ロンドンのステージに探りを入れるつもりなんだが、恵子さんや菫ちゃん、それと瑛祐や王太子も俺達と一緒に行くか?」
「いや、全員一緒に行くより、バラけた方がええんやあらへんかな?ウチはパリ・ダカールラリーのステージでその手がかりを探して見るわ。」
「なるほど、一理ありますね。私はコロセウムを調べてみましょう。」
「では、僕はヴァイキングのステージに。」
「私はソロモンの秘宝のステージに行ってみる。」
「でも菫ちゃんや王太子はともかく、瑛祐や恵子さんが一人で行くのは何か危険な感じがするんだ。」
「なっ、し、失礼な!僕をなめてもらってはこまりますよ!」
「そうよ!私だって仮にもC-Kジェネレーションズの一員なんだから!!」
「でもなあ……。」
「大丈夫だって。私こう見えても、ゲームに自信あるんだから。それじゃねー。」
「また会いましょう!」
と言うや、恵子はソロモンの秘宝のステージへ、瑛祐はヴァイキングのステージへと駆け出していった。
「あっ、恵子ちゃん、瑛祐君!!」
「つったく、しょうがねーなあー。」
頭をかいて呆れるコナン。
「じゃあ、ウチも行って来るで。」
「私も行きます。」
「気をつけてね、菫さん、殿下。」
「大丈夫やて、哀ちゃん。もしもの時は神鳴流で何とか切り抜けたるわ。それじゃ!」
「ご武運を!」
続いて菫もパリ・ダカールラリーのステージへ、レオンもコロセウムのステージへと駆け出していった。
「じゃあ、俺達も行こうか。」
「うん。」
「ええ。」
オールドタイム・ロンドンのステージに向かおうとするコナンと蘭・少年探偵団。
その入り口には、秀樹達四人の悪ガキがいた。
「ちっ、お前等も一緒かよ。」
「足手まといにならないでよね。」
挑発する秀樹と市川。
「それはこっちのセリフだってゆーの!」
反発する元太。
これを見て蘭は、
「こらこら、喧嘩しない。」
と仲裁する。
「各ステージには、お助けキャラがいるから、頼りにすると良いよ。では、ゲームスタート!」
ノアズ・アークの号令の元、各プレイヤー達は、一斉にステージ内へと入って行く。
「さあ、行こう!」
コナン達も、ステージに向かって行った。
秀樹達も後に続く。
コクーンの筐体の解析を進めている阿笠博士。
「どうです、博士?」
「確かにコクーンには、膨大なエネルギーが蓄積されておる。50人の脳を破壊するには十分の量のな。」
優作達に説明する博士。
「つきあっておれん!息子はつれて帰る!!」
「私もそうさせてもらう!」
「殿下を助け出さなければ!!」
怒った父兄や、レオン王太子の身を案じるシークレットサービスが、コクーンの筐体があるステージへと向かう。
「お客様……。」
「うるさい!」
係員の制止を振り切る父兄やシークレットサービス。
これを見た阿笠博士が、
「危ない、止めるんだ!」
スタッフに父兄達を制止するよう呼びかける。
筐体に手をかける父兄やシークレットサービス。
その時、
バチバチハヂバチッッ!!
『うわああああああっっっ!!』
筐体から大量の静電気が発せられ、父兄やシークレットサービスが倒れこんだ。
「な、何あれ!?」
その光景を見た園子達の顔が蒼ざめる。
他の父兄達も一斉にざわめく。
『ゲームの邪魔は許さない!今は軽く痺れさせただけだけど、次は容赦しないからね。』
警告するノアズ・アーク。
「こいつはマジだぜ……。」
「全くやな……。」
ノアズ・アークの本気ぶりに息を呑む快斗と平次達。
「くそお、何て奴だ!」
怒る小五郎。
「しかしシンドラー社長。ヒロキ君が作り上げた人工頭脳が、どうしてこんな暴走を始めたんです?」
と問う目暮警部。
これに対し、
「いや、そ、それは……。」
言葉を濁すシンドラー社長。
それに対し、
「私から話しましょう。」
優作が代わりに説明する。
「そもそもヒロキ君が父親と別れ、お母さんがアメリカに渡ったのは、日本の学校教育の壁があったからです。子供の個性を摘み取ってしまう、膠硬直した教育現場は、ヒロキ君をパソコンおたくの変わった子供としか見なかったそうです。教育現場だけではなく、日本という国は個性というものを認めようとしない。ヒロキ君が人工頭脳を開発しようと思い立ったのは、自分の苦い体験が根底にあったんです。つまり、日本のリセット、日本再生の方法を見つける前に自殺してしまったヒロキ君に代わって、逃亡しながら成長を続けた人工頭脳ノアズ・アークが具体案を見つけたのでしょう。日本の二世三世が一同に会するこのゲームの発表会に。親が敷いたレールを走ればいいという社会そのものを壊せば、日本は変わると。」
「「「「「……。」」」」」
優作の説明に息を呑む快斗達。
「工藤先生は、どうしてそんな事まで知ってるんです!?」
「実はこの一年、私と樫村は、探偵と依頼人という関係で付き合ってきました。」
「た、探偵?」
「何を依頼されたんすか?」
「ヒロキ君の自殺の再調査です。」
これを聞いたシンドラーは、
「ヒロキは自殺ではなく、他殺だったというのかね?」
と優作に問う。
「いいえ。あの状況では、自殺でしょう。何がヒロキ君を追い詰めたのか、調べて欲しいと樫村に頼まれたのです。」
「樫村さんとヒロキ君の関係は?」
「樫村は、ヒロキ君の父親です。そうですね。」
とシンドラーに問う優作。
それに対しシンドラーは、横を向きながら頷いた。
「幼い頃に離れ離れになったヒロキ君を、あんな形で死なせてしまった事、柏村は深い自責の念を抱いていました。」
それを聞いて微かに震えるシンドラー。
優作は彼の様子をしっかりとキャッチしていた。
いや、優作だけでなく、初音や快斗、平次と探もきっちりと見ていた。
その時、
「コナン君達がホワイトチャペル地区に入るぞ。」
阿笠博士が近況を知らせる。
これを聞き、デスクに集まる優作達。
同時に初音や快斗達は、示し合わせたようにメインコントロールルームを後にした。
☆☆☆
「ああ、蘭、新一君……。」
「あの子達、一体どうなっちゃうのかな……。」
「……。」
「どうしましょう……。コクーンの発表会そのものを、何としてでも止めるべきでしたわ……!」
「そ、それはさすがに……無理だったでござろう。」
コクーンの今の状況を見て、とても気が気でない園子と青子。
無言ながら沈痛な表情で、園子の肩を抱く真。
この事態を薄々予測していながら、何も出来なかった事に唇を噛む紅子。
紅子に、慰めとも何ともつかない声をかける紅葉。
「ででで、殿下!ああどうしましょうどうしましょう、いっそワタクシも今からご一緒に……!」
思わずコクーンに駆け寄ろうとする桐華を、武琉が必死で留めていた。
「姉さん、コクーンに近寄っても、あの人達みたいに、静電気の餌食にされるのがオチです!落ち着いて下さい!」
「武琉さん、離しなさい!あなたは他人事だからそんな事を……!!」
「ぼ、僕だって、他人事なんかじゃありません!あそこには僕にとっても大切な人達が、沢山いるんですから!」
「ならいっその事、百鬼夜行桐華組でコクーンを全て破壊して……!」
「わあああ!止めて下さい!そんな事をしたら、中にいる人達もただでは済みませんよ!」
完全に冷静さを欠いて、札を出そうとしている桐華を、武琉が何とか押しとどめる事が出来たのは、奇跡に近かった。
「アタシ等、ただ見てるしかでけへんのんか……。」
「陰陽道の力も、こんなトコじゃ何の役にも……。」
和葉や舞も、ただ手を拱いて見ているだけの今の状況に苛立ちを隠せずにいた。
その時、
(聞こえるか、和葉達。)
(ハッ、この声は初ちゃん!?)
初音からのマジカルテレパシーを感じ取る和葉。
(お前等も見とったやろ、今の有様を。)
(ええ。)
(何とかならないの、初音さん!?)
との園子の問いに初音は、
(それを今から話し合うから、みんなパーティー会場に集まってくれ。)
と呼びかける。
(えっ、それじゃ……。)
(そや、C-Kジェネレーションズとアルファトゥオメガ、全員集合や!!!)
to be countinued…….
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