オールド・タイム・ロンドンステージにて……。
「ところで、私に何の用かな?」
「『切り裂きジャック』って、ロンドンを恐怖の都に変える為、教授が街に放った人なんでしょ?」
コナンが話している老紳士は、シャーロック・ホームズのライバルとして著名なジェームズ・モリアーティ教授である。
その近くでは、蘭と哀、秀樹と江守、滝沢の正規プレイヤーが二人のやり取りを見守っている。
「君達が『切り裂きジャック』を退治しようとしているのなら、私も協力しようじゃないか。」
「協力!?」
「そうだ。ただし……。」
モリアーティ教授が指を鳴らした瞬間、
ヒュンッ!
ヒュンッ!
ヒュンッ!
教授をガードするかのように、三人の男が出現した。
「それは彼らを倒す事が出来たらだ。」
「なっ、ず、ずるい!」
「汚いぞ、お前!!」
非難する蘭と秀樹達。
「ちっ、さすがにモリアーティ教授だけあって、一筋縄ではいかないか……!」
コナンは舌を打ちながらも、目の前の事態にどう対処するか、考えをめぐらそうとしていた。
が、その時、
「とりゃあーーーーっっ!!」
「たあーーーーーっっ!!」
バキッッッ!
「「「うおっっ!」」」
夜空から何者かが突然舞い降り、コナン達をガードするかのように、三人の男を一撃で撃破した。
「なっ、こ、これは!?」
突然の助っ人出現に驚く蘭。
「むむっ!?」
モリアーティ教授も意外な展開に怪訝になる。
その時、
「やあ、お待たせ、蘭、それにみんな。」
「遅れてすみませんでした、皆さん。」
その助っ人が軽く一礼する。
「そ、園子ぉ!?」
「た、武琉君!?」
C-K Generations Alpha
to Ωmega
特別版 ベイカー街(ストリート)の亡霊(スペクター)
By東海帝皇(製作協力:ドミ)
Vol.4 大暴れ!電脳空間大戦
恵子がプレイをしているソロモンの秘宝ステージには快斗と青子が、レオンがいるコロセウムステージには桐華とサリーが、瑛祐のヴァイキングステージには真と陽介が、菫がいるパリ・ダカールラリーステージには平次と和葉が、そしてコナンと蘭、哀がいるオールド・タイム・ロンドンステージには、園子と武琉がイレギュラーゲストとして助っ人に出向いていた。
☆☆☆
ソロモンの秘宝ステージにて……。
「いやいや、二人のおかげでホント助かったわ。」
快斗と青子に助けられた恵子は、彼等と共に最後のステージ・ソロモンの大神殿の中を歩いていた。
「いえいえ、どういたしまして。」
「しかし、ここまで来るのはあっという間だったなあ。」
「そりゃ快斗君が、ステージの種明かしをあっという間にやってのけたからね。」
「あんなの俺の前では、チョロいもんさ。」
「ゲームのトラップも、快斗の前では子供だましなのね。」
「次でラストだから、とっとと終わらせましょ。」
「でも、最後の秘宝をゲットするのは、正規プレイヤーのオメーがやれよ。それがクリア条件なんだからよ。」
「分かってるわよ。」
三人が色々と話している内に、ソロモンの大神殿最奥部に到着した。
「あっ、見て!あそこに宝箱が!!」
青子は、壇上にある黄金の宝箱を指差した。
「あの形状……ひょっとしたら、モーセの十戒の石版が入ってる『契約の箱』じゃねーか?」
「なんか見るからに、最後のクリアアイテムって感じがするわね。」
「じゃあ、早速取りに行こうよ。」
青子が契約の箱へと向かおうとした時、
「ちょっと待て。」
快斗が止めた。
「ん、どしたの?」
「この内部に何かがいる。」
「え!?」
「でも、どこにも敵らしき姿は……って、ええっ!!?」
恵子が神殿最奥部を見渡すと、壁に刻まれた壁画の目が一斉に赤く光ってるのを見つけた。
「ちょ、ちょっと何アレ!?」
「ソロモン王が封じたとされる『72柱の魔王』だ。」
「ま、魔王!?」
「な、72柱って、72体の魔王!?何よそれ〜〜〜っっ!!?」
たまらず絶叫する恵子。
その時、
ごごごごご……。
神殿最奥部が突然揺れだした。
「きゃあっ!?」
「じ、地震!?」
「いや、地震じゃねえ!奴等が目覚めたんだ!!」
見ると、壁から『72柱の魔王』の壁画ブロック――魔王壁画石ソロモンブロックが抜け出した。
「こいつ等がラスボスね。」
「本物じゃなさそうだから、割と簡単にいけるかも。」
「でも、油断すんじゃねーぞ!!」
「OK!」
「任せといてよ!!」
快斗達は、72個のソロモンブロックに対して武器を身構えた。
☆☆☆
コロセウムステージにて……。
「ふう、ひとまず片付いたか……。」
「そのようですわね。」
コロセウム内の戦車軍団を壊滅させて一息つくサリーと桐華。
「いやあ、お二人のおかげで本当に助かりました。」
一礼をするレオン。
「いえいえ。」
謙遜する桐華。
「でも、ワタシ達が出来るのは、あくまでもお前のサポートだ。このステージのクリアはお前の手で成し遂げろ。」
「え、それは一体?」
「実は……。」
事情を説明する桐華。
「なんと!?そのような事が!!?」
「でも、お前の実力なら、そんなの屁でもないだろ?」
「で、ですが……。」
「ワタクシもサリー様と同意見ですわ。殿下でしたら必ず成し遂げられると、ワタクシ達も信じておりますから。」
「桐華さん……。」
「ほう?信じているとな?その割には、参戦する際には大騒ぎだったようだが。」
ラブラブな雰囲気になりかけたレオンと桐華に、サリーが水を差す。
「さささ、サリー様、一体何を!?」
「ワタシも、一体どちらを我が義妹として遇するべきか、頭が痛くなったぞ。」
「そんな……ワタクシ、サリー様に見放されたら……。」
目をウルウルさせる桐華。
「まったく。以前は毛を逆立てた猫のようにワタシに向かって来てたのに、レオンの姉と知った途端、これだ。」
「姉上、一体何の話なんですか?」
「レオン、お前は鈍感過ぎ。ここまで話せば、晴香と桐華の争いだって、分かるだろうに。」
「えっ!?晴香さんが、おいでになったんですか!?」
ぱあっと顔を輝かせるレオン。
が、どよーんとなった桐華を見て、ハッと顔を引き締める。
「桐華は、コクーンにいの一番に乗り込もうと、鼻息荒くてな。『コロシアムにはワタクシが向かいます!』とえらい勢いだった。まあ、晴香がアッサリ譲ったから、話が丸く収まったのだが。」
「ワタクシは、紅葉さんと一緒に殿下をお助けに参ろうとしたのですが、サリー様が紅葉さんを蹴落として……。」
「そこで、桐華の方を蹴落とさなかった事を感謝して欲しいものだ。」
「そそそ、それは、感謝しておりますとも、ええ。」
「あ、あ、あの……お2人とも、本当にありがとうございました。」
レオンが邪気のない笑みを浮かべて言ったので、その場の空気は途端に落ち着いた。
「さすがに、次期国王の器だな……っと、話はそこまでだ。どうやら総大将のお目見えのようだぞ。」
サリーの視線の先の入場口から、コロセウムステージのファイナルボス・暗黒重装騎兵戦車ギガチャリオットが入場してきた。
牽引する6頭立ての巨大黒馬デモンスティード、車体全体や車輪に巨大な棘をあしらった凶装4輪馬車キラーワゴン、それらに乗り込んでいる魔装将軍ダークジェネラル、魔装御者デスライダー、魔装車右ヘルズガードがギガチャリオットを形成している。
「あれを私が倒せば、このステージはクリアされると。」
「そう言う事だ。ただし、お前が負けたら、お前は勿論の事、ワタシや桐華、そして他ステージのプレイヤー全員があの世行きになる事を忘れるな!」
「!」
サリーの言を聞いて、気を引き締めるレオン。
「殿下、案ずるには及びません。こちらを殿下の『足』としてお役立て下さい。」
そう言いながら桐華は、百鬼夜行桐華組の札束の中から、一枚の札を取り出し、
「さあ、お行きなさい、おしら様!!」
天へと投げ飛ばした。
すると、
「ヒヒィーーーンン!!」
札は嘶きをあげながら百鬼夜行桐華組・魔獣兵団の馬の妖怪おしら様へと変化していった。
「なるほど、兵車には騎馬で対抗する訳ですか。」
レオンは桐華の着眼点に感心しながら、おしら様に跨った。
「では、言ってまいります、桐華さん、姉上。ハイッッ!!」
レオンは槍を手にギガチャリオットへと向かっていった。
「頑張って下さい、殿下!!」
「負けるなよ、レオン。」
レオンを見送る二人の瞳は熱く、そして優しく輝いていた。
☆☆☆
ヴァイキングステージにて……。
「いやあ、お陰で助かりましたよ。」
瑛祐は、南極大陸上の氷の宮殿の中を歩きながら、助っ人の真や陽介に改めて礼を述べた。
三人は並み居る敵を次々と打ち破り、ついにファイナルステージの氷の宮殿へと到達する事が出来たのだ。
「いやあ、礼には及びませんよ。仲間を助けるのは当たり前の事ですから。」
「真の言うとおりだぜ。けど、最後のステージクリアは、お前自身の手でやるんだぞ、瑛祐。」
「わかってます。そうしないと生きて帰る事が出来なくなるんでしょ。」
気を引き締める瑛祐。
その内三人は、宮殿の大広間とも思えるような広大な空間へと到達した。
「うっわーーー、凄いですね、ここ!!」
「正に氷の芸術ですね、これは……。」
「なかなかの作り込みだな……。」
大広間の麗しき作りに息を呑む三人。
その時、
ゴゴゴゴゴゴゴ……。
「「「!」」」
宮殿が突然揺れだした。
「じ、地震ですか!?」
「こ、これはちとリアル過ぎでは!?」
「いや、違う、見ろ!!」
陽介が指差した先の大鏡がひび割れ、木っ端微塵に砕け散った。
そしてそこから、
「あ、アレは……!」
「じょ、女王……ですか……!?」
全身が氷の様に透き通った、六本腕の女王風スタイルの女巨人が現れた。
「どうやらファイナルボスのお出ましのようだぜ!!」
看破する陽介。
「ヨクゾココマデマイッタナ、ユウシャヨ……。」
「しゃ、しゃべった!?」
驚く瑛祐。
「ワタシノナハヘル。コノワタシヲタオシテ、サイゴノタカラヲエルガヨイ。」
氷結冥界女帝ヘルが瑛祐達に対して戦闘態勢をとり始める。
「これが最後の戦いだ、気を引き締めていけよ、瑛祐!」
「私達も可能な限りサポートしますから、頑張って下さい!!」
「ハイ、陽介さん、真さん!!」
瑛祐を中心に据え、真と陽介が脇を固めて、ヘルに対して身構えた。
☆☆☆
パリ・ダカールラリーステージにて……。
「いやあ、ホンマに助かったわ、へーたんに和葉ちゃん。」
無線通信で礼を述べながらサハラ砂漠をオフロードバイクで疾走する菫。
その後に続く様にカミオンで爆走する平次と和葉。
「お前、オレ等が来るまで今にも死にそうやったのに、ホンマ現金なやっちゃなあ。」
「まあ、ええやんか。スミレちゃんが元気になったんはええ事やし。」
「そやな。けど御剣、ゴールまでの完走は絶対お前がやるんやど。」
「勿論やで、へーたん。ここまで来たんやから、絶対に成し遂げな、女が廃るわな。」
平次と和葉がサポートとして加わってから、菫のコース消化スピードが飛躍的に向上し、向かう所敵無しで三人はコースを爆走していた。
だが、
「!」
菫のオフロードバイクが急停止し、それに合わせて平次や和葉のカミオンも停止した。
「御剣、どないした!?」
「な、なんやねん、アレ!?」
「えっ、ちょ、ちょっと何やのん!?」
目の前の砂丘には、巨大砂蚯蚓アビスワームが至る所から頭を出して、菫達の行く手を阻んでいた。
「なるほど、アレを掻い潜りながら砂丘を抜けろっちゅー訳か。」
「ちょ、ちょっと平次!!あんな不気味なんとこ、どーしても行かなアカンのん!?」
「他にコースが無いから、しゃあ無いやろ。」
カミオンのカーナビで確かめる平次。
まだ震えてる和葉に対し、
「命が掛かっとる場面なんやから、小さいミミズや思うで我慢せえ!!」
一喝する平次。
「でっ、でもアタシ、小さいのもアカンのやあーーーーっっ!!」
「ほなら、砂丘抜けるまで、目ぇ瞑っとれ!!」
パニックを起こしてる和葉に対し、
「ふう、これがレースゲームやなかったら、あんな奴ら一掃したるトコなんやけどな。」
いつも怪物と戦ってる菫は冷静であった。
「ス、スミレちゃん……。」
これを見て、和葉も決死の思いで気を取り直す。
「まあ、ここを抜ければ、後はゴールまで一直線やから、気ぃ引き締めて行くで、へーたん、和葉ちゃん!!」
「わかってるで、御剣!」
「スミレちゃんも気ぃつけてな!!」
菫のオフロードバイクと、平次と和葉のカミオンが、アビスワームの巣への爆走を開始した。
☆☆☆
再びオールド・タイム・ロンドンステージにて……。
「そうか、父さんが……。」
モリアーティ教授から首尾よく協力を取り付け、助っ人の園子と武琉を加えたコナン達は夜のロンドン市街を歩いていた。
「僕達だけじゃなく、快斗さんや平次さん達も他のステージの助っ人へと出向いてるんですよ。」
「けどよ、それだったらもっと早く来て欲しかったぜ。」
「ハハハ、言うと思ったわ。まあ、私達が来たからには、大船に乗ったつもりでいてよね。」
愚痴る秀樹に対し、ドンと構える園子。
「いやあ、助かるなあ。」
「武琉も一緒なら、鬼に金棒だな。」
助っ人の参戦で気が楽になっている江守と滝沢。
「けど、油断は禁物よ。正規プレイヤーの私達が全滅したら、他のステージの正規プレイヤーや助っ人も含めて、一気にゲームオーバーになるんだから。」
楽観的な雰囲気を戒める哀。
「ああ、わかってるさ。」
頷くコナン。
「……あら、もう夜が明けてきたわね。」
空を見上げる蘭。
「まあ、さすがに現実世界とは違うからな。」
「で、これからどうします、コナン君?」
「俺はホワイトチャペル地区をもう一度見てみる。武琉君と園子…姉ちゃんは蘭姉ちゃん達のガードを。」
「OK、任せといてよ。」
「気をつけて下さいね。」
コナンは蘭達を園子や武琉に任せ、駆け出していった。
☆☆☆
再びコロセウムステージにて……。
「うわあっっ!!」
「殿下!」
「レオン!」
ギガチャリオットの攻撃を受けたレオンは、乗馬のおしら様から落馬してしまう。
レオンは今まで、2頭のデモンスティードとヘルズガードを倒していたが、一瞬の隙を突かれてしまったのだ。
「くっ……!」
己の不甲斐無さに歯噛みするレオン。
「こうなれば、ワタクシも!」
クイーンビュートを手に、レオンの下に駆け寄ろうとする桐華。
だが、
「待て!」
サリーがこれを制した。
「サリー様、このままでは殿下が!」
「あわてるな、桐華。まだレオンから勝機は去った訳じゃない。」
「で、ですが……。」
「レオン!ワタシの弟なら、このまま諦めるつもりは無いだろ!!自分の手で勝機をつかんで見せろ!!」
サリーがレオンを叱咤する。
「あ、姉上……。」
これを受けて、レオンは再び立ち上がった。
(そうだ、姉上の言う通り、勝機は自分の手で掴むもの。)
周囲を見回すレオン。
前方では、レオンに攻撃しようと、ギガチャリオットが再発進しようとしていた。
その時、
「!」
レオンは何かに気付いた。
直後、ギガチャリオットが再発進して、レオンに接近してきた。
その時、
「ぴーーーーーーっっ!」
レオンは指笛を吹いた。
すると、
「ヒヒーーーーン!」
ドガッッ!
それに反応したおしら様がギガチャリオットに飛びかかり、デモンスティードを操縦していたデスライダーをキラーワゴンから叩き落して撃破した。
間髪入れず、レオンはおしら様に再び騎乗した。
一方、操縦者を失ったギガチャリオットは制御不能に陥り、そのままコロセウムの壁に激突した。
デモンスティードは大ダメージを受けて全馬消滅し、キラーワゴンも木っ端微塵に砕け散った。
同時にダークジェネラルもその衝撃でキラーワゴンから投げ出されて大ダメージを受けた。
その直後、
「とりゃあーーーーっっ!!」
グサッッ!
レオンの槍がダークジェネラルに深々と突き刺さり、止めを刺されて消滅した。
その瞬間、大歓声と共に
「You Win,Game Clear!Congratulation!!」
の大文字が表示された。
「殿下!」
「レオン!!」
桐華とサリーがレオンの許に駆け寄ってきた。
「殿下!冷静な判断、素晴らしかったですわ。」
「桐華さん。姉上とあなたのご助力があればこそです。」
「でも、ワタクシ……サリー様のように、殿下を無条件で信頼する事が出来ませんでしたわ……申し訳ございません……。」
「何を謝るのです!?私の為に、動こうとして下さったのでしょう?」
「殿下……。」
「さあ。そんな顔は、あなたには似合わない。我々は、勝ったのです!このステージを、クリアしたのですよ、力を合わせて!」
「殿下!」
「あー。ウォッホン!」
「サリー様?」
「姉上?」
「いちゃつくのは良いが、時と場合を考えたらどうだ?」
「い、いちゃつくなど、私はただ!」
「ホラ。そこに、優勝者にトロフィーを渡すに渡せず困っている女神がいるぞ。」
「め、女神?」
見ると確かに、そこに古代ローマ神話風の衣装をまとった、女神らしい人物が立っていた。
レオンに向かって、先程から、変わった形のトロフィーを渡そうとしていたらしい。
レオンと桐華は、一瞬、お互いしか見えていなかった事に気付いて、赤面し。
王太子は改めて、女神からトロフィーを受け取った。
「これ、何ですかね?」
「巨大な砂時計?でも、この形……。」
「らせん型の砂時計だな。もしかして、DNA模型が形の元になっているんじゃないか?」
「ああ、なるほど。これは、元々のゲームに用意されていたものなのでしょうか?」
「さあ、それは何とも……。どちらにしろ、現実世界に持ち帰れる代物ではないがな。」
そこへ、初音から通信が入った。
『レオン、それに桐華、サリー。まずは、おめでとさん。』
「義姉上!」
「初音さん!」
「初音!」
『で、レオンが貰ったそのトロフィーなんやけどな。』
「はい?」
『それは大事なもんやから、落とさんとしっかり持っとってな!』
「はあ!?」
レオンは、目が点になった。
桐華とサリーも同様である。
『……これで、データ移設OKっと。あ、もうええで、ほたっても。』
「データ移設!?それに、しっかり持っとけと言ったり、捨てて良いって言ったり、一体何なんです!?」
『それには、何かのデータが詰まっとるアイテムやってん。』
「というと!?」
『それは、今から調べる。そのまま現実世界に持ち帰る事はでけへんけど、うちのパソコンにデータ移設したから、もう大丈夫や!』
「そうですか。で、私達は今から……。」
レオンの言葉は途中で途切れた。
何故なら、
「あ、あれ、ここは……。」
「ワタクシ達、エントランスホールに戻ってきたらしいですわね。」
3人はいきなり転送されてしまったからだった。
「でも、全ステージがクリアされない限り、ワタシ達はコクーンから出る事は出来ないからな。」
「なら、ここで他のステージで頑張っているみんなを応援しましょう。今の私達に出来る事はそれだけですから。」
「そうですわね。」
その時。
『お疲れ様。レオン、サリー、桐華さん、良く頑張ったわね。』
ディスプレイに小ホールにいる晴香の姿が映った。
「晴香さん!」
「おお、晴香か。」
「……一体何のご用ですの?」
『夫の無事を妻がねぎらうのは当たり前の事でしょ?』
「おおお、夫っ!?」
晴香の言葉にエキサイトする桐華と、真っ赤になるレオン。
「晴香、桐華をからかうな。」
『あら。サリー。わたしは別に、からかってなんかいないわ。桐華さんは正室でわたしは側室。だけど、妻には違いないでしょ?』
「何を世迷言を!ワタクシが殿下の唯一人の妻ですわ!!」
「……レオンが認めるなら、ワタシは何も言わんが、その正室だの側室だのってのは、正直好きじゃない。」
「さ、サリー様。何のかんの言って、ワタクシの味方をして下さいますのね!」
「おい。その前に、2人とも、まだ婚姻の儀式をやった訳でもないだろうが。今のところは2人とも、単なる愛人。」
「あああ、愛人って!姉上、それは既婚者が別に恋人を作った時に使う言葉で!」
「あ、日本語は難しいから間違えた。今のところは2人とも、単なる恋人ってヤツだろ?」
「……ううう。普通は恋人も、1人だけなんですぅ……。」
「ワタシとしては、どっちが義理の妹になっても構わん。まあ、頑張ってくれ。」
「ですから、殿下の恋人は、このワタクシ1人ですわ!」
桐華が、晴香に見せつけるようにレオンにベタベタと引っ付く。
レオンは、赤くなりながらも、満更でもなさそうにしている。
『まあ、しょうがないわね……。とりあえず、お疲れ様。』
呆れた顔で言って、ディスプレイから消えた晴香。
「ところで、他のステージはどうなってるんだ?」
「そ、そうでしたわね。コロシアムだけクリアーしても、何にもならないのでしたわ!」
「ああ、そうか。あなた達が参戦した事で、ルールが変わったのでしたね。」
三人は表情を引き締め、エントランスホールに映し出された他のステージの様子を見守った。
☆☆☆
再びヴァイキングステージにて……。
「とりゃあーーーーっっ!!」
「てやあーーーーーーーっ!!」
ガシャーーーン!!
「ヌウッ!!」
真と陽介の蹴りが、ヘルの両セカンドアームを木っ端微塵に砕いた。
「凄い、二人とも!!」
驚嘆する瑛祐。
「感心してる場合か!今の内に攻撃しろ!」
「はっ、はい!!てやあーーーーっっ!!」
陽介に叱咤され、瑛祐はバイキングアクスを身構えてヘル目掛けて疾走する。
が、
「おわあっっ!!」
びたーーーーん!!
瑛祐は床の凹凸に躓いてしまい、思いっきり転んでしまった。
「あちゃー……。」
「おいおい、こんな時にドジ踏むなよな……。」
思わず天を仰ぐ真と陽介。
「いてててて……。」
顔をさすりながら瑛祐が立ち上がろうとした時!
ガシッッッ!!
「がはっっっ!」
ヘルが瑛祐の眼前にテレポートし、そのまま高く締め上げた。
「瑛祐さん!」
「この野郎!!」
二人は血相を変え、瑛祐を助けようと駆け出すが、
「ジャマダ、ウセロ。」
ドガーーーン!!
「うわあーーーーーっっ!」
「わああーーーーーっっ!」
ヘルのサードアームから発射された振動波の直撃を受け、地震の際に出来た床のクレパスに飛ばされてしまう。
「ぐ……真……さん……陽……介さ……ん……。」
瑛祐は必死にヘルのメインアームをほどこうとするが、力が強すぎて緩める事すらかなわない。
「く……え、瑛祐……。」
「こ、このままでは……。」
陽介と真は、辛うじてクレパスの縁に手をかけて、落下を防いだが、氷の床だけに、なかなか上がれずにいた。
「う……姉さ……ん……葉槻……さん……。」
瑛祐の意識が次第に混濁し始め、無意識の内に二人の大切な人の名を呟いた。
が、その時。
『瑛祐さん!』
どこからか、瑛祐の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「は……葉槻……さん!?」
『しっかりして下さい、瑛祐さん!!』
瑛祐の耳に、シティホールにはいないはずの葉槻の声がはっきりと聞こえてきた。
「な、なぜあなた……が……?」
『初音姫様から、あなた達の危難を聞いて来たんです!負けないで、瑛祐さん!!』
必死に呼びかける葉槻。
「そ、そうだ……僕はC-Kジェネレーションズのメンバー、こんな所で負ける訳には……いかなぁぁぁい!!」
げしっっ!
「グウッ!」
瑛祐は全力を込めてヘルの胸部に蹴りを入れた。
その衝撃に、ヘルはたまらず瑛祐を離した。
『瑛祐さん!』
「あ、ありがとう、葉槻さん……げほっ、げほっ!」
締め上げられてたせいか、思わず咽る瑛祐。
直後、
「あっ、あれは!?」
瑛祐の渾身の蹴りで割れたヘルの胸部に、赤いコアのような宝珠が現れた。
「アレが敵のコアか。なら、アレを破壊すれば!」
瑛祐は再びバイキングアクスを構え、ヘル目掛けて駆け出した。
が、
「テエイッ!」
ヘルは四本の腕から衝撃波を出し、瑛祐を攻撃する。
「たあっ!!」
瑛祐はバイキングアクスで衝撃波を打ち破っていくが、
「どうしよう、このままではアイツに近づく事も……。」
先が見えない焦燥感に襲われつつあった。
その時、
「とあーーーっっ!!」
「てえーーーいっっ!!」
がしっっ!!
「グヌッ!?」
クレパスからようやく這い上がった真と陽介が、間髪要れずヘルに飛び掛り、四本の腕を押さえた。
「さあ、今です、瑛祐さん!」
「こいつに止めを!!」
「真さん、陽介さん……ありがとう!さあ、行くぞ!!」
瑛祐はバイキングアクスをしっかりと握り締めた。
そして、
「てやあああーーーーーーっっ!!」
瑛祐はハイジャンプし、
どがっっっ!!
「グゥオウッッッ!!」
バイキングアクスをヘルのコアへと深々とヒットさせた。
「よしっっ!」
「やったあ!!」
会心の表情の真と陽介。
「はあ、はあ、や、やった……。」
息を切らしながらも、勝利を確信する瑛祐。
「ミ、ミゴトダ、ユウシャ……ヨ……。」
パアアアア……。
コアを破壊されたヘルは、木っ端微塵に砕け散り、その破片はダイヤモンドダストとなって大広間を彩った。
「「「……。」」」
その幻想的な光景に見とれ、三人はしばし声が出なかった。
その時、
「You Win,Game Clear!Congratulation!!」
の大文字が表示された。
「……や、やった……やったあーーーーーっっ!!」
大歓声を上げる瑛祐。
「よくやったなあ、瑛祐!!」
「さすがですよ、瑛祐さん!!」
瑛祐を称える陽介と真。
「いやあ、これも二人が助けてくれたおかげですよ。」
柄に無く謙遜する瑛祐。
そこへ、
『おめでとうございます、瑛祐さん!』
目の前にディスプレイが現れ、そこに映し出された葉槻が勝利を祝う声を届けた。
「ありがとう、葉槻さん。あなたの応援があったからこそ、僕等は勝てたんです。」
『そ、それは……。』
はにかむ葉槻。
そこへ、
「おやおや、随分いいムードだなあ、二人とも。」
陽介が冷やかす。
「なななな何を!?」
『そそそそそれは……。』
慌てふためく瑛祐と葉槻。
更に。
「それに葉槻ちゃん、その格好からして、かなり慌てて大使館からこっちにテレポートしてきたみたいだな。」
「あっ、は、葉槻さん、それは!」
瑛祐は、葉槻がパララケルス大使館での勤務服である、メイド姿でいる事に気付き、更に驚く。
『あ、はい……、これは初音姫様から連絡を受けた際に、着替える事を何も考えてなかったので……。』
更に恥らう葉槻。
「い、いや、何か可愛いですね……。」
『瑛祐さん……。』
瑛祐と葉槻は、互いに恥らいあって、半分フリーズ状態になる。
「おーおー、お熱い事で♪」
更に冷やかし気味に二人を見る陽介。
「全く陽介君は……ん?」
真が呆れていると、何かに気付く。
「どうした、真?」
「いや、これは……。」
真はヘルがいた所に置かれているブロンズ像のトロフィーを見つけた。
「何ですかね、これ?」
「このステージの宝かな?」
「一見、何の変哲も無いトロフィーに見えますが……。」
三人が疑問に思っている時、
『よおー、お三方。クリアおめでとさん。』
「「「初音さん!」」」
小ホールで総指揮を取っている初音が三人を労う。
「あっ、あの、初音さん。」
『ん、どしたん、まこちん?』
「このような物が。」
初音にトロフィーを提示する真。
『んー?さっきの砂時計と違うて、データが詰まった感がせえへんのやけど、何か怪しげな雰囲気がえろう漂っとるなあ……。よし、これも転送するか。』
初音が作業を速やかに終えると、
『ほな、ご苦労さん。』
と三人はエントランスホールに転送された。
「……ここは……。」
「エントランスホールのようですね。」
「スタート地点に戻ってきたのか。」
周囲を見回す三人。
そこへ、
「陽介!」
「おわあっ!!」
先に待機していたサリーにいきなり抱きつかれる陽介。
「お前本当によく頑張ったなあ。妻としてワタシは嬉しいぞ!」
「ちょちょちょっと!?」
そこへ、
『ちょっとアンタ!ドサクサにまぎれて王子様に何してんのよ!とっとと離れなさいよ!!』
『主殿の妻とは、妄言も甚だしいでござる!!』
小ホールで待機していた舞と紅葉がディスプレイ越しに抗議してきた。
「フッ、悔しかったらこっちまで来てみろ。」
鼻であしらうサリー。
『ぐぐぐぐ……。』
『こいつ、コクーンもろとも破壊してやろうかしら……。』
憤る紅葉と舞。
「あ、姉上……。あなたも人の事を言えないのでは……。」
「当たり前だ。ワタシは他人に徹底的に厳しく、自分にはほどほどに厳しくをモットーにしているからな。お前が複数の妻を持つのはまあ構わんが、ワタシは夫のオンリーワンでなければ許さん。」
「ささサリー様、それはあまりにご無体な……!!」
「弟に甘くなるのは仕方あるまい。」
「そんな事はありませんわ!ワタクシ、武琉さんにはいつも厳しくしておりますわ!」
「ふっ……。哀れな弟だな……。」
男性一同は、サリーと桐華の低次元の言い合いに呆れつつも、他のステージの様子を見守ることにした。
☆☆☆
再びパリ・ダカールラリーステージにて……。
「あと少しやで、御剣!!」
「わかっとるがな、へーたん!!」
アビスワームの大群の中をくぐるように砂丘を爆走するスミレのバイクと平次・和葉のカミオン。
そして、
「よっしゃあ!」
「やっと終わったわい!!」
「あと少しやで!!」
ついにアビスワームの大群を全て潜り抜けた菫達。
ゴールはもう目の前だ。
だが、
「グウォーーーーーッッ!!」
「「「!」」」
突然菫のバイクの前方から、アビスワームが砂中から出現し、大きな口を開けて菫に襲い掛かってきた。
「御剣ぃ!」
「スミレちゃん!!」
思わず目を覆う和葉。
だが、
「とりゃあーーーーーーっっ!!」
何と菫はバイクを最大出力でジャンプさせ、そのままアビスワームの背へと飛び乗った。
「み、御剣!?」
「ス、スミレちゃん!?」
菫の大胆な行動に驚く平次と和葉。
「いっくでーーーっっ!!」
菫は間髪入れずにアビスワームの背から飛び降り、そのままゴールめがけてフルスロットルで爆走する。
平次や和葉もそれに続く。
そして、
「よっしゃあーーーーっっ!!」
菫はダカール市街のゴールへと飛び込んだ。
その瞬間、このパリ・ダカールラリーステージにも、大歓声と共に
「You Win,Game Clear!Congratulation!!」
の大文字が表示された。
「やったで、御剣!」
「スミレちゃん、凄いやん!!」
少し遅れて到着したカミオンから平次と和葉が飛び降り、菫の元に駆け寄って祝福した。
「ありがとう、へーたん、和葉ちゃん!!」
「……御剣、ゲームは無事、クリアーしたんやな。」
「そうや。何や引っ掛かってんのか?」
「何で、エントランスホールへ戻らへんのや!?」
「へーたん、このパリ・ダカールステージは、最後のシーンがまだ終わっとらへんのやで。」
「さ、最後のシーン!?まだバトルがあるんか!?」
「ちゃうちゃう。説明きちんと聞かへんかったんかいな?」
「途中参加のイレギュラーメンバーなんやから、仕方あらへんやろ!?で、何なんや、そん最後のシーンいうのは?」
「レース言うたら決まっとるやろ、表彰式や!」
嬉々として言う菫。
ズルーッとこける平次と和葉。
「なんや、そんなんまでリアルに再現されるんか?」
「表彰式がリアルにあるやなんて、こら、たまらんで〜。ごっつすごいゲームやなあ、コクーンって!」
「は、はは。確かに……ノアズアークに乗っ取られてへんかったらな……。」
めでたく表彰式に向かう菫。
そして、戻って来た菫が、
「へーたん、和葉ちゃん!これ見てや、優勝賞品や!」
と、嬉々として見せる。
それを見た平次は、驚いて仰け反った。
「ななな、何やそれ!?」
菫が賞品として受け取ったものは、真ん中に髑髏のマークが描かれていた黒い円盤だった。
「こないなもん貰うて、よく喜べるな。」
「せやかて、優勝賞品やもん。それに、どうせ現実世界に持って帰れる訳やあらへんのやし。」
平次にけなされて、少しむくれる菫。
そこへ、小ホールにいる初音から通信が入った。
『菫、まずはクリアー、おめでとう。……ちょお待て、菫、アンタが持っとるのは、一体、何や?』
「何って……優勝賞品や。初姉さんも趣味が悪い言うんかいな?けど、せっかく手に入れたんに……。」
またけなされると思ってか、やや落ち込む菫。
『せやない。菫、でかしたで!』
「へっ!?」
『それは、今回の事件のキーになる証拠品や!』
「「「えええっ!?」」」
驚く菫、平次、和葉。
「初姉、けど、現実世界に持ち帰れるもんやあらへんのやろ?」
『勿論、そのまま持ち帰れるしろもんやあらへんで。それは、データ保存アイテムや。』
「データ保存アイテム?」
『せや、菫、そのまま動かんとじっとしとれや。今、ウチのパソコンにデータ移設するで!』
3人には何が何だか分からなかったが、初音の側から、何らかの方法で、そういう操作が出来るらしい。
次の指示があるまで、3人はじっと待った。
『OK。終わりや。』
初音の声と同時に、3人は自動的にエントランスホールに転送されていた。
「やあ、お疲れ様です。」
瑛祐が三人を出迎えた。
「何や、お前も来とったんかいな。」
「ええ、真さんや陽介さんのお陰で。」
「えっ、ダーリンも来とるんかいな!?」
「はい、瑛祐さんの助っ人として、私と一緒に。」
真が説明を継ぐ。
「ダーーリーーーンッッ!!」
それを聞くや、菫は一目散に陽介の元へと駆け出した。
「あっ、ちょ、ちょっと!?」
血相を変える瑛祐。
「どないしたん、本堂君、顔色変えて?」
不思議そうに尋ねる和葉。
「だ、だってあそこには……!」
瑛祐が説明しようとした途端。
「こらあーーーーーっっ、ダーリンに何さらすんや、ドアホウ!」
菫の叫び声が聞こえて来た。
そこで、和葉はハッとなる。
コロセウムステージに、サリーが参加していた事を、思い出したのであった。
「見て分からんか?妻が夫の傍にいるのは、当たり前だろうが。」
「つつつ……妻ぁ!?百歩譲ったかて、ダーリンの正妻は初姉さんや!サリやんはセフレやろ!?」
「服部君、菫さんが『セフレ』なんて言葉を知ってるなんて意外ですね……。」
「オレはお前もそれを知ってた事が意外やったわ……。」
呆れる瑛祐と平次。
「陽介君、君はサリー王女とそういう関係だったんですか……?」
「ちょちょちょっと待てえ!俺はサリーさんとはやってねえって!!」
ジト目で問う真に対し、陽介は慌てふためきながら弁解する。
陽介と真のやり取りに、小ホールから反応があった。
『主殿、サリー殿とは……という事は、他の女とやってしまったでござるか!?』
『王子様、どういう事なの!?初音さんと、(以下表なので規制)!?』
「紅葉さん、舞ちゃん、今のは言葉のあやで、俺はまだ誰とも……!」
『主殿、酷いでござる〜〜!拙者というものがありながら!』
『王子様〜!あの日の誓いは嘘だったの!?』
「な、な、何だよ、その『あの日の誓い』って!」
『私を抱き締めて一生君だけだって……!』
「嘘だあああっ!」
『言ってくれたじゃないの、おとといの夢で!』
固唾を飲んで聞き言っていた一同は、思わずずっこけた。
「何アホな事抜かしとんねや!ダーリンはウチのものに決まっとるやんか!」
エキサイトする菫。
そこへ、サリーが余裕の笑みで言う。
「ふふん。そういうお前は、単なる横恋慕女だろうが。」
「ううう〜〜〜〜〜っっ!!」
サリーの毒舌に、菫は滝涙を流す。
「問答無用、ダーリンから離れるんや〜〜!」
菫は怒りのあまり、ここが魔法も使えないバーチャル空間だという事を忘れて、村雨を呼び出そうと念を込めた。
が、勿論、影も形も出てこない。
「ふっ。愚か者が。」
「んがあーーーーっっ!!ダーリンから離れろーーーーっっ!」
更に激高した菫は、陽介の腕を引っ張り、サリーから引き離そうとした。
「い、いたたたたたっ!」
両側から引っ張られて、陽介は悲鳴を挙げた。
「バーチャル空間でも、両側から腕を引っ張られたら、痛いもんなんやろうか。」
「平次、妙な事で感心しとる場合ちゃうやろ?」
「せやかて、俺も馬に蹴られんのはアホくさいからなあ。」
「ハア……陽介君ともあろう男が……情けない……。」
少し斜に構えて見ている平次達と、頭を抱えている真。
「大岡裁きですわね。」
のんびりと言う桐華。
慌てまくってしまっている自分がおかしいのだろうかと、頭が混乱している瑛祐。
「ま、とにかくや。ここで、他のステージを見守ろうやないか。」
「そうですね。姉上達の事は、ほって置きましょう。私も馬に蹴られるのは嫌ですから。」
平次やレオン達一同は、残る二つのステージを見守る事にした。
☆☆☆
再びソロモンの秘宝ステージにて……。
「ていやあーーーっっ!!」
「とあーーーーっっ!!」
「たあーーーっっ!!」
快斗、青子、そして恵子はソロモンブロックを次々と撃破していく。
「はあ、はあ、ねえ、快斗、後どんくらいかな?」
「68体倒したから、後4体だ。」
「そっか、なら後もうちょっとね、張り切って行くわよ!」
そう言って恵子が剣を握り締めた時、
「恵子、後ろ!」
「えっ!?」
ソロモンブロックの1体が恵子の背後にワープしてきた。
「危ないっ!!」
「きゃっ!」
青子がすかさず恵子を突き飛ばした。
直後、
ドガッッ!
「あうっっ!!」
青子がソロモンブロックに跳ね飛ばされた。
「「青子ぉ!」」
真っ青になる快斗と恵子。
だが、
「くっ、このおっっ!!」
ガシャーーーンッ!!
青子がすかさずモップでソロモンブロックを粉砕する。
「ハハハ……心配するだけ無駄だったか……。」
苦笑いの快斗。
「ごめんね、青子。大丈夫!?」
「う、うん……心配要らないよ……。」
「なら、残りを片付けてやるわ!とりゃあーーーーっっ!!」
恵子は勢いのままで、一気に残り3体を全て粉砕した。
そして、
「You Win,Game Clear!Congratulation!!」
の大文字が表示された。
「やったあーーーーーっっ!!!」
「やったぜ、恵子!」
「す、凄い……。」
大喜びの3人。
「……さてと、宝でも拝むとするか。」
快斗は壇上にある黄金の宝箱を開けた。
「……何これ?」
「石版が2枚……ますますもって、十戎の石版みたいだな。」
「……こんなのがクリアアイテムだなんて、結構湿気てるわね。」
不平顔の恵子。
と、そこへ、
『よー、お三方、クリアご苦労さん。』
「初音さん!」
「ねえ、この石版、ソロモンの秘宝ステージのクリアアイテムらしいんだけど、苦労の割に今一つ報われた気がしないんだけど。」
『石版?……あっ、それは!』
「どうした、初音さん?」
『それも今回の事件のキーとなる証拠品のデータ保存アイテムや!』
「えっ!?」
「ホ、ホントに!?」
『ああ、今ウチのパソコンにデータ移設するから、ちとじっとしとれ。』
恵子は言われた通り、石版を持ったままじっと待った。
『よっしゃ、これでOKや。ほな、みんながエントランスホールで待ってるさかい。早よ行ってやりや。』
そこで初音からの通信が切れた。
「ふう、こちらも一件落着か……。」
無事にファイナルステージをクリアした快斗は、安堵の表情を浮かべる。
「さて青子、私達もここから……。」
「そ、そうね……早く……行かな……きゃ……。」
「「!?」」
青子の様子がおかしい事に気付いた快斗と恵子は、すぐに青子の方を振り向いた。
すると、
「な゛っ……おい、青子!?」
「あ、青子!?」
快斗と恵子は、青子が倒れているを見て、血相を変えて彼女を抱き起こした。
すると、
「「ハッ……!?」」
二人は、青子のHPカウンターの数値が0を指し示しているのを見て、みるみる蒼ざめていった。
「青子、おい、しっかりしろ!!」
「ご、ごめんね、快斗、恵子……。青子、快斗達と一緒には……。」
「バカな事を言ってんじゃねえ!オメーは俺達と一緒にゲームクリアする約束だったろーが!!」
「そうよ!!やっとステージクリアができたのに、こんなトコで倒れないでよ!!」
「大丈夫よ、快斗、恵子……。別にまだホントに死ぬ訳じゃないし、他のみんなが頑張ってくれたら、ちゃんと快斗とゲームクリアした事になるんだから……。」
「でっ、でもよお!!」
その時、
『どうしたんや、黒羽。お前らもうクリアしたんやないのか?』
快斗と恵子の面前に現れたディスプレイから、先にステージクリアを果たした平次が話しかけてきた。
「ああ、ステージはクリアしたよ……。」
「でも、青子が、青子が……!」
『えっ?なっ、あ、青子ちゃん!?』
快斗の腕の中でうっすらと消えつつある青子を見て、血相を変える和葉。
「あ、か、和葉ちゃんに服部君……。」
『お、おい、黒羽!これは一体!?』
「このラストステージでのファイナルボスとのバトルで、青子が恵子をかばったんだけど、それがHPが0になるほどのダメージだったんだ。それで……。」
「私の……私のせいで青子が……。」
沈痛な面持ちで説明する快斗と、その傍らで自分を責める恵子。
「和葉ちゃん……ステージクリア……できたんだね……。」
『ああ、そやで。』
『オレ等だけやない。本堂達や王太子達も無事にステージクリア出来たで。』
『『『『青子さん!』』』』
『『青子ちゃん!!』』
『……。』
同じくステージクリアした瑛祐や真に陽介、レオンや桐華、そして菫がそれぞれ青子に呼びかける。
一方、サリーは黙って快斗達の様子を見続けている。
「よかった……これで後は……。」
「もういい、青子。さあ、一緒にみんなの所へ……。」
「ううん、もういいの……。後は……コナン君達の……活躍を……応援してあげて……。」
そう言う青子の身体が更に消えていく。
「あ、青子!!」
「青子ぉ!?」
「快斗、大……好……き……。」
そういい残して青子は、静かに消えながら強制送還されていった。
「……!」
「あ……青子ぉーーーーーっっ!!」
快斗は自分の腕の中から青子が消え去ったのを感じ、凍りついたかのように動かなくなり、恵子は激しく絶叫した。
『『『あ、青子ちゃん!!』』』
『ねーちゃん!!』
『『『『青子さん!!』』』』
『……!!』
エントランスアリーナで青子が消滅する様子を見ていた平次達が悲痛な叫びを上げる。
『ノアズアーク!これがお前のやり方なのか!?』
『そうや!こんなのってあらへんやん!!』
『ひどい!ひどすぎますよ!!』
堪らずに怒りの声を上げる陽介と和葉、そして瑛祐。
「青子……青子……。」
地に伏し、激しく号泣する恵子。
その時、
「待ってくれ、恵子、それにみんな。」
快斗がゆっくりと立ち上がりながら、和葉達を静止した。
「か、快斗君……!?」
『く、黒羽君……。』
「青子は単に強制送還されただけで、まだ完全にゲームオーバーになった訳じゃねーぜ。」
『で、でも快斗さん……。』
「大丈夫だって。後はコナンや蘭ちゃん達がきっちりとやってくれるさ。なあ、恵子。」
はっきりとした物言いで力強く答える快斗。
「快斗君……。」
『黒羽……。』
『快斗さん……。』
彼の様子を見た恵子と平次達は、複雑な表情を浮かべつつも、元の彼に戻っているのに安堵していた。
『ほな黒羽。はよこっちに来て工藤達を応援したってくれ。あいつ等を早よ安心させたいからな。』
「ああ、わかってるよ。」
「うん。」
快斗と恵子は膝を払いつつ、
「青子、必ずオメーも戻ってこれるよう、全力でコナン達を応援するからよ、だからほんの少しだけ待っててくれ……。」
「絶対に助け出すからね、青子……。」
そう呟いて、駆け足で『ソロモンの秘宝』ステージを後にした。
☆☆☆
駆け足でエントランスアリーナに戻った快斗と恵子。
だがその時、
「あ、ご苦労様、快斗、恵子。」
ズルーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!
快斗と恵子は、強制送還されたはずの青子がなぜかエントランスアリーナにいるのを見て、豪快にすっこけてしまう。
「な……な……!?」
「あ、青子ぉ!!?」
とても信じられないものを見るかのような顔つきの快斗と恵子。
その周りでは、平次達が、いかにもバツが悪そうな表情を浮かべていた。
「こ、これって一体……!?」
「それなんやがな……。」
「どうやらワタクシ達イレギュラーゲストは、クリア・リタイアを問わず、ゲームを終えると、このエントランスに来るようになってたみたいですわ。」
「「…………。」」
桐華の説明に快斗と恵子はあんぐりと口を開けていた。
☆☆☆
同じ頃、小ホールでは……。
「全く、一時はどうなる事かと思ったでござるよ。」
高床の下に回転しながら潜っていった青子のコクーンの前で、安堵する紅葉。
「まあ、あくまでもゲームステージから強制退去されられただけで、まだ命の危機に陥ってる訳ではないですからね。」
探は動じる事無く、ノートパソコンでデータの解析を進めていた。
その隣では、晴香も同じく解析を進めている。
その時、
「!」
探が何かに気付いた。
「どしたん、白馬っち?」
「……ほほう、これは……。」
「えっ、何々!?」
「コロセウムステージで王太子殿下がゲットしたこの螺旋状砂時計のプログラム、これはDNA探査プログラムですよ。」
「DNA探査プログラム?」
隣から覗き込む晴香。
「名前からして、DNAを調べる為のソフトと見たでござるが。」
「ええ。ただこれだけでは決定的な証拠とはなり得ませんから、他のプログラムの解析結果も合わせて考慮しないといけませんね。」
「なるほど、つまりは、今回の騒動の発端となった、樫村さん殺害未遂事件の証拠が、ノアズアークの手によって、各ステージに分散したと。」
「そうです。」
紅子の問いに探が答えた時、
「えっ、こ、これは!?」
菫がゲットした髑髏マークの黒い円盤風のプログラムの解析を進めていた晴香が、驚きの声を上げた。
「どしたん、晴香?」
「初音、これHDDのデータを消去するプログラムよ!」
「なな、何と!?」
「な、何でそんなモンまで!?」
驚く紅葉と舞。
「……なるほど、そう言う事ですか。」
「どうしました、探さん?」
「初音さん、樫村さんが刺された時、PCのHDDのデータが完全に消去されていたそうですね。」
「ああ。」
「つまりは、そのデータ消去プログラムが樫村さんのPCデータを消去したのはまず間違いありません。そして、消された一番の理由が、このDNA探査プログラムですよ。」
説明する探。
「じゃあ、PCデータを消したヤツが、樫村さんを刺した犯人なの?」
「そうです。」
「でも一体、何者でござろうかのう。」
「そうよねえ。そのDNA探査プログラムを使われたらまずい事でもあったのかしら?」
「でしょうね。後は、黒羽君達がゲットした2枚の石版風のプログラムを解析すれば、事件の背景が見えて、解決へと繋がるかもしれませんが……。」
「瑛祐達がゲットしたトロフィーだけは、単なる三次元画像データだけで、中身カラやってんけど、あれも何かの意味がある思うんや。」
「ふむ。何らかの有力な手がかりである可能性は、否定出来ませんね。」
そこへ。
「やあ、君達、調子はどうかね?」
「あ、工藤先生。」
優作が様子を見に訪れた。
「いやいや、ノアズアークは、コクーンの各ステージに、とんでもないモンを散りばめとったわ。」
「と、言うと?」
初音と探、晴香は、優作に今までの経緯と成果を説明した。
「……なるほど、いやあ、君達は本当に良くやってくれてるよ。ここまで証拠がそろえれば、解決も間近いだろう。」
「恐れ入ります、工藤先生。」
「ん?このトロフィーは……。」
「これは本堂君達が、バイキングステージでゲットしてきたものなんですが。」
「一見何の変哲も無さそうなトコが、逆に胡散臭さを感じとってな。」
「このトロフィーのブロンズ像、短剣を持っているが……何かどこかで……。」
考え込む優作。
その時、
「まあ、残るは『オールドタイム・ロンドン』ステージだけだけど、コナン君の知力があれば楽勝よね。」
「園子殿と武琉殿が護衛として出向いておるから、心配無用でごさるな。」
ステージが4つまでクリアされた事で、舞と紅葉は楽観的な意見を述べた。
だが、
「だといいんですが……。」
探が心配げにメインスクリーンに目を向ける。
「もしも、『オールドタイム・ロンドン』ステージがクリアー出来なければ。先程、青子さんがリタイアした時の悲しみが、今度こそ、全員のものになってしまうんです。」
「白馬君、縁起でもない事言わないで!」
「コナン殿達なら大丈夫でござろう!」
「僕だって、そう願ってますよ。その為に、サポートに全力を尽くしている。ですが、楽観視は危険ではないですか?」
「そ、そんな……王子様……!」
「主殿……せっかく頑張ったのに……。」
「だから!どうしてそう極端なんですか、あなた達は!楽観視もいけないけど、いきなりそんなに悲観する事もないでしょう。」
思考が暴走する舞や紅葉に呆れる探。
これに対し、
「探さん。恋する乙女なのですもの、分かってあげて。紅葉さん、舞さん、私達もここで全力を尽くしましょう。」
紅子が三人に語りかける。
「……初音姫様、晴香様、お二方は大丈夫なのですか?」
瑛祐を案じながらも、初音と晴香にそう声をかける葉槻。
「……正直なところ、レオンはわたしの見込み通りの男性だったけど。他の人に対しては、そこまで信頼出来ないわね。でも、わたしが不安がっても仕方がないから。」
「ウチは、皆を信じとる。アイツらやったら、絶対大丈夫や!」
やや不安げな晴香に対し、絶対の自信を持って応える初音。
「あなたらしい答ですね、服部警視長。でも、今は確かに、信じるしかありません。信じましょう、彼らを。」
迷いを振り切るように言った探に、頷く一同。
そして。
「……。」
優作は、一同の様子に微笑むと、一瞬、メインスクリーンを見つめた後、小ホールを後にした。
To be countinued…….
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