C-K Generations Alpha
to Ωmega
特別版 ベイカー街(ストリート)の亡霊(スペクター)
By東海帝皇(製作協力:ドミ)
Vol.3 乱入!光と魔法のイレギュラーゲスト
「一体何なの、あの『ノアズ・アーク』って奴は!」
「まあまあ、少しは落ち着きなさいよ、園子。」
エキサイトしている園子を宥める舞。
「これが落ち着いていられるもんですか!そうこうしている間に、蘭達が危険な目に遭ってるのかもしれないと思うと、とてもじっとしてられないわ!」
一向に収まる気配が無い園子。
彼等C-Kジェネレーションズ(快斗・青子・平次・和葉・真・園子・探・紅子)と、アルファトゥオメガ(初音・陽介・舞・桐華・紅葉・武琉・晴香)のメンバーは、米花シティホール内の控え室の一つで、初音や快斗達から、今回の事件について色々と知らされていた。
「ところで初音さん、先程ノアズ・アークが出現した時に、樫村さんの息子さんのヒロキ君の名前に反応してましたが、何かご存知なのですか?」
尋ねる探。
「ああ。ご存知も何も……。」
初音は、自分とヒロキとの関わりを話した。
「なるほど、そんな事が……。」
「事が事だけに、そう簡単に他の人に話せる訳がないわよね。」
その事で話し合う一同。
「それにしてもノアズ・アークは、どうして『日本のリセット』なんて事をこの会場で言い出したんだ?」
「それが判れば、オレ等もこんなに苦労はせんわい。」
「話によれば、そのノアズ・アークは、コクーンのチーフスタッフの樫村さんの息子のヒロキ君が作ったそうですが、それと何か関係があるのでは?」
「真の言う通りかもしれないな。初音さんはどう思う?」
「それは大いにあるかも知れへん。」
陽介の問いに答える初音。
「そう言えば、先程シンドラー社長の所へ行ったのですが、ノアズ・アークが出現してからの社長は、やけに落ち着かない様子でしたね。」
「そうだったな。」
探に相槌を打つ快斗。
「つー事は、社長も今回の件に、何らかの関わりがある事は、まず間違いないやろ。」
「なら思い切って、社長締め上げたらええやん。」
「ちょい待て、和葉。証拠も無いのに、そないな過激な事ができるかいな。」
「じゃあ、どうすればいいのよ。」
「うーん……。」
悩む一同。
その時、
「あ、そう言えば……。」
何かに気付いたような顔をする真。
「どうしたの?」
「ふと思ったのですが、そのノアズ・アークって、今どこにいるんですか?」
「あ……。」
「そう言われてみれば……。」
得心する一同。
「そうよ!そのノアズ・アークをじかに破壊すれば、蘭達も助かるかもしれないわ!」
「けどノアズ・アークって確か、通信回線を移動しながら成長するAIでござるよな。」
「という事は、今もどこかを移動しているのでは?」
との紅子の疑問に対し、
「いや、それは無いと思うぜ。」
と答える快斗。
「と言うと?」
「コクーンのあの巨大なシステムを乗っ取るには、移動をせずにどこかでじっくりと腰をすえてやらないと、如何にAIと言えどもまず不可能なはずだ。」
「そやな。それに見たところ、あのノアズ・アークはシステム全体を侵食しているようやから、この会場の近くにおる可能性が非常に高いやろな。」
「となれば、膨大なプログラムを置く事が出来る場所が一番怪しいのですが。」
「うーむ……、膨大なプログラムを置く場所か……。」
そう初音が考えた時、
「ハッ、もしや!」
彼女は何かに気付いた。
「どうしたん、初ちゃん!?」
「何か心当たりでも!?」
「この会場に最も近くて、膨大なプログラムが置ける場所言うたら…………あそこしかあらへん!」
「!それってもしかして……。」
「そう、『樫村ルーム』や。」
「なるほど!あそこに設置されてます大型コンピュータなら、ノアズ・アークが身を置くには十分ですわね。」
現場を見た桐華が言う。
「それなら話は早いわ!早速そこへ行ってノアズ・アークを……。」
駆け出そうとする園子だが、
「ちょい待ちいや。」
初音に止められる。
「何で止めるのよ!!早くしないと、蘭や新一君達が……。」
「そらわかっとるけどな、まずはそこ行くメンバーを決めんと。」
「そうね。あの部屋そんなに広くもないから、ここにいる全員がいっても窮屈になるだけだし。」
補足する晴香。
「私は行くわよ!蘭にコクーンのバッジを押し付けた責任をどうしてもとらなきゃ!!」
「青子も行く!恵子や光彦君達を危険な目に遭わせた責任があるもの!」
「それなら俺も同罪だ。青子一人に責任取らせる訳にはいかねえ。」
快斗も名乗り出る。
更に、
「私も行きましょう、園子さん。」
真も名乗り出た。
「で、でも……。」
「園子さんが責任を取ろうと頑張っている時に、ただ傍観するなんて事、私には出来ません。」
「真さん……。」
「よっしゃ!これで決まりやな。『樫村ルーム』には、ウチと園子、快斗に青子、真とあと桐華が来てくれ。」
「「「「「了解!」」」」」
「オレ等はどーすんや、初姉?」
との平次の問いに対し、
「お前と白馬っちは、指示があるまで、も一度メインコントロールルームでシンドラー社長の様子を見張っといてくれ。」
指示を出す初音。
「よっしゃ、任しとき!」
「わかりました。」
「ほんで、後の連中はメイン会場でコクーンの様子を見といてくれや。」
「うん、解ったで!」
「では、全員出動や!」
『おう!』
威勢を上げた一同は、一斉に控え室を飛び出して行った。
☆☆☆
その頃、メインコントロールルームでは……。
「博士、彼等と交信できますか?」
「何とかやってみよう。」
優作の依頼を受けて、キー操作をする博士。
「工藤先生がゲームの監修をしたのなら、どうすれば攻略できるか、ご存知なんでしょ?」
「ええ。交信さえ出来れば、彼等に指示を与えて助けてやることは出来ますが……。」
「なら鬼に金棒だ。ステージは楽勝だぜ!」
優作の話を聞いて、楽天的になる小五郎。
だが、
(しかし、ノアズ・アークが先の先まで読んでいるとすると……。)
と憂慮した優作は、
「博士、後を頼みます。私は現場へ。」
「わかった。」
阿笠博士に後を託し、部屋を後にした。
(それにしても、樫村が刺された事件と、ノアズ・アークの件は、何らかの関わりがあるのはまず間違いないが……。)
と考えをめぐらせながら、現場へと向かって行く優作。
その時、
「あ、工藤先生。」
向かいから走って来た探と平次に呼びかけられる。
「おお、白馬君に服部君。そんなに急いでどうしたんだね?」
「これからまたメインコントロールルームに行く所や。」
「初音さんから、シンドラー社長の様子を見るよう言われたんです。」
「そうか。で、初音君は?」
「園子ねーちゃんや黒羽達と一緒に、地下の『樫村ルーム』に向こうたで。」
「『樫村ルーム』?」
「初音さんによると、そこにノアズ・アークが潜んでいる可能性があるとか……。」
「!」
それを聞いた優作は、駆け出し始める。
「あっ、ちょっとオッサン!」
「どこへ行くんですか、工藤先生!?」
「私もそこへ行く!君達も早くコントロールルームへ!」
そう言うや優作は、地下室へと走り去って行った。
☆☆☆
「ハア……退屈だなあ……。」
事件現場となった『樫村ルーム』の前を一人番を張る高木警部補。
「全く白鳥警部も酷いよなあ……。いくらあっちの事件が大変だからって、俺一人をこんな寒い所の現場の番をさせるなんて……。ハア……。」
さも恨めしそうに溜め息をつく高木警部補。
その時、
ドドドドドドド……。
「ん?」
高木警部補は、廊下の向こうから多数の足音が聞こえてくるのを察知した。
その直後、
「おーい、渉ーっ!!」
「おわああっっっ!!!?」
高木警部補は、血相を変えながらこちらに走ってくる初音や快斗たちを見てびっくりする。
「おい、渉。あの後この部屋に誰か入ってけーへんかったか!?」
「い、いえ、誰もこの部屋には……。」
「おお、そっか。それなら……アデアット・ピースメイカー!」
初音は、魔法銃ピースメーカーを呼び出し、それを構えた。
それに続き、
「フォースウェポンセットアップ、メガスマッシャー!」
「フォースウェポンセットアップ、マッハキッカー!」
「フォースウェポンセットアップ、キッドジュニア!!」
「フォースウェポンセットアップ、ブループリンセス!」
「アデアット・カイザーリンビュート!」
一斉にフォースウェポンやマジカルウェポンを装備していく一同。
この尋常ではない様子に高木警部補も、
「な、なんだあ……?」
驚く事しきりであった。
「よっしゃ、行くでみんな!」
「「「「「了解!」」」」」
一斉に『樫村ルーム』へと踏み込んで行った。
「どこなの、ノアズ・アーク!?」
怒りに満ちた目で、ホーリーラケットを身構えながら、ノアズ・アークに呼びかける園子。
「ここにいるのはわかってんのよ!」
青子は、アルティマモップをふりかざしながら、部屋中を見回した。
その時、
『よくここがわかったね、君たち。』
正面のディスプレイに、ノアズ・アークを表すリングの絵が映し出された。
「やはりここだったんかいな。」
ディスプレイにピースメーカーを向ける初音。
「なるほど、これだけのでかいコンピュータがあれば、その膨大なプログラムを置くには十分だな。」
ムーンマグナムを構えながら、周囲の大型コンピュータを見回す快斗。
『しかし、そんな見るからに怪しげで物騒なものを持ってるなんて、一体君達は何者なんだい?』
と問いかけるノアズ・アーク。
『俺達は光の勇者隊<C-Kジェネレーションズ>だ。』
『同じく、魔法の勇者隊<アルファトゥオメガ>や。』
名乗る快斗と初音。
『魔法……?まさかそのようなものが……。』
「悪いけど、真実や。」
「ねえ、あのコクーンを止めて、子供達を解放して!」
青子がノアズ・アークに請うが、
『残念だが、それは出来ない。ゲームはもう止められないんだ。』
と断られる。
「何ですって!?」
「それなら、力ずくで止めてやるわ!!」
園子は、大型コンピュータに向けて、ホーリーラケットを振り上げた。
それに続くように、一同はコンピュータに武器を向ける。
『待ちたまえ!もしこの僕を破壊したら、その瞬間にコクーンの中の子供達全員の脳を破壊するよ。それでもいいのかい?』
牽制するノアズ・アーク。
「な、何やてえ!?」
「ひきょうな!」
「そんなのズルイ!!」
怒る一同。
『さあ、その物騒な武器をしまって、今すぐここから出て行ってくれ。』
「「くっ……!」」
ノアズ・アークに対して、怒りの目を向ける園子と青子。
その時、
「ちょい待ちい。アンタに一つ聞かせたい話があるんやけどな。」
ノアズ・アークに呼びかける初音。
『話?』
「ああ、そや。」
『でもその前に、その物騒な物をしまってくれないかな。そんな物を持ってて、話し合いも何も無いだろ?』
注文をつけるノアズ・アーク。
「なるほど、確かにアンタの言う事も一理あるやな。アベアット・ピースメーカー!」
の呪文と共に、ピースメーカーをしまう初音。
「さあ、みんなもウェポンをしまいや。」
「で、でも……。」
「あっちがせっかく話を聞こうとしとるんやから、こっちもそれなりの態度をしめさんとなあ。」
「……わかったぜ、初音さん。ウェポン・アウト!」
快斗は、手に持っていたムーンマグナムをしまう。
それにつづいて、他のメンバーもウェポンの装備を外す。
「さあ、これでええやろ。」
両手を挙げる初音。
『ああ。で、その話とは?』
「その前にちと聞くけど、ウチ等とアンタの会話、外部に漏れてへんやろな?」
『それは心配要らないよ。僕と君達との会話は、この部屋以外には一切流れてないから。』
「そっか、そら都合ええわ。」
『さて、話というのは?』
「アンタの造物主、サワダ・ヒロキ君の事や。」
『ヒロキ君?』
「そや。アンタは2年前、ヒロキ君がボストンにて投身自殺したと思っとるやろ?」
『ああ。』
「でもな、彼は今もちゃんと生きとるで。」
『え!?』
初音の言葉に微かながら動揺の気配を見せるノアズ・アーク。
『バカな!?何を根拠にそのような虚言を!』
「虚言やあらへん。彼を助けた当の本人が言うとるんや。」
『本人!?』
「ああ、そや。」
『なら説明してもらおうか。ヒロキ君を助けた経緯とやらを。』
「おお、ええで。あれは二年前の事……。」
☆☆☆
『……。』
「どや、これでわかったやろ?」
「さあ、これでアンタが復讐する根拠が無くなったんだから、早く蘭達を解放しなさいよ!」
迫る園子。
だが。
『フッ、何を言うかと思ったら、よくもそのような嘘八百を。』
「なっ!?」
「何ですって!?」
『その程度のウソでこの僕を説得しようとしたのなら、それはとんだ茶番だね。』
「何を言いますの、あなた!」
怒る桐華。
「この初音さんは、性格は超ズボラでいい加減極まりないですけど、こういった緊迫した場面で大嘘をつくような方ではございませんわ!」
『それはどうだか。人間は僕のようなプログラムと違って、平気でうそをつくような存在だからね。』
「こいつ、完全に人間不信に陥ってるな……。」
『さあ、これ以上の話し合いはもはや不要だ!今すぐここから出て行きたまえ!さもなくば、プレイヤー一人の脳を今すぐ破壊するよ。』
ノアズ・アークがそのプレイヤーを無作為に選んだ。
「な゛っ!!?ら、蘭!?」
「そ、そんな!?」
ディスプレイに映し出された蘭を見て驚愕する園子達。
『さあ、わかったら今すぐ出て行きたまえ!』
「ムッカー!もう許せないわ!!ホーリーラケット、セットアップ!!!」
完全に怒り狂った園子は、ホーリーラケットを再装備し、フォトンガットを展開させた。
「お、落ち着いて下さい、園子さん!!」
「は、離して、真さん!!」
エキサイトする園子を必死に抑える真。
「テメエ、人間を嘘つき呼ばわりしといて、今テメーがやってる事は人間と何ら変わんねーじゃねーか!」
「まるで駄々をこねとるじゃりん子そのまんまやな。」
痛烈に非難する快斗と初音。
これを聞いたノアズ・アークは、
『それなら、今すぐ子供達全員の脳を破壊してやる!!』
と激昂する。
その時、
「待ちたまえ、君達!」
一喝して静止する者が。
「お、おじ様……。」
「優作センセ……。」
室内に入って来た優作に驚く一同。
『あなたは確か、さっきの……。』
優作を見るなり、怒気を静めるノアズ・アーク。
「そう。私は樫村の同級生の工藤優作だ。」
自己紹介しつつ、モニターをじっと見据える優作。
「今しがた、君に対して、彼等が大変失礼な暴言を繰り広げた事を私が代わってお詫びしよう。」
頭を下げる優作。
「おじ様……。」
「だが、君は知らないかも知れないが、ここにいる彼等は、今までに数多くの戦場を潜り抜けてきた者達で、少なくとも私は、彼等が未来を担うに相応しいと思っている。」
『ほう、あなたがそこまで言い切るのなら、それを証明してもらおうか。』
「いいだろう。」
答える優作。
「さあ、君達。ひとまずこの場を離れよう。」
彼は、快斗達に部屋から出るよう促した。
「でも……。」
「ここは大人しく、私の言う通りにしてもらえないかな?」
「……判りました。」
元気がなさそうに樫村ルームをでる園子。
「園子さん……。」
「さあ、行こうぜ、青子。」
「うん……。」
「……。」
真や快斗達も、園子に続いて部屋を出て行く。
「さあ、初音君も。」
「ああ、判ったで。」
初音は、ノアズ・アークを一瞥しながら、優作と共に部屋を出て行った。
『……。』
園子達が全員部屋から出て行ったのを確認したノアズ・アークは、まるで寂しいかのように、沈黙していた。
☆☆☆
「おじ様!何故あの時私達を止めたんですか!?」
「そっ、園子さん、落ち着いて……。」
今にも優作に食って掛からん勢いの園子を止める真。
「園子。あそこで優作センセが止めへんかったら、蘭蘭は確実に殺されてたんやで!」
いつになく、真面目な顔で厳しく言う初音。
「でも、蘭はパンドラ勇者だけが持つ絶対防御パンドラフォースディフェンスがあるから、無敵でしょ?」
「アホ。現実世界ではともかく、ゲーム世界でパンドラフォースが有効なんか否か、分からへんのやで!?」
「ええっ!!?そ、そんな……!」
園子にも、先程の自分が軽はずみだった事が解ったのか、真っ青になった。
「ちゅうこっちゃ。ここは、慎重に行く必要があんのや。ところで優作センセ。さっきノアズ・アークにウチ等が未来を担うに相応しいかどうかを証明させる言うてたけど、何か方法でもあるんか?」
との初音の問いに対し、
「ああ。」
何の迷いも無く即答する優作。
「それってどんな?」
「まあ、来ればわかるさ。さあ、こっちに。」
優作は、初音達に後に続くよう促しながら、歩き出した。
それを見て、快斗達も優作の後をついて行った。
☆☆☆
「さあ、着いたよ、君達。」
「あれっ、ここって小ホールじゃないですか。」
「この中に解決の糸口でも?」
「ああ、そうさ。この中に君達の助けになるものがある。まずは見てのお楽しみだよ。」
優作は、小ホールのドアを開けて、先に入室した。
それに続いて、初音や快斗達が小ホールに入っていく。
直後、
「なっ、こ、これは……!?」
「コ、コクーン……!?」
小ホール内に整然と並ぶ10基のコクーンをみて、驚く一同。
「優作おじ様、これは一体……?」
「このコクーンは、本番のテスト用に別に設置した物で、筐体の構造も本会場の物と全く同じなのだよ。」
「……なるほど、これを使って俺達もコクーンのゲーム世界に乗り込むって訳か。」
「これなら蘭達を助け出す事も出来るかも知れないわね。」
と言いながら筐体に触れる快斗と園子。
「よっしゃ!これなら行けそうや!!」
コクーンの筐体をじっくりと観察した初音は、自信ありげにガッツポーズをとる。
「ウチはこれとゲーム世界を繋げる作業をするから、園子と青子と桐華は、メンバーを全員ここに集めて来てくれや。」
「OK!」
「うん!」
「わかりましたわ!」
「快斗と真は、配線の手伝いをしてくれ。」
「いいぜ!」
「わかりました!!」
初音の支持の元、快斗達はそれぞれの作業に取り掛かった。
☆☆☆
その頃、コナン達は……。
「つったく……、犯人を捜すったって、どこを探しゃいいんだよ?」
ぼやく秀樹。
「朝になるまで、待つしかありませんね。」
提言する光彦。
その時、
「う……寒い……。」
歩美が身体を振るわせる。
これを見た元太が、
「おい、大丈夫か?」
自分の上着を歩美に着せる。
「ありがとう、元太君。」
喜ぶ歩美。
同じく、
「灰原さん、これをどうぞ。」
光彦も哀に自分の上着を着せる。
「あら、ありがと。」
「いいえ。」
光彦も満更でない様子だ。
「蘭姉ちゃん、寒くない?良かったら僕の上着を。」
自分の上着を脱いで、蘭に渡すコナン。
「うん、ありがと。でも、気持ちはありがたいけど、サイズが……。これは、あなたに返すわね。」
蘭は、コナンに再び上着を着せた。
その時コナンは、
(くっそー、新一の身体なら、蘭より大きいから、蘭に俺の上着を着せれたのに……。つったく、バーチャル世界なのに、何で身体は元に戻らずコナンのままなんだよ!?この身体では、寒さに震える蘭に上着も着せらんねー!ああ、早く元に戻りたいぜ。)
と内心でぼやいていた。
☆☆☆
「で、どうなんや、初姉?」
予備のコクーンの接続を終えた平次達が、ノートパソコンでプログラムを組む初音に尋ねる。
「もうちょいやで。」
キーボードを叩く初音の手のスピードが更に上がる。
「待ってて、蘭、新一君……!!」
「頑張って、初音さん!!」
園子や青子達も、固唾を飲んで初音を見守る。
そして、
「よっしゃあ、接続完了や!!」
初音はプログラムを組み終え、ガッツポーズをとる。
「やったあ!!」
「これで蘭達の所に行けるわ!!」
「ようやったで、初姉!!」
「さすがやん、初ちゃん!!」
歓喜に沸き返る一同。
が、その時、
『これは何の真似だい、君達?』
初音のノートパソコンから、何者かの声が流れてきた。
「ノアズ・アーク!」
ディスプレイに現れたシンボルマークを見て、急に引き締まる一同。
「決まっとるやないか、アンタに囚われた仲間達を助ける為や。」
平然と返す初音。
『余計な事をしてもらっては困るな。これは僕が仕掛けたゲームなんだ。部外者の立ち入りはお断りだよ。』
「おっと、道を塞ごうとしても無駄や。ウチが仕込んだプログラムは、例えアンタといえども妨げる事は不可能やで。」
『……どうやら、そうみたいだね。まさか、これほどの腕前を持つプログラマーがいたとは、僕には想像が付かなかったよ。』
「さあ、覚悟なさい、ノアズ・アーク!」
「これ以上アンタの思い通りにはさせないんだから!」
園子と青子が拳に力を込める。
『……いいだろう。君達の参加を認めよう。』
「おっ、結構物分かりがええやんか。」
「どうやら観念したみたいでござるな。」
『ただし、少しだけルールを変えさせてもらうよ。』
「ルール?」
『そう。これだけの事をしたからには、こちらもそれ相応の対応をさせてもらわないと。』
「で、そのルール変更って何ですか?」
との武琉の問いに
『それは……。』
ノアズ・アークは、一同にルールの変更を説明した。
「なっ、ちょ、ちょお待てや!?」
「アンタ何考えてんのよ!?」
「そんなのって、ズルいじゃない!!」
変更ルールを聞いて憤る一同。
『何がズルイんだい?これでも譲歩したつもりなんだけど。』
「これのどこが譲歩なんですの!?」
「余計ルールが厳しくなったじゃないですか!!」
さすがの桐華や真も、声を荒げる。
が、
「……おおきに、ノアズ・アーク。それで呑ませてもらうで。」
『な゛っ!!?』
初音の言葉に、驚く一同。
「は、初音さん、正気なの!?」
「正気やで。よう考えてみい、ずるしようとしてんのは、うちらの方や。この新ルール、元からゲーム参加しとるメンバーに不都合はあらへん。不都合があんのは、後だしジャンケン組のうちらだけや。それが呑めへんメンバーを咎める気ぃは全くあらへんけど、そん場合は即刻、ゲーム参加を取りやめてくれへんか?」
一同は、息を呑んだ。
「うちらC−Kジェネレーションズとアルファトゥオメガが、こん位の事乗り越えへんでどないすんねん!優作センセが言うてた事を、今ここで実証したろうやないかい!」
一瞬の間の後。
「よっしゃ!」
「おう!」
「はい!」
「合点承知!」
「いいでしょう。」
それぞれに、全員が賛同の意を表したのだった。
「これなら文句無しやろ、ノアズ・アーク?」
『ああ。改めて君達の参加を認めよう。ようこそ、コクーンの世界へ!』
「……よし、この様子なら何も心配いらないな。」
一同の様子をずっと見ていた優作は、そのまま小ホールを後にした。
☆☆☆
その頃……。
「はあ、はあ、このステージで残っているの、私だけになっちゃったわね……。」
<ソロモンの秘宝>ステージを疲労感丸出しで進む恵子。
そのボロボロの衣装が、彼女の苦難の道のりを物語っていた。
「後三つのエリアをクリアすれば、このゲームを終わらせる事が……って……。」
ふと、恵子の表情が凍りついた。
何故なら、
「な……何よこれえーーーーーーっっっ!!?」
とある広場についた途端、恵子の周囲に、オーガやゴブリンの集団が集まってきたからだ。
「ジョーダンじゃないわよ!超へろへろな私にこんな奴等と戦えなんて、無茶も甚だしいじゃないの!!」
「ガルルルルル……。」
「グルルルルルル……。」
手薬煉を引いて、恵子に飛び掛ろうと待ち構える鬼の軍団。
「うう〜〜〜〜っ、せめてフォースウェポンさえ使えれば、こんな奴等一掃出来るのに!」
恵子は絶望の余り、広場の真ん中でへたり込んでしまった。
が、
「グワオウッ!」
一体のオーガが、それを見逃さずに、恵子に飛び掛ってきた。
「きゃあっ!」
が、その時、
ズドーン!
「ギャウッ!」
いずこからか発射された光の弾丸がオーガを貫き、オーガはそのまま消滅した。
「ぐわうっ!?」
「ぐおっっ!?」
突然の事に周囲を見回すオーガやゴブリン達。
そこへ、
「よお、大丈夫だったか、恵子。」
「ホントに無事でよかったわ。」
森の木陰から、一組の男女が銃やモップを振りかざしながら、恵子の所に近づいてきた。
「あ……青子!それに快斗君!!」
☆☆☆
同じ頃……。
「ハア、ハア……。」
肩で息を切るレオン。
<コロセウム>のステージで、彼は唯一勝ち残っている正規のプレイヤーだが、自分の周囲を取り囲む沢山の騎馬戦車を前に半ば絶望しかかっていた。
「だが、私はパララケルスの王太子、ここで挫ける訳には行かない!!」
気を取り直し、レオンは槍を構えなおした。
それと同時に、戦車隊がレオンの所へ一斉に進撃を始めた。
その時、
ドカーーーン!!
「えっ!?」
レオンは、自分に襲い掛かろうとした戦車から、突然兵達が投げ出されたのを見て驚く。
そればかりか、鞭のような物で戦車から兵達が次々と叩き出されるのを目の当たりにした。
直後、
「ご無事でしたか、殿下!?」
「あっ、貴女は……桐華さん!?」
鞭で自分を助けた女性――キティタイガー虎姫桐華がレオンの目の前に駆け寄った。
そして更に、
「全く、女に助けられるとは、情けないヤツだな。」
「げっ、あ、姉上!?」
レオンは、会場には来ていなかった筈の実姉――サリー・ライア・レムーティスことブラッディセイレーン・サリエル・ミラン・ヒューベリオンを見て、更に驚く。
「なななな何でお二人がここに!?」
「決まってるだろーが。お前を助けに来たんだよ。」
「初音さんがワタクシ達をこの世界に送り込んでくれたのです。」
「義姉上が……そうでしたか。」
安堵するレオン。
「ただ、本当でしたら、紅葉さんがワタクシと共に来るはずだったのですが、サリー様がコクーンから紅葉さんをつまみ出して、無理矢理乗り込んだのですよ。」
「えっ、それはまた何故に!?」
サリーの過激な行動に驚くレオン。
「ハア?実の弟を助け出すのに理由なんかいるのか?」
「そ、そうですか……ハハハ……。」
いかにもサリーらしい理由に苦笑いするレオンであった。
☆☆☆
そしてまた同じ頃……。
「ほへ〜〜、の、残ったのは僕だけですか……。」
ボロボロの姿で<ヴァイキング>ステージの大雪原を歩く瑛祐。
彼は今、ゴールまで後数エリアを残す所まで来たが、自他共に認めるドジっ子の彼が、ここまでやって来れたのは、殆ど奇跡に近かった。
「で、でも……このエリアをクリアすれば、何とかなる……おわあっっっ!!」
突然大雪原から瑛祐の姿が消えてしまった。
どうやらクレパスに落下した……と思われたが。
「ハア……あ、危なかった……。」
彼はすんでの所で、クレパスの縁に手を掛けて、落下せずにすんだ。
だが、
「で、でも……このままじゃ……。」
元々体力に自身が無い瑛祐の事、このままではクレパスに真っ逆さまになる事は必定だった。
「う〜〜、しかし、寒い所までリアルに再現するなんて、ちょっとやり過ぎじゃ……ハ、ハ、ハクション!!」
たまらずくしゃみをする瑛祐。
が、次の瞬間、
「え?」
彼の手がクレパスの縁から離れた。
「うわわあーーーーっっ…………あ、あれ?」
哀れ瑛祐がクレパスの底に落下してリタイヤになろうかと思われたその時、
「ふーっ、危なかったなあ、ホントに。」
「間一髪でしたね。」
「あ、貴方達は……陽介さん、真さん!!!」
瑛祐の両脚を、陽介と真がしっかりと持ち、瑛祐は間一髪、落下を免れて、そのまま無事に引き上げられた。
☆☆☆
更にまた同じ頃……。
「ハア、ハア……。」
<パリ・ダカールラリー>ステージでは、菫が疲労困憊状態で砂丘にへばっていた。
「い、いくらゲーム世界つーても、これはリアルすぎるやん……。」
体力には絶大な自信がある菫だが、さすがにゲーム世界では勝手が違うらしく、普段の彼女らしさが影を潜めていた。
「で、でも……早う行かへんと、ウチの命が危のうなって……。」
菫は砂丘に横たわるバイクを起こそうとするが、当の彼女が起き上がれずにいた。
「ア、アカン……これはホンマに……。」
と菫の意識が混濁し始めたその時、
ファーンファーン!!
後ろからクラクションを鳴らしながら、一台のオフロードバイクが、大型カミオンと共に菫の所に近づいてきた。
「あ、あれは……。」
砂漠の暑さでヘロヘロになっている菫は、ボーっとした目で、自分に近づくバイクを見ていた。
その時、
「おーい、御剣ーっ!!」
「!この声……!!」
菫の耳に、どこかで聞き覚えがある声が飛び込んで来た。
「ア、アカン……。何か幻聴まで聞こえて来たみたいや……。リアルにも程があるんちゃうか……。」
意識が朦朧としているせいか、菫は未だに起き上がれずにいたが、
「しっかりせいや、御剣!!」
「スミレちゃん!!」
そのバイクから降りたライダーと、カミオンから出てきたドライバーが、へばっている菫を抱き起こした。
「!こ、これは……。」
感触を感じた菫は、目を見開いた。
「ようここまで頑張ったなあ、御剣。」
「お待たせ、スミレちゃん。」
「あ……へ……へーたん!和葉ちゃん! 」
二人に会った菫の表情は、まさに地獄に仏を見たような歓喜あふれるものだった。
☆☆☆
その頃、小ホールでは……。
「拙者の役目、サリー殿に取られてしまったでござる!園子殿、そこを代わられよ!」
「じょ……じょおっだんじゃないわよ!蘭を助けに行くのは、私よ!」
「そこを何とか……では、武琉殿……。」
「ざ、残念ですが、僕も、同級生を助けに行かなきゃ!それに……。」
「それに?」
「何でもありません!園子さん、急ぎましょう、他の方々はもう既に到着されてます!」
「OK!」
すがる紅葉を振り切って、園子と武琉がコクーンに乗り込もうとした、その時。 「なっ、こ、これは!!」
コクーンと結ばれたノートパソコンで、各ステージのモニタリングをしていた探が、驚きの声を上げる。
「どうしたんや、白馬っち!」
「オールドタイム・ロンドンステージにいる探偵団の三人が、リタイアしましたよ!」
『ええ〜〜〜〜っ!!!』
大騒ぎになる一同。
「武琉君、急ぐわよ!」
「はい!園子さん!」
二人は慌ててコクーンに乗り込んだ。
「ほな、行くでえ!」
初音がスイッチを入れ、二人は『オールド・タイム・ロンドン』ステージへと向かった。
☆☆☆
「なっ、何だアレは!?」
メイン会場のスクリーンには、新たなメンバーが加わった場面が、映し出されていた。
最初は、絶体絶命の所に更に敵キャラが現れたと思い絶望的になった一同だったが、新キャラ達は、ゲーム参加者を守るように動き始めたではないか。
「お、おお……。お助けキャラがいたのか?」
「いや、ちょっと待て。あれは……!」
数人が、突然ゲーム内に現れた新キャラ達の顔に見覚えがあるような気がして、首を傾げる。
「あ!あれは、鈴木財閥の!」
「あちらは、虎姫グループの!」
「あっちは、大阪府警本部長の御子息では!?」
「あれは、よく見たら、風見原陽介!?」
会場内がざわめいた。
その時、突然アナウンスが流れた。
『はろーえぶりばでぃ!ウチは警視庁特殊能力捜査部部長の、服部初音警視長や!』
「は、初音さん!?」
「は、服部警視長!?」
驚く高木警部補と目暮警部。
「は、初音君!?」
「はっ、服部警視長殿!?」
コントロールルームにいた阿笠博士や小五郎も同時に驚いた。
「おお!あの有名な……!」
今や有名人となっている初音の声に、皆、一様に安堵の声を漏らした。
『見ての通り、今、ゲーム内にお助けキャラを参入させたで。彼らがゲーム参加者達の助けになる!安心してや。』
「おお!服部警視長、頼んだぞ!」
そう叫んだのは、諸星副総監である。
この期に及んで、格下扱いの言葉づかいに、後で失笑を食らう事になるが、それはまた別の話。
その時、
『会場のみんなに告ぐ。追加参加者があった為に、ゲームのルールを一部変更させてもらった。』
「る……ルールの変更だと?」
ノアズ・アークの声に、小五郎が問い返した。
『まず、最初のルールでは、全てのステージ合わせて最低一人でもクリアすればOKだったけれど。これを、5つのステージ全てで、必ずクリア者がいる事と、変えさせて貰う。』
「な、何だって!?」
会場が大きくざわめいた。
『当然だろう。そちらは、助っ人を出して来たんだから。そして勿論、ゲームクリアを認められるのは、助っ人ではなく、最初から参加していた人達だけだ。』
「そ、そんなら、助っ人は単に妨害しに来ただけじゃないか!」
激昂して叫ぶ会場の父兄達。
『そうとも言えないよ。助っ人が来なければ、<ソロモンの秘宝><パリダカールラリー><ヴァイキング><コロセウム>は、今頃、全員リタイアしている。助っ人達の参加で、彼等は辛うじて生き残っているんだ。多少なりとも善戦しているのは、<オールド・タイム・ロンドン>のみ。そこだって、今、かなり危ない状況になっている。だから、このルール変更は、必ずしも君達側に不利という訳でもない。』
ノアズ・アークの説明に、会場は更にざわめいた。
「人工知能だけあって、妙に公平な感覚を持ってるもんやな。」
感心したように呟く初音。
「実際のところ、どうなんですか、博士!?」
心配そうに博士に尋ねる小五郎。
「確かに、彼らの参戦がなければ、もう4つのステージは、クリアー者なしで終了していたじゃろうて。ノアズ・アークは、必ずしも、ゲームがクリアー出来ない事を望んでいる訳ではなさそうじゃのう。」
「一体、どういう積りなんだ!?機械の考えている事はサッパリ分からん。」
「まあ、命をかけて参加してくれた彼らを、信じようじゃないか。」
『こちらは服部警視長。皆、落ち着きや。ノアズ・アークの言う通り、助っ人がいなければ今頃四つのステージは全滅してたで。あのルール変更は、必ずしも、元からの参加者に不利な訳やない。ただし、後から参加した助っ人は、自らの命をかけて参戦したんや。』
「え?ま、まさか!?」
『正規参加者が全滅した時は、彼らも道連れいうこっちゃ。それでも、彼らを助けたいと命はって参加したんや、信じて待っててくれへんか?』
会場内は、別のざわめきで包まれた。
『彼等は、予備のコクーンから、ゲームに参加しとる。最初からの参加者が使えない特殊能力も、使える。けど、ゲームクリアするんは、あくまで、最初から正規に参加した人達だけで、彼等はあくまでサポート役。万一の時は、共に逝ってまう覚悟でな。』
さすがに、会場が静まり返った。
やがて。
「頑張れ!そら、その物陰に怪物が!油断するな!」
「ここを抜ければゴールまであと少しだ、頑張れ〜!」
「生きて帰って来い!応援してるぞ!」
会場からは、ゲーム参加者に届かないと分かっていても、応援の声が次々と上がり始めた。
が、
(くっ、余計な真似を……!)
ある事の発覚を恐れるシンドラー社長だけが、苦々しげに見ていた。
☆☆☆
同じ頃、小ホールでは。
大会場のざわめきが、中継されて届いていた。
「皆が、応援している……。」
「ええ。全員無事に帰って来て欲しいと、心一つになったのですわね。」
「僕達も心から応援しています。皆さん、頑張って下さい!」
「絶対、帰って来るでござるよ、皆の衆、主殿!」
「あなた達ならきっと出来るわ、だから頑張って、みんな、そしてレオン……!」
舞・紅子・探・紅葉・晴香が、予備のコクーンとモニター画面を見ながら、祈っていた。
(アンタ等なら絶対に勝てるで。だから、頑張るんやど、みんな!)
初音もまた、心の中で祈るような気持ちで、勝利を願っていた。
To be countinued…….
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